矢来能楽堂で「棒縛」「朝比奈」上演へ、「狂言このあたり乃会」インタビュー(上)

(写真左から)内藤連さん、飯田豪さん、岡聡史さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

「万作の会」主宰の狂言師、人間国宝の野村万作さん門下の4人の若手狂言師による研鑽会『第二回 狂言このあたり乃会』が、2019年8月17日(土)に、東京・矢来能楽堂にて開かれます。「このあたり乃会」同人、岡聡史さん、中村修一さん、内藤連さん、飯田豪さんに、演目についてのみどころやいきごみ、面(おもて)をつけての狂言についてお話をうかがいました。

(写真左から)内藤連さん、飯田豪さん、岡聡史さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

(写真左から)内藤連さん、飯田豪さん、岡聡史さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

<あらすじ>(公演フライヤーより)

【棒縛】(ぼうしばり)
留守番中に二人の家来(太郎冠者と次郎冠者)が酒蔵の酒を盗み飲んでいると知った主人は、太郎冠者を棒に、次郎冠者を後ろ手に縛って出かけてしまう。それでも酒が飲みたい二人は知恵を絞り、縛られたまま酒を飲むことについに成功する。酔った二人が謡えや舞えやと大騒ぎしていると…。

【朝比奈】(あさひな)
極楽往生を約束する宗教が流行し、人間がちっとも地獄に落ちてこなくなったので、自ら罪人を責め落そうと、閻魔が六道の辻へとやってくる。ちょうど通りかかった武将・朝比奈三郎義秀を狙うが、朝比奈は全く動じず、逆に怪力で閻魔を投げ飛ばす。責めるのを諦めた閻魔は、朝比奈に和田合戦の様子を語らせることにするが…。

――『第二回 狂言このあたり乃会』演目の大まかなあらすじと見どころを、太郎冠者役・岡さん、次郎冠者役・飯田さんで演じられます『棒縛(ぼうしばり)』からお願いいたします。

岡:あらすじは、ざっくり言いますと、太郎冠者と次郎冠者の二人が大酒飲みで、主人がいつも家のお酒を飲まれて困っていて。

飯田:盗み酒をしちゃうんですね。

岡:盗み酒をして困っているので、ある策略を立てて二人を縛るわけです。太郎冠者は両手首を棒に縛りつけて、次郎冠者は後ろ手に縛ってお酒が飲めないようにして、主人はそのまま出かけてしまいます。残された二人は縛られたままでも、どうにかこうにかしてお酒を飲むという、それだけの話なんです(笑)。本当に内容はこれだけなんですけど、“言葉が要らない狂言”、と言いますか、子供や海外の人など、言葉が分からなくても伝わる話で、狂言254演目(和泉流現行曲として定められた伝統的な狂言)の中でも3本の指に入るくらい、人気があってよく知られた曲、かつ、言葉がなくても伝わる狂言です。

――『棒縛』は、海外公演の際にもよく取り上げられるのでしょうか?

飯田:よくやります。

――言葉の要らない狂言。

岡:まぁ、そこまで言うと語弊があるかもしれないですけど、子供が観ても、外国の方が観ても楽しめる狂言ですね。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、『棒縛』と『朝比奈』について、演目の内容や稽古の様子、どういうところが難しいか、どういう点が見どころかなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。7月12日(金)掲載予定のインタビュー「下」では、狂言では稽古において事前の予習や役作りという事よりも、まっさらな状態で師匠との稽古に挑み、その中で役柄や言葉の中身を掴んでいく事が重要となるなど、狂言独特の世界について4人が語ってくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■岡:『棒縛』の太郎冠者はヒーロー。太郎冠者で一番格好良いんじゃないかな

