「ライブに来る感覚で」、ミュージカル『Hundred Days』藤岡正明インタビュー(上)

藤岡正明さん=撮影・NORI

実生活でも夫婦でありミュージシャンでもあるベンソンズのメンバー、アビゲイルとショーンの実話をベースとした、二人芝居の濃密なミュージカル『Hundred Days』が、2020年2月20日(木)~2月24日(月・祝)にシアターモリエーで上演されます(2020年3月4日(水)~3月8日(日)の中野ザ・ポケットでの公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました)。ショーン役の藤岡正明さんに作品についてお話を伺いました。上下に分けて掲載し、「下」では作品の中で演奏される曲についてのほか、2019年9月に藤岡さんが開催されたヴォイストレーニングワークショップについてもお話いただきました。

藤岡正明さん=撮影・NORI

藤岡正明さん=撮影・NORI

――『Hundred Days』の台本をお読みになった印象はいかがでしたか?

今回の『Hundred Days』は、どれくらいの楽曲数を弾くのかは、まだわからないですけど、実際にほとんどの楽曲で、基本的には僕がギターを持って、本当に生で弾いて演奏しながら歌ったりしている状態なんです。いまのブロードウェイでも、たとえば『Once』(2012年~2015年)然り、最近そういう作品が多いように感じます。

――作品中でギターを演奏されるのですか?

バンドも入りますが、そのバンドにギタリストは居なくて、逆に言ったら僕しか居ないので。要は適当なことができない、ちゃんと演奏として成立させないといけないんです。

――つまり「ショーン」として演奏をする?

そうですね、役として芝居をしながらギターを弾くので、覚えるのが大変だなと思って。

――ギターは以前から演奏されていましたね。

そうですね。いままでも普通にステージで、お芝居の中でギターを弾くという経験は何度もあるんですけど、ただ今回は曲数が多いなと思って。

――バンドメンバーとして弾くシーンはもちろん、ショーンの心情を現すような、ソロ演奏などもあるのですか?

どうなんでしょう。ギターだけでやる曲があるのかちょっとわからないんですけど、でも「基本的にほとんどの楽曲で、基本弾いています」ということは言われてます。

――それは出ずっぱりになりますね!

出ずっぱりですね。まぁ、二人芝居なので。これはそもそも「ベンソンズ」というバンドで、僕が演じる「ショーン・ベンソン」という役と、木村花代さんが演じる「アビゲイル」。この二人は夫婦なんですけど、その夫婦のライブから始まるんです。ライブが始まるときの、お客さまに対して普通に「元気? どうもー!」みたいな感じなので、この作品はひとつの「ライブ」なんです。つまり「じゃ次の曲、これちょっと聞いて欲しいんだけど、僕らの、こういうことがあったときのお話なんだけど~」っていう、“その時” を切り取って、お芝居があって「~っていうわけで、聞いてください!」みたいなことだったりするんです。もちろんいろんな手法はあるんですけど、ざっくり言うとそういう風な。だからこれは「ライブ」なんですよ。全編通してライブでやっていて、そしてライブのMCの中で「僕らの出会いの曲です、聞いてください!」みたいなことなんですよね。だから、やっぱり(役を)持ってないと変なんですよね。

――役を演じながら演奏ということで、普段以上に一瞬たりたとも気が抜けない感じですね。

まぁでも逆に言ったら、ライブを観に来る感覚で、お客さまは観に来てくれたら全然いいだろうなって思ってるんですよ。

――物語全体がひとつのライブだから。

そうですね。もちろんミュージカルでもあるんですけど、やっぱりそのパフォーマンスを味わって欲しいし、そういった意味では、お客さまとともに呼吸していくミュージカルだと思ってます。

※こちらはミュージカル『Hundred Days』公式サイトに掲載されている「2018年ニューヨーク上演時の映像より」動画です。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ミュージカル『Hundred Days』の見どころや、ショーンとアビゲイルという役柄などについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。1月10日(金)掲載予定のインタビュー「下」では、作品の中で演奏される曲についてのほか、藤岡さんが2019年9月に開催された「ヴォイストレーニングワークショップ」などについても伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■(ショーンとアビゲイル以外の登場人物は)います。ただ、キャストは二人だけ

■心の中に抱えているものを思い出しただけで、実はドラマはもう始まってしまう

■彼は本当の意味で多宗教。ショーンは、その中で自分自身を探している

■(板垣さんが)さすがだなと思うのは「これで駄目なら、俺が責任取る」って

<ミュージカル『Hundred Days』>
【東京公演】2020年2月20日(木)~2月24日(月・祝) シアターモリエール
(2020年3月4日(水)~3月8日(日)の中野ザ・ポケットでの公演は中止になりました)
公式サイト
https://www.consept-s.com/100days/
シアターモリエール
http://www.moliere.co.jp/theatre/
中野ザ・ポケット
https://www.pocketsquare.jp/the-pocket/

