「人間を描きつくしている作品だなと」、『笑う男』浦井健治インタビュー(上)

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

ヴィクトル・ユゴーの小説を原作にしたミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』が、2019年4月9日(火)から4月29日(月)まで日生劇場で上演されます(愛知、富山、大阪、福岡でも上演)。グウィンプレン役で主演する浦井健治さんにインタビューしました。原作小説をフランク・ワイルドホーンの楽曲に載せた、2018年に韓国で生まれた大作ミュージカルの日本版初演となります。稽古がはじまる前の、2月初めにお話を伺いました。

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

――この作品を韓国でご覧になったと伺いましたが、いかがでしたか?

大きな賞を受賞するのも納得の、とても高いクオリティでした(※第3回韓国ミュージカルアワードで大賞を受賞しています)。クリエイティブな面も、スタッフワークも完璧で、本当にすばらしかったですし、セットも豪華で、衣裳も照明も凝っていました。演者もみんな楽しんでいて、お客様も歓声をあげていて。タイミング良く観れたので、よかったです。韓国版があるからこそ、日本版を演出の上田(一豪)さんとどう作ろうかなと思いました。そして、自分ならではのグウィンプレンを、祐さん(山口祐一郎)のウルシュスに対して、作っていきたいと思いました。

――観るときは「これをやるんだ」と思って観るんですか? それとも、普通に作品を楽しむ?

今回は決まっていたので「これをやるんだ」でしたね。「この役か。3曲連続でこの曲を歌うのは骨が折れるぞ」みたいな(笑)。

――具体的に思っちゃうんですね(笑)。

「キーはどうかな」とか、自分の喉と照らし合わせながら観たりもします。

――ワイルドホーンさんがピアノを弾いてこの作品をやらないかと話したと、製作発表でお話されていましたが、事前に楽曲の印象などが入った状態で、韓国版を観て変化はありましたか?

はい。ヴィクトル・ユゴーさんの原作を読みましたが、原作に対してどういう風に作ってミュージカルとして立ち上げたのか、どうやってこの部分をピックアップしたんだろうかと考えました。強調しているところも、ここは大事な物をチョイスしているんだ、とかそういった見方もできました。そして、これはウルシュスとグウィンプレンの愛の物語でもあるということもよくわかりました。だからこそ、如実にふたりのやりとりがメインになっていて、これは大変だぞと。

――作品が最初に発表になったときも、浦井さんと山口さんのおふたりがまず発表になりましたね。

本当にふたりが中心となった、家族愛、人間愛の物語です。そして、貧富の差から浮き彫りにされる、人間の業などを払ったあとに残る真実の、一番大切にしたいものが見えてくる。やはりユゴーさんが『レ・ミゼラブル』でも描いた物語の核もそこにあると思うので、そういうところが『笑う男』の本質でもあると思います。だからこそ、グウィンプレンの口が裂かれてしまった悲しみと、デアの目が見えない悲しみとがクローズアップされて、そのふたりの純粋な愛が真っ白なものとして見える。醜いことと美しいことの対比や、貴族と貧民の対比から、愛が見えてくるというのが、ユゴーさんの術というか、技という感じがしますね。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、原作を読んでの印象や、共演者・スタッフとのエピソードなどインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。2日掲載予定のインタビュー「下」では、『ヘンリー五世』『ゴースト』『メタルマクベス』についての振り返りなどインタビュー後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

(原作を読んだ印象は?)人間を描きつくしているなと思いました

(山口)祐さんは、大きな背中を見せてくださるおひとり。本当に感謝しています

ワイルドホーンさんの人柄から感じる、作品の力強さ

(前田さんの衣裳は)袖に手を通すだけで分かるときがある

<日生劇場『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』>
【東京公演】2019年4月9日(火)~4月29日(月・祝) 日生劇場
【愛知公演】2019年5月3日(金祝)~6日(月) 御園座
【富山公演】2019年5月10日(金)~12日(日) 新川文化ホール
【大阪公演】2019年5月16日(木)~19日(日) 梅田芸術劇場メインホール
【福岡公演】2019年5月25日(土)~26日(日) 北九州ソレイユホール
公式サイト
https://www.tohostage.com/warauotoko/

<関連リンク>
ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』
https://www.tohostage.com/warauotoko/
浦井健治オフィシャルファンクラブ “Kopi-Luwak”
https://www.fanclub.co.jp/k_urai/?id=8
浦井健治&STAFF Twitter
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浦井健治さん=撮影・岩村美佳

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

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■(原作を読んだ印象は?)人間を描きつくしているなと思いました

――原作を読んだ、物語としての印象はいかがでしたか?

『レ・ミゼラブル』と同じく、書かれたのがフランス革命の時代であり、貧困や病気が蔓延していたり、色々と暗い大変な時期だったこともあり、重いけれど人間を描きつくしているなと思いました。同時に、少し詩的なイメージもありました。雪の降りしきる中で始まる物語が、すごく印象的で、きれいにも思えましたね。

――私は原作を拝読できていないですが、昨年ヴィクトル・ユゴー記念館にちょうど行ったんですよ。

すごいですね!

――4月に『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』『レ・ミゼラブル』が同時に上演されるので、すごくタイムリーだなと。ユゴーがどんな人生を送ったかというのがメインの展示なんですが、芝居を上演したときの当時の絵なども飾ってありました。全体を通して、波乱万丈の人生ながら、ご家族を大事にした方で、館の一番上にお孫さんふたりを両脇に抱えて微笑む写真が飾ってあったんです。すごく愛を大切にした、愛に溢れた方だなと思いました。

すばらしいじゃないですか! もし僕がそこで写真を見ていたら、「ユゴーさんは自分をウルシュスに見立てて、自分の孫への愛を、グウィンプレンやデアに託したのかも」と言えるかもしれないですが(笑)。

――なるほど(笑)。

でも、そういう風に見えるくらい、素敵な作品との関係性が感じられます。

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

(山口)祐さんは、大きな背中を見せてくださるおひとり。本当に感謝しています

――この作品のPVが素敵だなと思いました。見ているだけでキュンとしますね。

PVに関しては祐さんの笑顔ですね。あの笑顔も、あのお芝居も完璧で。あの表情が全てを物語っていますよね。もうウルシュスは祐さんしかいないなって。祐さんがいるから、この作品は成立するんだと思います。

――なるほど。

ウルシュスがデアを抱えてソロナンバーを歌うところなんかは、ジャン・バルジャンを彷彿とさせるぐらい。もう、そのくらいユゴーの世界の祐さんは偉大というか。本当にとても大きいですね。

――あの笑顔やビジュアルなども含めて『王家の紋章』も思い出しました。これまでにも何度も共演されていますが、今回改めて共演することへの思いはいかがですか?

祐さんは第一線でずっと活躍されていて、劇団四季にいらっしゃった時代からそうですが、ずっとこのミュージカル界を牽引されているおひとりだと思います。何を大切にしていて、何を考えているのか、常に学ばせて頂いています。とても大きな背中であり、その存在が目の前でずっと走り続けているのはとても有難いことですし、更にご自身は今でも自分と戦って、後輩たちを育てて、周りの人たちを大切にしている。祐さんは自分にとっての目標なんです。そういう方がいてくださるのは役者として恵まれていますし、親しくしてくださる、目にかけてくださっていることに感謝しています。

――なにか山口さんとお話になったことは、ありますか?

色々ありますけど、祐さんは、作品や未来のミュージカル界のことを考えて行動されている方なので、そういう意味で託してくれている部分もあるんだろうなと思います。

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

ワイルドホーンさんの人柄から感じる、作品の力強さ

――音楽について伺いたいのですが、ワイルドホーンさんとは、『デスノート THE MUSICAL』での深いお付き合いがあると思いますが。今回、ワイルドホーンさんが、浦井さんがこの役を演じるということに対しては、なにかお話されました?

まだ稽古が始まっていないので、お会いしていないんですけど、でも、決まったという話を聞いて、きっと喜んでくださっているんじゃないかなとは思います。

――『デスノート THE MUSICAL』でご一緒されていかがでしたか?

ワイルドホーンさんは、フランクでいらっしゃるフランクさんなんです(笑)。すごい人なんですよ。それなのに、とても気さくな方なんです。大好きだし、救っていただいたし、上手に乗せてもいただいて。最後までやらせて頂けたのもワイルドホーンさんの人柄、お力もあったと思います。

――作品自体も愛に溢れていますが、ワイルドホーンさんもすごく愛に溢れているイメージがあります。

そうですね。ユゴーさんもそうかもしれませんが、家族を大切にしているし、息子さんの意見も大事にされているみたいですね。息子さんにもお会いしましたが、みんな笑顔に溢れていて、楽しそうでした。やはりクリエイティブな人は常にオープンマインドで、壁はなるべく作らないように生きているというか。だからこそ、繊細で傷つきやすい方もいらっしゃるのかもしれませんが、ワイルドホーンさんからはそれすらも飛び越えた強さを感じるので、作品にも力強さが出てくるのが楽曲の特徴かなと思います。ロングトーンが多いことなどがまさにそうですね。

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

■(前田さんの衣裳は)袖に手を通すだけで分かるときがある

――昨年から、クリエイターをメインにゲストにお迎えする、トークイベントをさせて頂いているんですが、この作品で衣裳を担当される前田文子さんに出演して頂いたんです。

そうなんですね!

――おっしゃるとおり、前田さんもとてもオープンマインドな方でした。製作発表のときに前田さんの衣裳についてもお話されていましたよね。「物語を語ってくれる」という言葉がすごく印象に残っています。その辺を詳しく伺えますか?

衣裳って、袖に手を通すだけで分かるときがあるんです。不思議なんですが、「そういう思いで作っているんだな」というのが伝わるときがある。それが、前田さんは常にあるんですね。納得がいかないことはとことん突き詰める方なので、厳しいところもあるかもしれませんが、それはきっと作品を観てくださるお客様のためだと思いますし、ご自身の美意識の具現化でもあると思います。下調べも徹底しているから、その時代の風景まで見ているような感じがあります。だから、グウィンプレンの衣裳に手を通した瞬間に「これはどういうことなんだろう」と考えさせられる。これはグウィンプレンが自分で手に入れたのか、盗んだものなのか、誰かのお下がりなのか、ステージ用の一張羅なのか否か……。「これを手にした時期はいつだろう」ということが衣裳から伝わってくるんです。

――物語の背景みたいなものが、どんどん浮かびあがってくるような?

はい。衣裳から教わることがたくさんあります。

――その衣裳を着て、芝居をしているときは、どんな感覚ですか?

守られている感覚があります。たとえば、新国立劇場のヘンリーシリーズでも、衣裳を着ると、その役を纏える。衣擦れを含めて、足元から、その王室の大理石の感覚が足から伝わってくるとか、イメージがすごく膨らんでくるんです。

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

浦井健治さん=撮影・岩村美佳

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“「人間を描きつくしている作品だなと」、『笑う男』浦井健治インタビュー(上)” への 14 件のフィードバック

  1. シャンパンガーネット より:

    笑う男東京公演終了後にあらためて読み返しまして、浦井さんのおっしゃる家族愛、親子愛という作品になるというのがよくわかりました。
    そして、当時は知らなかったあの3曲を聞いた今では、インタビューでの内容に納得しました。
    あの3曲を聴くことができて本当に素晴らしい公演でした。

  2. さくらねこ より:

    いよいよまもなく幕があけますね。製作発表のグウィンプレンも拝見できて浦井さんの意気込み、優しさ感じて今回のインタビューを読ませて頂いて宝石箱を大切に抱えるように守り育み、それがこれから世界に向けて羽ばたこうとされているような浦井さんのきらめき感じました。楽しみにしてます!

  3. もも より:

    いつも素敵な記事ありがとうございま。
    前田文子さんとのトークイベント、私も参加しました。素敵デッサンもお持ちいただき、お話伺えてとても興味深かったです。

  4. miyabi より:

    浦井くんの、インタビューと素敵なお写真ありがとうございます。
    まだ始まってないけど インタビューの中に作品の世界が広がっている気がしました。グィンプレンと ウルシュスの優しい世界に、早くふれたいとおもいました。

  5. ゆりか より:

    いつも素敵なインタビューと写真ありがとうございます!

    日本初演、大好きな浦井さん主演と大好きなワイルドホーンさん作曲で発表時から楽しみにしておりましたが、さらに楽しみになってきました!

  6. ぽち より:

    間もなく始まる日本初演の笑う男はどんな世界を客席から一緒に旅出来るのか、今から本当に楽しみで仕方ありません。浦井君が愛して尊敬してやまない偉大なる帝王ゆうさまとのどんな熱いキャッチボールが沢山見聞き出来るのか本当に楽しみです。今回も深い記事と写真有難うございます。

  7. ゆってぃ より:

    初日を1週間後に控え、この記事を読んでますます期待が高まってきました。
    特に衣装を身に纏った時に立ちあがってくる感覚についての話はすごく具体的にイメージできてゾクゾクしました。

  8. sei より:

    訂正です!m(_ _)m

    浦井君の良い所満載なお写真は、ラストから2つめでした☆(≧∀≦)

    ラストのお写真ももちろん素敵ですが☆

    素晴らしいお写真、ありがとうございました☆

  9. sei より:

    浦井君一筋☆の大 大 大ファンです(*´꒳`*)

    浦井君がご出演なされる作品は、ミュージカルであったり、ストレートプレイであったり、ライブであったり、、
    様々な色、景色を 見せていただいて いつも楽しませていただいております。

    今回は、詩的な キュンとくる ユゴーの作品、、との事で、今から楽しみにしています!

    様々なインタビュー記事、素晴らしいお写真、楽しく拝読しました。
    特に ラストのお写真は、浦井君の良い所満載の 素晴らしいお写真だと思いながら、魅入ってしまいました〜(*´꒳`*)

    ありがとうございました!

  10. 雪花 より:

    大好きな浦井健治さんと大好きな前田文子さんの最強タッグ作品!
    曲もワイルドホーンさんで原作ユゴーと来たら楽しみしかありません!
    早く公演を観たいです。
    素敵な記事をどうもありがとうござます。

  11. y より:

    写真もインタビュー記事もとても素敵!!
    早く観たくてたまりません!!!

  12. ちょび より:

    笑う男の初日をワクワクして待っています。
    既に伝わってくる世界観にワクワクです。
    とにかく今は
    観せていただくこと。
    どんな心境に陥るのか、楽しみです。

  13. なつみ より:

    インタビューも、素敵ですが
    お写真も素敵ですね。

  14. はぐ。 より:

    前田さんの衣装についてのお話が聞けた事が大変興味深かったです。

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