「歴史は、とてもいじり甲斐がある」、『ザ・池田屋!』池田純矢インタビュー(上)

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

俳優の池田純矢さんが2015年に立ち上げた「エン*ゲキ」。《演劇とは娯楽であるべきだ》の理念のもと、全ての世代が楽しめ、笑い、感動できる王道エンタテインメントに特化した作品を深く追求する企画です。その第3弾であるエン*ゲキ#03『ザ・池田屋!』が2018年4月20日~30日に東京・紀伊國屋ホール、2018年5月11日~13日に大阪・ABCホールで上演されます。作・演出・出演の池田純矢さんに、作品についてお話をうかがいました。

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

――『ザ・池田屋!』は史上有名な「池田屋事件」を舞台にされていますが、史実として血生臭い題材をコメディ作品として取り上げられたのは何故でしょう?

そうですね。どちらかというと、先に「コメディをやる」というのを決めていたんです。僕が思う「コメディ」って「コント」にはしちゃいけない、って思っていて。

――「コント」ではない?。

はい。お笑い芸人さんが創るコントを観るのも、そういう笑いも僕自身すごく好きだし、素敵なものではあるんですけど、“お芝居をする”っていう上においては「コント」にしてはいけない、っていうのはあって。要は、笑わせるためだけに笑いがあるというのは良くないと思っているんですね。

じゃあ「コント」と「コメディ」の違いってなんなんだっていう話なんですけど、簡単に言ってしまえば「物語」なのかどうなのかというところ。これは他の方が言う定義とはまた違うかもしれないですけど、僕なりに感じるのは、やっぱり笑わせるためだけに笑いがあるのではなく、物語の上に笑いが乗っかっているのが「コメディ」だと思っているので。そういう意味でいうと、やっぱりちゃんとしたストーリーラインがないといけない。起承転結がなければいけない。お客様に対して驚きと喜びを与えなければいけない。それからエンターテイメントでなければいけない。と、いう上に「コメディ」が成り立っていると「コメディ」と呼べるのかな?という風に僕は思っているんです。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、歴史ものを含めて作品づくりについて池田さんについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。10日掲載予定のインタビュー「下」では、今回の作品に出演するキャストをどのように選んだのかや、池田さん自身のこれまでとこれからについて伺ったインタビュー後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■曲げようのない事実をいかに崩さず、むちゃくちゃに積み上げることが出来るか

■すごい人物だったにも関わらず、彼(吉田稔麿)のひととなりはどこにも残っていなくて

■「死んだように生きているのなんて、つまらないじゃない?」っていうのを言いたいだけ

■僕が何をしたいかを役者さんが分かってくれたら、180度違うことを演っても多分成立する

<エン*ゲキ#03『ザ・池田屋!』>
【東京公演】2018年4月20日(金)~30日(月・祝) 紀伊國屋ホール
【大阪公演】2018年5月11日(金)~13日(日) ABCホール
エン*ゲキ#03 『ザ・池田屋!』公式 HP
http://www.enxgeki.com/
エン*ゲキ#03 『ザ・池田屋!』公式ツイッター
https://twitter.com/enxgeki

<関連リンク>
株式会社バール 池田純矢
http://www.ba-ru.com/profile_ikeda.html
池田純矢  Twitter
https://twitter.com/junya_ikeda2710
池田純矢オフィシャルブログ
http://www.diamondblog.jp/official/junya_ikeda1027/

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池田純矢さん=撮影・伊藤華織

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

■曲げようのない事実をいかに崩さず、むちゃくちゃに積み上げることが出来るか

――「笑い」が物語の上に乗っているのが「コメディ」。

はい。ですので「コメディ作品を書こう」という中で、どういうものを題材にしようかっていうのを考えていったんです。僕は歴史が好きなのですが、幕末だけじゃなく戦国でも平安でも、ヨーロッパの歴史だったりインドの歴史だったりも好きですし、ギリシャ神話とかも好きなんですけど、なんか、そういうところってとても「土台がしっかりしている」というか。

前作の宇宙もの(『スター☆ピープルズ!!』2017年)を書いたときにも思ったんですけど、何かしらで「学問」とされるものって、とてもしっかりした「土台」があるというか、曲げようのない「事実」があるじゃないですか。科学であれば本当に“リトマス試験紙はアルカリ性に触れたら青くなる”そういうレベルのことから、みんなが知らないようなことまで。でも「定義」というもの、更に「定理」というものがあって、絶対に崩せない「事実」というのがあるのが僕はすごい好きなので、そうすると物語を書き易いというか。どんなにひっちゃかめっちゃか上を積み上げようが、ぐちゃぐちゃにしようが、土台は誰も変えることが出来ないので。

ということで考えると「歴史」というのはとてもいじり甲斐があるというか。「歴史」という土台を、いかに崩さずその上にむちゃくちゃに積み上げることが出来るのかなっていうことを考えていたときに、改めて「吉田稔麿」っていう人物を見つけたんです。稔麿に関しては僕自身もそんなに詳しくなかったんですよ。高杉晋作とか、宮部鼎蔵、久坂玄瑞とか「尊攘派」の人たちは有名なんですけど。

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

■すごい人物だったにも関わらず、彼(吉田稔麿)のひととなりはどこにも残っていなくて

――「尊攘派」を主軸に取り上げた作品も多いですね。

そうですね。ただ吉田稔麿に関しては、「松下村塾の四天王」と呼ばれていたとか、もし稔麿が生きていたら総理大臣になっていたんじゃないかとか、いろんな人たちがいろんな逸話を残すんですけど、彼のひととなりっていうのはほとんど残っていなくて(笑)。そんなにすごい人物だったにも関わらず、彼の死に関しても「池田屋で死んだんじゃないか?」みたいな(笑)。「なんだ、コイツは!?」と思って。

――なるほど!

