「掴めない部分との対峙も面白い」、『誰もいない国』平埜生成インタビュー(上)

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

ノーベル文学賞を受賞したハロルド・ピンター作、演劇『誰もいない国』が2018年11月8日(木)から11月25日(日)まで、新国立劇場 小劇場で上演されます。演出は寺十吾さんで、出演は、柄本明さん、石倉三郎さん、有薗芳記さん、平埜生成さん。一室の中での会話を通して繰り広げられる虚実曖昧な4人芝居です。アイデアニュースでは、フォスター役で出演される平埜生成さんにインタビューし、作品について、稽古の様子などについて伺いました。上下2回にわけて掲載します。インタビュー「下」では、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』出演などについても伺いました。

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

<ものがたり>(新国立劇場の公式ページより)
ロンドン北西部にある屋敷の大きな一室。ある夏の夜、屋敷の主人ハーストとスプーナーが酒を飲んでいる。詩人のスプーナーは、酒場で同席した作家ハーストについて家まできたようだ。酒が進むにつれ、べらべらと自らをアピールするスプーナーに対し、寡黙なハースト。スプーナーは、共通の話題を見出そうとハーストに話をふるが、もはやそれが現実なのか虚構の話なのかわからない。そこへ、ハーストの同居人の男たちが現れて…。

――新国立劇場初登場ですね。ご出演を告知された公式ブログは喜びが溢れていらっしゃいました。新国立劇場の舞台に立つというのは、やはり特別なものがありますか?

新国立劇場は芝居を観に通ってきた劇場なんです。ただ新国立劇場の舞台に立つというよりも、その“新国立劇場制作”の作品に出られる喜びの方が大きかったです。新国立劇場のラインナップに入ることが、自分の中で大きなものがあって、その喜びを書いた感じです(笑)。新国立劇場、つまり「国」がラインナップを考えたものに参加できる俳優になれたというか、そこに入ることが出来た喜びというか。

――新国立劇場で以前から観劇されていらっしゃったのですね。

そうですね。ラインナップが面白いと思っていました。芸術監督が選んだ作品と、そこに賛同して集った演出家とか、出演者がいて。そこに呼んでいただけたというのは、なんと言えばいいか…「良かったな」と思えた感じです。

――最近は映像作品のお仕事が続いていらっしゃいましたね。

舞台は久しぶりですね。

――ハロルド・ピンターの戯曲にはこれまでに触れられたことはありますか?

お芝居を観たことはあったんですけど、演じるのも、文字として読んだのも初めてでした。

――お稽古が始まってから、作品に対して何か発見があったり、作品の印象が変わったことがありますか?

発見で言うと、先輩方も「分からないことが良いんだよね」とか、「分からないことが面白いんだよね」とおっしゃっているんですけど、 “真意”までは行かないけれど、なにか作品の“核”の部分をこう、ちょっと触れられたのかなと思う瞬間があります。

<取材協力>
【アイテム】ブルゾン(Johnbull、¥22,000、ジョンブルカスタマーセンター、050-3000-1038)、 カットソー(UMBER、¥13,800、STUDIO FABWORK、03-6438-9575)、パンツ(Blanc YM、¥25,000、TEENY RANCH、03-6812-9341) 価格はいずれも税別
【スタイリスト】渡辺慎也(Koa Hole)
【メイク】白石義人(ima.)

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、演出の寺十吾さんについての印象や、などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。11月2日掲載予定のインタビュー「下」では、2017年にNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』に徳川家康の嫡男の信康役で出演し、新鮮な印象を残したことなどについても伺ったインタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■中間地帯というか、どっちつかずというか、曖昧な面白さに少しずつ触れて

■(演出の寺十吾さんは)想像していたよりも、細かく丁寧な演出をされる方

■本読みではみんなのイメージを想起させ、立ち稽古ですごく明確な指示を

■お金をいただいて舞台に立っているので、勉強という気持ちは持たないように

<新国立劇場 演劇『誰もいない国』>
【東京公演】2018年11月8日(木)~11月25日(日) 新国立劇場

<スタッフ・キャスト>
作:ハロルド・ピンター
翻訳:喜志哲雄
演出:寺十吾
出演:柄本明、石倉三郎、有薗芳記、平埜生成

<公式サイト>
https://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_011667.html

