「“ひりひり”しながら必死の稽古場。4日目に通しも」、鈴木勝吾・梅津瑞樹(下)

鈴木勝吾さん(左)と梅津瑞樹さん(右)=撮影・NORI

2022年6月10日(金)から19日(日)まで、東京のよみうり大手町ホールで上演される『ひりひりとひとり』に出演する、工藤春男役の鈴木勝吾さんと、ぴーちゃん役の梅津瑞樹さんのインタビュー後編です。「下」では、稽古をしながら感じること、石丸さち子さんの演出のこと、ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇」で共演した時のことを踏まえながら今回お互いについて感じていることについて話してくださった内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。

鈴木勝吾さん(左)と梅津瑞樹さん(右)=撮影・NORI
鈴木勝吾さん(左)と梅津瑞樹さん(右)=撮影・NORI

――お稽古は、いかがですか?

鈴木:良い意味で殺伐としてきました。梅ちゃんが、ちゃんと最初から全力で飛ばしてきてくれて。

梅津:もう既に稽古場が、高速道路を走っているみたいな感じです。

鈴木:「行く温度」を感じたから、ですね。事前に石丸さんから「時間がない。もうガツガツとりあえず進みたい」というのを聞いていたので。稽古期間が1ヶ月ないぐらいなのに、やることは結構ハードで、これを一つの作品にまとめるのは難しいだろうなと。だからそういう面持ちで行って、4日目に一応通しまでやりました。

――稽古4日目に、通しをされたのですか!?

鈴木:粗々通しですね。もちろん全然バラバラだし、細かいところも調整せずに「とりあえずやってみる」ということを。それぞれに与えられたタスクなだけに、みんな「ひりひり」しながら、とりあえず必死でやりました(笑)。

――春男にとって、「ぴーちゃん」は自分の人格のひとつで、一方「ぴーちゃん」にとって、「ハルオ」は主人格です。その関係性を演じるに当たり、意識されていることはありますか?

鈴木:僕(春男)にとっては「向き合いたくない自分」なんですが、「ぴーちゃん」という役が存在する以上、自分の中にあるということも明確に自覚しています。だから「西郷さん」にしても、「ぴーちゃん」にしても、どちらも自分の中にいるというのは、よくあることなのかなと思うんです。

例えば、「そんなことを思う自分は嫌だ」と自分の正義感と葛藤して、自分の人格形成に関わってしまうようなことを思うこともあるじゃないですか。「そう思ってしまうこと」を受け入れるのに、人はすごく時間がかかるんだなと思ったので、2人に対して稽古場では、めちゃくちゃ向かっていっているんです。とにかく「西郷さん」と「ぴーちゃん」に対してはもう、「お前らッ!」って(笑)。それを2人は、何か真剣というよりは、たゆたうように…。

梅津:逃れる(笑)。

鈴木:だから余計腹立つというか(笑)。でも逆に「そんなに反抗しても、要るものは要るよ」と言われているような…。僕からは2人に対してそんなふうに思っています。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、石丸さち子さんの演出のこと、ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇」で共演した時のことを踏まえながら今回お互いについて感じていることについて話してくださった内容と、お客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■梅津:「ハルオ」が怒ってくれるほど、「ぴーちゃん」は楽しくてしょうがない

■鈴木:石丸さんの中にある「真剣に向き合っていれば正解の1つ」という正義

■鈴木:「ひりひり」しても「今」を大切に繋げていくことが、いつか何かに繋がる

■梅津:『薄桜鬼』で揺さぶってくれた勝吾さんを、揺さぶり返せるのが楽しみ

<『ひりひりとひとり』>
【東京公演】2022年6月10日(金)~19日(日)よみうり大手町ホール
公式サイト
https://s-ist-stage.com

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鈴木勝吾さん(右)と梅津瑞樹さん(左)=撮影・NORI
鈴木勝吾さん(右)と梅津瑞樹さん(左)=撮影・NORI

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■梅津:「ハルオ」が怒ってくれるほど、「ぴーちゃん」は楽しくてしょうがない

梅津:「ハルオ」が怒れば、怒ってくれるほど、こちらも楽しくてしょうがないです(笑)。

鈴木:そうだね(笑)。

梅津:こちらとしては、「ソレだよー! もっともっと回転しろ!」みたいな感じです。とあるシーンをやっていて気がついたことがあって。ものすごく感動的に、うまくお話がまとまった裏で、僕ら(ぴーちゃんと西郷さん)がちょっとニヒルなことを言っているんですね。「いやコレ、僕らがこう言っているってことは、今、前でやってる感動的な芝居の中のどこかに、僕らのこの感情があるんだ」と思って、つまり「春男」の中に(笑)。「なんか面白いな」と思いながらやっていましたね。

