来た観た書いた:(3)「死ぬっ程大変!」、『光射す場所へ歩く君たちへ』山本・三上対談(下)

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月
連載:来た観た書いた(3)

6月8日に開幕する「AUBE GIRL’S STAGE 第1回公演『光射す場所へ歩く君たちへ』」脚本担当の山本夢人さんと、演出担当の三上陽永さんの対談インタビュー、「下」をお届けします。(「上」は⇒こちら

三上陽永さん=撮影・達花和月

三上陽永さん=撮影・達花和月

――では、プロジェクトの土台のお話が聞けましたので、今…キャスト26名が合流して、お稽古が始まって一週間近く経ちますが、どんな感じですか?という大振りな質問をここで投げかけてみていいでしょうか?

三上:死ぬっ程大変ですよ! 26人ですよ。26人のWキャストで、やっぱり規模的にも…具体的な話をすると、まず稽古場も、もっと広くないと、ずっと全体ではとれないし。というか、そういう事も多分手探りでこれからやっていかないといけないんですよ。「やっぱこれだったらもっと、必要だね」とか、逆に「減らした方がいいね」っていうのを手探りでやっていく、とは思っているので、そこはいいんですけど、じゃ、どうか?っていったら、大変は大変です。それはやっぱり、(キャスト全員の)予定も中々合わないから、(稽古参加の)NGも出てくるし。言ってしまえば、役者のレベルも、すごく経験のある子も居れば、素材としては光るけれども、あまり経験が無いって子も居ますし。じゃあその経験の浅い子に教えてる時には、経験ある子は、何してればいいの?とか。26人全員、凄く有り難い事に皆やる気があるんですよね、今回。ものすごく。で、物凄くやる気があるって事は、26人のベクトルがあって!。

山本:ははははは。

三上:それを受け止めるっていうのは…。だから演助(演出助手)で入ってる杉浦とかも、もう、ヒーヒー言ってます。

山本:僕もそうなんですけど、(三上さんの演出は)例えば、「このAという役者さんは、こういうところが良いからこうしよう。Wキャストで同じ配役のBという役者さんは、こっちの面で良いからこうしよう。」っていって、そういうオーダーメイドな演出をするんですよ。そうすると、めっちゃ大変で!だから「俺について来い!」って言うだけの演出をする人が多いんだけど、でもそれは簡単だけれども「…ウン…」って言うところで。26人、それぞれの導き方を全部創り上げていくっていう事をやっているんで、それが凄いと思います。

■『役者の個性』は無限に面白いなと思います…大変ですけど!

――Wキャストで同じ脚本を使っているけれども、演じる役者の特性によって演出を変えていらっしゃると!

山本:そう。

三上:それ、でも僕凄く勉強になってて、苦しいんですけどね。もう、毎日多分「あと一週間、一週間あれば」って思いながらやってるんですけど。苦しいんですけど、ただすごい面白いのは、やっぱりこれだけ役者が違うと、芝居の見え方も違うし、関係性も違うし、ってなった時に、演劇の面白さをすごく僕は感じたんですね。普通、「代わりは誰でも居る」と言われつつも「でも、あなたの代わりは、やっぱりあなた以外には居ない」って言うのが。この人、この役者さんのこの『個性を活かす』っていう風な気持ちは(初めは)無いんですけれども、自然とやっぱり「役者Aさんと役者Bさんの二人の関係だと、こっちの同じW(キャスト)の役者Cさんと役者Dさんの関係と同じ訳が無い!」っていう方に自然に流れていく。そうすると、時間も無いし、ホントはそんな事したく無いのに、やっぱりそういう風に流れていくっていうのは、その『役者の個性』っていうのは、なんかすごく無限に面白いなとは思います。…大変ですけど! 首を絞めてますけど。

山本夢人さん=撮影・達花和月

山本夢人さん=撮影・達花和月

■「今回駄目だったら終わろう」ではなく、次もう1回、来年も3回、って

――お話を伺って、役者のテイストよって演出が変わるのであれば、Wキャストどっちも観たいな、という気になってきました。

山本:ふふふふふ。

三上:だから『Wキャストの意味』ですよ!

三上:普通、Wキャストでも演出は同じだから、二人の役者が頑張って同じ事を演るんですよ。それがすごい嫌で。でも普通Wキャストってそうなんです。だからそれを200%裏切りたい!もし(この作品を)間違って2回観ちゃった、って人が居たとしたら。「あれ?同じ作品か?コレ?」っていう感想が出る様にしたい。その代わり、すごく際どいところです。もうホント間に合うのかどうか、っていうとこもあるし、こんなに、絶対に成功目指しますけど、ただ、もし敗北したら。

三上:言いたくないですけど(笑)。でも、敗北するんだったらもう、ボロクソに敗北したいです。もう、皆にもやるとこまでやって貰って。だったらもう、皆も「悔しーーーっ!!!」って言う。だから、それが「今回駄目だったら終わろう」というのではなくて、もうガンとして今、(山本さんが)仰ってるみたいに、次もう1回やります。来年も3回やります、っていう。もう死ぬ気でいるので。

三上:それがなんか、そこは信用できるな、っていう。だから、勿論良い作品創る為にぶつかりもしますしね。でもその位、お互い血を流しながら、で、皆にも血を流して貰いながら、やれたらなぁとは思いますけどね。熱すぎて困るでしょ?

■オレノグラフィティは、音楽が役者にどれ程大事か解ってる

――いいですねー! では、その熱い想いを支えて下さる『三上組』の強力なスタッフについても少しお願いします。音楽は、オレノグラフィティさん(『劇団鹿殺し』所属)。

三上:僕は、オレノグラフィティはもう絶大な信頼を置いていて、オレノの創る曲も素晴らしくて、それはもうお客さんも知ってるんですけど、僕がでも本当に素晴らしいって思うのは、ホントに演出家に寄り添ってくれるんですよ。

――おぉ!

三上:もう、「僕の音楽がこういう音楽だから、いいでしょ?」っていう風な「僕はこういう価値観で創ったんで、これでいって下さい」っていうのが一切無いんです。例えば欲しい曲のイメージを、僕とかはすごく抽象的な言い方でしか説明出来ないんです。でもそれを僕の抽象的な言葉を、更に彼は彼で抽象的に汲み取って、彼の中のイメージ映像で僕に伝えて、っていう風なキャッチボールを、ここまで丁寧にしてくれるの?って位してくれる。

――嬉しいですね。

三上:『ぽこぽこクラブ』でお願いした時もそうでした。初日開いた時に「ごめんなさい、ちょっとここだけやっぱり全体通したの観たら、変えたい」って言って、その場で変えてくれたりとかするんですよ! それ位音楽に対して凄い情熱的な人だし、やっぱり彼は『役者』なので、音楽が役者にとってどれ程大事か解ってるから、そういう意味でも絶大な信頼を置いてます。

■振付の下司は天才、これからどんどん上に行く人

――振付の下司尚実さん(『泥棒対策ライト』主宰)については?

三上:振付の下司に関しては、僕はもう天才って言ってるんですけど、もう才能溢れる方で、僕の範疇じゃないところから弾が飛んでくるし。だから下司と組んでやると、僕が、違う世界へ連れていって貰えるから、そういう意味で、やっぱり下司が居てくれるだけで芝居自体も深く広がる。イヤ、彼女は天才ですよ。もう、絶対これからどんどん上に行く人だと思います。

――音楽、振付に関しては、山本さんからも何かオーダーがあったのでしょうか?

