【2020年3月27日、編集部追記】
大阪公演につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、会場である近鉄アート館が、3月末まで行われるすべての公演を中止となり、劇場と一部日程を変更して実施されます。詳細は公式サイトをご確認ください。
2020年3月20日(金・祝)より東京・本多劇場で、3月29日(日)より大阪・近鉄アート館で上演されるシェイクスピア喜劇『十二夜』の上演台本と演出を担当する青木豪さんのインタビュー、後半です(当初は3月6日開幕予定でしたが新型コロナウイルスの影響で、3月6日(金)~3月19日(木)の公演は中止となりました)。作品についてのほか、宝塚歌劇団、劇団四季などの作品を観ていた小学生時代から、男子校で演劇部に入っていた高校時代、2012年にイギリスに留学して感じた英国と日本の演劇をめぐる状況の違いなどについて語ってくださいました。
――作品の舞台が神社という設定は、どういう経緯で生まれたのでしょうか。
『ヴェニスの商人』(2011年)の稽古2日目に東日本大震災が起こって、震災直後は結構、計画停電の話もあったので、実際に上演ができるかどうかというのが本当に心配だったし、余震もかなりあったから、お客さまのことを考えると「やっていいのかな?」というのもあって。それで、今回はできないかもしれないけど、もし計画停電があっても「演劇」だったらどこか篝火で、もともと避難場所みたいなところでやれば良いんじゃないかな、みたいな思いがあったんです。そのあと僕はロンドンに留学(文化庁新進芸術家派遣制度2012年9月~2013年7月)したんですけど、「戻って来たときに、シェイクスピアでなにかやりませんか?」という話を(渡辺)ミキさんからいただいていて。ロンドンに行く前は、別の作品を考えていたんですけど、ロンドンでいろいろな作品を観たなかで、『十二夜』が一番面白くて。しかもグローブ座で観たのがすごく素敵だったんです。グローブ座って天井が空いていて、ほぼ野外劇なんですよ。なんにもないところに役者だけが舞台に立っていて、それで全部成立するっていう。本来そういう風に書かれているわけだから、じゃあ、それをやろうと思って。それで、日本における、なにもなくてもみんなが集まってお祭り気分になれるところ、って思ったら「神社」がいいやと思って。それと、芝居を始めるときに、二礼二拍手一礼をやるんですが、自分の劇団(劇団「グリング」)のときも、かならず神社にお参りに行って、お祓いしてもらってからやっていて、お祓いすると厳粛な気持ちになれて「これで悪いことはなんにも起こらない」っていう気持ちになれたので、そこからスタートしたいなというのがありました。それでこんな形にしたんですね。そこは今回もその形で始めようと思って。
――広場に人が集まって、篝火のもとで芝居というのは、演劇の原風景に思えます。
本来そうやって始まったものだと思うので。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、小学生時代にぬいぐるみ劇団の木馬座から、宝塚歌劇団、劇団四季などの作品を観るようになった青木豪さんの幼い日々から、男子校で演劇部に入っていた高校時代、2012年にイギリスに留学して感じた英国と日本の演劇の違いなどについて語ってくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。などインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■シェイクスピアとの出会いは小学校四年生。『ヴェニスの商人』を「劇団四季」で
■高校で一応演劇部だったんですけど、男子校というのもあって、僕以外演劇好きがいなくて
■英国は、演劇教育的に同じところを踏まえている。日本は遊びの中から出ている感じ
■『十二夜』、誰か好きな役者さんがいる人は観て欲しいな。絶対損はさせない
<舞台『十二夜』>
【東京公演】2020年3月20日(金・祝)~22日(日) 本多劇場
(※新型コロナウイルスの影響で3月19日(木)までの公演は中止となりました)
【大阪公演】2020年3月29日(日)~31日(火) 近鉄アート館(中止)
