「ソロが歌いたかった。かなり負けず嫌いなんです」、海宝直人インタビュー(下)

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

海宝直人さんのインタビュー後半です。高校生時代、バンドを組んでギターを担当していたという海宝さんは、歌いたくなかったそうです。その理由は「フロントに立ちたくないから」。その理由を掘り下げます。さらに、有料部分では、2015年に『レ・ミゼラブル』『アラジン』で役を射止めるまでの時間にどんなことを考えてどんな行動していたのかについて伺いました。今の歌声を手に入れるまでの大切な時間とは……。

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

――「フロントに立ちたくない」と思っていて子役からやっている?

感覚を説明するのはなかなか難しいですが、何でしょうね……。「学校では別に目立ちたくない」という感じだったのかもしれないです。

――友達たちの前に立つというのを好むタイプではない?

そうですね。

――それは「ステージに立つ」とか、「役がある」とか、そういう異空間だから出来るという感じですか?

また少し違うんですよね。それこそ今のバンドは楽しいですし、何だろうな……何が違うんでしょうね。

――思春期的なことですか?

それもあるのかもしれないです。でも、元々目立つことが好きなタイプではないので。

――まだ少ししっくりこない……(笑)。現場などでお会いしても、ぐいぐい来るタイプの方ではないことは感じていますが、どこで切り替えられるんだろうかと。

何でしょうね……(考え込む)。今のバンドに関しては、前に立って目立つというよりも、「この歌を伝えたい」というところが、はっきりしているからいいのかもしれませんね。学生時代はそういうものはないじゃないですか。コピーバンドをして音楽を楽しむというのはありましたが、目立つために歌いたいという感じではなかったので。

――音楽を楽しむことに徹していたんですね。子役からされていて、学生時代を経て音大に進む方もいますが、特にそういうことは考えなかったですか?

音大という選択肢は全く考えなかったですね。特に理由もないんですが(笑)。普通に一般の道に進むか、ミュージカルの道に進むかを悩みました。最終的に高校の卒業間近に『ミス・サイゴン』のオーディションがあったことがきっかけで、ミュージカルを選びました。

――迷った訳ではなくて、思考になかったんですね。

高校時代に音楽の勉強をきちんとしていたという訳でもないですし、ピアノをずっと習っていた訳でもないですし、そもそも音大に行くという素養や下地があった訳ではないので、そういう意味でも選択肢にあがらなかったのではないでしょうか。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、2015年に『レ・ミゼラブル』『アラジン』で役を射止めるまでの時間にどんなことを考えてどんな行動していたのかについて伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。

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■声帯や喉、解剖学の本を自分で読んだりもしました

■2.5次元作品に出ていた同世代キャストとの共演は新鮮

■『レ・ミゼラブル』は、再出演でレベル1に戻って作る感覚

■『ノートルダムの鐘』、息が出ないと思ってから3秒くらい出て…

<ミュージカル『ポストマン』>
【東京公演】2017年12月22日(金)~12月26日(火) 時事通信ホール

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海宝直人さん=撮影・岩村美佳

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

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■声帯や喉、解剖学の本を自分で読んだりもしました

――『ミス・サイゴン』のオーディションに受かってなかったら、大学に進んでいた?

そうかもしれないですね。教育学部に行こうかなと思っていた時期はあります。

――なるほど。『ミス・サイゴン』でミュージカル界へ引っ張られた。

そうですね。拾ってもらいました。

――海宝さんに一番最初にお会いしたのが、2010年の『ファントム』の古川(雄大)さんとの撮影でした。当時若手の俳優の方々を撮影させて頂く機会が多かったのですが、あのときの撮影はとても印象に残っていて、その後のおふたりのご活躍を拝見させて頂いて来ました。

ありがとうございます。あの撮影は覚えています。

――そこからおふたりの歩みを拝見していますが、対照的だなと思っていました。古川さんは2012年の『エリザベート』ルドルフ役から大型ミュージカルのプリンシパルをコンスタントにされていましたが、海宝さんはどちらかというとアンサンブル的な役をされてきて、2015年に『レ・ミゼラブル』マリウス役と、『アラジン』アラジン役を掴まれた。ご自身の道を歩んでくる中で、同世代のミュージカル俳優の方もたくさんいますし、周りを見たりとか、自分はこうやりたいなどの思いについていかがでしたか?