山本:音楽は今回創りたいな、っていうのは言ってて「やっぱオレノくんかなー」みたいな事はちょっと言ったかも。でも基本的には(三上さんに)任せてた、という感じで。

三上:そう(山本さんは)もう絶大な信頼を感じてくれてて、僕が薦めるスタッフを、「三上くんがいいんだったら、いいよ」って言ってくれるので。なので、もうそれに甘えて。でも彼等は一流だと思いますよ、僕は。

『光射す場所へ歩く君たちへ』に出演する夏組と宙組のみなさん

『光射す場所へ歩く君たちへ』に出演する夏組と宙組のみなさん

<AUBE GIRL’S STAGE第1回公演『光射す場所へ歩く君たちへ』>
【東京公演】2016年6月8日(水)~12日(日) テアトルBONBON
「AUBE GIRL’S STAGEオフィシャルサイト」は ⇒http://www.aube-girlsstage.com/next.html
チケットのウェブ予約は ⇒http://ticket.corich.jp/apply/71526/

<山本夢人>(やまもと・ゆめと) 演出家, 脚本家。演劇ユニット「レッドカンパニー」主宰。2006年より「㈱先駆舎」主催の即興イベント「アクトリーグ」に演出家として参加。2008年より2010年まで「㈱先駆舎」の演出家兼プロデューサーとして活動。2009年より、「JCM」(ジャパンクリエイティブマネージメント)に所属。2011年に演劇ユニット「レッドカンパニー」を立ち上げる。

<三上陽永>(みかみ・ようえい) 俳優。「サードステージ」所属。舞台をメインにテレビ、ラジオへの出演、近年では自ら演出も手掛ける。2008年より鴻上尚史主宰「虚構の劇団」に劇団員として参加。2011年よりNHK Eテレ「できた できた できた」健康・からだ編にレギュラー出演。2012年に「虚構の劇団」メンバーの杉浦一輝、渡辺芳博の3名で演劇ユニット「ぽこぽこクラブ」を立ち上げる。

<関連サイト>
⇒ 「光射す場所へ歩く君たちへ」のページ
⇒ AUBE GIRL’S STAGEオフィシャルサイト
⇒ AUBE GIRL’S STAGEのTwitter
⇒ 「光射す場所へ歩く君たちへ」出演者ブログ
⇒ 演劇ユニットレッドカンパニー
⇒ 虚構の劇団
⇒ ぽこぽこクラブ
⇒ 劇団鹿殺し
⇒ 泥棒対策ライト

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山本夢人さん三上陽永さんのサイン色紙と写真1枚をセットにして、抽選でアイデアニュース有料会員(月額300円)3名さまにプレゼントします。応募は以下のフォームからお願いします。応募の際に記入いただいたメッセージは、コメントのページ(⇒こちら)に掲載します。応募締め切りは6月21日(火)。当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。(このプレゼント募集は終了しました。応募くださったみなさま、ありがとうございました。)

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■(若い子達が)観た事が無いディープな『小劇場』風なものも入れて

■「演劇だから出来るんだよね?」っていう事を(若い人達に)伝えたい

■小劇場を牽引してきたベテランのスタッフの方が名前を連ねて

■出演者達がこの舞台にかける気持ちを楽しみに観て欲しい

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■(若い子達が)観た事が無いディープな『小劇場』風なものも入れて

――絶大な信頼の連鎖ですね!今回の『光射す場所へ歩く君たちへ』はどんな感じの作品になるのでしょう?お芝居と、ダンス?

三上:そうですね、僕が演出するっていうのは、やっぱりその、少なからず鴻上(鴻上尚史さん)の影響も受けてますし、『演劇を演劇として遊ぶ』事もすごく好きなので、だから、演劇を演劇として遊ぶ、しかも若い子達が多分解からない方法で、っていうのがひとつあります。

――若い人達が解らない方法で?