(※会場日時変更)2020年3月29日(日)~30日(月)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
※開場は開演の45分前。
※3月30日(月)19:00に予定されていたアフターイベントは中止とさせていただきます。
※3月31日(火)13:00公演は中止とさせていただき、該当チケットはお振替対象チケットとなります。
公式サイト
https://12th-night.westage.jp/
<関連リンク>
青木豪オフィシャルサイト
http://www.gring.info/aoki.html
株式会社キューブ 青木豪
http://www.cubeinc.co.jp/members/prf/028.html
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※ここから有料会員限定部分です。
■シェイクスピアとの出会いは小学校四年生。『ヴェニスの商人』を「劇団四季」で
――シェイクスピアとの出会いはいつ頃ですか。
最初は、小学校四年生かな。『ヴェニスの商人』(1977年)を「劇団四季」で観たんです。母がすごく演劇が好きで、ただ、仕事をしていて休みの日とか疲れて寝てるので、おばあちゃんか叔母さんと僕に観させて、あとで感想を言わせるのが趣味だった(笑)。
――感想を言わせるのが趣味! 鍛えられますねー。
もともとは「劇団 木馬座」というぬいぐるみ劇団があって、それを観て、僕がかなり喜んでいたので、「コイツは育て甲斐がある」と思ったんでしょうね(笑)。それで最初は小学校三年のときに、東京宝塚劇場で『ベルサイユのばらⅢ』(1976年)を観て大喜びしていたから、「シェイクスピアっていうのも観てごらん」って言って、それで小4のときに『ヴェニスの商人』を日下武史さんで観たのが最初ですね。浅利慶太さんの亡くなられた奥さんの影万里江さんも演られていて。それが面白かったんですよ、シャイロックがすごく可哀想でね。それで、僕が喜んでいたから、そのあと「これも観てごらん」と言われて『オセロー』(1977年)を観ました。二代目尾上松緑さんがオセローを演って、イアーゴーを初代尾上辰之助さん、坂東玉三郎さんがデズデモーナで、エミリアを木の実ナナさんが演られていたんですよ。それがもう素敵で! それでちょっと虜になったのかな。なんかね、歪んだ英才教育をされていましたね(笑)。
――小学生でシェイクスピアを面白いと思ったのがすごいですね! 原作の訳本を学生時代に読みましたが、漢字が難しいのもあって、よくわからなくて…。
『オセロー』とか、観ないとわからないですよね。読むとよくわからない。僕も最初に読んだら無理だったと思います。最初に観ちゃったから(笑)。でも玉三郎さんが綺麗で、もう松緑さんも辰之助さんも迫力あるしで感動しました。それが最初です。
■高校で一応演劇部だったんですけど、男子校というのもあって、僕以外演劇好きがいなくて
――演劇に進もうと思われたのはいつ頃ですか?
やろうと思ったのは、大学入るときじゃないですかね。高校で一応演劇部だったんですけど、男子校だったので、僕以外あんまり居ないんですよ、演劇好きが。あとはみんな、部費でレコードが買えるとか(笑)、そういう目的で集まっていたのと、顧問の先生がボーイスカウトをやっていて、ボーイスカウトに入っているやつは、全員演劇部に入れって。よくわからないけど、みんな楽しんで入っていて。部室で休み時間とかつぶせるから。
――公演は打たれたんですか?
公演は6月と10月にやらなきゃいけなくて、別役実さんの作品をやったり、あと「なんか書け」って言われて、30分くらい書いて。
――高校で初めて脚本を書かれた。
そう、高2くらいかな、まぁ、ひどいものをやりました(笑)。
――完全オリジナルを?
そうでした。
――観劇好きのお母さまの手ほどきといい、すごい演劇の英才教育を…。
そうなんですよ、ホントに。悪夢のような(笑)。
■英国は、演劇教育的に同じところを踏まえている。日本は遊びの中から出ている感じ
――2012年のイギリス留学で、本場に来てよかったと思われたことはありますか?
