「リアルな会話を演劇的に」、『僕はまだ死んでない』矢田悠祐・上口耕平(上)

矢田悠祐さん(右)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

舞台『僕はまだ死んでない』が、2022年2月17日(木)から2月28日(月)まで博品館劇場で上演されます。ウォーリー木下さん原案・演出の舞台で、初日の2月17日と2月18日の2公演は、VR映像での生配信も行われます。2021年に、VR演劇として制作された作品が、有観客の演劇版として上演されます。ある日突然病に倒れ、身体が動かせず意思疎通が取れない状態になった主人公と、その幼馴染、父、妻、担当医、5人の登場人物をめぐる物語。2022年withコロナの時代に、終末医療とどう向き合うのかを問いかける作品です。

アイデアニュースでは、主人公・直人役とその幼馴染・碧役を、回替わりで交互に演じる、矢田悠祐さんと上口耕平さんにインタビューしました。合同取材と独自インタビューの内容を、上、下に分けてお届けします。「上」では、本作への出演がきまった時の思い、ウォーリー木下さんとの稽古のこと、直人役を演じるに当たってのお二人それぞれの役作りのこと、稽古の中で感じるお互いへの思い、直人役を演じる難しさなどを伺いました。「下」では、会ったときからお互いに波長が合うと感じていたこと、久しぶりのストレートプレイ出演にあたって思うこと、直人役と碧役のどちらの自分により新しさを感じているかなどについて伺った内容と、両パターンの観劇が難しい場合も踏まえた上でのお客さまへのメッセージを紹介します。

矢田悠祐さん(右)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(右)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

ーー本作は2021年にVR演劇として配信され、今回は舞台版です。ご出演が決まったときの気持ちをお聞かせください。

矢田:ストレートプレイの舞台に出演することがあまりなかったので、久しぶりだなと感じました。題材が終末医療で命に関わることで、意識しないと触れないような、僕自身もこういう機会がないと考えることがなかなかないので、いいきっかけになると思いました。

上口:僕もストレートプレイがすごく久しぶりなので、単純に挑戦できることが嬉しかったです。命に関わるテーマなので、具体的に「自分だったらどうだろう」と考えるきっかけになりました。目をつぶってきた部分を、正面から見る勇気、覚悟みたいなものを最初に持ちましたね。今回、最初からダブルキャストでというお話は聞いていたので、役を交互に演じていくということにも、挑戦する気持ちがわきました。特に、直人役に関しては、基本的にはベッドに横になっている状態が続いているVR版を観ました。そういう状態で舞台上にいることも初めてですから、未知の体験という感覚で「どうなっていくんだろう」と、いろいろと想像を膨らませていました。

ーーウォーリー木下さんとの稽古で、どのようなことをお話されていますか?演出面と、テーマ性の面からお聞かせください。

矢田:今、話し合っているのは、自分たちの役がどのような状況に置かれているのかについての、細かい背景の部分です。演出は今のところ、全体を通して一周目なので、まだそこまで細かくがちがちに決めているわけではないですよね?

上口:そうだね。

矢田:碧の役だったら碧の解釈をするなど、トライアンドエラーを繰り返しているような感じです。

上口:台本自体が、特に後半にいけばいくほどシリアスな内容になってくるので、会話だけだと、すごく静かな空気になるんです。でも、それがリアルじゃないですか。病室で家族や友人、先生と会話を繰り広げていくときは、基本的に静かな時間が流れていると思うんですよね。今、稽古中に模索しているのは、演劇的に、どういう緩急で、どういう波を作っていくのかです。演者のアイデアと、それを観たお客さんやウォーリーさんの判断などを組み合わせながら、リアルな会話をいかに演劇的に見せるか。そこを矢田くんと一緒にもがきながら「ああでもない、こうでもない」と。

矢田:直人と碧と、入れ替わりながら稽古しているんですよね。

上口:「これだとリアルだけれど、静かだし」「でも、ここを誇張するのは違うんじゃないか」など、いろいろもがきながら答えを探している段階ですね。稽古場で、ウォーリーさんと一緒に、みんなが同じベクトルで、そういうことを考える時間も好きです。ウォーリーさんの言葉や舵の取り方だからだと思うのですが、同じ方向を向いているなと思うんです。とても幸せないい時間です。テーマに関しても、ウォーリーさんの知人が体験されたことや、キャストそれぞれが本についてどう思うか、そういう経験があるか、それに近いような経験があるかみたいなことを3時間くらい話したよね?