<キャスト&スタッフ>
【THE BENGSONS】ショーンとアビゲイルがフロントマンを務めるバンド
藤岡正明、木村花代
桑原まこ(音楽監督/Key)、遠藤定(Ba)、長良祐一(Dr:2/20~21、24、3/4~8)、小久保里沙(Dr:2/22、23)、石貝梨華(Vc)
【STAFF】
板垣恭一(日本語上演台本・訳詞・演出)

<関連リンク>
conSept 公式 Twitter
https://twitter.com/consept2017
藤岡正明公式サイト
https://fujiokamasaaki.officialsite.com/
藤岡正明公式ブログ
https://ameblo.jp/fujioka-masaaki/
藤岡正明 Twitter
https://twitter.com/Tsukune_Toro

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藤岡正明さん=撮影・NORI

藤岡正明さん=撮影・NORI

※ここから有料会員限定部分です。

■(ショーンとアビゲイル以外の登場人物は)います。ただ、キャストは二人だけ

――二人芝居のミュージカルですが、作品の中で、ショーンとアビゲイル以外の登場人物はいるのですか?

います。

――では、お二人で何役か演じられて。

それはね、どうやら無いんですよ。じゃあ、それを誰が演るんだっていう話ですよね。言ってもいいんですけど、それを楽しみにしていただくのがいいのかな? ただ、キャストは二人だけです。

――キャストは二人だけ!

そして、僕らはショーンとアビゲイルしか演じません。

藤岡正明さん=撮影・NORI

藤岡正明さん=撮影・NORI

■心の中に抱えているものを思い出しただけで、実はドラマはもう始まってしまう

――公式サイトを拝見すると「100日を100年のように生きようとした二人の男女」というフレーズがとても印象的です。

そうですね。

――さらには “余命100日しかない” なんてことも書いてありまして…。

書いてあるんですよね、これね。

――しかし物語は、始まりと終わりがしっかりとある、ひとつのライブなんですね。

ライブですね。もちろん回想であることもそうですし、ま、逆に言ったら、そういう情報でもって、一体どういうことなのかっていうことの想像を、是非膨らませていただきたいなとは思っているんです。ただ、このチラシにも書かれていることに捕らわれずに、逆にフラットな目線で観てもらった方がいいのかなと思っていて。もともとアビゲイルとショーンという人は実在している人で、ショーン・ベンソンさん、アビゲイル・ベンソンさん、本当にこのご夫婦で「ベンソンズ」というバンドを創っていて、これはご夫婦に起こった、実際にあった出来事をミュージカルにしているんです。逆に言ったら、どれくらいのドラマがあるのかというと、普通に生活していると、そんなにドラマって起こりにくいじゃないですか。

――そうですね。

要はわかりやすいドラマがどのくらい起きるのかという。ただ、それぞれの人の心の中には、ドラマがたくさん起こっているじゃないですか。実際問題、大きな何かが起こっていなくても、心の中に抱えているものであったり、問題であったりを思い出しただけで、実はドラマはもう始まってしまうという。基本はそういう本人たちの心、とくにアビゲイルという女性の中で渦巻いている「闇」であったり「傷」、恐怖みたいなものをショーンが支えて二人で乗り越えていくお話なんです。

――そうなんですね!

実は、ここがアビゲイルが抱えている闇なんです。最後の方に「もう一つの真実が……。」って書いてありますが、これは別に最後の方でそれがわかるわけではなくて、実際に「余命100日しかない」と、したら? 二人は、どう「この100日をまるで100年のように過ごすのか?」それを通して、アビゲイルという女性が自分自身の抱えてきた恐怖、闇を乗り越えるというところが、ひとつのポイントかなと思っていて。なんとも説明し辛い部分なんですけど(笑)。

――アビゲイルの抱える問題に焦点が当たっていくわけですね。そして “ショーン自身も問題を抱えていて” とありますが?

ショーンは、もちろん問題は抱えているんですけど、問題というか、彼自身が通ってきた。ちょっと珍しい家庭環境が。

――お父さんが牧師さんですね。

牧師の息子で、学校に行かずに牧師のお父さんに教育を受けたんです。

藤岡正明さん=撮影・NORI

藤岡正明さん=撮影・NORI

■彼は本当の意味で多宗教。ショーンは、その中で自分自身を探している

――学校に行かなかったということは、友達づきあいもあまり?

そうですね。もっと言うと、お父さんに教育を受けていただけであれば、アレなんですけど、実はそのお父さんが牧師をやめちゃうんです。途中で信仰を「やめた!」って捨てちゃうんですよ。そういうバックボーンがある中で、ショーンが人格形成をしていく。だから面白いなと思ったのは、ショーンの台詞の中で「キリストと、ブッダと、ガンジーと、マルコム・Xの写真を壁に貼っていた」っていうのがあって。

――宗教や思想、それぞれ活動の頂点にいる人物ですね。

…ってことですよね。つまりそこが物語っていることというのは、元々はプロテスタントで、牧師の息子であるということは、本当はクリスチャンだったと思うんですよね。そこからお父さんが居なくなったというところで、自分自身にとっての、ある種のアイデンティティみたいなものであったり、自分自身の信仰や哲学の中心、柱になるものが揺らいだということですよね「あれ? これ違ったのか」と。そういう中で、ショーンは自分自身を探しているんでしょうね。でも別に、それを重たくやっているわけじゃなくて、たとえば違うところでショーンが「僕はヴィーガンだ」、「ヴィーガンでいる」と語るんです。だけど、それはもう全然普通の「ヴィーガン」っていう意味じゃなくて、本当は卵とかベーコンが大好きで、それを店で頼みたいんだけど、店に着いた瞬間、どうしてもよぎることがある。「ガンジーならここで何を頼むだろうか?」ていう(笑)。つまり、ちょっとそういうところに憧れているというか、律しているというか。

――律している。

はい。たとえば仏教で言う「輪廻転生」というか、“生まれ変わる”、“来世がある” という考え方も、普通のアメリカ人だとクリスチャンであれば “天に召される” という考え方だろうし。でもそうではなく「生まれ変わったら」みたいな言葉も出てきたりとかして、だから面白い。ある種、日本人の感覚をもっとこう、宗教観を根強くしていったというか。日本だとクリスマスには「メリー・クリスマス!」って言って、お正月は初詣に行って、でも葬式にはお経唱えてもらって、みたいなことがあったりとかするわけじゃないですか。

――日常の行事にいろんな宗教が入り込んでいますね。

それって日本人は、無宗教ではなく、よく多宗教っていう言い方をしますよね。でもある種、彼は本当の意味で多宗教なんですよね、きっと。ショーンという人は、その中で自分自身を探しているんです。自分自身の核となる哲学を、という事だと思うんですけど、ただ、それを暗く捉えて何かをしているわけではなくて、あくまでフランクにカジュアルに、そしてポップにロックに語っていくんだと思うんですよね。

――そうなんですね。あらすじから重めのお話かなと想像していましたが、決してそうではないショーンのキャラがおぼろげに見えてきました。

藤岡正明さん=撮影・NORI

藤岡正明さん=撮影・NORI

■(板垣さんが)さすがだなと思うのは「これで駄目なら、俺が責任取る」って

――前回『いつか~one fine day』でインタビューしたときに、板垣さんの強い面を見てみたいとおっしゃっていました。実際に演出を受けられていかがでしたか?

ある意味終始和やかでしたね。いやもう本当に素晴らしかったです。板さんは、前回の『いつか~one fine day』は、原作がありながら脚本をかなり変えていたので、 “脚本板垣恭一” だったんですよ。「作・演」になるので、本人も言ってましたけど、緊張もあったと思うんですよね。

ただ、やっぱりさすがだなと思うのは「これで駄目なら、俺が責任取る」って。そういう言葉どおり腹括ってるキャプテン(船長)ですからね。さらにその船の船長がクレバーに俯瞰で、この作品がどう映るだろうかというところも含めて考えてくれている。でも稽古場ではすごく、いたって和やかに。「板さん1回くらいキレたらいいのにな」なんて思ってましたけど(笑)。今回も、「板さんが居てくれるんだったら安心だろう」みたいな、ある意味、胸を借りるというか勝手に羽ばたかせてもらおうかなーと思ってます。

藤岡正明さん=撮影・NORI

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“「ライブに来る感覚で」、ミュージカル『Hundred Days』藤岡正明インタビュー(上)” への 1 件のフィードバック

  1. さつき より:

    ロングインタビュー嬉しいです。藤岡くんは「歌がうまい自由な人」と見られがち(?)ですが、インタビューの端々から、彼の演じる役が、歌の力という才能だけでなく、深く誠実な洞察と、それを体現しようとする意志によってできているのだと感じます。ますます応援したくなりました!

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