普通、みんなまとまったときは、「よかったよかった、なんだかんだ言っても、まとまってよかったよ」となるところで、逆に「イヤイヤ」みたいな(笑)。例えば恋人とメチャクチャ喧嘩した後に仲直りして、「本当に仲直りできて良かった」と思いつつも、「またこんなこと起こるんじゃないか」とか、「明日には多分、全部さっぱり忘れてんだろうな」とか、いろいろなものが内在していているのかなと。人間って「あー、そうだよな」って感じです。

――「よかったね!」と、笑顔で拍手をしながらも、同時にどこか冷静に見ている自分がいる、というのは、多分みんなありそうですね。

鈴木:そうなんですよね。だから “博愛と現実で人は迷う” んですよ。「この人のことを好きだから結婚する」という女子がいて、でも絶対、夫になる人の年収を気にしている自分っているわけじゃないですか。

梅津:うーん(笑)。

鈴木:「関係ないんです」って言い切っているけど、心のどこかで引っかかっているのが大半じゃないですか。「私が稼ぐんで、関係ない」という人も中にはいると思いますよ。でも普通、お金に対する価値観は持っていると思うし、どこまでいっても自分の影からは逃れられないから、逃れるためには、暗闇に入るしかない。日の当たる場所にいる限り、どこかしら自分の影は必ず付きまとってくるから、その影とどう付き合っていくかというようなことでもあるなと。

梅津:「私が稼ぐんで」って言ってる人の夫の、心の中に「ぴーちゃん」が生まれるんですよ(笑)。

鈴木:ああ!そうだね(笑)。

梅津瑞樹さん=撮影・NORI
梅津瑞樹さん=撮影・NORI

■鈴木:石丸さんの中にある「真剣に向き合っていれば正解の1つ」という正義

――石丸さんから、役に対するオーダーはありましたか?

鈴木:僕は今のところあんまりなくて。

梅津:僕もことさら何かは…。

鈴木:「このポイントはこれを見せて欲しい」くらいです。多分稽古の最後の方であるんだろうと思っています。「賢」と「夏子」はあったね。

梅津:はい。

鈴木:あと「西郷さん」も。でも「ぴーちゃん」と「春男」はあんまりない感じがある。

梅津:もう本当に自由に…。

鈴木:泳がされてる(笑)。

鈴木:真剣に向き合っていれば、それが正解の1つであるという正義が、石丸さんの中にあるんです。もちろん「このキャラクターは、絶対こう言って欲しい」ということもありますが、今、梅津がやる「ぴーちゃん」と俺がやる「春男」に対して、まずはその可能性や広がりを見たいと言ってくださる演出家なんですね。だから今は、持てる銃をポケットから全部出して、2人で撃ちまくっている最中なんです(笑)。

梅津:(笑)。

鈴木:そして、弾切れになったときに「じゃあ、この銃とこの銃捨てて、この銃にこの弾装填して」っていう演出が来るんだろうと思っています。

鈴木勝吾さん=撮影・NORI
鈴木勝吾さん=撮影・NORI

■鈴木:「ひりひり」しても「今」を大切に繋げていくことが、いつか何かに繋がる

――最後に、お客様に向けてのメッセージをお願いします。

鈴木:ミュージカル『薄桜鬼』という、既存のすごく出来上がった世界の中で梅ちゃんと出会いました。その作品は、真ん中がすごく大変なのは周知の通りで、舞台上にずっと居るし、動くし、「千鶴」もずっと一緒だし。女の子がカンパニーに1人いるってことは、やっぱりその相手役だから、自分が何とかしなきゃとかも思うだろうし、そんな中で、梅ちゃんはずっと頑張って踏ん張っていた…(笑)。

梅津:はははは(笑)。

鈴木:足だけを踏み外さないで、ずっと前を見ていた梅津瑞樹の存在が、以前から作品に関わって戻ってきた身としては、すごく感動的でした。変わらない何かというものを、年齢関係なく、今ここで繋ごうとしている俳優がいることに感銘を受けたんです。そして今、自分がやりたくて、自分の繋がりから生まれてきた作品でまた出会って、仲間として、上下ではなく並列で、今という時間を共有できていることがすごく嬉しいんです。