三上:(若い子達が)あんまり観た事無いだろうな、っていうか、ディープな『小劇場』じゃないと解んないだろうな、ていう風なものも入れていきたいな、というのもありますし。でも、山本さんが最初から描きたいって仰っている、今の若者達を描くのを絶対に入れたいし、そこの良いとこ取りができたらな、とは思っています。だから、完全なるストレート(プレイ)でやろうと思ったら出来るんですけど、でも完全なるストレートだったら、俺、演出しない方がいいなー、とも思うし。だったら、お客さんへの、というのもありますけど、僕としてはやっぱり26人へのアプローチとして、「ちょっとさぁ、舞台で『遊んで』みない?」っていうのは常にあります。そう、だから、皆の『価値観を壊す』というか。「なんで急にこんな事になるんですか?」「今、これはどういう状況ですか?」っていう風な質問が一杯飛んできますし。

■「演劇だから出来るんだよね?」っていう事を(若い人達に)伝えたい

――それは、役者さん達からですか?

三上:そうそう。『ぽこぽこクラブ』でも、急に回想が入って来たりとか、よくわかんない壁が動いてみたりとか。でも、「演劇だから出来るんだよね?」っていう事を、(若い人達に)伝えたい。演劇をもっと好きになってもらいたい。26人「好き」になって貰って、それを観に来るお客さん達も、やっぱりまた、いつもとは客層が違うと思うから、そういう人達にも、「演劇ってこんな『遊び』があるもんなんだ!」って感じて貰えたら。だから、すごくその・・・演劇を好きになって貰いたいな、っていう気持ちは、ちょっと強いかもしれない。

――『演劇』で出来る可能性で、皆の既存の価値観に殴り込みをかける!みたいなイメージが浮かびました。

三上:あ!でもそうです。でもだからこそ、山本さんは僕の事を指名してくれたのかな、とも思いますし。何度も僕の演出する作品も観てくれてますし。やっぱり、今迄のこういうプロジェクトとは違う色を出す、じゃあなにを出すか?って言ったら、そこかなって。こういう女の子達を集めた舞台で、ちゃんと『演劇で遊ぼう』っていうのを、僕はあんまり見た事なくて。

■小劇場を牽引してきたベテランのスタッフの方が名前を連ねて

――実は、初めて『若い女の子ばかりを集めた舞台』という企画を見た時は、よくある、キラキラふわっと可愛い感じの路線をやるのかな?と。

三上:そうそうそう。

――一番最初はそう思いました(笑)。でも、その後出てきた情報と、今日のお話の内容を聞くと、何でしょう、エネルギッシュで、超硬派!というか…。

三上:チラシが違和感あるでしょ?「あー、女の子だけでこんなのやるんだなー」って、(チラシを)ふっと見てみると、名前が出てくるのが小劇場の奴ばっかだというか。照明とか音響は、僕は『風神』『雷神』って呼んでるんですけど。小劇場を牽引してきたベテランのスタッフの方が名前を連ねていたりとか。

――そうですよね!

三上:だから、なんかそこに、シレーッと。こう、若い最近の流れに乗ったかと思って、観てみたら「アレっ?」という違和感、というか。

――そういう意味では、お客さんにショックを与える事が出来る…。

三上:そうそうそう!『ショック』を与えたい。『違和感』を与えたい。今回の第1回の目的は、もう『異物感』をちゃんと与えられるかどうかっていう。

■出演者達がこの舞台にかける気持ちを楽しみに観て欲しい

――世間の流行の、使えるモノは使うけれど、そこには決して埋もれないぞ!という気迫を感じました。それでは、お名残惜しいのですが、最後に一言ずつお願いします。

三上:俺はもう喋ったからいいや!

山本:スタッフとか、僕等の想いは、大分話したと思うので、でも何より、出演者達がやっぱり主役ではありますので、この子達がどうやってこの舞台に懸けて、どういった、本番で、演技で、最後のっかるのか、という気持ちが、その後ろ、向こうに見えるのか、なんかそういうのを楽しみに、是非お客様には観て欲しいなーっていう風に思います。オーディションの時からもう、「絶対この舞台には出たい!」っていうエネルギーを凄く感じていて、その中から選ばれた26人なので、やっぱりそこがすごく輝いた舞台になるんじゃないかな、と僕は思っています。

――そこまで聞いちゃうと全8回公演、Wキャストで実質4回ずつというのは勿体無い気がします。

山本:そうですね。もっとやりたい。

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月

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