■中村:表情での演技はある意味ご法度。でも『棒縛』は表情も表現しなければ

■内藤:鬼をやるときは面をつける。でも合わせるのが、本当に苦労するんです

■飯田:面は上を向いていると笑っているように、下を向いていると悲しく見える

<『第二回 狂言このあたり乃会』>
【東京公演】2019年8月17日(土)14:00 矢来能楽堂
お問合わせ先:万作の会(TEL:03-5981-9778)
チケット:全席指定 2,000円
一般前売発売日:7月16日(火)10:00より
お求め先:Confetti(カンフェティ)
(TEL:0120-240-540 ※携帯・PHSからはTEL:03-6228-1630(平日10:00~18:00受付))
※売切の場合、キャンセル待ちを万作の会(TEL:03-5981-9778)にて承ります

<関連リンク>
万作の会
http://www.mansaku.co.jp/index.html
中村修一 FaceBook
https://www.facebook.com/KyogenShuichiNakamura/

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(写真左から)飯田豪さん、岡聡史さん、内藤連さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

(写真左から)飯田豪さん、岡聡史さん、内藤連さん、中村修一さん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

■岡:『棒縛』の太郎冠者はヒーロー。太郎冠者で一番格好良いんじゃないかな

――次郎冠者の飯田さん、演目についていかがですか?

飯田:大変狂言的なお話でして、狂言にはいろんなキャラクターがいますけれども、「太郎冠者、次郎冠者」というのは、狂言におけるとても代表的な人間なんですね。お酒が好きで、働くのがイヤで、ズルをしたくて、という。それが大変良く出ている狂言です。彼らは “縛られても、酒が飲みたい” んです。で、酒を飲むと、謡ったり踊ったりしたくなる、と。人間だれしもが持っているようなものを、よく描いている曲だと思いますので、観れば観るほど、発見も楽しみもある狂言だと思いますね。それを私たちがそれぞれ初役(はつやく:初めて演じる役)で演らせていただきますので、我々がどうこれと向き合っていくのか、そしてどういうものが生まれるのかは、私にはまだ分かりませんけども(笑)。

――狂言の場合、お稽古は公演のどれくらい前から始まるのでしょう?

中村:時によりますね。いまちょうど2カ月前ですけれど(取材時)、そろそろ稽古に入りたいと思っています。

飯田:このあたり乃会までもそれぞれ「役」がありますからね。

――「万作の会」公式ページで、皆さんのご予定を確認すると、全国津々浦々、ひと月に相当数の公演をされていますね。

中村:歌舞伎とかと違って、僕らの場合、ロングランで1カ月演ったりしません。本当に毎日毎日演目が変わるので。

――公演と公演の間隔も短くて、連日とかもありますね。

内藤:そうです。いろんな小さいの含めれば、ほぼ毎日ですね。

――岡さん、太郎冠者としてはいかがですか?

岡:そうですね、ポピュラーな曲なんですけど、シテ(主役)は、やはり万作先生や萬斎先生が演じられることが多いので、なかなか普段演らせてもらえるような曲ではないんです。よくやる曲なんですけど、シテとなると、ちょっとプレッシャーというか(笑)。まぁ、教えられたことを一生懸命頑張るしかないんですけど。

中村:ホントかな?

一同:(笑)。

岡:太郎冠者は両手を棒に縛られるわけですが……。僕、怪我や病気が多いので、「万作の会」では、「岡に万全なし」って言われるくらいなので、肩とか怪我しないように(笑)。

――本当にそうですね。『棒縛』の太郎冠者は、首の後ろに渡した棒に両手首を縛られたまま動きますから。

岡:とりあえず、体調を万全にして臨みたいなと。

飯田:でも、僕も心配なんです。縛られた状態で、胡座から立てますかね?

