7年ぶりに『罠』に主演される加藤和樹さんの合同インタビューに参加しました。(上)(下)に分けて掲載致します。(下)有料部分にはアイデアニュース単独のお話も伺いましたので、ぜひご覧ください。
『罠』は、フランスを代表する劇作家ロベール・トマが1960年に発表し、パリで初演されました。世界各国で上演され、日本でも度々上演されているサスペンス劇です。加藤さんは、2009年にこの作品で舞台初主演、翌年には全国ツアーとして再演しています。登場人物はわずか6人、誰もが怪しく、誰もが真実を語っているとは思えない状況の中、殺人事件の取り調べは二転三転、緊張感漂うセリフの応酬が続きます。物語の巧みな伏線と見事な構成、そして物語は衝撃的なクライマックスを迎えます。「演劇界のヒッチコック」と呼ばれたロベール・トマ屈指の名作です。
――今回、上演が決まった時の印象を教えてください。
率直に言って、「楽しみだな」という気持ちが一番でした。初演のときは、ありがたいことにすぐに再演が決まり、それから7年経ち、30歳を超えてまたこの作品に挑めることが僕自身もとてもスリリングだなと思います。初めて台本を読んだ時に僕自身も「罠」にハマッたことを、とても印象深く覚えているので、初演、再演をご覧頂いた方にも、今回初めてご覧頂く方にも楽しんでもらえるように出来るんじゃないかと思っています。
――7年前は25歳でしたね。
今にして思えば、若さゆえというところも僕が演じるダニエル役にはあったと思いますが、今の自分が演じるとどう変わるのかが非常に楽しみです。演出の深作(健太)さんとまたタッグを組んで、色々ディスカッションしながら出来ることも楽しみにしています。ただ、作品の内容についてはちょっと言えないんですが(笑)。
――(笑)。
前回も、前々回も、やはり話せることが少なすぎて、取材のときに困ったことを思い出しました。観ている方々には、この物語がどこへどう転がっていくのかを、常に緊張感をもって観て頂けるところが見どころですね。『罠』というタイトルですが、その『罠』が何の罠なのかですね。罠にかけるのか、かかってしまうのか、誰が真実を言っていて、誰が嘘をついているのか。初演をやった時に本当に人間不信になってしまったことをとても覚えています。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、共演者についてや、会話劇の面白さなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。6月20日掲載予定のインタビュー「下」では、 2017年4月7日から5月26日まで東京、兵庫、高知、福岡、長野、愛知で上演された『ハムレット』出演について、また台詞の覚え方や気分転換の方法などについても伺ったインタビューの後半の全文を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■演じ方によっては真逆のことも出来ます……具体的には言えないのですが
■だんだん衰弱していく僕の姿を見て、みんな楽しんでいるんじゃないかと(笑)
■僕が共演者の方々1人1人とじっくり関係性をもつ作品、そこが楽しみ
■会話劇は「聞かせる」になりすぎると面白くなくなる、さじ加減が難しい
<舞台『罠』>
【亀有公演】2017/7/13(木)かめありリリオホール
【兵庫公演】2017/7/15(土)・16(日)兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール
【東京公演】2017/8/8(火)~15(火)サンシャイン劇場
http://wana2017.jp/
<関連リンク>
加藤和樹オフィシャルウェブサイト http://katokazuki.com/
加藤和樹オフィシャルブログ http://ameblo.jp/katokazuki-blog/
⇒すべて見る
- 「感情的にしない方が、より悲しみや怒りが見える」、加藤和樹インタビュー(下) 2017年6月20日
- 初演、再演、そして7年… 舞台『罠』主演、加藤和樹インタビュー(上) 2017年6月19日
※今回の取材で撮影した写真にサインをしていただいた、撮り下ろし加藤和樹さんサイン入り写真1枚を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは7月10日(月)です。※このプレゼントの募集は終了しました。
※ここから有料会員限定部分です。
■演じ方によっては真逆のことも出来ます……具体的には言えないのですが
――「絶対にこの人は嘘を言っている」と思って観ていても、こっちが嘘かもしれないと思ったり……。
やはりそこが面白いところですよね。心理戦でもありますし、お客様も巻き込んでいく脚本で、その緊張感は舞台上の僕たちとお客様が疑心暗鬼になっている空気のなかで、作られるものだなと思います。前回は演じることにいっぱいいっぱいでした。ダニエル役は余裕がないのですが、どこかで自分が有利になる情報を持っているとか、ある意味余裕がある瞬間があってもいいのかなと思っています。台本の変更点はほとんどないと思いますが、稽古中に共演者の皆さんとの芝居のなかで、ブラッシュアップしたいところが出てくると思うので非常に楽しみです。相手役の白石(美帆)さんとは初演以来なので、どう変化するのかも非常に楽しみです。
――脚本が前回とそんなに変わっていない中で、読んでいて新たな発見はありましたか?
意外とセリフの端々は覚えているなと思いました。まだ記憶に残っていて良かったなと(笑)。ずっと出ずっぱりなので、暗転中に水を飲んでいたなとか色々と思い出すことがありました。捉え方というか、ダニエルが何を思ってその言葉を言うのかを、これから色々と考えていかなければいけないと思っているところです。ダニエルの芯にあるものを変える、変えないによっても芝居の作り方が変わってきますし、初演と再演では、僕はそこを変えたんですよ。だから演じ方も変わりましたし、エリザベートに対する思いも変わる部分がありました。今回それをどう設定するかによっては、また癖のあるというか、ガラリと変わった物語になると思います。
――初演で演じて、再演で変え、また今回変えようというイメージがあるんですか?
深作さんとの相談次第ですね。前回、深作さんと初めてやった時に色々相談をさせていただいて、その話し合いの中で、「そっちの方向性でやろう」と深作さんも納得してくれました。自分自身も再演の方がダニエルとしての居方や、発言の意図、本音がすごく見えてきた気がしています。でも、演じ方によっては真逆のことも出来ますし……具体的には言えないのですが(笑)。また違うアプローチでやっても面白いんじゃないかと思っています。
■だんだん衰弱していく僕の姿を見て、みんな楽しんでいるんじゃないかと(笑)
――公演に向けたコメントに「役者であれば、誰もが演じてみたい演目だと思う」と書いていましたが、どの辺りが特にそう思いますか?
役者は、結局のところ「演じる」ところで勝負をするじゃないですか。この作品の中でも、『罠』というところで全員が騙し合いのように演技をします。その中で誰が本音を言っていて、誰が嘘を言っているのかという探り合いの緊張感や、そのスリリングさがどう転ぶか。もちろん結末は一つですが、どう転ぶか分からないというせめぎ合いやプレッシャーの掛け合い、そのギリギリの緊張感を舞台上で楽しめる作品は、なかなかないと思うんです。もちろん感情を露にしてぶつかるシーンもありますし、本当に腹の探りあいをするシーンもあります。だから、何がこの人の本音なんだろうかと思ってしまう。例えば、白石さんとのシーンならば、実は白石さん自身がこう思っているんじゃないかとか、そういう探りあいにもなってくるんです。そういうところから、「何か信じられない」とかなり追いつめられた印象が残っています。
――自分と役との境目だけでなく、相手と役の境目も分からなくなってくるんですね。
そうですね。言葉で痛めつけられてボロボロになるので、僕がだんだん衰弱していく姿を見て、実はみんなは楽しんでいるんじゃないかと人間不信になって辛かったです(笑)。今はそれを楽しめるようになったと思いますが、初演の時はダニエルをどう見せるか必死でした。やはり役者としてもまだまだ力不足でしたね。みんなが一斉に舞台上に出てくるのではなく、1人1人が入れ替わりで出てきて、僕とやり取りをするので、とにかく肉体的にも精神的にも辛いですが、その分やりがいはすごくあります。
――ご覧になった方からの印象的なコメントはありましたか?
やはりみんな見事にだまされていました。結果を知ったからこそ「もう1回観たい」という声をたくさん頂きましたね。自分がお客さんとして観ていても、そう思いますから。
――確認作業をしたくなる?
僕も「あれはそういう事だったの!」とすごく思いましたね。
■僕が共演者の方々1人1人とじっくり関係性をもつ作品なので、楽しみ
――共演者の方についてもお伺いさせてください。何か期待していたり、楽しみにしていることはありますか?
