来た観た書いた:(2)AUBE GIRL’S STAGE『光射す場所へ歩く君たちへ』、山本夢人・三上陽永対談(上)

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月
連載:来た観た書いた(2)

6月8日(水)から6月12日(日)まで、東京・中野のテアトルBONBONで、「夏組」「空組」の2チーム総勢26名の出演者全員が女性という「AUBE GIRL’S STAGE第1回公演『光射す場所へ歩く君たちへ』」が上演されます。この舞台の脚本を担当する山本夢人さん(演劇ユニットレッドカンパニー)と、演出の三上陽永さん(虚構の劇団)のお二人に、『AUBE GIRL’S STAGE』というプロジェクトについて、今回の作品について、お話ししていただきました。

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月

――出演者のアメブロを拝見しました。キャスト26名の自己紹介の段階で、既に色んな花が咲いていますね。

山本:そうですね。

三上:個性豊かです。

――「AUBE GIRL’S STAGE」という企画は、山本さんがお一人で考えられたのですか?

山本:僕がまず1回目の公演をどうするか?というのを、2年位前から考えてまして、その段階から彼(三上さん)に話をしていて、…ですね。

――ホームページやフライヤーを拝見して、今迄に無い色の企画だと感じました。

二人:確かに。

■苦労があって花が咲く、その過程にもドラマがある。そういう風に創って行きたい

――女性ばかり26人、しかも、これから世に出ようという若い女優を集めてやろうと思われたきっかけは何でしょう?

山本:まず、お客さんに楽しんで貰うための『ショーアップ』という事がちょっとありまして、それと、自分の書いている作品がそうだったというのもあるんですけど、育てるっていうのはちょっとおこがましいですけど、新しいこれからの若い役者を集めてやりたくて。そういう若い人達がこう、何かと戦ったり何か壁にぶつかったり、でもそれを何とかクリアしていこうとする、そういうものをみんな見たがってるのかなーと思ってまして。そういうのにもっと団体としてドラマを載せていくと言いますか、そういう形にもっとしていけばいいのかなというのと、一方別の角度から、演劇ではなくてミュージックシーンの方でアイドルが一杯いると思うんですけど、例えばAKBだったら『総選挙』とか、ここまで頑張ってきて苦労があって、そしてやっと花が咲くんだよ、みたいな、そういうところにファンの方は「あーいいなー」って思ってるなーって感じていまして。

――過程をみせる、という事でしょうか?明るいスポットライトがパッと当たる位置に来るまでの、その過程を。

山本:そうですね。それをもっと演劇として、団体として、ショーとして見せられないか、そういうのをお客さんに楽しんで貰えないか?というのがまずひとつありますね。ちょっと、そういう言い方をすると、お客さんも構えられるかも知れないからアレなんですけど。そういうドラマが、団体としてもドラマがある。創っている過程でもドラマがある。そういう風に創って行きたいなと思ってますね。(隣で聞いていた三上さんに向かって)・・・なんか、言い方悪かったらフォローして?。

三上:大丈夫です!

■「燻ってるけど良いんだよな」と思える人達を引き上げようと

――まず、お客さんにショーアップした、所謂花が咲くまでの過程を演劇として観てもらうという方向性と、これからの若い役者を育て、活躍できる機会を創りたいという想いが「AUBE GIRL’S STAGE」を誕生させたのですね。

山本:そうですね。そこも多分我々の強みと言いますか、僕がやってきた活動というのが、割と若い女の子達の事務所を教えたりとか、そういうので下積みを7・8年していたものですから、その強みももっと生かして、というのもあったかも知れません。僕のやり方っていうのが、割とこう、伸ばして伸ばして、褒めて褒めて、っていうやり方なんですけど、そのやり方に対して賛同してくれる人とやりたいなと思ったんですけど、それがやっぱり彼(三上さん)だったんですね。

――では、山本さんがこの企画をやろうと思われた時には、既に『三上さんの演出で』というのが頭にあったのですか?

