2019年2月15日(金)より、よみうり大手町ホールで上演されるミュージカル『イヴ・サンローラン』に、ダブルキャストで主演する東山義久さんと海宝直人さんのインタビュー、後半です。イヴ・サンローランへの思い、お互いのイヴ・サンローランの印象などについて伺いました。
ーーイヴ・サンローランという人物について、稽古していて感じていることをお聞かせください。
海宝:稽古しながらすごく難しいなとは感じています。実在の人物であるけれども、この舞台においては、もちろんそのリアリティも必要ではありますが、それを跳躍したところにも行かなければいけない感じがあって。実在の人物であることと、舞台におけるサンローランというところの両立が、すごく難しいと思いながら取り組んでいます。
東山:一番リアルでいるのが、ピエールだと思いますし、彼がサンローランという人物を浮き彫りにしてくれるというか。今回の作品のなかで、サンローランは天使のような印象があって。
海宝:確かに。
東山:同性愛者で、ふたりが愛し合っているというよりも、ピエールはサンローランにとって、お父さんやお兄ちゃんみたいな感じ。今、稽古でよく組んでいるのが大山真志で、大きいんですよ。
海宝:そうね……。
東山:安心するんですよね。
海宝:安定感がね。バフっていう感じ。
東山:彼が立っていて、僕が下に座っている絵が、すごくサンローランだなという感じがしています。父性に寄り添うというか。ピエールが、サンローランをどうにか捕まえようとして、メゾンを作ったりする。ピエールはサンローラン自身にも、彼の才能にも惚れていた。サンローランは才能に生き抜いたけれど、ピエールのことをどこまで好きだったのかというのは、今の構成上、“捕まえたいけれど捕まえられないサンローラン”となっているんです。その全体を見たときに、ルルの天使の部分が、この作品を通してずっとあればいいのかなと思っています。サンローランはずっと明日を見ている感じですね。
ーーふたりの生きている次元が少し違うような感じでしょうか。
東山・海宝:そうですね。
東山:抱かれているけれど空を見ているような。そんな人物像なのかなと思っています。台本にリアルに書かれていないところが多いですから。ずっと歌っているので、リアルな感情を吐きだすようなところがセリフ上はなかったりするんです。だから、そういうサンローランの方向に持っていこうかなと思っていますね。
ーー上原さんのピエールはいかがですか?
東山:逆に理生はピエールの紳士の部分が出ているというか。彼は天然だけれど、見た目が紳士でスッとした感じ。そのいい部分が出ていると思うんです。
ーーそうすると、ピエールも全然違いますね。
東山・海宝:全然違う!
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、舞台の後半、イヴ・サンローランが精神状態を崩していくところなどについてや、東山さんから見た海宝さんの可愛らしさ、海宝さんから見た東山さんの可愛らしさなどについて語ってくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■海宝:彼が精神状態を崩していくところ、今はまだ掴めていないところがあります
■東山:“コンサート”のような印象が、どんどん本当のサンローランになっていく
■東山:直人の人間個体の可愛らしさが、サンローランのピュアな部分とリンクする
■海宝:今までに見たことがない東山さんです。チャーミングで、爽やか可愛い
<ミュージカル『イヴ・サンローラン』>
【東京公演】2019年2月15日(金)~2019年3月3日(日) よみうり大手町ホール
【兵庫公演】2019年3月26日(火) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式サイト
https://www.yume-monsho.com/
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■海宝:彼が精神状態を崩していくところ、今はまだ掴めていないところがあります
海宝:リアリティと、この作品におけるサンローランを探しているところですが、稽古がこれから後半に入っていくので、彼が精神状態を崩していくところなど、正直、今はまだ掴めていないところがあります。先日、荻田さんから映画『ディオールと私』のDVDをお借りしたんです。ディオールに新しくオートクチュールのデザイナーとして初めて入った人の、ショーまでの8週間を描いたドキュメンタリーなんですが、すごく参考になりました。まさにアーティストで、時に自分の思い通りにいかなかったりとか、周りが上手くついてこないことにイライラしていたり、最後に実際のショーのシーンで、涙が溢れて感情が溢れていたりとか。
東山:バルコニーで緊張のあまり泣くところがあるじゃない。ああいうところが、きっとサンローランにもあったのかなと思うよね。重圧を感じているような。
海宝:そうですね。僕が知らないファッションの世界で、命をかけてオートクチュールに向き合っている姿って、だからこその、ショーが終わったときの涙なんだろうと思いますし、すごく気づかされるところもありました。そういう世界の人なんだなと、映画を見て改めて実感しました。そのアーティストの感覚はすごく大事にしたいと思いつつ、コミカルなシーンもあるので、バランスも含めて、この世界におけるサンローランを作っていけたらと思います。これから後半を作っていって、また前半に戻ってきたときに、違うものが見えるだろうなと思います。
東山:はやく後半をやりたいね。
海宝:先の風景を見たいですよね。
■東山:“コンサート”のような印象が、どんどん本当のサンローランになっていく
ーー特にオートクチュールのデザイナーは、生み出した作品そのものが命のような感覚だと思うんですが、そういうアーティストを演じることについてはどう感じていますか?