お客さまの中にもきっと、「今がつらい、悔しい」ということはいっぱいあって、どうしたらいいか悩むこともすごくあると思うんです。でも横を見てみたら、自分と繋がっている手がゼロじゃない。だから、繋がっているその人のことを尊敬したり、その人がいてくれることのありがたさを感じたり、その人が放っている、ちょっとした熱を感じ取れる人間になることがすごく大事だと思っているんです。

『ひりひりとひとり』のタイトルの通り、「ひりひり」しているのはみんなそうだから、安心するということでもないですが、「今」を大切に繋げていくことが、いつか何かに繋がると思います。どんな思いで劇場に来ていただけるかわかりませんが、後ろを見たくなるけど、横にあるものを感じて、そこにいる人を大事にできたら、次の一歩があるんじゃないか、そう思っていただけたら幸いですし、嬉しいです。

観る側にとってものすごくハードな作品ですが、さっきも言った通り、特殊なことではなく普遍的なことでもあるので、心をオープンにして観てくださったら、いろんなものが届くだろうと感じています。僕たちの今を、劇場で感じていただけたら嬉しいです。

鈴木勝吾さん=撮影・NORI
鈴木勝吾さん=撮影・NORI

■梅津:『薄桜鬼』で揺さぶってくれた勝吾さんを、揺さぶり返せるのが楽しみ

梅津:『薄桜鬼』の話で言うと、役柄的に僕は相手に「ぶつける」ということがすごく多かったんです。勝吾さんの役と会話をするシーンが多かったというわけでもないのですが、作品の中で出会う度に、必ず殺陣になるんです。

鈴木:うん。

梅津:絶対に戦うのですが、戦いの中で僕が何かをぶつけると、勝吾さんはそれに揺さぶられた分だけちゃんと倍にして、ものすごく返してくるという印象が強くありました。だから今回はその逆で…(笑)。

鈴木:そうだね。わかるよ。

梅津:「僕が今度は揺さぶる番だぞ!」というのも、すごく楽しみなんです。あれだけ自分を揺さぶってくれた人を、今度は揺さぶり返せるっていう(笑)。

鈴木:梅ちゃんの合流初日からそんな感じはありました(笑)。

梅津:だから本当にそういった点でもすごく楽しめると思いますし、いかに勝吾さんが、“破壊と再生を繰り返すか” という話なので、ぜひぜひ劇場に生で観に来ていただければと思います。

梅津瑞樹さん=撮影・NORI
梅津瑞樹さん=撮影・NORI

※鈴木勝吾さんと梅津瑞樹さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは7月9日(土)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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“「“ひりひり”しながら必死の稽古場。4日目に通しも」、鈴木勝吾・梅津瑞樹(下)” への 6 件のフィードバック

  1. より:

    ひりひりとひとりのDVD発売を聞き、そういえば素敵なインタビュー記事があったなと思い出し、再度読ませていただきました。
    舞台のシーンを思い出しながら読めてとても楽しませていただきました。ありがとうございました!

  2. まい より:

    インタビューを通して「ひりひりとひとり」がどのように生まれたのか、稽古の様子、お二人の関係性などもとてもよく分かり素晴らしい記事でした。また梅津さんが出演を決めたきっかけのお話が特に興味深く、親友役よりも色んな役を表現出来る二重人格のぴーちゃんを自ら選ばれたというのはとても梅津さんらしい思考だと感じました。劇場で観る時の更なる楽しみの一助になりました。ありがとうございました。

  3. ふじ より:

    昨日今日と観劇させて頂きました。色々と考えられざわざわひりひりする作品でした。梅津さんの自由なぴーちゃんに胸が締め付けられました。

  4. まめゆき より:

    今の自分がこの作品を観て何を感じるのか何を受け取るのか、自分自身楽しみにしています。
    千秋楽まで無事に駆け抜けられますよう祈っています!

  5. きき より:

    2年前からいつか上演されることを願っておりました。このタイミングでの深いインタビューを拝読し、ますます観劇が楽しみになりました。
    こちらでは以前から鈴木さんの記事を読んでおりましたので、実は密かにお待ちしておりました。
    濃密な記事と素敵なお写真をありがとうございます!

  6. エル より:

    (上)に続き、(下)も大変興味深く拝読いたしました。
    お2人が以前共演された作品を観劇させていただいた際、ぶつあり合い響き合うような熱を客席でも感じておりましたので、役での立場が逆転される今回の公演では、どのようなお芝居、劇場での空気を感じることが出来るのか、更に楽しみになりました。
    作品とお芝居に対するお2人の熱で、拝読するだけでひりひりしております(笑)。本日からの公演を楽しみに、また観劇後に記事を読み返させていただきたいと思います。素敵な記事をありがとうございました!

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