7月2日にシアタークリエで開幕するミュージカル『RENT』で、2015年公演に引き続き、再びマーク役に挑む、村井良大さんにインタビューしました。人生を変えてくれた作品という『RENT』への特別な思いを色々と伺いました。(上)(下)2回に分けて掲載致します。
――『RENT』についてのブログや、製作発表でのお話から、噛みしめるような思いが伝わってきます。
確かにそうですね。本当に噛みしめるという思いが大きいです。なぜかというと、前回出演させて頂き、マークという大役をやらせて頂きましたが、大千秋楽の時に悔しい思いがすごく強くて、プロデューサーに「次のオーディションに必ず呼んでください、もう1回やりたいです」とお話させて頂きました。だから、今回「リベンジ『RENT』」という感覚で、やらせて頂いています。
――リベンジというのは? なぜ、もう1回やりたいと思ったんでしょうか。
「自分の実力が足りていなかった」とすごく感じていて、「もう一度やりたい、やらせてもらいたい、挑戦したい」という思いに繋がっています。
――具体的に自分に足りなかったと思うことは?
簡単にいうと、もっとよく出来たはずだと。歌も、芝居も、全てです。それ程思える作品は初めてです。
――再演で同じ役をやるというのはいかがですか?
僕自身は再演で同じ役をやることは、そんなに珍しいことではないですが、マーク役で同じ役者が続投することは初めてと伺って、純粋にとても嬉しいです。ただ、自分でいいのかとも、前の自分ではいけないとも思います。キャストの皆とも話し合ったりして、自分自身や皆の中に新しいものを発見出来るようにしたいと思います。そういう意味で、自分の中で「リベンジだな」と思います。
――キャストの皆さんとの再会も嬉しいですね。
今回はニューキャストもいますが、前回からのキャストが多いんです。前回キャストのチームワークが素晴らしかったので、またこういう機会がもてたのかなとすごく嬉しいです。また新たな仲間も増え、このメンバーでやれることを嬉しく、幸せに思います。この『RENT』という作品に出会えたことと、このメンバーに出会えたことが、本当に人生の宝物です。
その幸せを噛みしめて、さらに前回の自分を越えることを目指していきたいです。堂珍(嘉邦)さんとも話していたのですが、「なかなか前回を超えることは難しいよね」と。でも、あれから2年経っているので、皆も絶対変わっていると思います。そういう意味で、2年越しの『RENT』をやることに強く気合も入っていて、全員が前よりもっと素晴らしいものにしたいという思いがきっとあると思います。その思いを糧にして稽古を頑張っていきたいと思います。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、これまでの出演者の方でも振り返ると『RENT』がターニングポイントになっているというお話を伺ったことがあることについて、村井さんにうかがった内容など、インタビュー前半の全文テキストと写真を掲載しています。5月26日掲載予定のインタビュー「下」では、インターナショナルな人が多い共演者などについてのお話を掲載します。
<有料部分の小見出し>
■『RENT』に出会うまでは、引っ込み思案な自分を押し殺していました
■『RENT』の中に完璧な人間はいなくて、みんな苦境の中で生きている
■稽古中に「1人ずつ自分の失った大切なものを教えてください」と
■アンディは「僕は『RENT』を仕事だと思っていない、人生の一部だ」と
<2017年版・ミュージカル『レント』>
【東京公演】2017年7月2日(日)~8月6日(日) シアタークリエ
【愛知公演】2017年8月10日(木) 愛知県芸術劇場 大ホール
【大阪公演】2017年8月17日(木)~8月22日(火) 森ノ宮ピロティホール
【福岡公演】2017年8月26日(土)~8月27日(日) 福岡市民会館
公式ページ http://www.tohostage.com/rent2017/index.html
<関連サイト>
村井良大オフィシャルブログ http://lineblog.me/murai_ryouta/
⇒すべて見る
- 「『ロミオ&ジュリエット』は、初めて力まずに」、平間壮一インタビュー(下) 2017年6月2日
- 「本当に思っていることを言っていいんだ」、『RENT』平間壮一インタビュー(上) 2017年6月1日
- 「日本だけでなく、日本以外にも素敵なところがある」、村井良大インタビュー(下) 2017年5月26日
- 「前回は力が足りなかった。今回はリベンジ」、『RENT』村井良大インタビュー(上) 2017年5月25日
- 「愛はすべてに勝つ、ということを一緒に感じたい」、ミュージカル『RENT』製作発表 2017年4月7日
※村井良大さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは6月8日(木)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
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■『RENT』に出会うまでは、引っ込み思案な自分を押し殺していました
――製作発表で「人生を変えてくれた作品」とおっしゃっていましたが、ぜひ具体的にお聞かせください。
『RENT』に出会って、全てが変わったと思います。どちらかというとこれまでは、引っ込み思案なところや、あまり前に出たくない自分を押し殺していました。『RENT』で初めて個性を解放してくれる場所に出会ったんです。どちらかというと、いつもは自分を押し殺して役に向き合うことが多いのですが、『RENT』は全然違いました。基本的に、芝居のダメ出しではなくて、人間性のダメ出しになってくるんです。自分はどういう人間なんだろうと考えながら、自分の中でダメだと思う部分を変えたりして。演出のアンディ(・セニョールJr.)はそれを全て見透かしていたんですね。だから『RENT』を通して自分という人間が分かりましたし、自分という人間を愛していいということが分かりました。
■『RENT』の中に完璧な人間はいなくて、みんな苦境の中で生きている
――それは大きい変化ですね。