やはり、「ソロが歌いたい」という思いや、悔しい思いはありましたが、そういうところに負けず嫌いな自分がいて。かなり負けず嫌いなんです。よくtekkan先輩には「お前とはゲームをやりたくない」と言われます(笑)。

――(笑)。負けず嫌いが出るんですね。

だから、もちろん「なにくそ」という思いはありました。『ファントム』の時期の数年は、独学というか、現場の経験だけでやってきたので、自分の中で伝えたいことが伝えきれない感覚が強かったです。フラストレーションがありましたね。音域的に「ここは鳴らない」ということが多かったので、ボイストレーニングの先生に出会って、そこを広げてもらったおかげで、今の自分があると思います。さらに、元々歌うことがとても大好きなので、声帯や喉、解剖学の本を自分で読んだりもしました。

――解剖学の本?

どういう仕組みで声帯が鳴っているのか調べたり、色々なメソッドを片っ端から調べてみたり、色々なことを試してみたりすることが出来た期間でしたね。もし自分が運良くポンポンと進んでいたら、研究したりするような思いにならなかったのではないかと思うので、必要な時間だったなと思います。

――とても大事な5年間だったんですね。

そうだと思います。

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

■2.5次元作品に出ていた同世代キャストとの共演は新鮮

――ボイストレーニングの先生と出会ったこと以外に、具体的なターニングポイントになった作品や出来事はありますか?

本当にターニングポイントだらけで、結構色々なジャンルの作品に出させて頂いてきたと思います。

――出演作品が幅広いですよね。

『恋するブロードウェイ』はミュージカルではないですが、初めて2.5次元と言われる作品に出ていた同世代のキャストのみんなと共演するという、すごく新鮮な経験をしました。僕が出演させて頂いた『ミス・サイゴン』はミュージカル中のミュージカルですし、同年代もほとんどいなかったんです。いたとしても、いわゆる2.5次元出身の人ではなかった。「キャー」と言われる世界観で、自分をアピールすることを求められる世界というのはとても新鮮で、チャレンジでした。『フル・モンティ』など映像系の人たちが出ているような作品も新鮮でした。演出の福田(雄一)さんも映像系の監督ですし、瞬発力や爆発力を求められる作品も自分の中では大きなターニングポイントでしたね。自分が大好きな「歌」ではないところで戦っていかなければならない現場で、とてもいい経験をさせて頂きました。

――『アラジン』『ライオンキング』『ノートルダムの鐘』などの劇団四季と、『レ・ミゼラブル』『ジャージーボーイズ』などのミュージカル作品の両方を同時進行で経験されている方はなかなかいらっしゃらないので、とても稀有な存在だと思いますがいかがですか? 色々な現場を見られますよね。

それはとてもいい経験をさせて頂いていると思います。それぞれ作り方が違いますから。四季の中でも初演ものに出るのと、ずっと上演されているものに後から入るのとは全く違いますし、もちろん演出家や制作の方によっても違いますし、とても面白かったですね。やはり海外物の初演の四季作品である『ノートルダムの鐘』に出られたというのは、自分にとって大きな経験でしたね。

――四季のオーディションに受けに行くというモチベーションはどうですか? 今はオーディションを受けなくてもオファーがあるでしょうし。

6年間ずっとやっていて、そこで演劇的なところを学んだ場所なので、劇団四季で育った自分という思いも大きいですね。あとはディズニーが好きなので、『アラジン』や『ライオンキング』で育ってきましたし、何かそういう作品にチャレンジしたいという思いはとても強いですよね。

――この先にも出たい作品もある?