矢田:そうですね。最初の日に、結構時間を取っていたただきました。僕はそういう体験がありませんでしたが、あの空間でそれぞれの体験を聞かせていただくことで、自分の考えが変わり、役に反映されています。思いや考え方を全員でシェアできた時間でした。今の稽古場は、何か疑問に思ったら、どのタイミングでも話を聞いてもらえる空間ですね。

ーー今、上口さんが「ウォーリーさんと、演劇的な波をどう作っていくか話し合っている」とおっしゃっていましたが、矢田さんはその点に関して、ウォーリーさんと何かお話しされましたか?

矢田:ウォーリーさんとお話してみると、結構感覚が一緒だったんです。感じていることは同じなのだなと思いました。やり取りがリアルで、お客さんの前で演じるとなると、しんどい感じがするなというところがあるんです。そう感じている部分が、ウォーリーさんと同じだなと思いました。役の感情や、碧がどうしたいと思っているのかという気持ちをすり合わせて、自分の中で腑に落としていくことが難しくもありますが、役者としてやるべきことなので、今模索しているところです。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、直人役を演じるに当たってのお二人それぞれの役作りのこと、稽古の中で感じるお互いへの思い、直人役を演じる難しさなどインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。2月14日掲載予定のインタビュー「下」では、会ったときからお互いに波長が合うと感じていたこと、久しぶりのストレートプレイ出演にあたって思うこと、直人役と碧役のどちらの自分により新しさを感じているかなどについて伺った内容と、両パターンの観劇が難しい場合も踏まえた上でのお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■矢田:ウォーリーさんからの参考資料を、YouTubeなどで観て役作りをしている

■上口:ふたりでよかった。波長の合う矢田くんと、同じ問題を一緒に悩めるのが心強い

■矢田:本当にいいなと思う部分は、「いただきます、それ」と、どんどん真似も

■上口:ほとんど体を動かせない直人。目で、感情を本気で伝えるつもりで演技したい

<舞台「僕はまだ死んでない」>
【東京公演】2022年2月17日(木)~2月28日(月) 博品館劇場
公式サイト
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2022/bokumada2022/index.html

「僕はまだ死んでない」 関連記事:

⇒すべて見る

矢田悠祐 関連記事:

⇒すべて見る

上口耕平 関連記事:

⇒すべて見る

※矢田悠祐さんと上口耕平さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは3月13日(日)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■矢田:ウォーリーさんからの参考資料を、YouTubeなどで観て役作りをしている

ーー今回、直人役では、おふたりは患者の役を演じられます。役作りのときに参考にされたものはありますか?

矢田:ウォーリーさんから参考資料をいただき、YouTubeなどで拝見しました。その上で、稽古中にリアルに30分や40分間、自分の意志で動けない状態でいるわけですが、「こんなにもしんどいものなのか」と思いました。テレビや映画で、「事故や病気で体が動けなくなった」というシーンを目にすることはありますが、演技を通して体験するのは、すごく珍しいことなのではないかと思っています。「自分が想像していたより大変」と言うと、簡単な言葉になってしまいますが、本当にこれが一生続くとなると、向き合うには相当な覚悟が必要なことだと思いました。

上口:僕もまず、自分の過去の体験をもう一度思い返して、家族に連絡して「あのときって、どうだったかな」と聞く時間を改めて作りました。普段、あまりそういう話は出ないのですが、思い出話で親族が病院にいたときのことなどを、今一度、聞いてみました。直人の患者としての気持ちもそうですが、家族や周りの人たちと、お医者さんとの関係が、考えれば考えるほど難しいです。家族や患者さんは、どこかで希望をずっともっていて、何か希望をひとつもって帰ろうとしている。そして、お医者さんはそれをわかっている。でも、いろいろな現実があります。お医者さんは、それを家族や患者さんにどういう風に伝えるかを常に考えてくださっている。そういう葛藤、言葉の選択を、お医者さんも家族も、ずっと考えている時間なのだなと改めて感じました。

矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

■上口:ふたりでよかった。波長の合う矢田くんと、同じ問題を一緒に悩めるのが心強い

ーー直人役と碧役を回替わりで交互に、二役を演じられるということですが、稽古を重ねられた今の心境を教えてください。少し苦戦しているところなどはありますか?