一番大きいのは、ロンドンという街の雰囲気がわかったこと。翻訳物を読むときに、なんて言ったらいいかな…、たとえば、日本で「世田谷区」とか、「新宿」と言ったときに、どういう街の雰囲気をみんなが連想するかっていうのってあるじゃないですか。それがやっぱり、向こうに行ってみると「あ、ここって言われたら、こんな街だな」という感じが掴めるようになったので、翻訳物を読むときに、“ここはこういうニュアンスだ” っていうのが人に伝えやすくなりましたね。
――書かれている場所の風土や空気感を。
そうですね。だから、なにを目的にしてこの本は書かれたんだろうというのが、行く前よりも読めるようになった感じがします。特にシェイクスピアも、テムズ川って昔はロンドンブリッジしか橋がなかったから、渡るのが大変なんですよね。すると、南側はヨーロッパから渡ってきた、わりと下層階級の人たちが集まっている。だからグローブ座があった周辺も売春街だったりとかするので、その雰囲気というのは、実はあんまり変わらないんですよね。開発されて街が変わったところもあるけど、「テムズ川の南のこの辺は行っちゃいけない」みたいな話を向こうの人にされたり、あと日本人で行った人が「スゲェ怖い目にあった」みたいな話を聞くと、「あ、成程なぁ」みたいな。行くとやっぱり「ちょっとこっから先は怖そうだな」みたいな感じがあったりもするので。なんかそういうことがすごくわかるようになってきました。
留学する前に、どこに住もうかなと思って、自主的に自費で一週間くらい行ったんですね。ちょうど蜷川さんがロンドンで公演を打たれていて、それで松岡さんが行くっておっしゃるから、だからちょっと便乗して一緒にゲネを拝見したりとかして。そのときに蜷川さんが、僕が留学するって聞いて「ここはすごく徹底したリアリズムの国だから、あんまり影響されすぎるなよ」って言われたんです。だったら徹底的にリアリズムを学べばいいかなと。だから向こうで芝居を観てるとき、わりと蜷川さんの影がチラついてる感はあったんです。「リアリズムが徹底しているってどういうことなんだろう」と思いながら、どれも観ていた感じがします。
――「リアリズムが徹底している」とはどういうことだったんでしょう?
うーん、なんだろう。演劇教育的に、みんな同じところを踏まえて出ているんだろうなって感じがしましたね。向こうの演劇学校のカリキュラムが、どこもわりと同じカリキュラムでやるんですよ。それを身体に根付かせた上で、違うことをやっているという感じがあって。日本はわりとこう、もっと遊びの中から出てきている感じがするから、だから元が違うということをちゃんと自覚した方がいいなって、思いました。
――一見、同じ表現を用いているように見えるけど、土台は全く違うということでしょうか。
そうですね。そんなことを思いながら観ていた気がします。
■『十二夜』、誰か好きな役者さんがいる人は観て欲しいな。絶対損はさせない
――最後に、ご覧になるお客さまへメッセージをお願いします。
まあ、とにかく誰か好きな役者さんがいる人は、絶対観て欲しいなと思うし、それからやっぱり未知のゾーンに踏み込むときって、まだシェイクスピア未体験の人は「ちょっと大枚はたいてみて失敗したらどうしよう」と思う人もいるかもしれないけど、絶対損はさせないので、試しに観てやってください。
――”こんなに笑えるシェイクスピア” ですから。
はい。ワイヤーなしで、ワイヤーアクションを(笑)。こんなこと言っといて、通してみたら「それ、やっぱやめよう」なんて、そのシーンなくなってるかもしれない(笑)。
――(笑)。
いろいろなものが観られると思います。これだけいろんな出自の方が出ていらっしゃるので。
――出自の違うキャストの得意なところを、ふんだんに生かした作品になりますね。
ええ。ご期待ください。
――ありがとうございました。
※青木豪さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは4月4日(土)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。