<関連サイト>
平埜生成オフィシャルブログ「稲穂だより」
https://ameblo.jp/hirano-kinari/
平埜生成 Twitter
https://twitter.com/kinarichan
アミューズ 平埜生成
http://artist.amuse.co.jp/artist/hirano_kinari/

『誰もいない国』 関連記事:

⇒すべて見る

平埜生成 関連記事:

⇒すべて見る

※平埜生成さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは12月1日(土)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

■中間地帯というか、どっちつかずというか、曖昧な面白さに少しずつ触れて

僕はまだ稽古では立ってはいないんですけど、皆さんと戯曲を読み解いていく中で、会ったこともないイギリスの作家さんが書いた作品を、生まれ育った国も街も何もかも違う僕たちが、100パーセントすべて理解することはなかなか難しいなと感じていて。それは日本人同士でもそうですし、更に言うと友人同士であってもそうだと思うんですけど、そこの、なにか掴めない部分というか、どうしても100パーセントは理解できない、そういうものと対峙するということを改めてやっています。書いてる内容も、一般的には「不条理劇」といわれたりしていて、 “探り合う劇”というか…。僕はどうしても、白黒はっきりさせたい性格なので、今までは、実態がなんなのか分からないものと対峙していることが「面白い」と思う感覚がなかったんです。でも今回、“No Man’s Land”という言葉の意味のように、その曖昧な部分というか、中間地帯というか、どっちつかずというか、分からない曖昧な面白さに少しずつ触れていけているのかな、とは思っています。

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

■(演出の寺十吾さんは)想像していたよりも、細かく丁寧な演出をされる方

――今回のカンパニーで共演されたことのある方はいらっしゃいますか?

皆さん初めてですね。

――演出の寺十吾さんについて、どんな印象をお持ちでしょう?

想像していたよりも、細かく丁寧な演出をされる方なんだなっていうのをすごく感じています。寺十さんは役者さんの顔も持っていて、というか、そもそも役者さん、俳優側の人間なので、どういう演出をされるのか興味があって。これまでの寺十さん演出の作品を観ると、爆音の音楽がかかったり、どこか突き刺さってくるような演出をされるというか、チクチクするというか、自分の頭の中でノイジーな感じというか、そういった演出をされるイメージがあったので、今回はどんな感じだろう? と思っていたら、すごく丁寧に理由を立てて動く動機を作ってくださるんです。本読みの段階から本当にひとつひとつ順序立てて話してらしたので、意外でした。そして、ああいうスリリングなお芝居がこうやって創られているという想像はつかなかったので、そのギャップはすごく感じています。

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

■本読みではみんなのイメージを想起させ、立ち稽古ですごく明確な指示を

――役者さんでもあるからこその、役者に対して伝えやすいアプローチをされていらっしゃるのかもしれませんね。

そうですね、例え話として寺十さんご自身のパーソナルなご家族の話とかをされたりもするんです。いきなり核心を言うのではなくて、ワンクッション入れて、「俺の親父の話なんだけど~」、「弟の話なんだけど~」みたいな話をはさんでから“核心”にいく感じです。そのコミュニケーションの取り方が、『誰もいない国』に出てくる人物に近いな、と思っています。寺十さんを見て、役作りに役立つんじゃないかと思って、今観察させてもらっています。

――結論を先に示さず、事例から展開していって、役者自身が考えて結果へ辿り着けるように導く、という感じなのですね。

本読みの段階ではそうでした。立ち稽古を見ている感じだと、またぜんぜん違うんですけど。

――立ち稽古では、また違うアプローチなんですね!

そうですね、立ち稽古になると、明確なビジョンが寺十さんにはもう完全に見えていらして、それを役者さんに伝えて、という感じですね。本読みの段階ではみんなのイメージをどんどん想起させなきゃいけない、ということがあったと思うので。でも立ち稽古になった瞬間に、また違うモードのスイッチが入ったというか、すごく明確な指示をされていらっしゃいます。

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

■お金をいただいて舞台に立っているので、勉強という気持ちは持たないように

――共演される皆さんは大先輩方でいらっしゃいますが、こんなところを学びたいなと思われるところはありますか?

全部学べるところばかりだと思います。でも自分自身もお金をいただいて舞台に立っているという意識があるので、あんまり「勉強させていただきます」という気持ちは持たないようにしているんです。あくまでプロとして舞台に立つので、勉強ではないですし(笑)。

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

平埜生成さん=撮影・伊藤華織

※平埜生成さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは12月1日(土)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA