世界的なベストセラー作家であり、“ミステリーの女王”と呼ばれたアガサ・クリスティの長編推理小説『オリエント急行殺人事件』舞台版が2019年7月26日(金)から大阪、名古屋、東京で上演されます。『オリエント急行殺人事件』は名探偵エルキュール・ポアロが登場する人気シリーズで、多くのクリエイターによって映画、ドラマ化されてきましたが、2017年にアメリカで世界初演の幕を開けた舞台版を河原雅彦さんが演出します。ポアロ役を演じる小西遼生さんに7月初めにお話を伺いました。(上)(下)に分けてお届けします。(下)では、8月に開催される小西さんのライブについても伺いました。
――稽古がはじまって1週間とのことですが、今の感想や手応えは?
やはり有名な作品を舞台で、しかも世界でも2017年までやってきていないんですよね。上演台本を噛み砕く作業の過程で、はじめてのものを作っていく難しさがあり、今は生みの苦しみの段階ですね。小説は80年も前に書かれた古い作品で、当時の作品って緻密に作られているというよりは、フィクションなので。ロマン的な部分をすごくしっかり書いている。事件の緻密さやロジック的な部分は、現代人が読むと大雑把に感じる節もあるんですけど、河原(雅彦)さんの演出には、現代を生きるお客様にも楽しんでもらえる騙し方をしたいという真摯な気持ちが根底にあるんですよね。
――私はWOWOWで放送していた2017年の映画は観ていないんですが、1974年の映画を観てみたんです。だからこそ、そのロマンの部分がすごく合っている世界観でしたね。
今あるミステリーの源流みたいなものなので。例えば今の子どもたちが見るコナン君(『名探偵コナン』)や2時間ドラマも、言ってしまえば、発信源はここ。アガサ・クリスティや、その時代のミステリー作家が書いたものが、基本的には今もベースとして使われているぐらいだから、大元の作品なんじゃないかと思います。
――2015年に、三谷(幸喜)さんが設定を日本に書き直したドラマがありました。
ポアロ役を野村萬斎さんがされていましたね。僕は、それは観ていないんですよ。日本人はその記憶が強いと言いますよね。
――テレビでやったからでしょうね。
やはりテレビってすごいですね。僕は先に原作を読んで知っていたんです。有名な作品でしたし、アガサ・クリスティは、『そして誰もいなくなった』など有名なところを読んでいたので。『オリエント急行殺人事件』は、タイトル通り、オリエンタルというか、すごく異国情緒が漂っている作品で、登場人物の人種設定も、いろんな国の人たちが集まっています。繋がりがないような。本編のなかでは「まるでアメリカだ」という言葉も出ますが、そういう多種多様な人物が集まって、しかもスタート地点はイスタンブール。僕は原作を読んだ時に、その異国情緒がロマンがあってすごく素敵だなと思いました。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、小西さんが『オリエント急行殺人事件』にどのように取り組んでいるかや、ポアロ役について、主演について、共演者や演出家とのやりとりなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。7月26日掲載予定のインタビュー「下」では、原作の面白さをどう舞台に残して見せるのか、いま苦労していることや、めざすことについて伺ったほか、また、8月24日(土)と8月25日(日)に恵比寿ザ・ガーデンルームで開催されるライブ『空想改革』についても伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■原語の本も取り寄せて、何となく照らし合わせながら見ているのですが…
■昔、明智小五郎をやったんですが、キャラクターの頭脳明晰感はポアロが高い
■良くも悪くも主演の自覚があんまりない(笑)。舞台はみんなで作るもの
■多種多様な人たちが集まっていて、面白い事をやるのにも種類が全然違う
<『オリエント急行殺人事件』>
【大阪公演】2019年7月26日(金)~7月28日(日) 森ノ宮ピロティホール
【名古屋公演】2019年8月1日(木)~8月2日(金) ウインクあいち 大ホール
【東京公演】2019年8月9日(金)~8月18日(日) サンシャイン劇場
公式サイト
www.orientexpress-stage.jp
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- 2019年以前の有料会員登録のきっかけ 2020年8月18日
- 「原作のポアロの言葉”whatever people say”が好き」、小西遼生インタビュー(下) 2019年7月26日
