新国立劇場小劇場で2019年12月7日(土)から12月23日(月)まで(プレビュー公演は12月2日と12月3日)上演される、演劇『タージマハルの衛兵』に出演する亀田佳明さんのインタビュー、後半です。カンパニーについて、声のお仕事についてもお話ししていただきました。
――演出の小川絵梨子さんとは『マリアの首―幻に長崎を想う曲―』(2017年)に次いで、二回目のお仕事ですか?
はい。
――亀田さんにとって、小川さんはどんな演出家さんでしょう?
俳優って、稽古であっても、声を出したり表現したりっていうことはやっぱり怖いんですよね。勇気が要る事なんですよ。俳優なんだから、そんなに苦じゃないだろうと思われがちなんですけど、意外にそうでもなくて、やっぱり怖いものなんです。稽古で声を出したり表現する、その怖さを、(小川さんは)すごく気にかけてケアをしてくださる。俳優の立場になって物事をすごく考えて見てくれる。結果、俳優はとても安心してトライする事ができるというのが、『マリアの首』での最初の印象で、今も変わりません。あと、絵梨子さん自身がわからないことはわからないって堂々と言ってくれるので、生身というか、着飾ることなく演出家として存在してくれているので、なんかすごく…こういう言い方がいいのかわからないですけど、とってもフェアな感じがするというか。
――声を出すのが怖い?
稽古で役として声を出すときに、まだなんにも自分の中で積みあがっていない状態を露呈するということは、やっぱり俳優にとって怖いことですね。もちろんそのための稽古だから、できてなくて当たり前なんですけど、やっぱり…怖いですよね。うん、とても。
――まだ役をつかみきれていない状態で、役を表現することの怖さ、というか。
そうです、そうです。でもそれは、稽古を重ねてもじゃあそれを劇場に行って演るとなると、それはそれで凄まじい怖さはあるんですけどね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、演出の小川絵梨子さんや共演する成河さんについて、また成河さんと共演したNHK-FMのラジオドラマ「青春アドベンチャー」の『武揚伝』(2018年)、ラジオでの山本周五郎作『晩秋』の朗読についても伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■(小川)絵梨子さんは、俳優の苦しみを、見捨てずにつき合ってくれる演出家
■(成河さんは)逃げないでトライする方。ああいう方が相方でいると、救われます
■朗読では役のイメージを多少決め込んで。ちょっと劇画チックにはなりますけど
■『タージマハルの衛兵』、想像力の羽ばたいて行くメッセージが散りばめられています
<演劇『タージマハルの衛兵』>
【プレビュー公演】2019年12月2日(月)~12月3日(火) 新国立劇場 小劇場
【東京公演】2019年12月7日(土)~12月23日(月) 新国立劇場 小劇場
公式サイト
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<関連リンク>
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文学座 亀田佳明
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■(小川)絵梨子さんは、俳優の苦しみを、見捨てずにつき合ってくれる演出家
――劇場では、さらにお客さまも入りますし。
そうです、そうです。で、一日目が終わったと思ったら、また二日目違うお客さまが入る、それがまた恐怖になるんですけど(笑)。ずっとその繰り返しなんです。絵梨子さんはたぶん、その俳優の苦しみを、見捨てずにつき合ってくれる演出家っていう感じです。で、失敗しようがなんだろうが、「チームだから大丈夫だよ」っていう眼差しを向けてくれる。厳しいところはすごい厳しいですし、ものすっごくロジカルです。でもそういうところ、僕はとっても寄り添いやすいというか信用してます、とても。
――そういう思いがおありになって、今回のお話を受けられたんですね。
はい。もちろん二つ返事で。
――で、その後で、実は二人芝居です、と!
そうですねー(笑)。
――その二人芝居の相方、成河さんとは初共演になりますか?
舞台は初めてですね。一度ラジオドラマでご一緒してるんですけど。
――ラジオドラマというと『青春アドベンチャー』(NHK-FM)ですか?
そうです。『武揚伝』(2018年)という作品で、成河くんが榎本武揚の役で、レギュラーで15回演ったんですが、僕はその親友の役で出ていて。そのときはでも、…アレすごいスピードで録っていくので。
――そうなんですか!
そうなんです。あんまりそんなに芝居の話もできないですし。基本収録しているときは、みんな静かに音出しちゃいけない状態なので、あんまりコミュニケーションは取れなかったんです。だからここまでドップリ一緒に付き合ってってのは初めてです。
■(成河さんは)逃げないでトライする方。ああいう方が相方でいると、救われます
――成河さんと、ドップリ四つに組んでみていかがですか?
なにかを創ったりゼロに戻したり、こういった台本や、役と向き合ったりということを真正面からやる方なので、僕はとっても信頼できます。ものすごい頭のいい方だと思うので、すごく突き詰めて向き合って、そこから逃げないでトライする方だなっていう感じはします。ああいう方が相方でいると、本当に救われます。
――救われる。
やっぱり、相方に逃げられてしまうと、二人芝居なのでどうにもならないところもあったりするんです。悩むときは二人で悩む、苦しいときは二人で苦しむというようなスタンスでいられる方だから。ずっとなんか手を取りながら、行きたいなと思います、最後までね。
――お互い逃げずに、苦しいときもなんとかそこで二人でって。
うん、踏ん張ろうって言える感覚を持っている人っていう感じがしますね。
■朗読では役のイメージを多少決め込んで。ちょっと劇画チックにはなりますけど
――ラジオのお仕事で、山本周五郎さん作品『晩秋』の朗読を拝聴しました。登場人物の若い女性「都留」ですが、台詞を聴いていて「女の人だ!」と感じて。さらに番組冒頭と締めのアナウンスの声と、「語り」の声、「役」の声があって、お一人で朗読されているので、声質が大きく変わっている訳ではないんですが、雰囲気、伝わってくるものがそれぞれに違って聴こえて、声のみで、これほど豊かな表現を受け取ることができるものなんだと感動しました。
以前も山本周五郎で四作品ほど演ったんですよ。本当にいろいろ試行錯誤して、ディレクターさんともたくさん話し合って。その経験もあって、今回はもうちょっとこういう風にしてみようかって話しながら、かなり丁寧に収録していったので、そう言っていただけると嬉しいです(笑)。
――声のお仕事は多いのですか?
いや、そんなにないです。ラジオドラマもたまにあったりとか、アテレコもたまに演ってますけど、でもそんなに経験値としては多くはないですね。お芝居と一緒の感じですね。朗読は、あれはまたちょっと別かな。
――ラジオドラマはお芝居と同じかな? と想像しますが、朗読となると、その違いというか…。
ラジオドラマの場合は、もう完全に舞台、映像とかと一緒で、まぁ本当にマイクは目の前にあるんですけど、やっぱり相手役もそこにいるので、台本持ちながらしゃべり合うんですよ。
――ちゃんと相手役の目を見ながら演れる感じで?
やろうと思えば全然できます。ただ朗読の場合は完全に一人なので、あとやっぱり「役」でしゃべるときと、「語り」というのがあるので、そこの声はやっぱりかなりドライに切り替えていかないとわからなくなりますよね。そこはやっぱり、相当勉強していかないと、収録は大変なことになっちゃう。
――勉強というのは?
とにかく何回も何回も読んで黙読して、内容をよく理解するっていうことと、あと、役のイメージですよね。イメージをしっかり持って演る。ゆっくりしゃべるのか、速くしゃべるのか、声がしゃがれているのか、高いのかっていうことも多少やっぱり決め込んで、ちょっと劇画チックにはなりますけど、そうした方がいいのかなと思って僕は演ってます。あのシリーズはいろんな俳優さんが演ってらして、本をひたすら淡々と読む方もいらっしゃるんです。いろんな方が、いろんなやり方でやっているので、僕の場合は、っていうぐらいな感じですね。
――亀田さんのやり方で。
そうですね。演出家と話し合いながら、こういう方向でって感じです。
――そうなんですね。まるで噺の中で老若男女を一瞬で切り替える、落語の名人の技のようだと思いました。
あんなにすごい技術はないので、僕は。でもイメージとしては、そういうことをちょっと意識して。ただ、落語だったら見て少し噛み締めるところもありますけど、これはもう本当に耳だけなので、やっぱりそういうスピードだったりっていうのは、落語ほどは上げられないなって思いながら、少しゆっくりしゃべったりということも意識しましたね。
■『タージマハルの衛兵』、想像力の羽ばたいて行くメッセージが散りばめられています
――それでは最後に『タージマハルの衛兵』をご覧になるお客さまへのメッセージをいただきたいと思いますが、その前に配役をお聞きしてもいいですか?
僕はバーブルという役で、成河くんがフマーユーンという役をやります。
――話しかける側なんですね!
そうですね。…意外ですかね、やっぱり。だいたい意外って言われるんですよ。
――どちらもアリ! とは思ったのですが、最初は亀田さんがフマーユーンかなって。
ほぼほぼ言われるんですよ、それ。キャスティングは我々も言われたのは10月入ってからなんです。というか、何回目の時か忘れちゃったんですけど、読み合わせに行ったら絵梨子さんが「決めました!」って言った日があって。それを成河くんと二人で「待って、待って。もう少しこのまま、どっちがどっちを演るかわからないままでいかせて」ってお願いして。
――そうだったんですね。それでは改めまして、亀田さんからのメッセージをお願いいたします。
ラジヴ・ジョセフさんが書いているこの作品は、一見ちょっとコミカルであったり、グロテスクであったり、仕掛けとしては、かなりエンターテイメント性の高い二人芝居にはなっています。そこはもちろん十分楽しめるんですけど、その奥にすっごく想像力の羽ばたいて行くようなメッセージが散りばめられているので、それを想像してもらえるようにできたらと思っています。丁寧に稽古しておりますので、どうか楽しみにしていただけたらと思います。
――お話有り難うございました。
※亀田佳明さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは12月28日(土)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
亀田さんのインタビューありがとうございます。
新国立劇場ならではの丁寧なお稽古、創作過程にも触れていて、読み甲斐がありました。
写真も素敵!
魅力的な方で、今後の活躍も楽しみです。
ラジオの朗読での声の表現の多彩さに感銘を受けました!
小川絵梨子さん演出で成河さんとの二人芝居、とは2019年を締めくくるに相応しい衝撃作になりそうです。
内容はなかなかヘビーなようですが、繊細かつ大胆な亀田さんのお芝居を楽しみにしています。