連載「YouTubeで学ぶ英語」の第90回です。先日、日本では「同性婚を認めないのは違憲」という画期的な判決が出ました。しかし、性的マイノリティの方たちの権利が十分尊重されているとは言えないのはアメリカでも同じ。今日は、トランスジェンダーの娘のためにミズーリ州のお父さんが行ったスピーチで学びましょう。
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アメリカの保守的な州では、「トランジェンダーの選手が女子のスポーツチームでプレイすることを禁止する」という法案が検討されています。ミシシッピー州知事は2021年3月11日、Mississippi Fairness Actに署名、これでミシシッピーでは、公立学校に通うトランスジェンダーの女性は、"生物学的性別"に基づいた「男性」もしくは「男女混合」のチームにしか入れないことになりました。ミズーリ州でも同様の法案が検討されていて、これに異議を唱えたある父親のスピーチが、今、大きな反響と感動を呼んでいます。動画の最初、彼が自己紹介をする部分を聴いて、( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。*この動画には英語字幕がついていますので、それを読まずに聴き取ってみてください。
My name is Brandon Boulware and Chairman, I’ll go as quickly as I can. I’m a lifelong Missourian, I’m a business lawyer, ( 1 ), I’m the son of a Methodist minister. I’m a husband, I’m the father of four kids, two boys two girls- ( 2 ) a wonderful and beautiful transgender daughter. Today happens to be her birthday. And ( 3 ) she doesn’t know that. She thinks I’m at work. 私の名前はブランドン・ボールウエアです。議場、できるだけ早く終わらせます。私は、生粋のミズーリ人で、弁護士で、クリスチャンで、メソジスト派教会の牧師の息子です。夫であり、4人の子どもの父親でもあります。私にはふたりの男の子とふたりの女の子がいます。その中に、素晴らしく、美しいトランスジェンダーの娘がいます。今日はたまたまその娘の誕生日ですが、私はここにいることを選んだのです。娘はこのことを知りません。私は仕事をしていると思っています。
ボールウエア氏は、自分がどんな父親であったか、なぜそうしたのかを率直に語ります。その部分を聴いて、( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。
One thing I often hear when transgender issues are discussed is “I don’t get it. I don’t understand.” And I would expect some of you to have said that and feel the same way. I didn’t get it either. For years, I didn’t get it. For years, I would not ( 4 ) girl clothes. I did not let her play with girl toys. I forced my daughter to wear boy clothes, and get short haircuts, play on boys’ sports teams. Why did I do this? To protect my child. I did not want my daughter or her ( 5 )to get teased. And truth be told, I did it to protect myself as well. I wanted to avoid those ( 6 ) questions as to why my child did not look and act like a boy. トランスジェンダーの問題が話題にのぼると、よく耳にすることのひとつが、「分からない。理解できない」という言葉です。皆さんもそのようにおっしゃったことがあるでしょうし、同じように感じている方もおられるでしょう。私も分かりませんでした。何年もの間、理解できなかったのです。何年もの間、私は娘に女の子の服を着せませんでした。女の子のおもちゃで遊ばせませんでした。娘に無理に男の子の服を着せ、髪を短く切り、男の子のスポーツチームに入ることを強要しました。なぜそんなことをしたのか? 自分の子どもを守るためです。私は、娘やその兄弟姉妹がからかわれないようにしたかった。そして、本当のことを言えば、自分自身を守りたかった。自分の子どもがなぜ男の子のように見えないか、なぜ少年らしい振る舞いをしないのかというお決まりの質問を避けたかったのです。
長年、トランスジェンダーの娘を男の子として扱ってきた結果、「彼女は笑わない子ども」になってしまったと語るボールウエア氏は、ある日の出来事について話します。その部分を聴いて、( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。
I remember the day everything changed for me. I got home from work, and my daughter and her brother were in the front lawn. And she had, my daughter had ( 7 ) on one of her older sister’s play dresses. And they wanted to go across the street and play with the neighbor’s kids. It was time for dinner, I said, “Come in” She asked, can she go across the street. I said no. She asked me if she went inside and put on boy clothes, could she then go across the street and play. And it was then that( 8 ) that my daughter was equating being good with being someone else. I was teaching her to deny who she is. As a parent, the one thing we cannot do, the one thing, is ( 9 ) our child’s spirit. 私はすべてが変わった日のことを覚えています。仕事から帰ると、娘とその弟が玄関の芝生のところにいました。娘は姉の遊び着をこっそり着ていました。夕飯の時間だったので、私は「家に入りなさい」と言いました。娘は通りの向こう側に行って、近所の子どもたちと遊びたいと言います。私はダメだといいました。娘は、家に入って男の子の服に着替えたら遊びに行ってもいい? とききました。まさにその時、私はあることに気が付いたのです。娘は、いい子であることは、自分以外の誰かになることだと思っていたのです。私は娘に、自分を否定することを教えていた。親として、絶対にやってはいけないことがひとつあります。それは、子どもの魂を殺すことです。
この日以降、ボールウエア夫妻は、娘に「自分自身であること」を許します。女の子の服を着て、髪を伸ばし、女の子のバレーボールチームやテニスチームに入った娘さんは、別人のようになったと話すボールウエア氏は、ミズーリ州の議員たちに訴えました。この法案を通さないでほしい、娘から笑顔や自信や友情を、子ども時代を奪わないでほしいと。このスピーチは、言論の自由を守ることを目的としたNGO団体=ACLU: American Civil Liberties Union(アメリカ自由人権協会)によって公開され、大きな反響を呼んでいます。平易な言葉で、真摯に自分の経験を語ったお父さんの言葉が、州議会を動かすことを願っています。
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■聴き取りの答えと解説
■動画の残りの部分のスクリプトと解説
<関連リンク>
ACLU ホームページ
https://www.aclu.org/
ACLU YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/ACLU/featured
NBC News Mississippi Fairness Act 成立の記事
https://nbcnews.to/2OSyat3
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■聴き取りの答えと解説
My name is Brandon Boulware and Chairman, I’ll go as quickly as I can. I’m a lifelong Missourian, I’m a business lawyer, I’m a Christian, I’m the son of a Methodist minister. I’m a husband, I’m the father of four kids, two boys, two girls- including a wonderful and beautiful transgender daughter. Today happens to be her birthday. And I chose to be here. she doesn’t know that. She thinks I’m at work.