素敵な作品がたくさんあるのでチャレンジしたいですね。

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

■『レ・ミゼラブル』は、再出演でレベル1に戻って作る感覚

――『レ・ミゼラブル』が終わりましたが、2015年と2017年と2回終えてみていかがでしょうか?

2015年から2017年にかけて、マリウス役のかなり大きなキャラクターのシフトチェンジがありました。そういう意味では、新しいものにチャレンジするという感覚が強かったです。中日劇場の千秋楽近くに、アンジョルラス役の相葉裕樹くんと、同じマリウス役の内藤大希くんと楽屋で話していたんですが、「次やるとしたら、どんな感じなんだろうね。海宝くんはどうだった?」と聞かれました。何か不思議な感覚なんですよね。これゲームをやらないと分からないかもしれませんが……。

――ゲーム?

「不思議のダンジョンシリーズ」というのがあって、洞窟みたいなところなんですが、ダンジョンをずっと下がっていくんです。そこで敵を倒してレベルが上がっていくんですね。そこで負けてダンジョンから出ると、レベルが1に戻るんですよ。アイテムは増えていくんですが、レベルは1に戻ってまた下がっていく。それでボスのいるところまで下がっていって倒していくんです。

――1個のレベルをクリアすると、次のレベルにいくときに装備だけ持っているけど、また1から戻る?

再び出演した今年は、レベルが戻るという、そういう感覚でした。

――装備は持っているけど、1からやり直す。

レベル1に戻って、また新たにそこから作っていくという。もちろん台詞や歌は体に入っているけど、結果自分の中で崩さないと、そこに対応していけないという感覚が強くて。だから、再演に臨んだというよりは、新しいものにチャレンジしたという感覚が今回は強かったですね。共演者も変わりましたし。

――なるほど。2019年に『レ・ミゼラブル』を上演するという発表もありましたが、この先「マリウスをまたやりたい」とか「他の役をやりたい」など、何か明言していいことはありますか?

2019年といわず、先々ジャン・バルジャンはやってみたい役ですし、チャレンジしたい作品です。そこに向かって色々な作品の経験を経て目指せたらいいなと思います。

――先日、上原(理生)さんにインタビューしたとき、「アンジョルラスは今回でやめます」とはっきりとおっしゃったんですよ(笑)。もちろんそれを発言しようという方と、今はやめておこうという場合とあると思うんですが、今はまだどちらとも……という感じですか?

「どちらとも」という感じかもしれないですね。やるかもしれないですし。

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

■『ノートルダムの鐘』、息が出ないと思ってから3秒くらい出て…

――なるほど(笑)。じゃあ、ファンの方々はまだまだヤキモキすると。上原さんも「バルジャンをやりたい」とおっしゃっていました。「ジャベールじゃなくて、バルジャンなんですね」という話をしたら「やはりバルジャンがやりたい」とお話されていました。『レ・ミゼラブル』をやればやるほど、「バルジャンをやりたい」という思いが強まりますか?

(吉原)光夫さんが千秋楽のときに、「2役やる理由は何なんだろう。ある意味、自分を追い込む、次のステージに進ませるための試練である」とおっしゃっていましたが、限界に挑戦する役だなと思っているんです。光夫さんと仲良くさせて頂いているので色々と話しますが、僕が『ノートルダムの鐘』でカジモド役をさせてもらっていて、光夫さんもそれを観に来てくれたんです。カジモドという役も自分の肉体や体力的、精神的な部分を限界まで追い込む役で、例えば「石になろう」という最後のほうで絶叫するような曲があって、そこで本当に自分の限界、ロングトーンを最後伸ばして、オーケストラが切れるギリギリまで出し切るんです。光夫さんに、「人間って自分がもう息が出ないと思ってから、もう3秒くらい出るんですね」という話をしたら、「そうなんだよ。独白とかまさに、そうなんだよね。人間の肺って普段守っているんだよな」と(笑)。「チャレンジしていきたい」というヒリヒリした部分が、自分でやっていて、すごく刺激的だったというか、そういう意味で限界にチャレンジしてみたいなという思いがあるのかもしれないですね。

――なるほど。『ノートルダムの鐘』は9月に京都公演でも出演されていましたが、やればやるほど発見が深まっていく?

そうですね。

――『ノートルダムの鐘』もまだ観られるチャンスがあればいいですね。最後に『ポストマン』を楽しみにしている方へ、チケットが完売しているので残念ながら今回は観られない方へもメッセージを一言頂けたらと思います。

日本オリジナルのミュージカルで、初演、再演とやってきましたが、今回さらにブラッシュアップされます。大きく作り直し、新しく生まれ変わって、そして素敵なメンバーと共に新しい作品が出来ると思うので、楽しみにして頂きたいと思います。これはきっと、さらに繋がっていく作品になるだろうと僕の中でも思っているので、ぜひ今回観られない方にまた観て頂けるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

海宝直人さん=撮影・岩村美佳

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“「ソロが歌いたかった。かなり負けず嫌いなんです」、海宝直人インタビュー(下)” への 5 件のフィードバック

  1. kuma より:

    昨年末のポストマンを観劇させていただいて
    海宝さんは歌が素晴らしいだけではなく
    歌やセリフによる表現、お芝居が素晴らしい役者さんだと感じました。
    その表現の背景にはこちらの記事で語られている
    声帯の研究など、海宝さんの積み重ねもあるのだろうと思います。

    しっくりこない答えをそのままにせず
    さらにつっこんでインタビューしていただいたりと、
    とても読み応えのある記事でした。

  2. オレンジ より:

    海宝さんの記事を読ませてもらいました。
    歌声が聞いていて素晴らしくはまりました。他の俳優さんも魅力的な方も多い中、今、一番お勧めしたい俳優の一人となりました。大変深い話まで聞けて、正直な部分と真面目な所があると感じがしました。ここ一年で大人な雰囲気になられたと思いました。ありがとうございました。

  3. らいおん座 より:

    海宝さんにとって、新作であれ、再演であれ常に挑戦であり、進化、深化していくその姿を背中を客席から観させて頂ける幸せを日々感じています。それをしみじみと感じた特集でした。

    普段、自分語りをあまりされない方なので、こういったそれまでの背景や経緯、そしてこれからの希望などを深く掘りさげたインタビュー楽しく拝見させて頂きました。

    これからもすばらしい記事を楽しみにしています。海宝さんの記事もまたお願いいたします。

  4. ゴーヤ より:

    海宝直人さんのファンになったのは、あるコンサートで1曲丸ごと海宝さんの歌を聴いてからです。歌声がとにかく好みで、歌の世界観に惹き込まれ、家に帰ってもその余韻がずっと残っていました。ミュージカルではその役の人物をめいいっぱい生き、バンド活動ではやりたい音楽を楽しそうに奏でていて、とても魅力的な方だと思っていました。
    フロントに出たくない時期や、ソロで歌えない時代…あったのですね。ずっとトップスターだと思っていたのでびっくりすると同時に少しホットしました。これからの活動にも期待が大きく膨らみました!
    素敵な記事をありがとうございました。

  5. ぴーも より:

    海宝さんのファンになって日が浅いので情報が欲しかったので、とっても濃いインタビューだと思いました。自らあまり情報発信されないタイプなのですが、内心の闘志というか熱いもの、まるで青い炎のようなものが感じられて素敵なインタビューでした。写真も等身大の落ち着いた素晴らしい写真ばかりで、ドキっとしてます。
    これからの彼の成長も楽しみです。

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