連載「YouTubeで学ぶ英語」の第93回です。現地時間2021年4月25日、新型コロナ感染拡大のため予定より2か月遅れで、第93回米アカデミー賞授賞式が行われました。助演女優賞は、アメリカの田舎町に移住した韓国人一家を描いた『ミナリ』のユン・ヨジョンが受賞しました。2020年の第92回米アカデミー賞では韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞しましたが、韓国の俳優がアカデミー賞を受賞したのは初めて。今日は、彼女のユーモラスな受賞スピーチで学んでいきましょう。
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2016年、“#OscarsSoWhite オスカーは白すぎる”というハッシュタグがSNS上で拡散され、批判が集まったアカデミー賞でしたが、今年は、作品賞は中国系の女性監督、クロエ・ジャオ(作品『ノマドランド』)が獲得し、助演女優賞は韓国のベテラン俳優、ユン・ヨジョンが受賞。これまでになくダイバーシティあふれるオスカーとなりました。では、ウイットに富んだユン・ヨジョンのスピーチを聴いて、( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。
( 1 ), I’m from Korea and actually my name is Yuh-Jung Youn and most of European people call me Yuh Youn and some of them call me Yuh-Jung. But tonight, you are all forgiven. Well, well, we, I would usually when I’m living in the other part of the world. I just watch the television. It is an Oscar but event on the television, just watching like a television program for us. But me ( 2 ) by myself which I cannot believe I’m here. That’s – okay let me( 3 )myself together. ご存じのように、私は韓国出身で、名前はヨジョンユンです。ヨーロッパでは多くの人がユユンと呼び、ある人はユジョンと呼んでいます。でも、今夜はみなさん、どう呼んでいただいても大目に見ますよ。私は、アメリカから遠い別の地域に住んでいるわけですが、だいたいいつもテレビを見ているんです。オスカー(アカデミー賞)は、私たちにとってテレビ番組なんですよ。でも、今夜は私がひとり、ここにいる。自分がここにいることが信じられません。ええっと、ちょっと落ち着きますね。
今年、ユン・ヨジョンとともに助演女優賞にノミネートされたのは、オリビア・コールマン(作品『ファーザー』)、グレン・クローズ(作品『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』)、マリア・バカローバ(作品『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』)、アマンダ・セイフライド(作品『マンク』)でした。受賞者ユン・ヨジョンが彼女たちにかけた温かい言葉を聴いて、( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。
Well, see, I don’t ( 4 ) How can I win Glenn Close? We know Glenn Close. I’ve been watching her so many Performances. So, this is just all the nominees, five nominees. We are the winner for the different movie, different role. We play the different world. So, we cannot ( 5 ) each other. Tonight, I’m here, it’s just I have just a little bit luck I think. Maybe I’m ( 6 ) than you. And also maybe it’s an American hospitality for the Korean actor? さて、私は競争というものをあまり信じていません。だって、どうやってグレン・クローズに勝つっていうんです? みなさんご存じのグレン・クローズですよ。彼女の演技をたくさん拝見してきました。だから、この賞は、ノミネートされた人全員のものです。5人の候補者のもの。私たちはみんな、異なる映画、異なる役柄を演じた勝者なんです。異なる世界を演じているんですから、競争することなんてできません。私はここに立っていますが、それは私がほんの少しだけ運が良かったからだと思います。もしかしたら、私はみなさんより運が良いのかもしれません。あるいは、これは、韓国の俳優に対するアメリカのおもてなしでしょうか?
韓国人歌手と結婚して、芸能界を引退し、渡米してふたりの息子をもうけましたが離婚して韓国にもどり、芸能活動を再開したユン・ヨジョン。スピーチの中でもユーモラスに息子たちのことを語っています。その言葉を聴いて、( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。
And I’d like to thank to my two boys who ( 7 ) and work. So, beloved son, all I know, this is the ( 8 ) because mommy worked so hard. そして、私のふたりの息子にも感謝したいと思います。私に仕事をさせてくれました。だから、最愛の息子たち、私にわかるのは、これが、ママがものすごく頑張って働いた結果だということよ。
韓国人俳優として初めて助演女優賞に輝いたユン・ヨジョンさん。結婚生活の間、アメリカに住んでいた経験から、受賞のスピーチもインタビューもすべて英語でこなしました。プレゼンターを務めたブラッド・ピットが、winnerとして自分の名前を呼ぶと、壇上に上がってこう挨拶しました。
Mr. Brad Pitt, finally. Nice to meet you. Where were you when we were filming in Tulsa? ブラッド・ピットさん、ようやくお会いできました。タルサで私たちが撮影中、どこにいらしたの?
韓国出身の移民一家を描いた『ミナリ』が、監督も俳優も韓国系、せりふもほとんど韓国語でしたが、実はアメリカの作品で、ブラッド・ピットも制作総指揮に名を連ねているのが、この挨拶の理由です。今回のアカデミー賞受賞スピーチで最も注目をあびた俳優のひとりが、ユン・ヨジョンさんでした。
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■聴き取りの答えと解説
■第93回アカデミー賞関連動画紹介
<関連リンク>
GMA YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCH1oRy1dINbMVp3UFWrKP0w
Oscars.org 米アカデミー賞ホームページ
https://www.oscars.org/
映画「ミナリ」公式サイト
https://gaga.ne.jp/minari/
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■聴き取りの答えと解説
As you know, I’m from Korea and actually my name is Yuh-Jung Youn and most of European people call me Yuh Youn and some of them call me Yuh-Jung. But tonight, you are all forgiven. Well, well, we, I would usually when I’m living in the other part of the world. I just watch the television. It is an Oscar but event on the television, just watching like a television program for us. But me being here by myself which I cannot believe I’m here. That’s – okay let me pull myself together.
1 as you know イディオム 「ご存じの通り」 ここでのas は理由や原因を表す接続詞で、後ろに文章を従えます。聞き手が既に知っている内容を話すときに使われます。文頭に置かれることが多い表現です。
2 being here ここでは、直前のme を動名詞 being here でどんな状態なのか説明しています。学校では習いませんが、口語的な表現で、ネイティブスピーカーはよく使っています。ここでは、「ここ(このステージ)に立っている私」という感じでしょうか。cf. This is me drinking black coffee =ブラックコーヒーを飲んでいる私です。
3 pull イディオム pull oneself together の一部 「気を静める、しっかりする、気を取り直す」
Well, see, I don’t believe in competition. How can I win Glenn Close? We know Glenn Close. I’ve been watching her so many Performances. So, this is just all the nominees, five nominees. We are the winner for the different movie, different role. We play the different world. So, we cannot compete each other. Tonight, I’m here, it’s just I have just a little bit luck I think. Maybe I’m luckier than you. And also maybe it’s an American hospitality for the Korean actor?
4 believe in competition believe は、「信じる」という意味の動詞ですが、後ろに前置詞のin があるかないかで、少しニュアンスが変わります。I believe you だと、「あなたの言うことを信じる、あなたの言葉を信じる」という単純な意味ですが、I believe in you になると、「あなたのことを信頼している、あなたの可能性を信じている」といった全面的な信頼になります。I believe in God 「私は神を信じている、信仰している」がよく聞かれる表現です。このスピーチでは、「“競争”というようなあいまいな概念を私は信じられません」、といった感じでしょう。
5 compete (自動詞)競争する、立ち向かう
6 luckier (形容詞)lucky , luckier(比較級), luckiest(最上級)
And I’d like to thank to my two boys who made me go out and work. So, beloved son, all I know, this is the result because mommy worked so hard.
7 made me go out 使役動詞 make +人+動詞の原形 「私を外へ出て(働かせた)」人に~させる、してもらうという意味で使う使役動詞は他に、let, have, get があります。make は「強制的に~させる」というニュアンスがあり、このスピーチでは、「息子たちが私を働かせた」というジョークのような表現になっています。
8 result (名詞)結果、成り行き、成果
■第93回アカデミー賞関連動画紹介
今年のアカデミー助演女優賞のプレゼンターはブラッド・ピットでした。ユン・ヨジョンの名前を呼ぶ前に、ノミネートされた女優ひとりひとりについて、いつ、どんな映画や俳優を見て映画を愛するようになったのかを紹介しています。ブラッド・ピット自身はクリント・イーストウッドの映画と、ゴジラの映画を見て映画好きになったそうです。
ユン・ヨジョンはマギー・スミスが出ている映画や、ロバート・アルトマンやマイク・リー監督の映画で、アマンダ・セイフライドはレオナルド・ディカプリオ版の「ロミオとジュリエット」で、マリア・バカローバはマリリン・モンローに夢中になったことで、オリビア・コールマンは「サウンドオブミュージック」や「チキチキバンバン」をクリスマスに家族と見たことで、グレン・クローズは「白雪姫」「小さな無法者」「黄色い老犬」などのクラシックなディズニー映画を見て、それぞれ映画俳優の道を歩むきっかけになった。そんなふうに紹介している部分を聴いてください。