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■原語の本も取り寄せて、何となく照らし合わせながら見ているのですが…
読み物の魅力は、やはり想像力だと思うので、頭のなかで、知らない場所や知らない国の人たちがそこで集まって、僕は原語の本も取り寄せて、何となく照らし合わせながら見ているのですが、例えば訛りがあったり。いろんな場所の人たちが集まっていて、その癖が全員違うというのも、見ていて面白かったです。その想像力をすごく掻き立てる作品だなという印象がありました。
――言葉や出自の国が違う感じは、逆にある意味、舞台で日本人がやるのは難しいですよね。
翻訳劇は、基本的に外国人を日本人がやっているので、そもそもよくあるというか、舞台だからあり得る事なんですよ。言葉というのは、置いておいたとしても、やはり人物の設定や抱えているバックグラウンドは大きいほうが舞台は面白いと思うので。この作品の中で起きる事件も日本的ではないというか、すごく世界的な感じがする。日本でも似たような事件は起きますし、この作品のベースは実際に起きた事件の話ですが、そこに抱える憎悪や悲しみみたいな物語。そういう感情のレベルは、やはり海外のほうが大きく見える。それが面白いですね。
――感情表現も、日本の隠す文化よりも、比較的表に出しますよね。
今時の男の子と女の子が出てくるような、いわゆる現代劇とはちょっと違うので、視覚的にも、やはり様式的な美しさもありますし、異文化の格好良さは、衣裳なども含めて、舞台ではすごく映えるんですよ。
■昔、明智小五郎をやったんですが、キャラクターの頭脳明晰感はポアロが高い
――ポアロ役が発表になった時、ご自身も驚いたといろいろな媒体で発言されていますが、やり始めてどうですか?
いまは普通に受け入れてやっています(笑)。やはり面白いところと難しいところがあって、稽古をやっている手応えとしては、まずはこの作品を成立させる難しさ。すごく色濃いキャラクターがたくさんいて、それがひとつの所に密集している作品なので、言わばワンシチュエーションなんです。そのなかで、会話劇で、お客さんが観た時に面白いものを作りあげる難しさがありますが、ポアロをやっていることに関しては楽しんでいます(笑)。
――ビジュアルはやはりなかなかインパクトがありますね。
髭がね(笑)。でも、僕はあんまり気にならない……自分では自分の顔を見ないじゃないですか。
――確かに。
あとはまだ稽古中に着けていないのでパンフレット撮影の時の印象ですが、「喋りづらい」とは思いました。すごく喋る役なのに喋りづらい(笑)。
――1974年版を観た印象ですが、ラストに畳みかけるように事件を解いていく、舞台でもそうなるであろう感じなど、小西さんにすごく合いそうなイメージがありました。
まだそこまでいっていないので何とも言えませんが、すごく面白い役だと思います。すべてを客観視しなければいけない部分と、それを繋ぎ合わせて、ある種の説得力を持って、最後は物語をまとめていかなければいけない。とても責任も重大ですが、面白いですね。
――頭脳明晰な感じもすごく似合うなと。
昔、明智小五郎をやったんですが、ポアロのほうがしっくりきます(笑)。江戸川乱歩の作品って、もっと大味な気がして。活劇っぽくて。子どもでも読めるもので、起こる事も、空想劇感がすごく強い。当時、すごくそういう印象だったんですよ。怪人二十面相が出てきたりしても、昭和の活劇という、理路整然としているよりは、勢いと格好良さみたいな感じでした。やはりそういう意味では、キャラクターの頭脳明晰感はポアロがずっと高い。喋っている言葉の量もありますし、起こっている事件を収束していく感じも、西洋ってそういうの得意じゃないですか。
――余談ですが、ちょうどミュージカルで、中川(晃教)さんと加藤(和樹)さんが『怪人と探偵』をやりますよね。
ブームですよね。(柿澤)勇人も今、何かやっているでしょう? 三谷さんとの作品を。
――『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』ですね。探偵ブームですね(笑)。
なんでそんなタイミングなのか不思議ですね。
――同じような作品が集まることってありますもんね。
面白いですね。全部色が違うと思いますし、和樹がやるのはまた別物のミュージカルでしょう? 僕がやっていた時は『黄金仮面』(2011年)という芝居だったので、ジャンルもそもそも違いますね。
■良くも悪くも主演の自覚があんまりない(笑)。舞台はみんなで作るもの
――主演としては久しぶりになりますが、主演って違いますか?
以前主演といわれてやった時から、良くも悪くも、主演の自覚があんまりないので(笑)。物語や舞台はみんなで作るものという意識が僕はとても強いんです。それこそ先輩方、10歳は必ず離れている人たちとずっと付き合ってきているので、例えば主演の人も、そのなかで仲良くさせて頂いている人もたくさんいますが、「主演だから」とやっている人はいないですね。それはお芝居だからミュージカルだからというだけではないんですが、やはり“世界”ってあるじゃないですか。ミュージカルは特に主演として立てられるというか。
――特に大きな作品となると。
「主演です!」って、カーテンコールも一番最後に一番大きい拍手を頂く。でもお芝居は、観に行くと、終わった瞬間に、あれをどれだけさらっと終わらせるかの美学があったりして、観ていると別に主演や脇役とかではなくて、本当に全員で1つの作品を作っている印象なので、あまり僕は主演だからと意識したことがないです。それこそ、お仕事を始めた時も、『牙狼-GARO- 』という映像の作品も主演をずっとやってきていますが、あれも本当に周りの人たちが一緒に作ってくれている事でできていましたから。あまり意識はないですね。
――なるほど。特にお芝居のカーテンコールは、素明かりですべてフラットになって終わる、その余韻がありますよね。
■多種多様な人たちが集まっていて、面白い事をやるのにも種類が全然違う
――共演の皆さんはいかがですか?
全員面白いですよ。ひとりずつ順番に登場人物が出てくるのですが、人物が全部際立っていて、色が強いので、出てくるたびに面白い(笑)。このカンパニーがすごく魅力的なのが、今回の勝機というか、舞台ができあがる楽しみになっています。多種多様な感じが、パッと見た時にするじゃないですか。実際にそうですね。毛色が全然違う人たちが集まっていて(笑)。
――キャリアを見たら全然違いますね。
だから、例えば面白い事をやるのにも、面白いの種類が全然違うんです。宍戸(美和公)さんは小劇場的なめっちゃ宍戸さんらしい面白さを出してくるし、(田口)トモロヲさんは、ふざけ倒す子どもの大人みたいな(笑)。それを河原さんがいちいち笑いながら叱る(笑)。「ずっと残しておきたいんですが、やめてくださいそれ!」って泣きながら言うみたいな(笑)。
――すでに楽しそうですね(笑)。
トモロヲさんもわざとそういう事をするんですよ。もう楽しいですね。作品を作りあげる難しさはもちろんありますが、みんなすごく魅力的です。
――河原さんとはもう信頼関係が存分にあると思いますが、今度の作品に当たってはどんな話をされていますか?
昨日も帰り際にエレベーターが一緒になって、「これは本当に難解ですね、ヤバイですね」「でしょう?」みたいな話をしました。それからエレベーターがつくまで、河原さん、ずっと、今抱えている難しさなどを話していて、「そうですよね、どうしたらいいですかね」と。
――その大変さが窺えた?
分かち合えるんですよ。一緒にやった今までの作品も、やはり生みの苦しみのある作品だったので、作品のクオリティを上げるには、あの手この手の試行錯誤を繰り返しました。今回もしかりで、名作と言われるとても有名な作品ですが、今まで世界でなかなか取り上げてこなかったというのは、この作品の持つ難解さ故なのだと。
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小西さんがポアロを演じるにあたりどんな考えで挑んでいるのかよくわかりました!ありがとうございます。いつもながら岩村さん撮影の小西さんは美しいですね。眼福です!
いつも小西さんの記事を書いて下さりありがとうございます。
ポアロの時とは違ってナチュラルで、爽やかなこにたん。インタビューを読んで、勉強熱心で作品ができた歴史だったり、自分で作り上げていくポアロ像だったり、小西さんの日々の努力を感じました。(下)も読みます。
オリエント急行殺人事件のお話に、黄金仮面や牙狼の話まで!名作に取り組む皆さんの試行錯誤しながら創ってらっしゃる様子がうかがえて楽しみが増えました。インタビュー記事内容やお写真はいつも最高です。岩村さんのお写真はいつも柔らかい印象で小西さんを撮っていらして大好きです
素敵なお写真と記事ありがとうございます。
また明日も楽しみにしています♪
難しいけれどそれさえ楽しみながらお稽古されているのが伝わってくるお話でしたね。
公演を拝見するのがますます楽しみになりました。
岩村美佳さんの記事はいつも、役者さんや作品に対して愛情や興味を持って取材されているのがわかるのでとても好きです。
今回も素敵な写真とインタビューで、ありがとうございます。明日の記事も楽しみにしています。
いつも素敵な写真と記事に観劇の楽しみが増しワクワクします
小西さんがポアロときいてびっくりしましたが、ビジュアルを見たら、ポアロ感はともかく、知的で理路整然と問題を解決していきそうな雰囲気は十分ありました。
河原さんの演出と、他の出演者の方々の顔ぶれを見る限り、確実に面白い舞台になるとわくわくしてます。
岩村さんこんにちは。
今回も遼生様のステキなインタビューとお写真ありがとうございます。
ポアロを拝見するのがすごく楽しみです。
すごく、悩んだり楽しかったり色々ありつくられる作品なんだなぁとつくづく感じました。
次回の下を拝見するのが楽しみです。
質問内容も面白く、読み応えがありました
舞台がすごく楽しみです!
写真も素敵
大阪公演初日に観に行きます!クリスティもほぼ全部読んでいるので舞台ではどういうふうになるのか?そして原作とは違う(笑)見目麗しいポワロ!楽しみです(^_^)
アイデアニュースさんに掲載と聞くと、ものすっごく読み応えがあって、とても楽しみにしてるんですが、今回も掘り下げて明智さんの事や、コナンまで引き出して下さってありがとうございます。
個人的に小西遼生さんには探偵って役が知的で賢くて、スマートに物事をこなすイメージがぴったりだと思っていました。
探偵ブームですよね、最近。
写真もすごく素敵です。
明日の掲載も楽しみにしています。
岩村さんの記事はいつも役者さんに寄り添ったものでとても大好きです。今回も楽しく読ませていただきました。映像とはまた違う舞台上での表現がとても楽しみでドキドキ感がより一層高まってきました。
今回も素敵すぎる小西さんの記事とお写真をありがとうございます。オリエント急行殺人事件、お稽古されてる役者さんたちのツイートなどずっと見てきて、とても面白そうな舞台で楽しみです。今は小説を読んで舞台に備えています。
いつも素敵な記事とお写真をありがとうございます。
小西さんの役作りにかける情熱というか、どの作品の時もそうですが全力を注いで真摯に向かわれている姿にいつも心打たれます。
『オリエント急行殺人事件』私は日本で放送されたドラマと、2017年版の映画のイメージが強いのですが、それが河原さんの演出で、小西さんをはじめ個性的なキャストの方々がどのように作り上げられたのかとても楽しみです。
今回も岩村さんのとても良いお写真とインタビューをありがとうございます。
小西さんの意識の持ちどころと、噛み砕いて作り上げていく作業が本当に楽しいのだろうなと言うことが伝わってきました。
後編も楽しみにしております。
そういうものかもしれませんが…
岩村さんの書かれるインタビューは
柔らかなリラックスした時間をとても感じます。明日の公開も楽しみにしています(^^)