――たしかに! 次郎冠者は後ろ手に縛られていますから、こちらもかなり動きの方が。

岡:そうなんです。縛られたままの不自由な中でも、普段の「型」をやらなきゃならない。なので、それができるようにと思います。狂言はやはり「型」が大事なので。その中でも、そういう縛られた中での遊び心のある動きができれば。万作先生、萬斎先生の動きは、縛られている中でもひとつひとつのキレがすごいんですよ。そこまで出せるかはわからないんですが、とりあえず、健康を…。

一同:(笑)。

――健康大事です!(笑)。

岡:本番当日まで、本当に怪我、病気なく万全にして臨みたいと。あと、自分の中で『棒縛』の太郎冠者はヒーロー的な感じで、太郎冠者の中で一番格好良いんじゃないかなと思っているので、まぁ、少しは…そういう風にできればなぁと思っています(笑)。

飯田豪さん(左)と岡聡史さん=撮影・伊藤華織

飯田豪さん(左)と岡聡史さん=撮影・伊藤華織

■中村:表情での演技はある意味ご法度。でも『棒縛』は表情も表現しなければ

――ところで「棒縛」の太郎冠者と次郎冠者は、縛られてもお酒が飲みたい大の酒好きですが、岡さんと飯田さんは、こちらの方はいかがですか?(笑)。

飯田:(隣の岡さんとの間を上下に切る手振りで)ここで真逆です。

岡:飯田くんはもう、お酒が。

飯田:大好きです!

岡:僕は、酒はなくても別に生きていける(笑)。うちのグループは、基本的に飲んべえばっかなんです。僕はもう、お酒なくても全然生きていける人間なので、ハイ。

飯田:でも、縛られたら飲まないかな、私は(笑)。

――お酒は好きだけど、縛られてなお飲みたいとは思わないんですね(笑)。

飯田:縛られたことはないですけど、縛られたら飲まないです(笑)。

中村:普通、僕らは狂言において、表情を出さないというか、顔の表情での演技はある意味ご法度なんです。でも『棒縛』とか、実際には無いお酒を有るように見せながら演技する上では、やっぱり体全体、顔も表情含めて、体全身でそれを表現しなければいけないと思うので、それを岡さんがどう表現されるのかというのは、非常に楽しみなところですね。

岡:ははは(笑)。

岡聡史さん(左)と飯田豪さん=撮影・伊藤華織

岡聡史さん(左)と飯田豪さん=撮影・伊藤華織

■内藤:鬼をやるときは面をつける。でも合わせるのが、本当に苦労するんです

――それでは、次の演目は『朝比奈(あさひな)』。朝比奈を中村さん、閻魔を内藤さんが演じられます。ちょっと普段と違った配役ですね。

中村:「このあたり乃会」では、必ずみんな初役に挑戦するということになっているので、僕は閻魔をさせていただいたことがあるので、この配役になりました。主人公、朝比奈三郎義秀(あさひなさぶろうよしひで)は、とにかく力持ちの代名詞みたいな人のひとりで、ほかにも鎮西八郎為朝(ちんぜいはちろうためとも)という人が『首引(くびひき)』という狂言でも出てくるんですけど、そんな、とにかく力持ちの人が六道の辻にきて、それを閻魔が見つけて、責め落として食べてやろうと思っているんですけど、とにかく力持ちの三郎なので、全然責め落とすことができないんです。普通だったら鬼の方が強くて残酷で、人間の方が弱々しい存在なんですが、そこを逆転させて描いているんですね。『首引』もそうなんですけど、鬼の父娘の方をすごく人間らしく描いて、逆に人(鎮西八郎)の方に冷徹さを出すという、ある意味で狂言らしい曲です。あと、最後に朝比奈が、生前の和田戦の様子を語るので、そこが一番のみどころになっています。

――内藤さんは閻魔ですが、これまでに、他の演目で閻魔や鬼などの、人ならざる者をされたことは?

中村:前鬼(ぜんき)、後鬼(こうき)で、一緒にやったよね。

内藤:そうですね。『博奕十王(ばくちじゅうおう)』とか、『政頼(せいらい)』とか、閻魔が出てきて、その手下みたいなのを。

中村:二人組の手下みたいなのは、よく二人でさせていただいてます。

内藤:「責メ(せめ)」という、『朝比奈』では、朝比奈を地獄に責め落とすところでやりますが、ここを他の狂言では前鬼・後鬼の二人で演じる場合があるんです。二人で演るとやっぱり、面をつけてますし、囃子の拍子に合わせているわけでもないので、(前鬼、後鬼で)足拍子を合わせるのに結構大変で苦労するんですよ、これがまた(笑)。

――今回の『朝比奈』でも、面をつけるのでしょうか?

中村:閻魔はつけます。朝比奈は直面(ひためん)、素顔のままですね。

内藤:鬼をやるときは面をつけるんですね。で、それを(前鬼、後鬼の二人で)合わせるのが、本当に苦労するんですが、でも今回は閻魔一人なので、まぁ、なんとかなるかなと思っています(笑)。

中村:ただ、この「責メ」のシーンが、『朝比奈』では3回あるんですね。僕は以前、閻魔をさせていただいたんですが、最初に “誰か来たから、とにかく責めてみよう” って、責めてみる。そしたらなんか全然動じないヤツだなと。で、「俺は閻魔大王だぞ!」みたいな、ちょっと自分の威厳を示すんですよ。それでも相手は「べつに?」みたいな感じで、もう一回とにかく責めてみるんですがなかなか落ちない。それで「おまえ誰だよ?!」って聞くと、「朝比奈だ」と名乗られて、「あ! 朝比奈じゃしょうがねぇな。こんな強い人だったら」みたいなことになるんです。閻魔の衣装は、厚板(あついた)という、すごく厚い小袖を着ているんですね、さらにその上から坪折(つぼおり)を着てるんですけど、責メの3回目では、その上着を脱いでちょっと身を軽くして、「とにかくもう一回責めよう」と言って責めるんですけど、それでも朝比奈は全然動じないので「さぁ、どうしよう?」ということになる。この3回の責めが、まず体力的にもすごく大変なんですね。その後、朝比奈の語リになるんですが、普通は語リって、相手は聞いていて、語り手がいろいろ仕方噺(しかたばなし)で、動きながらというのがメインなんですけど、朝比奈の語リの場合は、ちょっと閻魔のリアクション芸が入ってくるわけです。朝比奈の語リの中で、語リの中の言葉に反応して閻魔が動いて「ハッ!」みたいな、パッと動いたりするんです。だから、閻魔は気が抜けないわけですね、ずっと。ただ聞いていればいいってわけじゃなくて(笑)。

内藤:(笑)。

中村:『朝比奈』は、萬斎先生が朝比奈をなさって、先輩の深田博治さんが閻魔をなさる印象が僕らは強いんですけど、とにかく汗でビシャビシャになった深田さんが楽屋に帰ってくるっていう(笑)。

――以前拝見した『朝比奈』でも、たしかにそんな感じでした(笑)。

中村:なので、閻魔はとてもくたびれる役ですね。内藤さんって、わりといつもさわやかに、汗をかかずに演じるタイプなので、そういう内藤さんが体力勝負に挑んだところも、ちょっと楽しみだなぁと(笑)。

――ある意味、みどころですか!(笑)。

中村:みどころですね(笑)。

内藤:みどころじゃないですよ!(笑)。わりと強い役というのは、私も普段付けられることが多いんですけど…。

――そうですね。配役を拝見したときに、朝比奈は内藤さんじゃないんだと、ちょっと思ってしまいました(笑)。

内藤:(笑)。

中村:僕もいつも強い役ではない方ばかりですよ。朝比奈を浮世絵とかで見ると、本当にすごい髭モジャで、筋骨隆々な感じで描かれているんですね。『このあたり乃会』第1回のパンフレットで、飯田くんの『首引』の鎮西八郎をやった時の写真が載ってるんですけど、朝比奈もわりと飯田くんみたいにガタイのいいタイプなので、僕なんか役に似合わない華奢なタイプなんですけど。それでも、もちろん演らなきゃいけないので。萬斎先生が朝比奈をなさっているときは、本当にある意味、無表情というか、動じないタイプ、なにが起きてもデン! としている感じなんですが。

――鬼が来ても、閻魔が来ても(笑)。

中村:「鬼来ても関係ないゼ!」みたいな。そういう豪胆なというか、強い男性ですね。だから、あんまり狂言では役作りは考えないんですけど、演じたことのない役柄だなぁと思います。

内藤連さん(左)と中村修一さん=撮影・伊藤華織

内藤連さん(左)と中村修一さん=撮影・伊藤華織

■飯田:面は上を向いていると笑っているように、下を向いていると悲しく見える

――今回は面(おもて)をつけるのは、『朝比奈』の閻魔だけですか?

内藤:閻魔だけですね。

――面は小さい穴が開いてるだけなので、視界がかなり制限されますね。柱の位置で空間を把握すると聞いて、大変だなと感じたのですが、みなさん面をつける機会というのは?

内藤:面をつけることは結構ありますね。

中村:研鑽会時代だと『雷(かみなり)』で面を使ったね、一度ね。

――面をつけると、気をつけることがやはり普段と変わりますか?

飯田:よく、面のウケ(面の角度のこと)といいまして、面は「テル(照る)」「クモル(曇る)」という風に言うんですけど、上を向いていると笑っているように見えて、下を向いていると悲しく見えるというような構造になっているんです。なので、最初に面をつけるときにそのウケを確認するんです。「このウケどうですか?」って、このくらいの角度(ほぼ直角)の方から見ていただくんです。それで「ちょっと照ってるよ」ってなると、(ちょっと顔を上に向けて)この状態になってしまっていると。この面の角度をしっかり決めて(舞台に)出て行くんですね。で、この角度は、(首の後ろを示しながら)ここで覚えるんです。首の角度だけでは良い位置にならない場合は、「アテ(当て)」というクッションを当てて調整するんです。だから、私なんかは「舞っているときに、顎が上がってたぞ」って言われたりとかしますので、視界ももちろんそうですけど、ここ(首の後ろ)のキープがすごい緊張します。

――面の角度が大事なんですね!

内藤:そうですね。

――面をつけるときは足もとが不安、ぐらいしか想像できませんでした。面の角度の維持に心を砕かれているんですね。

岡:でも、ビビってちょっと(足もとを)見ちゃうときとかもあるんですよ。そしたらもう、必ず先生にバレてるんです(笑)、少し見ただけでバレちゃうんですよね。

飯田:そういうときは、多分、お客さまの受ける印象も、若干違うと思います。

――と、いうことは、面をつけての舞や狂言のときは、面の角度をキープするために、あまり頭を動かさずに演じているのでしょうか?

飯田:あえて動かすことはないですね。

中村:そうですね。もちろんその、鬼が泣いたりとか…。

岡:(勢いをつけて顔を左右に動かしながら)面を「キル(切る)」というんですけど。

中村:見る対象に向かって顔が向いたぞ、ということは、わからないといけないので、そういうときは普通にスーッと動かすよりも、クッとはっきり動かさないとわからない。大仰にしますね。

岡:歌舞伎じゃないですけど、「(睨みを)きかす」というか、見得(みえ)を切る、じゃないですけど、そういう動きはありますけど、(上下に)普通に見たりとかはないです。

飯田:あと、鬼だと「泣き笑い」っていって、こういう風に(座って上体を後ろに反らして手を着き、顔を上げ頭を上下に振りながら)「あ~~はぁ~はぁ~はぁ~はぁ~はぁ~ぁ」といって泣くというような動きが、わざわざあったりとか。

中村:そうですね。だから『朝比奈』の場合、面をかけている閻魔の方が、すごい表情豊かに見えて、逆に面をかけていない朝比奈の方が、ある意味で能面的というか、あんまり感情の動きが見えないキャラクターに映るのかなと、稽古前の段階では(笑)、そう思っています。

一同:(笑)。

内藤連さん(左)と中村修一さん=撮影・伊藤華織

内藤連さん(左)と中村修一さん=撮影・伊藤華織

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“矢来能楽堂で「棒縛」「朝比奈」上演へ、「狂言このあたり乃会」インタビュー(上)” への 1 件のフィードバック

  1. 佳春 より:

    岡さんの健康を祈りつつ…(笑)2回目の公演も楽しみにしております。

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