1 I’m a Christian 私はクリスチャンです。"Christian"は、名詞でもあり形容詞としても使えます。形容詞の場合は、「Christian missionary school キリスト教のミッション」のように使います。名詞の場合は、「devout Christian 敬虔なクリスチャン」のように使います。
2 including (前置詞)~を含む、~などの ここの英文ではまずtwo boysとtwo girls が出てきて、この中にtransgender daughter が含まれているという意味です。
3 I chose to be here 私はここにいることを選んだ choose(他動詞)の目的語に「to不定詞」が入るので、「to be here =ここにいること」がchooseの目的語になっているわけです。
One thing I often hear when transgender issues are discussed is “I don’t get it. I don’t understand.” And I would expect some of you to have said that and feel the same way. I didn’t get it either. For years, I didn’t get it. For years, I would not let my daughter wear girl clothes. I did not let her play with girl toys. I forced my daughter to wear boy clothes, and get short haircuts, play on boys’ sports teams. Why did I do this? To protect my child. I did not want my daughter or her siblings to get teased. And truth be told, I did it to protect myself as well. I wanted to avoid those inevitable questions as to why my child did not look and act like a boy.
4 let my daughter wear let(使役動詞)+daughter(目的語)+wear(原形動詞)人に~させる "娘に女の子の服を着せる" ここでは、文章全体は否定文なので、「私は娘に女の子の服を着せませんでした」という意味になります。
5 siblings (名詞)男女の区別をつけないで表現する兄弟姉妹
6 inevitable (形容詞)避けられない、必然の、お決まりの cf. inevitable death 避けられない死
I remember the day everything changed for me. I got home from work, and my daughter and her brother were in the front lawn. And she had, my daughter had sneaked on one of her older sister’s play dresses. And they wanted to go across the street and play with the neighbor’s kids. It was time for dinner, I said, “Come in” She asked, can she go across the street. I said no. She asked me if she went inside and put on boy clothes, could she then go across the street and play. And it was then that it hit me that my daughter was equating being good with being someone else. I was teaching her to deny who she is. As a parent, the one thing we cannot do, the one thing, is silence our child’s spirit.
7 sneaked (動詞)こっそり潜り込む、こっそり近づく この文章では、「お姉ちゃんの服をこっそり持ち出して着ている」という意味になっています。
8 it hit me (動詞)hit には色々な意味がありますが、ここでは、「考えなどが思い浮かぶ」というふうに解釈しました。「娘はずっと、いい子であることは、自分以外の誰かになることだと思ってきたのだという考えが浮かんだ」
9 silence (他動詞)黙らせる、沈黙させる ここでは、目的語が「child’s spirit 子どもの精神、子どもの心」ということなので、それを沈黙させるということは、"殺す"ことだと解釈しました。
■動画の残りの部分のスクリプトと解説
では、ボールウエア氏のスピーチの残りの部分を聴いてください。スクリプトと私訳をつけておきます。
And so, on that day, my wife and I stopped silencing our child spirit. The moment we allowed my daughter to be who she is, to grow her hair, to wear the clothes she wanted to wear, she was a different child. And I mean it was immediate. It was a total transformation. I now have a confident, a smiling, a happy daughter. She plays on a girls’ volleyball team. She has friendships. She’s a kid. I came here today as a parent to share my story. I need you to understand that this language, if it becomes law, will have real effects on real people. It will affect my daughter. It will mean she cannot play on the girls’ volleyball team or dance squad or tennis team. I ask you, please don’t take that away from my daughter, or the countless others like her who are out there. Let them have their childhoods, let them be who they are. I ask you to vote against this legislation. そして、その日を境に、妻と私は子どもの魂を殺してしまうことをやめました。娘がありのままでいることを許したときから、髪を伸ばしたり、着たい服を着ることを許したときから、娘は違う子どものようになりました。まったくその瞬間から、あっという間の変身でした。今、私の娘は自信にあふれ、よく笑い、幸せです。女子バレーボールチームに入りました。友だちもできました。娘は、まさに当たり前の子どもになったのです。今日、私は、ひとりの親として話を聞いてもらうために来ました。ここに書かれている言葉が法律になったら、現実の人々に影響を与えるんだということを理解してほしいのです。私の娘にも影響します。娘は、女子バレーボールチームやダンスチームやテニスチームで活動することができなくなるのです。どうか、私の娘や、数えきれないほどたくさんいる彼女のような人々から、そうした権利を奪わないでください。子ども時代を奪わないでください。娘がありのままの自分でいられるように、この法案に反対票を投じるようにお願いします。
素敵なスピーチを紹介してくださりありがとうございます。内容が気になり、聞き取りたくて、自然と英語の勉強になりました。