『RENT』の中にいる人達は、必ずしも完璧な人間はいなくて、みんな苦境の中で生きている人達です。だから、『RENT』は個性が強くないと当てはまらない役が多すぎて、何か癖や色、力強さがある人しか出ていないんだと思います。僕は初めてのミュージカルということもあり、分からないことも多かったですが、前回は自分の性格や目指しているもの、揺さぶられているもの、その中で体当たりしていきました。今回は体当たりだけではいけないと思っていますし、自分の中で2年間で色々あった経験を基に、この作品にぶつかっていけたらいいなと思います。
――『RENT』キャストの方々から「性格が変わる」というお話を伺います。
本当に性格が変わると思います。僕も変わりましたから。製作発表も友達たちの会話みたいな感じなんですよね(笑)。みんな真面目なことを言わない雰囲気もあったと思います。でも、各々のパッションでいいなと思っていて、それをみんなで笑い合ったり、素敵だなと思う瞬間があったりして、それが『RENT』の世界だなと思っています。本当にこんな作品なかなかありません。初めてだったからこそ、色々な印象が強すぎて、やはり『RENT』をやらなければとダメだと思ってしまうんです。2年ぶりにやらせて頂きますが、「やっぱり『RENT』ってこうだよね」という特別なものを感じるんです。これは他の作品では得られないものだと今は思っていて、大切な、特別な、貴重な作品です。
■稽古中に「1人ずつ自分の失った大切なものを教えてください」と
――これまでの出演者の方でも、振り返ると『RENT』がターニングポイントになっているというお話を伺ったことがあります。
何なんでしょうね。ミュージカル然としていないというか。やはりブロードウェイの小さな劇場で出来上がったものだから、すごく泥臭い瞬間があるけれど、当時アメリカが訴えたかった、色んな世間の文化や困難があったり。その生の声を伝えることを思いながら、描いていたのかなとも思います。やはり作品が生まれた場所が特殊だったから、また内容も独特なんですよね。『RENT』には美しく見せようとするところがなく、見た目の美しさにはかかわらず、本当に心の美しさしかないんです。
――確かに。
ワークショップや稽古中に、アンディと一緒に「Seasons Of Love」を歌うんです。皆で輪になって手をつないで、「1人ずつ自分の失った大切なものを教えてください」と言われるんですが、それは普通の演劇ではやらない事だと思います。「rent(rendの過去形)」には切り裂くという意味もあるんですが、そういう心に傷や、何か痕がある人たちが集まっているんです。全員が順番に今まで失ってしまった大切なものについて話をした後に、「Seasons Of Love」を歌ったのですが、それを見ていたアンディが「一番美しい」と言っていました。歌唱力ではなく、心が揺れて、心に中身があって歌う歌がすごく美しいと。前回、僕は歌がまだまだだと思っていましたが、アンディは歌については技術的なことを一言も言わなかったんです。そういう意味ではアンディが僕自身を受け入れてくれたんだと思います。アンディがオーディションで僕を見たときに、ありのままの僕を見てくれたことはすごく感謝していますね。
■アンディは「僕は『RENT』を仕事だと思っていない、人生の一部だ」と
――どんなオーディションをされたんですか?
歌唱でした。僕は「La Vie Boheme」と「Halloween」を歌って、冒頭の台詞を喋りました。その後、「Another Day」と「What You Own」をロジャー役の方と歌ったりしました。エンジェル役の人は、「もっと誘惑して」とか言われていたので、役によるとも思います。
――オーディション中に、村井さん自身についても見られているということですよね。
きっとそうだと思います。日本の演出家の方ならば、僕らがどんな役者かというのがある程度わかることもあると思いますが、アンディは全く知らないので、ひとりひとりの人間性を見ているように感じました。「初めまして、あなたはどういう人間ですか、歌ってみてください」と、その人の中身を知りたいというオーディションで特殊でしたね。
――これまでも『RENT』で舞台デビューされる方もいらっしゃいましたね。
そういう意味では貴重で、数少ない作品だと思います。
――アンディさんは何を求めていたと思いますか?
どうでしょうね。アンディは主に色んな刺激が欲しかったのかもしれません。素晴らしいパフォーマンスよりも、色々な心の色合いとか。会話をしていても、お芝居の話や仕事の話は全然しないんですね。「僕は『RENT』を仕事だと思っていない、人生の一部だ」と言っていました。もちろん仕事ではあるんですが、仕事だから自分を押し殺してやるというような向き合い方ではないんだと思います。
――そこに「どうしてもやりたい」という魅力があるんですね。
魅力は尽きないですね。音楽もやはり素敵だと思いますし、キャストにも恵まれていて、またこの世界に入れるというのは本当に嬉しいです。
※村井良大さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の募フォームからご応募ください。応募締め切りは6月8日(木)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
村井良大さんのRENTへの熱い想いと、更なる今夏のリベンジの想いにぐっときました。
魅力溢れる記事と写真に、ますます楽しみが増しました。
2015年のRENTをみて、村井良大さんのマークに心を揺さぶられました。
今年のRENTにも期待しています!
読み応えのあるインタビューと素敵なお写真をありがとうございます。
村井さんが語ってくださった胸の内を伺って驚いたり合点したり忙しかったです。
そして今夏のRENTがとてもとても楽しみになりました
インタビュー(下)の掲載も心待ちにしています。
村井さんの「RENT」に対する深い思いを知ることができて、公演がますます楽しみになってきました。
ありがとうございました。熱い熱い夏になりそうです。
村井さんの内面、RENTへの強い思いを丁寧に汲んだ記事に、とても胸打たれました。この想いで向かう、2017年のRENTが本当に楽しみです。
そしてお写真!クールな印象のお写真、素晴らしかったです!