「一番重要なのは自己肯定感」と顧問の久田先生、カヅラカタ歌劇団インタビュー(下)

「カヅラカタ歌劇団」インタビューより=撮影:アイデアニュース・橋本正人

2016年10月8日に「エリザベート ~愛と死の輪舞~」を上演した東海高校・中学の「カヅラカタ歌劇団」インタビューの「下」です。顧問の久田光政先生に、たっぷりお話をうかがいました。インタビューの後半は、アイデアニュース有料会員限定とさせていただきます。

「カヅラカタ歌劇団」インタビューより=撮影:アイデアニュース・橋本正人

「カヅラカタ歌劇団」インタビューより=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■受験勉強も、自己肯定感さえあれば、 なんとでもなるんです

――東海高校は9年連続で国公立大学医学部合格者数が日本一という、ものすごい進学校ですが、そういう学校にカヅラカタ歌劇団が存在する教育上の意味は、どういうところにあるんでしょうか。

いろんな意図はあるんですけれど、一番重要だと思っているのは「自己肯定感」ですね。 学校にいる間に自己肯定感をどう育むことができるのか、ということなんです。 自己肯定感がない生徒っていうのは、 自分に対してイエスの気持ちがないので、自分の将来展望を切り開く力が持てないんですね。目標をたてることも難しくて、それに向かって進んでいく自信も持てない。ですから、学校のいろんな機会を通して、一人一人の生徒に自己肯定感を育ませていくことが重要なんです。受験勉強も、自己肯定感さえあれば、なんとでもなるんですよ。

――なるほど。

ですから、単純に勉強しなさいと言うとか、補習をやるとか、そういうことじゃないんですよね。 むしろ、補習し続けるほうが、自己否定感を強くするぐらいのことなわけですよ。お前は、できないできないと、言われるわけですから。

■多くの人の支えがあって成功できたというのが、自己肯定感の中でも質の高い自己肯定感

――自己肯定感とは何なんですか?

自分に対してイエス、誇りを持つとか、あるいは、自分はやればできるんだという気持ちですね。その時にどうしても「成功体験」が必要なわけです。それは、できればみんなと一緒に、自分ひとりじゃなくて、みんなと一緒に、多くの人の支えがあって成功することができたというのが、自己肯定感の中でも質の高い自己肯定感だと思うんです。自分ひとりでできたというのは、他の人との協働であったり、誰かに対しての思いやりの気持ちだったり、感謝する気持ちだったりは、あまり必要がないですよね。僕が一人で勉強して頑張りましたということは、僕だけなわけなんです。

カヅラカタ歌劇団「エリザベート」公演の控室より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

カヅラカタ歌劇団「エリザベート」公演の控室より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■東海の受験は、個人戦じゃなくて団体戦。友達にグチも言いながら、みんなで受かろうよと

――自分一人ではできたかもしれないけれども、他の人と一緒に行ったらできないかもしれないし、自分を肯定できないかもしれないということでしょうか。

はい。それが、仲間と一緒じゃないとステージは成功しないわけで、そうすると友達と一緒にやる。受験もね、実は個人戦じゃないんですよ。東海は、団体戦なんです。

――そうなんですか。

例えばね、名古屋大学医学部は30人から40人くらい受験して、15人から20人合格するわけですね。で、彼らに聞くと、一緒に受ける奴って「敵・ライバル」と思ってるかっていうと、ほとんど思ってないんです。「一緒に受かろうぜ」って。隣に座ってるやつも名大医学部だとすると、こいつが不調になってくれたぐらいの方がむしろ喜んでもいいわけですよ。でも、そういう風には思っていない。 みんなと一緒に受かる。それは友達と人間関係を作って、入試勉強を続けるっていうのは辛いわけですから、どっかでグチをこぼしたい泣きも言いたい、じゃあ誰にそれを言えるのかっていうと、親でも教師でもないんですよ。やっぱり友達なんです。一緒に受ける奴らなんです。そういう生徒と切磋琢磨という言葉を使っちゃうんですけど、そういうことよりもグチも言いながらね、安心してみんなで受かろうよと、また大学で遊ぼうぜって。だから団体戦なんです。

――さっきのインタビューでも、トート役の伊藤くんが、カヅラカタに入ったのは先輩に誘われてなんですが、東海学園に入れたのもその先輩のおかげなんです、っていう話をしてました。「彼のおかげ」ってどういう意味って伊藤くんに聞いたら、ここの塾に行ったらいいとかいろんなことを教えてもらって、先輩がいなければ僕は東海高校には入れなかったし、カヅラカタにも入ってなかったっていう話を聞いて、へえ~~と思ったんですね。

それは先輩とだけじゃなくて、同級生とも同じような状況なわけなんです。

■カヅラカタの舞台の再現性が高いのは、名古屋工学院専門学校があるから

――みんなのおかげで、というか、一緒に?

一緒に。人間関係を作っていきながら、成功体験しながら、さらにカヅラカタの場合は、舞台を作っていく上で、いくら自分が宝塚の再現をしたいと思っていても、ステージを作ってもらわなければできないですよね。なぜ再現性が高いかと言ったら、一番は、名古屋工学院専門学校があるからですよ。

――名古屋工学院専門学校、すごいですよねぇ。

元々はスタンドマイクだけ立てて自分たちでやってたんですね。3回目の時に、生徒から「ピンマイクつけられませんか」というリクエストがあって、「ピンマイクってとんでもない金かかるんだぞ。無理に決まってんじゃん」って言いつつ、名古屋工学院専門学校の先生が文化祭なんかの出し物のお手伝いしますよと言っていたのを聞いてたので、問い合わせをしたら、二つ返事でいいですよと。

――ワイヤレスのピンマイクはいいですよね。あれは何本あるんですか。

10本くらいあります。

――ミキサーとかも、もちろんやってるんですよね。

もちろん。サテライトの生中継に、カメラは4台入ってます。これはすべて工学院が、ラインひいてやってくれて。

名古屋工学院専門学校の生徒さんらが音響・照明・中継などを担当=撮影:アイデアニュース・橋本正人

名古屋工学院専門学校の生徒さんらが音響・照明・中継などを担当=撮影:アイデアニュース・橋本正人

――照明も?

はい。照明のプランも、全部、工学院が出してくれる。こちらからこうというわけではなく、練習を見ながら工学院側から「こういうふうな光で行こうか」っていう風な提案をしてもらっているので、だからプロ仕様の舞台ができているわけですね。工学院さんの方は工学院さんの方で、実習の場なんですね。

――なるほど。

学生さんの実習の場。緊張のある場で、でもプロじゃないから、失敗してもまだ許されるって事ですね。お互いにそれはすごくいい関係になっていて、工学院さんは、ものすごい指導が入ってくるんですね。プロ仕様の指導が。

■ちゃんとしたものができて、お客さんから拍手もらったっていうのは、すごく大きいこと

――機材、すごいですよね。私も取材してる横で見ましたけど、カメラとか、テレビ局が使っているものと同じような感じでした。

2週間ずっと入れっぱなしでしたから、文化祭が終わってから本番までの間。

――機材を2週間、おいておいたということですね。

ですから、もしかしたらプロの方にお願いすれば、1000万円超えるんじゃないかっていうような費用になると思います。そういう支えがあり、衣裳の提供であったり、パンフレットの提供であったりとか、いろんな方々のご協力があって、そして講堂いっぱいに来てくださるお客様がいらっしゃる。ガラガラでは、やっぱりやる気にもなりませんから。お客さんに育てられてるって言う感覚は強いですよね。他のクラブの事を悪く言うつもりはないんですが、運動部だったとしたら お客さんに見てもらうっていうのは、必要ないですよね。甲子園まで行けば多くのお客さんがいらっしゃるけれども、県大会の予選にはあんまりいないですよね。他のクラブなんかも、家族や同級生の数人が来てくれれば多い方で、「来てもらう」じゃなくって、「自分が頑張る」ってことですよね。でも、お客さんに見てもらって喜んでもらおうというところに、また違う、他者に対する気持ちみたいなものが生まれる。

カヅラカタ歌劇団「エリザベート」公演パンフレットより

カヅラカタ歌劇団「エリザベート」公演パンフレットより

――そしてうまくいけば、自信がつきますよね。失敗することもあるでしょうけど。

自分がここで歌えなかった、外したというのは、それは悔しい思いを持てばいいけれども、じゃないと次につながっていかないので。だけど、トータルとして、うまくちゃんとしたものができて、お客さんから拍手もらったっていうのは、すごく大きいことですよね。

■最初に「お笑いにはしない」と生徒に言った。宝塚歌劇団という高い目標に挑戦する

――宝塚というか、ミュージカルは、舞台の上に立ってる人だけでも、歌のうまい子、ダンスの上手な子、芝居のできる子、いろんなバリエーションがあるのも、いいですね。

そう思います。そして、最初に「お笑いにはしない」と生徒に言ったんですね。14年前に「やりたい」って言ってきた生徒に。

――それは、最初の時に?

「お笑いにせずに、真面目にやろうぜ」って言ったのは、より高いものを目指すっていうことなんですね。宝塚歌劇団という高い目標があるわけです。クオリティの高いモデルがあって、そこに少しでも近づいていくということに、困難に挑戦するということがあるわけです。低いものを目標にしてもしょうがないわけですね。

――成功体験につながりませんよね。遊びで終わっちゃう。

ええ。より高いものに、より高い峰に向かって行くってことですね。さらにハードルを上げていくと、クリアしたときに自分たちの感動が出てきますよね。そして、ダンスだったり、歌だったり、演技だったりというものを、勉強しなければいけないわけです。そしてそれはまた、学校の勉強につながっていくというふうに思います。

――それは実際に、成績とかに結びつくものなんですか?

単純ではないですけれども。ただ東海高校の総体で言うと、部活や会場誘導などで活躍したサタデープログラム実行委員会、文化祭実行委員会などで頑張っている生徒の成績は、いい傾向がありますね。

※ここからアイデアニュース有料会員限定部分とさせていただきます。教師になった直後は「落ちこぼれ先生」で、腹痛で学校に行けなかった日もあったという話から、イベントなどを通して自分自身が自己肯定感を得てきたことなど、久田先生自身のストーリーをうかがいました。

<アイデアニュース有料会員限定部分の小見出し>

■1日49講座の「サタデープログラム」は、6割から7割が生徒のプロデュース

■僕は「落ちこぼれ教師」だったんです。腹が痛くて、うちに帰ったことも

■授業をしない完全5日制の土曜日だからこそできることを、と考えて

■サタプロ、カヅラカタ、そして東日本大震災でボランティアセンターを立ち上げ…

■今年は還暦。ホノルルマラソンに初マラソンで参加して4時間を切るのが目標

■こんなふうにすれば、なんとかなるかなと思えれば、なんとかなる

<東海高校カヅラカタ歌劇団 海組 第14期公演>
「エリザベート ~愛と死の輪舞~」
【愛知公演】2016年10月8日(土) 東海高校講堂 (この公演は終了しています)

<関連情報>
東海学園交響楽団 「第九」チャリティーコンサート
2016年12月18日(日)16時~18時(開場15時) 東海高校講堂
曲目:エルガー「威風堂々」第1番、ベートーヴェン交響曲第九番“合唱付”
指揮:曽我大介、ソリスト:平井香織・小山由美・松原陸・青山貴、合唱:東海学園交響楽団特別合唱団
チケット代:一般3,000円 学生1,000円 問い合わせ:東海高校(052-936-5112/5114)
チケット購入はオーケストラ部関係者or合唱団関係者から(学校事務室では取り扱っていません)
https://www.facebook.com/tokaoke.harmony/

<関連サイト>
東海高校カヅラカタ歌劇団  http://zuka08.blog121.fc2.com/
学校法人東海学園【東海中学校・東海高等学校】 http://www.tokai-jh.ed.jp/
名鶴ダンスカンパニー http://www.nazuru.com/
名古屋工学院専門学校 http://www.denpa.ac.jp/
松枝衣裳店総本店 http://matsueda.co.jp/
河合塾 http://www.kawai-juku.ac.jp/

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※ここから有料会員限定部分です。

■1日49講座の「サタデープログラム」は、6割から7割が生徒のプロデュース

――「サタデープログラム」というと、「土曜日プログラム」ですか?

このチラシを見ていただければわかるんですが(第29回サタデープログラムのチラシを見せて)、裏に49講座のリストが出ていますね。1日に3部に分けて、49講座を一気にやっちゃうんです。そのうちの、だいたい6割から7割の講座が、生徒のプロデュースなんですね。

――(チラシに並んだ49の講座案内を見て)えええ? なんですか、これ?

これもかなり常軌を逸してるというか(笑)

――逸してますよ、これ(笑)。これ、誰がやってるんですか?

僕が責任者です。事実上の(笑)。

――へえ~、常軌を逸してますねぇ(笑)。スタッフの生徒は、何人ぐらい、いるんですか?

実行委員は、7、80人ですね。クラスで何人ってことではなくて、やりたい生徒がやります。交渉も生徒がやります。

――出演交渉とか?

はい。メールとかファクスとか電話とかで。で、そのあと、オッケーをいただければ、向こう側の都合がつく限り東京、大阪あたりまで行って、事前取材、打ち合わせをしてきます。

――でも、これ、6月25日の1日だけで、講座が全部で49あるのを、学校でやるんですか?

だって、教室はいっぱいありますから。3部に分けてるから、平均で15から20講座ぐらいですけれども。

――15から20の講座が、同時進行してるわけですよね?

同時進行です。

――確かにこういう講座は、ありますよね。ありますけど、普通はかなり大きな団体がやって、それも何百人が、プロも入れて、そうしないとできない規模のものですね。なんでやってるんですか? これは?

これも、やっぱり、成功体験です。自己肯定感の育成です。交渉してオッケーもらえて、当日の司会なんかも自分たちでやりますし、タレントさんなんかが来た時は、シナリオ、スクリプトまで作って、その司会もしなきゃいけないし、自分の担当した講座の受講者が少なければ申し訳ないので、参加組織もしなきゃいけないし。

「カヅラカタ歌劇団」インタビューより=撮影:アイデアニュース・橋本正人

「カヅラカタ歌劇団」インタビューより=撮影:アイデアニュース・橋本正人

――先生って、学校の先生ですよね?(笑)

学校の先生です(笑)。

――国語の?

国語です。

――古文とかも?

全部やります。

――その国語の先生が、なんでこんな事やってるんでしょう? 自己肯定感というキーワードが出てきていますけれども、なぜ先生がそれをやってらっしゃるのか?

僕は、自己否定感にまみれた高校生だったんです。成績は良くないし、でもプライドだけは高くって、すっごいめんどくさいガキだったんです。

――やればできるとは思いながら、全然やんないというタイプですね。

けど、どっか自信がないという。僕は、この学校の生徒、卒業生ですけど 。

――それがなぜ、こういうことをやるようになったんでしょうか?

やっぱり、こういうことが重要だよな、というふうに思うようになったということです。

――なぜ重要なんですか?

これ、しゃべるとずいぶん長くなりますよ(笑)。

――大丈夫です(笑)。

■僕は「落ちこぼれ教師」だったんです。腹が痛くて、うちに帰ったことも

僕は「落ちこぼれ教師」だったんです。僕は、この学校の卒業生で、いろいろあって学校は僕を採用しました。2年目に担任をして、文化祭までは非常に順調にクラスの生徒とうまくいったんですが、文化祭以降、生徒との距離のとりかたがうまくできなくて、むしろ、安心して油断した中で、生徒との関係がおかしくなってしまった。生徒が、そっぽを向くようになった。3学期に至っては、もう教室が大荒れになってきて。

――クラスは、高校ですか?

高校の1年生です。2月のある月曜日、もう結婚していた24歳の私は、家を出るんですが、 腹が痛くて、うちに帰るんです。「今日は休む」って。

――先生が、不登校になったんですか?

そう。で、火曜日も同じ。家を出るんだけれども、学校行きたくなくって、戻って。 水曜日に、3日も休めないだろうなと思って学校に行ったら、生徒から「なんでサボるんだ」って。

――生徒にバレて、怒られちゃった(笑)。

また傷ついて、木曜日は休んで。さすがに金曜日は行きましたけども、なんか鬱々とした日々を送り、翌年は通常は2年の担任に持ち上がっていくんですけれど、僕は2年の担任を外されるんです。で、さらに鬱々と。

――俺は、ダメなんじゃないかと。

本当に、自己否定感にまみれて。それがたまたま、僕がふてくされてるところに、愛知県私立学校教職員組合連合(愛知私教連)の青年部の役員を出さなきゃいけないので、「お前、やるか?」って先輩に言われて、「ああ、いいっすよ。暇ですから」って(笑)。

――たしかに、担任外されて、暇ですよね(笑)。

で、行ったんです。 そこが面白くて、真面目にやったんですね。そしたら年明けで年度が変わる時に、議長って責任者をやってる人が、僕に「議長をやれ」って言って。僕、1年間何か通して真面目にやったことがないんですよ。大学時代も、高校の時も、教員になってからも。「自信ない。やれる自信がない」って言ったんです。だけど、「いやぁ、あんたを見込んで進めてるから」って言われて。「そうか。まあ、ここでうまくいかなかったら、辞めよう」と、背水の陣で覚悟して。ちゃんとした組織なので、たとえ僕1人が多少精神的に動揺してもやれるって事で、1年間やり通すことができて。結局、3年間…。

――青年部の議長?

青年部の、まあ「部長」ですね。3年間、愛知私教連青年部の「部長」をやりました。それで、なにか出来るなって。そのあと、愛知私教連が、「愛知県高校生フェスティバル実行委員会」っていうのを立ち上げたんです。今は5月に「新入生歓迎フェスティバル」、10月に「ビッグフェスティバル」っていう、だいたい1万人から1万5千人ぐらいの、高校生が集まる大きなイベントを年2回開催しているんです。僕は37、8の時に、そこの顧問団長をやるんですね。そういう中で創作のミュージカルもあったので、ミュージカルの経験もしていた。それから、いろんな有名人を講師に呼ぶようなこともやっていて、というような経験があって、そのノウハウを、この学校の中に全部ぶち込んできたと、いうようなことですね。

■授業をしない完全5日制の土曜日だからこそできることを、と考えて

――青年部で3年間議長をやっていた時に、フェスティバルなんかにも関わったということですか。

そうですね。サタデープログラムは、土曜日が完全5日制になった2002年から、東京や大阪の私学は土曜日も授業をやりますというふうにしたんですね。東海は2002年から、完全に土曜日の授業はないんです。一切。ただ、土曜日に授業しない完全5日制の土曜日だからこそできることを、やれないかという風に自分で考えた。2001年に、東海学園教職員組合の委員長をやっていたので、そういう提案をして組合員にも納得してもらい、学校とも交渉して始めたんですね。 いちおう、自分が提案した以上は組合の委員長をおりたあとも、積極的に自分が責任者をやろうということで、責任者をやっているわけです。

――組合の委員長というのは、青年部の議長をやって、そのあとということですね。

10数年あとです。

――委員長は何年やったんですか?

2年です。うちはだいたい2年で交代するんです。

――その時に、このサタデープログラムをやったわけですね。

ですから、2002年のサタデープログラムの発足の時から、事実上の責任者をずっとやっていて、じつは「カヅラカタ」を始めたのは、ここなんですよ。 2002年の1回目の時は男性講師がほとんどだったんですね。2回目の実行委員会の時に、生徒の実行委員はまだ30人ぐらいしかいなかったんですが、「男子校で綺麗なお姉さんの講座がないのってどうよ」って僕が言ったんですね。本当に地味だったんです。

――真面目な感じですね。

真面目なんです。誰かいないのって言ったら、「宝塚の女優さん、どお?」って生徒が言ったんです。

――知り合いがいるとか?

いやいや、単に思いつきです。「へえ~~」って思って、「それは面白いね」って調べてみたら、中日劇場で宝塚の公演があって、その「サタプロ」の前日で宝塚の公演が終わってる。

――おおお~。

てことは、名古屋出身の若手だったら、翌日は絶対実家に帰ってるよねって。ということでリストを見たら名古屋市出身の方が3人いて、その中の1人に勝手に名前を指名して、宝塚に電話を入れて、「うちのサタデープログラムで、女優さんの天野ほたるさんに講演していただけませんか」と言ったら、「出身校ならやります」と。いや、出身校って、うちは男子校でって。

――あははは。

(笑)。うちは男子校なのでって、出身校じゃないんですが、と、わけのわかんないことを言って、交渉してOKもらったんです。

――おお!

「カヅラカタ歌劇団」インタビューより=撮影:アイデアニュース・橋本正人

「カヅラカタ歌劇団」インタビューより=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■サタプロ、カヅラカタ、そして東日本大震災でボランティアセンターを立ち上げ…

サタデープログラムの面白いところは、その人の働いているところでインタビューするということがあるので、中日劇場の楽屋に行って。

――楽屋に。

宝塚の女優さんたちがいるところに、僕ら入っていいの?みたいな(笑)感じで、ドキドキしながらお話をうかがって、その時に文化祭の実行委員長だった生徒が、その宝塚の女優さんに感銘を受けて、ウォーターボーイズではないウォーターボーイズ的なもの、「男の子の宝塚」に気づいたんです。

――文化祭の実行委員長の生徒さんが、「宝塚を自分たちでやったら」と?

ウォーターボーイズの埼玉県立川越高校の文化祭はすごく注目をされていて、レベルが高いので、そのころ生徒たちは視察にも行っているんですね。ウォーターボーイズは、テレビでも流行っていて、あの時は、全国でウォーターボーイズをやった学校はいっぱいあるんです。フジテレビは2回、ウォーターボーイズ選手権というのをやっているんです。東海の生徒が賢かったのは、ウォーターボーイズではないウォーターボーイズ的なものだったんです。それが「先生、宝塚やりませんか」ということになったんです。

――それはサタデープログラムをやったその年だったんですか?

サタプロで、天野ほたるさんが講演されたのが2003年の2月、初めてカヅラカタをやったのが2003年の9月。

――なるほど!

僕がサタプロの責任者だから、文化祭の実行委員長が「先生どうですか」と。僕はすぐに「面白いね」と。 僕も高校生フェスティバルでミュージカル、創作ミュージカルだけれど、プロデュースや演出を付き合ったこともあるので。

――演出をされてたんですね。

はい。創作ミュージカルで、演出でした。その経験がなかったら「はあ?」という感じだったかもしれませんが。ですから、だいたいの手順とかはわかっているので、まあなんとかなるかなと。「どうせやるなら、真面目にやんなきゃね」っということからスタートしました。

――先生の名刺の裏には、ボランティアセンターのことも書かれていますね。

2011年の東日本大震災にあたって、僕はNPO法人「被災者応援 愛知ボランティアセンター」を立ち上げ、理事長をやり、 宮城県にはこれまで150回以上のべ8000人以上のボランティアを派遣しています。僕も100回以上行っています。

――そうなんですね。それにも、これまでの経験が生きているんでしょうか。

被災地域の町おこしみたいなこともやってますが、こういうふうに手を打って、こんなふうにやっていけば、たいがい、ある程度のところまではいけるんだろうなっていうのは、ありますね。

――サタデープログラム、カヅラカタ、そして災害ボランティア…、それは先生自身の自己肯定感にもつながるんでしょうね。

■今年は還暦。ホノルルマラソンに初マラソンで参加して4時間を切るのが目標

今、全然違うことをやってるのは、今年還暦ですので、還暦記念のイベントで、12月11日のホノルルマラソンに初マラソンで参加して、4時間切って走るっていう目標を1年前の7月に設定をして。

――還暦なんですか?

僕、還暦です。

――今?

60歳。

――学校は?

65定年なんです。

――なるほど。で、ホノルルマラソンは今年?

この12月11日です。今日が10月11日(このインタビューは10月11日に行われました)ですから、ちょうど2カ月後です。

――マラソンの時間は?

4時間を切ると。じつは、カヅラカタの翌日は、豊田の中京大学の体育学部でマラソン講習を受け、昨日は30キロトレーニングで1キロ6分で走るペースメーカーの後ろについて30キロ走り、っていう。

――へええええ。

まだ4時間までちょっと行かないけど。4時間半ぐらいは今来てるんで、あと2カ月で30分短縮できるかなと。まあそれもなんとかなるんじゃないのっていう感じですよね。高校時代も中学時代も、3日坊主で何にも続かなかったのが、今は朝4時半に起きて走りに行ける。それをずっと続けられるっていうのは、自分自身にも一定の自信が。

――先生は、今はすごくいろんなことをしておられますけど、学生時代は、部活とかは?

部活なんてひどいもんですよ。続いたものがないんです。中学から高校までの5年間、部活をやってる生徒を見ると、僕の中学高校時代よりはるかにマシだと思いますね。 僕よりひどい高校生って、滅多にいないです。

――それはいろんなイベントなんかをやってきて、こういうことが俺にできるなら、じゃあそういうこともできるんじゃないか、という風になってきたということですか?

■こんなふうにすれば、なんとかなるかなと思えれば、なんとかなる

まったく別のことでも、こんなふうにすれば、なんとかなるかなと思えれば、なんとかなるっていう感じですね。

――そうですか。勉強になりました。長い時間、ありがとうございました。

カヅラカタ歌劇団「エリザベート」公演より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

カヅラカタ歌劇団「エリザベート」公演より=撮影:アイデアニュース・橋本正人

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