俳優の榊原利彦さんが主宰するTHE REDFACE(ザ・レッドフェイス)の公演「羅馬(ローマ)から来た、サムライ」の名古屋公演が2016年7月8日~10日、東京公演が2016年7月13日~15日に行われました。2006年の旗揚げ以来、今年で10周年を迎えたTHE REDFACE。数年ぶりの新作となる本作は、日本に上陸した宣教師、ジョバンニ・バチスタ・シドッチを主人公に描いた物語です。アイデアニュースでは筆者が観劇した7月9日の名古屋公演の様子をお伝えします。
■捕えられたシドッチは、江戸にある切支丹屋敷に幽閉され…
物語の舞台は今から300年前、江戸時代中期の寛文8年。ローマ人のキリスト教の宣教師ジョバンニ・バチスタ・シドッチ(榊原利彦)は、ローマ法王の命を受け、サムライに変装して禁教令の屋久島に流れつきました。髪は月代(さかやき)にまとめられ、着物は侍の風体でしたが、話せる言葉は「サムライ」だけ。あまりの怪しさにすぐ捕えられ、翌年、江戸にある切支丹屋敷に幽閉されてしまいます。屋敷には長介(大和啄也)、はる(御園真倫子)という夫婦が住んでおり、彼らはシドッチの身の回りの世話をします。
■シドッチを尋問したのは朱子学者、新井白石
彼を尋問したのは、徳川の朱子学者、新井白石(奥田直樹)。当初、あまりにも適当なオランダ人通訳の今村源右衛門(今若孝浩)のおかげで意思疎通ができず、喧嘩ばかりしていた二人でしたが、地理学や文化に詳しく見聞の深いシドッチに感心した白石は、尊敬の念を抱くようになります。
またシドッチも、イタリア語をあっという間に理解した白石を尊敬し、宗教観の壁を越えた友情が芽生えていくのでした。こうして切支丹屋敷での日々は一見穏やかに過ぎていきました。とはいえ、シドッチは禁制のキリスト教の宣教師。切支丹屋敷でこのまま生きて行くには宣教は決して許されないものでした。
■身の回りの世話をしていた2人に洗礼を与えてしまったシドッチは…
ところが、そんなある日、長介とはるの胸にかかった十字架を見たシドッチは、禁じられていた洗礼を与えてしまいます。長介が徳川家宣の御用人・間部詮房(岡田治朗)に自首したことで、3人は座敷牢の幽閉の身となってしまいます。白石はなんとか3人を助け出そうとするのですが……。
<THE REDFACE「羅馬(ローマ)から来た、サムライ」>
【名古屋公演】2016/7/8(金)~7/10(日) 愛知県芸術劇場 小ホール (この公演は終了しています)
【東京公演】2016/7/13(水)~7/15(金) スクエア荏原 ひらつかホール (この公演は終了しています)
キャスト:榊原利彦、奥田直樹、大和啄也、御園真倫子、今若孝浩、岡田治朗(名古屋公演)、岡空俊輔(東京公演)、横山慎吾(東京公演)、新宮由理、五東由衣
<THE REDFACE 次回公演予定>
「カルメン OPERA COMIC 横浜公演アンコール」 ジョル・ジュビゼー オペラカルメンより
2016年9月22日(木)13:30~ 横浜市開港記念会館
⇒THE REDFACE「カルメン OPERA COMIC 横浜公演アンコール」予約ページ
<関連ページ>
⇒「THE REDFACE」公式サイト
⇒榊原利彦オフィシャルサイト
⇒榊原利彦オフィシャルブログ
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⇒「植物状態」になった男の友情と運命の物語、劇団「THE RED FACE」が上演
⇒成仏できない戦国武将7人が冥界で再会、劇団THE REDFACE「七慟伽藍 其の十三」
※シドッチが持っていたとされる聖母像「親指のマリア」は、重要文化財として東京国立博物館に所蔵されています。今回の舞台と「親指のマリア」の関係や、東京都内の切支丹屋敷跡で見つかった3人の遺骨がシドッチ本人と世話役の夫婦の可能性が高いことがわかったというニュースとの関連などについて、アイデアニュース有料会員向け部分で説明します。
■せつないほどに美しい、「親指のマリア」と家宣の正室「天英院煕子」の歌
■シドッチをモデルにした舞台は、教会で上演した20分ほどの演劇「親指のマリア」がもとに
■公演発表直後にシドッチ本人と長介とはると思われる三名の遺骨が発見されたという報道が
■「宗教観で重くとらえないでほしいと思いつつ思想はあるべきなのが、作る過程で難しかった」
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■せつないほどに美しい、「親指のマリア」と家宣の正室「天英院煕子」の歌
「羅馬から来た、サムライ」の劇中には歌も盛り込まれ、シドッチが所持していた聖母画像「親指のマリア」(五東由衣)が歌う「 スタンド・アローン」「洗礼の歌」、家宣の正室・天英院 煕子(神宮由理)が歌う「アニュス・デイ」「アベマリア」は、せつないほどに美しく、心が洗われていくようでした。
■シドッチをモデルにした舞台は、教会で上演した20分ほどの演劇「親指のマリア」がもとに
脚本を手がけたのは榊原玉記さん。シドッチをモデルにした作品の舞台化の構想は、2014年からはじまり、教会で上演した20分ほどの演劇「親指のマリア」がもとになっています。「親指のマリア」といえば重要文化財に指定されている聖母画像。これを日本に持ってきたシドッチを描いた作品を上演したいという思いが芽生え、2016年4月「羅馬から来た、サムライ」名古屋・東京公演を発表しました。
■公演発表直後にシドッチ本人と長介とはると思われる三名の遺骨が発見されたという報道が
偶然にも「羅馬から来た、サムライ」公演発表直後の2016年4月4日、東京都文京区の切支丹屋敷跡で見つかっていた三人の遺骨がシドッチ本人とその世話役であった夫婦・長介とはるの可能性が高いというニュースが報道されました。(朝日新聞デジタルの記事はこちら)
「300年の眠りから目を覚ましたシドッチの作品化に、すごく深い縁を感じました」と玉記さん。
■「宗教観で重くとらえないでほしいと思いつつ思想はあるべきなのが、作る過程で難しかった」
劇団の主宰で主人公・シドッチを演じた榊原利彦さんは、「この作品のテーマは、友情という心の絆にスポットを当てていますが、宗教観という部分で重くとらえないでほしいという思いもありつつ思想はあるべきなので、舞台を作っていく過程でとても難しかった。当初は不安もありましたが、1公演終えるごとに、よりいいものに仕上がっていくのを肌で感じ、やってみてホントによかったと思っています」
榊原さん扮するシドッチはローマ人ということでしたので、言葉のイントネーションや表情、しぐさにおいても工夫して演じられていた点も面白かったです。
ユーモラスでありながらテンポよく、美しく展開されていく場面に釘付けになった120分でした。
面白そうだなぁ。関西で公演があったら、観に行きたいなぁ。