「大事にしてきたことが、意外と間違っていなかった」木下晴香(下)

木下晴香さん

2022年3月から4月に東京・名古屋・大阪・長岡で、音楽劇『夜来香(イエライシャン)ラプソディ』に、李香蘭役で出演される木下晴香さんのインタビュー、後編です。「下」では、2021年12月に上演された『彼女を笑う人がいても』で、初めてストレートプレイに挑戦したこと、その時に、演出の栗山民也さんに教えていただたいたこと、ストレートプレイを経て、今回の作品に出演するにあたって変わったこと、ミュージカルで歌うときに大事にしていること、劇中で「李香蘭」として歌うこと、『彼女を笑う人がいても』で二役演じた際に「声」について感じたこと、演出の河原雅彦さんと役作りの上で話していること、2022年の抱負について話してくださった内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。

木下晴香さん
木下晴香さん

(※このインタビューは、2月初旬に実施しました)

ーー昨年末に木下さんが出演されていた、『彼女を笑う人がいても』を拝見しました。木下さんのことは、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』からずっと拝見しているので、初めてのストレートプレイでどのようなお芝居をされるのだろうと、とても楽しみにしていました。二役されていて、お芝居の強弱がすごいなと思った舞台でした。その時に得られたものとして、今回ご自身の変化を感じられる部分はありますか?

ありがとうございます。嬉しいです。今回『夜来香ラプソディ』の読み合わせのタイミングで、ストレートプレイを経て変わった自分に気付きました。これまでは、お芝居をすることに対してちょっと構えていたといいますか、いつもすごくドキドキしていたんです。

でも今回は、台本にある言葉を、ただその時の感情でといいますか、変に構えないで読み合わせできた自分がいました。歌もダンスもまだまだなのですが、中でもお芝居に対しては、ずっとどこかで自分の中で一番苦手意識を持っていたんです。でも、ちょっと階段を一段登れたのかなと思えた瞬間でした。

ーー「読み合わせの時に、自然と役として話せた」ということでしょうか?

「うまくやらなきゃ」って思いながら演じることがなくなりました。嘘をつかず、ただそこにいるという状態です。『彼女を笑う人がいても』のときに、栗山さんの演出を受ける中で「説明芝居は、一切しなくていい。ただ言葉を信じて届けなさい」と言われたことが、自分の中にすっと入っていったような感じです。台詞を自分の身体を通して発するということが、自分にとって不自然なことではなくなったのだと思います。

ーーその思いを経て、次にミュージカルで歌われるとなると、また違う感覚になりそうですか?

昨年ストレートプレイに挑戦する前までは、「さあ、次作は初のストレートプレイ。違うジャンルのものに挑戦するんだ」という感覚がとても強かったんです。でもいざ稽古が始まってみると、自分がこれまでに大事にしてきたことが、意外と間違っていなかったんだなと思えました。もちろん技術的な面や、ストレートプレイだからこその大変さはたくさんありましたが。

ミュージカルでは、歌でもダンスでも、技術と心とのバランスをいつも探りながら演じているんです。もちろん、技術の向上は表現力に繋がるので大切なのですが、最終的に稽古を積んで技術を上げた後は、「心で演じて」立ちたい、そしてその場にナチュラルにいたいという思いが、これまでも常にありました。

この部分を、栗山さんに鍛えていただきながら、肯定していただけたような気もしています。ミュージカルにも、還元していけたらいいなと思っています。

ーー今回は音楽劇ですが、ミュージカルで歌う時と比べて、感覚の違いなどはいかがですか?

自分の中でも探っているところです。ミュージカルでの歌は、その時の役としての心情を歌っているので、感情を声に乗せて届けるのが正しいことだと思っているのですが、たとえば「夜来香」のように曲として発表されているものを、李香蘭として劇中で歌うというのは、とても新鮮です。李香蘭さんご自身であればどのように歌うだろうかと、映像を拝見して探りながら苦戦しています。

ミュージカルでは役になりきっている状態でその気持ちを歌うので、恥ずかしげもなく何でもできるという気持ちになっちゃうのですが、今回は李香蘭を演じながら、李香蘭として曲を歌うことになりますから…。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、劇中で「李香蘭」として歌うこと、『彼女を笑う人がいても』で二役演じた際に「声」について感じたこと、演出の河原雅彦さんと役作りの上で話していること、2022年の抱負について話してくださった内容やお客さまへのメッセージなどインタビュー後半の全文を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■壮絶な人生が乗っている、李香蘭の歌声。役作りを積み上げてそれを表現したい

■『彼女を笑う人がいても』で二役演じたとき、栗山さんが「声色で分けないでね」と

■オフのシーンなど「誰も知らない部分」の李香蘭を、河原さんと作り上げていく

■「また変わった、よくなった」と思っていただけるよう、2022年も地道に頑張りたい

< 音楽劇『夜来香(イエライシャン)ラプソディ』 >
【東京公演】2022年3月12日(土)~3月27日(日) Bunkamuraシアターコクーン
【愛知公演】2022年4月3月(日) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【大阪公演】2022年4月7日(木)~4月10日(日) サンケイホールブリーゼ
【新潟公演】2022年4月16日(土) 長岡市立劇場 大ホール
公式サイト
https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/cube25thpresents

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※ここから有料会員限定部分です。

■壮絶な人生が乗っている、李香蘭の歌声。役作りを積み上げてそれを表現したい

ーー歌手の方が、ご自身の曲を歌われると、その3〜5分間で、映画やミュージカルを1本観たというくらいに感動することもありますよね。今回の李香蘭の役での歌は、そういうイメージに近いのかなと想像しています。ミュージカルをメインに活動してこられた木下さんが、今回そのような歌い方も習得されたら、更に進化されるのだろうなと期待が高まります。

ありがとうございます。今回、李香蘭という大スターの歌声として説得力を持たせなければいけないですし、身が引き締まる思いです。ご本人の歌声を聴かせていただくと、歌手として美しくキラキラとしているのですが、その中に「うねり」「憂い」などのいろいろな色が混ざっているなと感じています。

それはやはり、彼女の歌声には、壮絶な人生が乗っているということだと思うので、私も役作りを積み上げていけば、そこが私の歌声にも乗ってくるのではと。それを信じて稽古を続けていきたいです。

■『彼女を笑う人がいても』で二役演じたとき、栗山さんが「声色で分けないでね」と

『彼女を笑う人がいても』の時、私は二役演じたのですが、その時に栗山さんが「声色で分けないでね」とおっしゃったんです。「抱えているものが変われば、声って変わるからね」と言ってくださって。実際演じる時には、思考は二役で変えていたのですが、全く声は意識していなかったんです。でも観てくださった方から、「全然違った」と言っていただけました。

ーー確かに、全然違いました。

声には、本人の中に詰まっているものが出るのだなと感じました。役作りの中で李香蘭のピースを集めていき、その結果としての歌声になったらなあと思っています。

■オフのシーンなど「誰も知らない部分」の李香蘭を、河原さんと作り上げていく

ーー「木下晴香」としてではなく、「李香蘭」という役が乗った上で、李香蘭が歌うということですね。新しい姿を拝見できそうで、とても楽しみです。本作の演出の河原さんとは、どのようなお話をされていますか?

毎回「このシーンはどうしよう」と、話し合いをみんなで頻繁に行いながら作っています。今は、河原さんからは全体的なアドバイスをいただくことが多いです。李香蘭が抱えている複雑な部分があるからこそ、オフの部分で楽しむときには、もっと弾けていいし、李香蘭の誰も知らない部分を一緒に作り上げたいとおっしゃってくださっています。今は、役者陣がまずは思うようにやってみて、「その方向で」とGOが出て任せていただいたりしながら、一緒に同じ方向に走っている感じです。もっと「李香蘭」としての私の軸が定まったら、細かいところを見ていただくのだろうと思います。

■「また変わった、よくなった」と思っていただけるよう、2022年も地道に頑張りたい

ーー2022年が始まったところなので、今年の抱負について教えてください。

きちんと一段一段、しっかりと踏みしめながら階段を登っていきたいと思っています。コロナ禍の中でも、自分の中で大きな出会いがたくさんありました。新しい先生、ストレートプレイや、この作品との出会いもそうです。技術面の努力もしながら、舞台に立たせていただいた時に毎回お客様に「また変わったな、またよくなったな」と思っていただけるように、地道に頑張りたいと思います。

ーーその進化を、楽しみにしています。では最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

「音楽の力」「音楽のエネルギー」「音楽が生む、国境を超える、戦争をも超える絆」という、このご時世だからこそ響くものが詰まった作品だと思います。エンターテインメントを愛するみなさまが観に来てくださることが、私たちの力にいつもなっています。この作品は特に、そんなみなさまにエネルギーをいただけたら、音楽を愛するみんなで作り上げるような、もっと大きな作品になると思いますので、ぜひたくさん観にいらしていただきたいです。

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“「大事にしてきたことが、意外と間違っていなかった」木下晴香(下)” への 5 件のフィードバック

  1. りい より:

    木下晴香さんのインタビュー、前半に引き続き後半も楽しく読ませていただきました!

    晴香ちゃんと言えば、ミュージカルの人という認識だったので、「彼女を笑う人がいても」への出演は見る側にとっても大変印象的でした。

    私は晴香ちゃんの声がとても好きで、台詞の時も歌の時もそれぞれ魅力を持っているな、素敵だなと常々思っているのですが、ストレートプレイでの「声」、ミュージカルでの「声」についてご本人が語ってくれるというのは、なんて贅沢なインタビューなんだ!と思わずにはいられませんでした。

    有料部分の晴香ちゃんのコメント、なんて真摯な役者さんなのでしょう、、ロミジュリからのファンなのですが、ますます彼女のことを応援したくなりました。
    素敵なインタビューをどうもありがとうございました!

  2. りーの より:

    東京で観劇しました、作品自体も木下さんの歌声も本当に良くて、今でも夜来香が耳に残っています、Blu-rayも予約しようと思います。インタビューからも感じられる通り、ひたむきに努力を続ける木下さんを応援しています!

  3. moe より:

    白洲さんの記事の後に拝読させて頂きました。木下さんの記事でも今回の舞台への想像が膨らみました!観に行けない者にとってもこのような記事はとても嬉しいです!ありがとうございます!今回の舞台は現在の世界情勢とも重なる所があり、心に響くものになるだろうと思いました。
    木下さんが李香蘭として歌う歌、生で聴きたかったです!無事に幕が上がり、観客の皆様のエネルギーを浴びて最高の舞台になりますように。

  4. ゆきち より:

    どんどんと進化していく木下晴香さん。音楽劇、ストレートプレイ、ミュージカル、様々な分野のステージでの経験を積まれて、益々素敵なお姿を拝見できるのが楽しみです。
    まずは無事の開幕、そして完走を祈っています。

  5. あや より:

    李香蘭として歌われる晴香ちゃんの歌声とても楽しみです♪
    私自身も時代背景などを予習してから観劇したいと思います
    無事に開幕できることお祈りしております

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