ダニエルが一番関係してくるのが、筒井(道隆)さんが演じるカンタン警部です。筒井さんとは初めてですが、テレビでも拝見していますし、すごく鋭い、威厳のある警部になるんじゃないかと非常に楽しみにしています。あまり役の事については深く言えませんが、山口(馬木也)さんが演じるメルルーシュもダニエルにとっては重要な人物で、この作品の中で唯一陽気な雰囲気の役です。そこは僕もゆったり……ゆったりは出来ないですが(笑)、作品的にはお客さんが少しほっと出来る瞬間になればいいなと思います。初風(緑)さんのベルトンも何でしょうね……言いたいけど、言えない(笑)。
――(笑)。
本当に気の強さや、凛とした姿で、そこにぶつかっていくお芝居をするのも、すごく楽しみです。(渡部)秀は『里見八犬伝』で共演しましたが、彼が演じるマクシマンとのシーンも結構多いです。僕より年下で、若い神父という役なので、そこが良い潤滑油になればと思います。物語が進むにつれて、どうなっていくかを楽しみにしています。僕が1人1人とじっくり関係性をもつ作品なので、そこが非常に楽しみですね。共演者の方々とは、ある意味緊張感を持ってやりたいと思っています。
――じゃあ、その辺りを変えていこうと。
役が発する言葉の重みや、みんなが醸し出す雰囲気や緊張感、プレッシャーの掛け合いというところで、本当に息を呑むようなシーンもたくさん作りたいですし、より強く引きこまれる、お客様も思わず前のめりになってしまうような、そんな緊張感で出来たらいいなと思います。
――深作さんとはお話されましたか?
具体的にはこれからですが、良質なものにしたいとおっしゃっていました。これだけの先輩方も揃っていますし、言葉で物語を紡いでいくので、その言葉を大事に、よりテンポも出して、何か特別に作り変えるのではなく、また新たに新鮮な気持ちで取り組みたいと。僕の役の心情も、はっきりと物事で変わるという訳ではないですが、気持ちの上でその裏にあるものが見え隠れするような、その裏と表もちょこちょこと見せられたらと思います。それが見え隠れすることによって、お客さんも「え? 今のって?」という疑問が生まれてモヤモヤし、それを抱えながら観ていく内に、最終的に「あ、そういうことか!」と、観た後にすっきりも出来る。その両方を味わってもらえればと思います。
■会話劇は「聞かせる」になりすぎると面白くなくなる、さじ加減が難しい
――「言葉」というお話がキーワードで出てきましたが、『ハムレット』(2017年4月7日から5月26日まで 東京、兵庫、高知、福岡、長野、愛知で上演)に続き、『罠』も会話劇ですが、会話劇の面白さは今どう体感されていますか?
難しいと思うのは、『ハムレット』もそうですが、意味があるようでないような言葉も結構散りばめられているんですね。特に今回の『罠』に関しては、言葉の中の情報がすごく意味を持つんです。やはり僕らはそれを意識して、ちゃんと吐き出せなければいけないですし、ただそれを「聞かせる」になりすぎると、やはり面白くなくなるので、さじ加減が難しいと思います。さらに言葉で情報をお客様に与えることによって僕ら自身も「あ、そうだ。これってこういう物語だった」「この情報が大事だった」と思いながらやらなければいけないですよね。だから、台詞のやり取りの中で生まれる緊張感は、『ハムレット』よりもさらに大きいですし、そこが面白いところだなと思います。
そして、もちろん、台詞を間違えられないというプレッシャーもあります。全然違うことを言って、情報が1つかけ違ってしまうと、全てが狂ってしまう作品なので、そのプレッシャーは初演も再演もありました。そのプレッシャーを感じることが出来るのが、会話劇の面白いところだなと思います。よりリアルにぶつかっている感じがしますし、どこまでが芝居なんだろうと思ったりもします。言葉に踊らされないように気をつけなければいけないこともありますね。1つ1つの言葉に何かしら意味があり、それがお客様にも考えさせる言葉になるということですね。観ている方も集中しているので、結構疲れると思います。休憩もないのでより集中力を使いますが、終わると達成感があります。
※今回の取材で撮影した写真にサインをしていただいた、撮り下ろし加藤和樹さんサイン入り写真1枚を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは7月10日(月)です。※このプレゼントの募集は終了しました。
初演も観て、再演もチケットを確保したのですが、今回の記事を拝見し、ますます楽しみになりました。
お写真もどれも素敵で思わず応募したくなりました。
どうぞよろしくお願いいたします。
PS.写真の通販を熱望です。
とても興味深く読ませていただきました。
演者の皆さん一人一人と加藤さんのやり取り、注目しながら観劇したいと思います。
また、記事内の写真もとても綺麗で切ない雰囲気がとても良いな、と思います。
インタビュー後半も楽しみにしています。
いつも、素敵な記事&写真をありがとうございます。前回の罠は、残念ながら観劇できなかったので、今回、とっても楽しみです。
これからも、素敵で読みごたえのある記事を楽しみにしてます。
この度は、コメント欄の素早い対応、ありがとうございました。
先ほど申し込みをしたのですが、コメント欄が表示されたので改めて入力させていただきます。