矢田:苦戦しているというよりも、「ふたりでよかったな」と思うことが多いですよね。

上口:はい。

矢田:碧は一番リアルで、意志が一貫していないんです。物語の中で、時を経ていくごとに、考えていく役なので、そのときどきで居方や中身が違うんです。そこに関して、ひとりで考えるのではなく、「こうですかね?」と、すぐ隣で聞くことができるのは、すごくありがたいです。

上口:ほんっとうにそう思っています。

矢田:あはは!(笑)

上口:もちろん、矢田くんと波長が合うことも、すごく影響していると思うんです。考え方やポイントが似ているといいますか。同じ問題を、一緒に悩めることが、こんなに心強いものなのかと思えました。そういう稽古場は少ないですし、こういう形のダブルキャストならではのことだと思います。お互いの悩みを素直に言える関係に救われていますね。テーマがテーマなだけに、ひとりで考え込んでしまうと答えのない、らせん階段みたいなところに入り込んでしまいます。でもそれをシェアすると、突然出口が見えてくる。そういう感覚が日々繰り返されているので、とても感謝しています。

上口耕平さん=撮影・岩村美佳

■矢田:本当にいいなと思う部分は、「いただきます、それ」と、どんどん真似も

ーー入れ替わりで二役を演じられますが、お互いが演じている姿をご覧になりながら、どのようなことを思われていますか?

矢田:中身は同じでも、アウトプット、表現の仕方がそれぞれで、それがダブルキャストのおもしろいところだと思うのですが、本当にいいなと思う部分は、どんどん真似していこうと思っています。「いただきます、それ」という感じで(笑)。最終的には似通っていく気がしますが、全く同じにはならないところがおもしろいなと思います。

上口:僕もすごくおもしろいと思うのは、同じ気持ちを作っていて、同じ言葉を発しているから、同じはずなんですが、演じている人が違うだけで、全く別物に見えることです。役としては、同じようにひとつになっていくのだと思いますが、結果、まったく違う見え方をするのが、今稽古場で明らかになっているので、「演劇っておもしろいな」と改めて思いましたね。人が違うだけで、こんなに違って見えるのだなと。

矢田悠祐さん=撮影・岩村美佳

■上口:ほとんど体を動かせない直人。目で、感情を本気で伝えるつもりで演技したい

ーー今回、患者役ということですので、直人役のときには大きな演技ができないのではと想像しているのですが、この役の演技で気をつけていること、こうしようと考えていること、悩んでいることなどがありましたら、教えてください。

矢田:直人の役の中に唯一、物語の中盤のモノローグで、自分が倒れてからの、ある意味臨死体験のようなところを語る部分があるんです。直人がどういう人間だったかを、ほぼそこで作るのですが、この作品全体においては、どちらかというと直人が話せない分、碧が直人の過去のことを語るんです。碧が、「直人はどれだけ才能があって」などと話したりするので、そういうものを作っていくのは周りの人間だなと、碧を演じるときに思いました。

上口:直人は目は動くのですが、ほとんど体を動かすことができないんです。でもそのときの目、見つめてもらう目みたいなものから、「あのときは、きっとああ言っていたよね」「絶対ああいう思いがあって見ているよね」と。そのような話を周りからも聞きますし、僕自身の体験からも思ったことがあります。今回、演劇としては、直人が思いを周りの方に伝えていくという表現もありますので、目だけで、今思っている感情を本気で伝えるつもりで、演技をしていきたいなと思いました。

ーー目での演技を、大事にされるということですね。

上口:演劇となると、僕も未知の世界なのですが、実際にそういうことはあるじゃないですか。「きっと、あの目はああ言っていたよね」と。それをもとに、そういう瞬間が生まれるはずだと信じて、心がけていきたいと思います。

矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

※矢田悠祐さんと上口耕平さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは3月13日(日)です。 (このプレゼントの募集は終了しました) 有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

Follow me!

“「リアルな会話を演劇的に」、『僕はまだ死んでない』矢田悠祐・上口耕平(上)” への 2 件のフィードバック

  1. ゆみk より:

    同じ役を演じているのに、お2人でこうも違う表現になるのか!と観劇して驚きました。特に直人はかなり違って驚きました。セリフや動きは同じなのにすごいです!
    また、直人は寝たきりで目以外は動かせない(たぶんまつ毛も動かせない?)のに、伝わってくるものが沢山ある事にも驚きました。
    すごく見ごたえがありました!

  2. ショコラ より:

    素敵な記事とお写真をありがとうございます。
    波長が合うお二人が良い相乗効果を発揮し役を深めているようで、お二人の関係性も伝わってきました。
    お稽古でいろいろもがきながら答えを探しながら作り上げたこの作品を、17日から観劇するのがますます楽しみになりました。
    明日の続きの記事を早く読みたいです!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA