「劇場で感じたことを自然に」、『あらしのよるに』渡部豪太インタビュー(上)

渡部豪太さん=撮影・伊藤華織

秘密の友達になったヤギとオオカミを描いた きむらゆういちさんの絵本「あらしのよるに」(講談社刊)を原作にした日生劇場ファミリーフェスティヴァル2021 音楽劇『あらしのよるに』が、2021年8月28日(土)と8月29日(日)に日生劇場で上演されます(全4回公演)。2019年の初演に引き続き、オオカミのガブ役を演じられる渡部豪太さんにインタビューしました。(上)では、オオカミ役を演じることで新しい面が引き出されたことや、そもそもの「演じること」への思いなどを紹介します。(下)では、この作品を通して子どもたちに伝えたいメッセージや、「目に見えないもの」への思い、最近、日本舞踊の発表会にも出られた渡部さんにバレエや日本舞踊などの身体表現への思いについても伺いました。

渡部豪太さん=撮影・伊藤華織
渡部豪太さん=撮影・伊藤華織

ーー音楽劇『あらしのよるに』に出演される渡部さん。今回、2回目のガブ役ですが、お気持ちやアプローチに変化はありますか?

今回、脚本も演出も振り付けも音楽も、初演と一緒なんです。若干変わるのは、キャストですね。個人的には、前回行き届かなかったところをより深くより良くしていきたいですし、新しいキャストさんの風を感じながら、より深く作品に没入していけたらいいなと思っています。作品って、いくら同じ本でも音楽でも振り付けでも、新しいキャストさんが来られると、全く違うものになるんですよ。

ーー新しい方が加わると、全く違うものになるんですね。

はい。それが一番楽しみですね。2年前の初演は、一瞬で終わってしまったような感覚がありますが、今回は再演なので、作品をかみしめられるのではないでしょうか。反芻するというわけではないですが、新しい味も感じながら「ガブ」という役に向き合っていきたいです。

ーーガブは「オオカミ」の役ですよね。動物の役を演じられるときと、人間の役を演じられるときの違いは何でしょうか。

そうですねぇ、オオカミの気持ちは多分、誰にもわからないので…。でも、実家の犬とは、会話ができて意思が通じるなあと思うこともあるんですよ。私が言っていることをわかってくれているのかなあと。

ーーきっと、伝わっているのではないでしょうか。

そういうときって、種族を超えて、お互いが「呼吸」をしているんじゃないかと思うんですよね。あと、ガブは確かに狼なのですが、「食べる」「寝る」とか、「寒い」「暑い」「心地いい」という感覚は、きっと人間とも共通しているんじゃないかと思うんです。だから、そこの表現は変わらないので、人間としての感覚をそのまま使って。あと、オオカミって、家族などの群れで生活している生き物だと思うんです。となると、人間と同じように、恐らく「家族愛」のようなものも、必ず持ち合わせている種族だと想像しています。

ーー感覚や家族愛という共通項がありそうだということですね。

人間とオオカミの架け橋とまではいかないですけれども…でもきっとオオカミって、自分のことを「オオカミだ」と思っていないでしょうね。恐らく、人間だけじゃないでしょうか。自分のことを「人間だ」って思っているのは。

<取材協力>(衣装)
UNITUS:06-6948-6093
NaNo Art:nano-art.contact@nano-art.info

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ガブ役として舞台にいる「あり方」や、「出だし」の重要性についてなど、渡部さんならではの表現を交えて語ってくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。6月22日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、この作品を通して子どもたちに伝えたいメッセージのほか、「目に見えないもの」への思い、最近、日本舞踊の発表会にも出られた渡部さんにバレエや日本舞踊などの身体表現への思いについても伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■演じるということは「こうしてやろう」ではなく、そういう場に「いる」だけ

■初演で「見えていなかった渡部さんを見られた」という言葉をいただいた。嬉しかった

■出会いのシーンが重要。あとは石が転がっていくように、ただ転がっていく感覚

■最初の一滴をとても丁寧に劇場に落とすと、画用紙の上の水のように広がっていく

<日生劇場ファミリーフェスティヴァル2021 音楽劇『あらしのよるに』>
【東京公演】2021年8月28日(土)~8月29日(日)(全4回公演) 日生劇場
公式サイト
https://famifes.nissaytheatre.or.jp/2021arashi/

<関連リンク>
渡部豪太オフィシャルサイト
http://www.spacecraft.co.jp/watabe_gota/
渡部豪太 Instagram
https://www.instagram.com/gotawatabe/

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渡部豪太さん=撮影・伊藤華織
渡部豪太さん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

■演じるということは「こうしてやろう」ではなく、そういう場に「いる」だけ

ーーオオカミは自分のことを「オオカミだ」と思っていない…確かに。

人間にとっての「慮り」「思いやり」「愛情」は、あくまでも人間にとっての価値観であり尺度でしょう。ですから、ガブ役を演じるにあたって私ができることは、「ガブって、一体どういう気持ちでメイと出会ったんだろう。メイと過ごしていく中で、どんな気持ちが芽生えていったんだろう」「メイは今、どういう気持ちになっているんだろう」ということを、日々劇場で感じることです。感じたことを自然のままに受け取って、自然のままにメイに与えていくことしかできないですから。

ーー「こうしよう」と考えるのではなく、その場で「どう感じるか」ということでしょうか。

そもそも役を演じるということは、「こうしてやろう」ということではないと思うんですよ。今回のガブの場合は、たまたま周りが嵐であり、月が綺麗な夜で、緑が生い茂る森。そういう場に「いる」だけだと思うんです。場面が転換していく中で、自分の周りの環境が変わっていく変化を楽しむ。「ここではのびのびと、ただ呼吸することができる」と、前回の初演のときに感じたんです。今回も、さらに深く呼吸できるように、体作りもして臨もうと思っています。

ーー演じるとは、その場に身を置いて、感じたことに反応していくということでしょうか。

はい。もしもそれで足りないものがあったら、みんなで話し合って作り上げていくんです。我々の仕事は、形がないものを作ることです。まずは、役のことを思い、知りながら作りあげることが大事なのではと思っています。

渡部豪太さん=撮影・伊藤華織
渡部豪太さん=撮影・伊藤華織

■初演で「見えていなかった渡部さんを見られた」という言葉をいただいた。嬉しかった

ーー今回に限らず、いつもそのような思いで芝居に臨まれているのでしょうか。

はい。人間を演じる場合でも、今回のように狼を演じるような場合でも、僕の場合、そこは一緒ですね。あ、でも、前回ガブを演じているときに印象的なことがあったんです。

ーーどのようなことでしょうか。

「すごく自由に演じられている初演を拝見しました。今まで見えていなかった渡部さんを見ることができました」という言葉をいただいたんです。とても嬉しかったですね。もしかすると、人間を演じるということには、すごく縛りがあるのかもしれないと思いました。ガブというオオカミを演じることで、その縛りから解き放たれて、のびのびと舞台にいることができたのかもしれません。

ーーガブを演じられたからこそのご経験ですね。

はい。嬉しかったです。この作品が出会わせてくれた、私の新しい部分だったのかもしれないですね。役者として、「いつも同じような演技をしている」と言われるのも、もちろんいいのですが、私の思うところはそこではないんです。「伸びしろ」「引き出し」「振り幅」は、いつも望むところですから。

渡部豪太さん=撮影・伊藤華織
渡部豪太さん=撮影・伊藤華織

■出会いのシーンが重要。あとは石が転がっていくように、ただ転がっていく感覚

ーー今回も、また新しい渡部さんに出会えそうですね。ところで、この『あらしのよるに』の中で、一番印象に残っているシーンはどこでしょうか。

やっぱり、ガブとメイの出会いのシーンですね。チラシのデザインにもなっていますよね。物語の「始まり」の部分は、とても重要なんです。ここが気持ちよく始まれば、あとはまるで石が転がっていくように、ただ転がっていくような感覚がありますから。

ーー最初がとても肝心なのですね。

ゲームをされる方はイメージしやすいかもしれませんが、例えばドラゴンクエストって、真ん中のキャラクターは動かないんです。スーパーマリオも同じですね。マリオって、ジャンプしながら進んでいくんですけれど、あれは、自分が動いているのではなくて、周りの景色が変わっているんですよ。つまり、キャラクターの「位置」は、最後まで変わらないということです。これは、物語の「出だし」も同じだと僕は思うんですよね。

渡部豪太さん=撮影・伊藤華織
渡部豪太さん=撮影・伊藤華織

■最初の一滴をとても丁寧に劇場に落とすと、画用紙の上の水のように広がっていく

ーー場面転換をしてシーンや登場人物がどんどん変わっていっても、幕が開いたときの「始まり」のトーンが、最後まで響くということでしょうか。

はい。ここがうまくいけば、あとは目をつぶっていても、終わりに向かって勝手に進んでいくのが物語だと思います。語り出し、歌い出し、踊り出しなど、どの分野でも出だしってとにかく難しくて重要だと思うんです。「ショー・マスト・ゴー・オン」という言葉の通り、舞台は生きているんです。幕開けは、画用紙の上に水滴を落とすような感覚ですね。最初の一滴をとても丁寧に劇場に落とすと、画用紙の上の水のように、ブワーっと広がっていく。その水の量や色を稽古で丁寧に積み重ねて、本番にみんなで日生劇場の舞台に「いよぉ」って垂らすんですよ。

ーー今、想像すると鳥肌が立ちました。幕が上がる瞬間、最初のシーンは、観客も固唾を呑んでいますね。

お客様も緊張するじゃないですか。何がここから始まるんだろうって。始まりのシーンは、お客様とのしのぎの削り合いというような緊張感が私たち演じる側にもあって、そういう意味でも好きなんです。そして、「出会う」ということでもありますよね。出会うって、やっぱりドキドキするじゃないですか。人は日々、新しいことに出会いたくて、それぞれの一日を始めるんだと思うんですよ。舞台の出だしもそれと同じだと思うんです。今回も楽しみですね。

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