山本:そうでしたね。最初から決め打ちでした。

三上:有り難いです。僕が山本さんと知り合ったきっかけも、即興芝居『アクトリーグ』に参加した時、本選リーグに上がる前のチームの子達を(山本さんが)育てる方だったんですよ。そこで、僕は即興芝居が大好きだったんですけど、ちゃんと即興芝居を習う機会が無くて。大学で先輩に教えて貰った位で。そこで色々教えて貰ったのが山本さんで。やっぱり、若い人を育てるっていう事に対して、物凄く情熱を持たれている方だなと感じています。で、それに対して、さっき山本さんがご自分でも仰っていた『過程』。色んな苦労をして、色んな経験をしてきた女の子達を使うって仰っていましたけど、僕はやっぱり、活躍の機会が与えられなくて悶々としている子達を、何とか引き上げようと、メチャメチャ苦労している方だと思うんです。この活躍の機会というのももっと上手いやり方は一杯あって、それこそ今の流れに乗って、もっとイケメンの子達だったりとか、それこそこの企画だってもっともっと違うやり方をすれば、もっと楽に、って言ったらおかしいですけど、今の商業的なベースに乗れるとは思うんですけど、敢えてそれをしない。だから「燻ってるけど、でもこの子良いんだよな」と、思える人達を、ちゃんと引き上げようとしている人だと思っています。だから、僕も『ぽこぽこクラブ(2012年『虚構の劇団』所属の三上陽永さん、杉浦一輝さん、渡辺芳博さんの3名で立ち上げたユニット。2015年に劇団外から新たに坂本健一さん、高橋玄太さんの2名を迎え、現在5名で活動中)』とかで、演出をやっていますけど、役者では鴻上(尚史)さんとこでやってますけど、『演出家』としては無名ですし。山本さんは、こう、確固たるものがあって僕を応援してくれてるんですけど、そういう、まぁ、得体の知れない演出に「やってくれ」って事自体が相当の冒険だと思いますよ。

三上:だけど冷静に考えてみると、まぁホントに有り得ない事で。僕はこのプロジェクトが2・3年越しで相当苦労しているのを見ているんです。だから、ね、色々ありましたね。ホントはもっと早く立ち上がる筈だったのが、それが立ち上げられない色んな事情とか、俺は正に見てて。

山本:泣きそうや・・・ヤバい、ヤバい(笑)。

『光射す場所へ歩く君たちへ』公演フライヤーより

『光射す場所へ歩く君たちへ』公演フライヤーより

■自分達で、もうホントに血を流してやっている訳で

三上:でもそれって、僕とか杉浦(演出助手の杉浦一輝さん)とか、それに『ぽこぽこクラブ』のメンバー達とも凄くリンクするところで、『雑草魂』というか、「くそっ!でも良いもの創ってやるぞ!」っていうのが凄くリンクしてて。だから、僕もそこに絶対行ってくれるんだったら、乗りたいって思ってやったのが始まりです。だから、今結構流行ってる、その・・・『ガールズ』的なもの、そことは違う色をやりたい、っていう信念があって。勿論僕も、山本さんも手探りなんですけど、ただ、その・・・、そこの根幹が、やっぱり凄く太い、とは思うんです。その、若い子や、もっと演劇の未来を考えなきゃいけない、偉い演出家や作家は居らっしゃる筈なんですけど(笑)。