東山:演じること自体がひとつの芸術だと思うので、アーティストを表現することも芸術ですよね。これまでいろんな人を演じてきましたが、時代が今に近い人というのが初めてなんです。映像も残っているくらいですし、みんなが知っていて、演者としてはとてもやりづらいなと。映画にもなっていますし、まずビジュアルから似せていかなければいけないじゃないですか。こうじゃないと言われたら終わりですからね。最初に撮ったビジュアル撮影でも繊細に作りました。眼鏡もどっちがいいかなとか。
海宝:サンローランっぽいって言って。「ぽい、ぽい」が飛び交っていましたよね。
東山:ぽい! ぽい! ってね。
全員:(笑)。
東山:僕がこれまで演じた土方歳三やニジンスキーなどは、すでに美化されている人でしたから、こうだったらと提案すればいいじゃないですか。でも、今回はサンローランありき。けれど、荻田ワールド。演じるのは日本人。難しいですよね。
海宝:本当に難しいですよね。
東山:僕と直人が演じるサンローランは全然違うと思いますし、ダブルキャストとして楽しみなんじゃないかと思います。
海宝:やはり難しいですよね。東山さんがおっしゃっているとおり、実在の人で、映画もある。そこに似せなければと思いつつ、荻田さんが求めるところはそこではないのかなとも感じていて。でも、独自の路線に行っていいものなのか、どうなのか。フランス大使館の方々も期待していらっしゃいましたから。
東山:全然違うって言われたりしてね。
海宝:こんなのはサンローランじゃないって言われたりして。それはちょっと怖いというか、ドキドキしています。
東山:ガチのサンローランのお芝居ではないですからね。シャネルが喋っていたり、隣にディオールがずっといたり。
海宝:ワイプ的に茶茶入れてきたりする。
東山:舞台上に、演じるスペースと、その周りに休憩するスペースのようなところがあって、そこから茶茶を入れてくるんです。
海宝:セリフとしては書いていないですが、ガヤガヤと言ってくるんですよ。
東山:最初に“イヴ・サンローランを中心とした音楽作品”と言いましたが、その場所を使って、演者が演じているサンローランになったり、シャネルになったりするのを、お客様に見せているという印象を持たれると思います。それがどんどん本当のサンローラン、ピエール、シャネルになっていく。あくまで今の段階での印象ですが、そうなっていくんじゃないかと思います。
■東山:直人の人間個体の可愛らしさが、サンローランのピュアな部分とリンクする
ーー普通に物語が進行していく作品を作るのとは、方法が違う?
海宝 そうですね。劇中劇のような表現もあったりしますし、冒頭はピエールが深刻な感じで出てきて歌うんですが、そこでルルがふざけ倒しているんですよね。それは台本にはないんですが、顔を覗き込んだり、話しかけたり。なかなかブラックなことも言ったりする(笑)。いわゆるお芝居やミュージカルとは違ったものですね。
ーー海宝さんは昨年パリでイヴ・サンローラン美術館にも行かれましたが、何か影響はありますか?
海宝 美術館以外もパリの空気感も含めて、ああいう空間で仕事をしていたんだなとか、ああいう建物に囲まれていたんだなど、知ることができてすごくいい経験だったと思います。日本では体験できないことですね。「オートクチュールをつくるアーティストはみんなお母さんが着ていたような服を作る」というセリフがありますし、『ディオールと私』の映画にも、「自分の作る服は色彩などに自分が育った家が影響している」というナレーションが入るんですが、ああいう土壌で育ってきたから芽生える美意識があるでしょうし、パリの街の色彩感や世界観など勉強になりました。
ーーお互いのサンローランを見ていてどう感じていますか?
東山:僕らはダブルキャストなので、どちらかがやっているときは、どちらかが見ていることになって、稽古が半分になるので、稽古期間が他の役者さんより少なくなるのは仕方ないんですが、実際ある意味の正解と不正解が見れるというのは初めての経験ですね。
ーー以前複数キャストで演じられていた『レ・ミゼラブル』のアンジョルラスなどどは違いますか?
東山:『レ・ミゼラブル』は形式があって、絶対にここにいたらこうするなどの、
海宝:決まりごとがありますからね。
東山:今回のようにゼロから作っていくのは初めてなんです。だから、僕が動いたものがダメだというのを直人が見たり出来るし、それがいいというときもあったり。しかも主演という立場でこういう経験ができるのが初めてで、不思議な感覚もあるんですが、自分がどう見えているかはわからないけれど、こうやったらこう見えるんだとか、(サンローラン)ぽいなとか、勉強しています。直人の持っているものと、サンローランぽいところがすごく合っていると思うんです。可愛らしさというか。サンローランを演じているときの人間個体の可愛らしさが、サンローランのピュアな部分とリンクするんじゃないかと思います。真似は出来ないと思いますが、こうやったほうが僕のオラオラ感が消せるかなと参考にしています。どうにかして消さなければいけないので。
全員:(笑)。
東山:正面を向いて立つと肩幅が大きいから、ちょっと斜めに立つとか。そういうところまで、お世話になっています。勉強させて頂きます。
海宝:何をおっしゃいますか(笑)。こちらこそです。
■海宝:今までに見たことがない東山さんです。チャーミングで、爽やか可愛い
ーー海宝さんから見た東山さんはいかがですか?
海宝:今までに見たことがない東山さんです。可愛いんですよ。チャーミングで。初めて見る東山さんを勝手に楽しませて頂いています(笑)。
東山:(笑)。
海宝:爽やか可愛い東山さんです(笑)。
ーー新しいですね!
海宝:それでいて、体の使い方とか、立ち姿の美しさなど、もちろん東山さんが元々持っている美しさも、こちらこそ勉強させて頂いています。
東山:目標がミックスアップなので。お互いにいいところを絡めあっていこうと。
海宝:そうですね。良きところを。
ーー美を生みだす人は、自分がどう見えるかについてもすごく意識が高いと思うんですよね。今おっしゃっていた立ち姿ひとつをとっても、美しくないわけがないというか。東山さんの立ち姿の美しさが生きるんじゃないかと。
東山:そんなに美しく立てていたかわからないですが、いつも、荻田さんと振付の港(ゆりか)さんから、「格好良すぎ」と(笑)。
海宝:「格好良すぎ」はよく出てますね。
東山:少し動いたときに、足が伸びてしまうんですよ。
海宝:そうすると、「カッコイイ」って言われる。
東山:踊ってしまったらダメだと。自分で今まで作ってきたことが足かせになるとは思わなかったです。今回は踊りもなく歌ですし。相対するのが彼でしょう? 完全にハンディキャップマッチですよ。
海宝:(笑)。
東山:新しい挑戦なので、初心に戻って頑張ろうと思います。
ーーおふたりの新しいところが見られるんですね。
海宝:本当にそうですね。
ーー“可愛い”がキーワードですね。おふたりの“可愛い”が見られることは、なかなかないかもしれないですね。特に今からの年齢だとあまりないじゃないですか。
海宝:確かに!
東山:直人はまだあっても、僕はないよ!
海宝:そろそろなくなりますから(笑)。
ーー可愛いが見られる貴重な機会になるということで。
東山:ちょうど一周回って、42歳がこんなことをやったら可愛いとなるような歳かも。
海宝:そうかも! ぜひ楽しみにしてください!
東山:よろしくお願い致します!
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いつもアイデアニュースさんの記事を楽しみにしています!
東京公演は昨日千秋楽を迎え、観劇が終わったあとに読ませて頂くと、より深い部分が見えてくるような気がします。
こちらのインタビューを読ませて頂き、立ち姿やダンスの足先指先まで注目して観劇させていただきました。
イヴ・サンローランの半生を色々調べ、自分なりに感じたのイヴそのものでした。
終わってしまったのが寂しいです。
このインタビューを拝見してから、実際の舞台を観て、いつもとは違う繊細でナイーブな東山サンローランに大感動しました。
海宝サンローランは何となくイメージが掴めていたのですが、東山さんがあんなにも守ってあげたくなるような可愛いサンローランになるとは、正直嬉しい誤算でした。
楽曲や照明もきれいだし、衣装も楽しめるので、また観に行きたいと思っています。
初日おめでとうございます。
サンローランの世界観、サンローランのつくるコスメが大好きでとても気になっている作品でした。
大好きなサンローランの世界観、そこに大好きなキャストの皆様が加わるとのことで楽しみでなりません!
あまり事前情報を入れないで観劇したいと思っていましたが、稽古の様子が知れてとても読み応えのあるインタビューで、読めてよかったです!
ステキな記事をありがとうございました。
お二人が作品をどう捉え、どのように役作りをされようとしているのか、お稽古中でまだまだ模索中の点含め率直に話されて下さっているのが、とても興味深く面白かったです。
この初演を拝見出来る日が、ますます楽しみになりました。
一度観劇してから、改めてこの記事を読み返してみたいとも思っています。
海宝直人さんをたくさんとりあげてくださって嬉しいです。
これからの活躍がますます楽しみな俳優さんで、ずっと応援していきたいと思います。