なので、稔麿を史実、つまり土台との接着剤にして、何か物語を積み上げたら、きっとムチャクチャなことが出来るじゃないかな、というので「池田屋事件」をメインに扱おうかな、という流れで行き着きました。

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

■「死んだように生きているのなんて、つまらないじゃない?」っていうのを言いたいだけ

――池田さんご自身も歴史がお好きということで、松下村塾や吉田松陰に興味をお持ちなのかな?と思いました。

幕末の「思想」だけでいうと、どちらかというと「尊攘派」ではなく「旧幕府派」というか。僕は松平容保が好きなので(笑)。

――京都守護職ですね。

でもその時代に生きた人たちはみんな好きです。言い方は変かも知れませんが、みんなとても芯がしっかりしている。もちろん直接お会いした訳ではないので、実際問題どういう人間だったかというのは知らないですけども。

――信念を持っていて、そこからブレないというか。

そうですね。多分信念がなければ、生きていけなかったんだと思います。それは現代も同じだと思っていて。要はやっぱり「死んだように生きているのなんて、つまらないじゃない?」っていうのを言いたいだけの話なんですけど(笑)。

――作品では、絶対に死ねない男「吉田稔麿」と、絶対に死ぬ男「沖田総司」相反する存在を主軸にされていますね。

吉田稔麿を主軸に据えようと思ったのとほぼ同時期ぐらいに、これは僕の昔からの疑問で、沖田総司が労咳を患って池田屋で喀血したという史実が残っているけれども、もし池田屋で喀血していたのであれば、2年後の「鳥羽・伏見の戦い」では生きてないよね?って思うんです。今、通説では喀血したのは労咳での喀血ではなく、闘いの負傷だったんじゃないか?って言われているのを「じゃあ、もし本当に労咳だとしたらどうなるの?」というのを僕が書きたかったという(笑)。

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

■僕が何をしたいかを役者さんが分かってくれたら、180度違うことを演っても多分成立する

――脚本・演出としての池田さんは、役者がその枠組みの中で隅々まで動くことを望まれますか、それともそこから更にはみ出してくれることを望まれますか?

もう、圧倒的後者です、僕は。

――お稽古が始まって間もないですが、すでに脚本からはみ出しそうな雰囲気はありますか?

そうですね、はみ出すのが面白いんじゃないかなとは思っているんですけど、まず第一に僕が役者として思うことなんですけど、まずは脚本に書いてあることを全うする。その上で演出家が何故それを望んでいるのかというところを汲み取って、もし汲み取ることが出来たのだとすれば、後は自由に演っていいという。

なので、稽古序盤は僕が、こういう風に演じて欲しい、こういう風に台詞を切って欲しい、台詞を出して欲しい、この“間”でやって欲しいっていうのを、細かく伝えると思うんです。それで物語、劇構造上、役として、僕が何をしたいかっていうのをすべて、役者さんが分かってくれたとしたら、僕が言ってることと180度違うことを演ったとしても多分成立するはずなんですよね。なので、そういう意味で圧倒的後者と言ったんですけれども。それはもちろん出来た上でどんどんはみ出して下さいっていうのを言いたい(笑)。

――先程おっしゃった「しっかりした土台の上にならどれだけ積み上げても大丈夫」というのに通じますね。

そうです、そうです。

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

池田純矢さん=撮影・伊藤華織

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“「歴史は、とてもいじり甲斐がある」、『ザ・池田屋!』池田純矢インタビュー(上)” への 2 件のフィードバック

  1. ぐりん より:

    池田さんの作品はエンゲキシリーズは第一弾の頃より観劇しており、役者としての池田さんとはまた違う姿を拝見させて頂けてとても面白いです。
    しかし、根本的なところが役者としても演出家としても脚本家としても常にぶれていないところが本当にすばらしいと思っています。

    今回のアイデアニュースさんのインタビューでは特に内容につい以外にも深く掘り下げられていてとても興味深かったです。
    そして、役者としての池田さんの演技もとても好きなのでエンゲキシリーズでも表に出ていただけてうれしい限りです。
    上演楽しみにしております。

  2. yuriko より:

    とても、読み応えのある素敵な記事でした。また、池田さんの思いの一端でもある「死んだように生きているのなんてつまらないじゃない?」はとても興味深かったです。池田さんは、そう考えているからこそ、笑いを届けてくれようとしているのだなと深く感銘を受けました。池田さんは才気溢れる役者さんでありながら、とても情熱的な観客としての視点もお持ちになっているので、そんな方が作り出す世界がとても楽しみです。
    お写真もとても素敵で、魅力的な写真を沢山ありがとうございました。

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