三上:でもその人達は、ある程度這い上がってきた人を、っていうのがあって『掻き分けても見る』っていうのは、あんまり無くて。だから、そこを今(このプロジェクトが)やってるっていうのは、絶対にこっちとしても実を結んで欲しいし、これが実を結ばなければ、僕達もなんか・・・その、メジャーの人達に、勝ち目がない、って思うし。僕は幸か不幸か(笑)『日本劇作家協会』会長の鴻上尚史の元に居て、一流な人達もいっぱい見ていますが、そういう環境でやらせて貰いながらも、やっぱりそこで甘んじてちゃいけないなって。自分達からも切り開いて行かなきゃいけない、っていう想いは凄くあって。でもそれは例えば『ぽこぽこクラブ』であれば、物凄い足掻くし、足掻くけど、足掻きまくるけど、やっぱりプロデューサーが付いてくれてる訳じゃ無いし、自分達で、もう、ホントに血を流してやっている訳であって(笑)。そういうのに対して、ちゃんとプロデューサーとして、この2・3年越しのプランを「これを更に発展して行きたいんです」って言って、ここに居る若い奴等に投げるっていう事が、僕はこのプロジェクトの一番大きな意味だとは思います。

<AUBE GIRL’S STAGE第1回公演『光射す場所へ歩く君たちへ』>
【東京公演】2016年6月8日(水)~12日(日) テアトルBONBON
「AUBE GIRL’S STAGEオフィシャルサイト」は ⇒http://www.aube-girlsstage.com/next.html
チケットのウェブ予約は ⇒http://ticket.corich.jp/apply/71526/

<山本夢人>(やまもと・ゆめと) 演出家, 脚本家。演劇ユニット「レッドカンパニー」主宰。2006年より「㈱先駆舎」主催の即興イベント「アクトリーグ」に演出家として参加。2008年より2010年まで「㈱先駆舎」の演出家兼プロデューサーとして活動。2009年より、「JCM」(ジャパンクリエイティブマネージメント)に所属。2011年に演劇ユニット「レッドカンパニー」を立ち上げる。

<三上陽永>(みかみ・ようえい) 俳優。「サードステージ」所属。舞台をメインにテレビ、ラジオへの出演、近年では自ら演出も手掛ける。2008年より鴻上尚史主宰「虚構の劇団」に劇団員として参加。2011年よりNHK Eテレ「できた できた できた」健康・からだ編にレギュラー出演。2012年に「虚構の劇団」メンバーの杉浦一輝、渡辺芳博の3名で演劇ユニット「ぽこぽこクラブ」を立ち上げる。

<関連サイト>
⇒ 「光射す場所へ歩く君たちへ」のページ
⇒ AUBE GIRL’S STAGEオフィシャルサイト
⇒ AUBE GIRL’S STAGEのTwitter
⇒ 「光射す場所へ歩く君たちへ」出演者ブログ
⇒ 演劇ユニットレッドカンパニー
⇒ 虚構の劇団
⇒ ぽこぽこクラブ
⇒ 劇団鹿殺し
⇒ 泥棒対策ライト

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<プレゼント>

山本夢人さん三上陽永さんのサイン色紙と写真1枚をセットにして、抽選でアイデアニュース有料会員(月額300円)3名さまにプレゼントします。応募は以下のフォームからお願いします。応募の際に記入いただいたメッセージは、コメントのページ(⇒こちら)に掲載します。応募締め切りは6月21日(火)。当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。(このプレゼント募集は終了しました。応募くださったみなさま、ありがとうございました。)

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月

山本夢人さん(右)と三上陽永さん=撮影・達花和月

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■将来的には3~4年後には、年6回やりたい“希望”

■演出につく人も「もっと(上に)行けるのに!」っていう人を

■根本はちゃんと『小劇場』。ちゃんと芝居を創ろうとしている

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■将来的には3~4年後には、年6回やりたい“希望”

――それでは、プロジェクトとしての今後の展開はどのような形になるのでしょうか?例えば年間の公演数ですとか、第1回公演の今回は三上さんの演出ですが、毎回キャストとスタッフも総入れ替えで展開されるのでしょうか?

山本:将来的には3~4年後には、年6回やりたい希望。

三上:おぉー、すごい!

山本:“(希望)”位の(笑)。そこまで行くと本(脚本)も足りないし、スタッフも足りないし、演出家ももっと集めないといけないし、役者もそんなに毎回集められるのか?っていうのもありますし、まぁ、集めたら良いのか?っていう問題もあるし。でもそこの規模まで行きたい、っていうのはひとつあります。今年はもう1回公演をやって2回。来年は3回か4回やるっていうのは決まってまして。まぁ、恐らく、スケジュールが空いている限り(三上さん演出で)っていう感じなんですけど。でも忙しい人なんで。

三上:今年はちょっともう…。アレだったんですけど。

■演出につく人も「もっと(上に)行けるのに!」っていう人を

――役者の入れ替えはよく聞く話ですが、このプロジェクトとしての『核』は、やはり山本さんで?

山本:僕のイメージは、さっきお伝えした作風も、『AUBE』っていう団体も、何か、こう壁に当たったり、苦しんだり、もしかしたら挫折を経験した人もいるかもしれない、でも、こうやって花が咲く時もある。まぁ、そういう本(脚本)であったり、稽古場や稽古期間、そういうキモの部分は変わりません。ただ入ってくる演出であったり、演出チームであったりというのは、皆色がありますし、得意なところ不得意なところっていうのがありますので、そこに合わせて(チームの弱いところは)僕が動いていくっていうイメージですね。彼(三上さん)のチーム、『虚構の劇団』チームは、もう、ホント強力なスタッフを連れてくるんで、「や、もう、まかした!」って振れるんですよ。ただ、人によっては、役者を連れてきて、音楽もわかんないし、装置もわかんない、ただ役者を教えることが出来る、位の人も来るかもしれないんですね。その場合は、じゃあ僕も演出部に入ってやるとか、僕が臨機応変に動くという形で『AUBE』のキモは変えないで、作品としてのクオリティも下げない、ていうイメージですね。

――作品毎に演出部も変わっていくような感じ?

山本:はい。役者だけではなく、その作品の演出につく人も、良い感じの、その「この人も、もっと(上に)行けるのに!」っていう人を選んでいくんですよ。

――だから、『AUBE GIRL’S STAGE』についての解説には「関わった役者・スタッフが より活動の幅を広げ」となっているのですね。

山本:そうですね。最終的には僕がこう、臨機応変に動くという。僕とか、僕のスタッフ(『演劇集団レッドカンパニー』)でなんとかする、っていう風にはしていますね。彼(三上さん)の時はだから楽ですよ。ほったらかしで。僕は(稽古場に)来なくていいかな?位な感じ。

三上:あははは!

■根本はちゃんと『小劇場』。ちゃんと芝居を創ろうとしている

――確かに、スタッフのお名前を拝見すると色々お伺いしたくなります。今回は三上さん演出なので、このメンバーですが、演出が変わるとそこも変わる、と。

山本:そうです。最初に演出を決めて、その演出の人と、スタッフどうするか?というのを決めて。こっちが手当てするのかとか。

三上:多分だから『AUBE』っていうプロジェクト自体が、今まだ色んな変化はありますよね。どういう風な形態にしてるかというのを模索している最中ではあると思います。だから、なんかそれはそれで面白いなと思って。もうちゃんとそういうラインが決まってて、商業ベースに乗ってて、駄目だったら「これ打ち切りにしましょう」って言ってる形態ではなく。だから、凄く根本言ったら、やっぱりちゃんと『小劇場』なんですよ(笑)。だからこそちゃんと芝居を創ろうとはしているし。だから色々これから変わっていくんじゃないかな、とは思います。僕的にはやっぱり自由にやらせて貰えるのがまず嬉しいし、プロデューサーとしての山本さんが、ドンと居て、で、「こういうプロジェクトやりたいんだけど」って言って「予算も全部僕が組んであるから、はい、じゃあ頼むよ!」って投げてくれるって事自体が、凄く嬉しいし。

――既出の情報も拝見しましたが、この作品やはり作り手側の熱が、ハンパないなと感じました。

二人:ハンパないっす!

三上:ハンパないっす、(やることが多くて)寝れてないです。ハハハハハ。

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