【こんな時だからこそ、舞台の話をしよう】人の気配・共感の空気が心地よい同時視聴

演劇同時視聴配信中の画面(コメントのお名前はカットしています)

新型コロナウイルスの患者急増に伴う非常事態宣言は2020年5月末に解除されましたが、ミュージカルや演劇・音楽・ダンスなどの舞台公演が以前のような形で上演されるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。こんな時だからこそ「あの舞台のあの場面を思い出して頑張ろう」という話がしたいし聞きたいと思ってスタートしたアイデアニュースで特別企画『こんな時だからこそ、舞台の話をしよう』に応募してくださった作品の中から、ブイチューバー(VTuber)の雅王とらいさんの文章と写真を紹介します。

演劇同時視聴配信中の画面(コメントのお名前はカットしています)

演劇同時視聴配信中の画面(コメントのお名前はカットしています)

アイデアニュース読者の皆さま、こんにちは。はじめまして。文豪ブイチューバー(VTuber)の雅王とらいと申します。文豪成分の7割は咳です。VTuberとは、Virtual YouTuber(バーチャルユーチューバー)を略したものです。主に、バーチャルなアバター(日本では主に、アニメ的なキャラクター)を用いて、YouTube等のインターネット配信をする人をさします。

ブイチューバーの活動は、配信を中心に据えつつ、多岐にわたります。昆虫を食す人、歌う人、コメディに徹する人、バーチャルリアリティ関係の技術を極める人、法律、科学、料理……。その中の一つに、「同時視聴配信」というものがあります。権利関係的に難しく、配信画面には映像も音も出ない為、タイミングを合わせて、配信者と視聴者が同時に一つの映像を視聴し、感想などのやりとりを行う配信です。

一般的に「同時視聴配信」を行うのは、TV放映されている映画やアニメ、あるいはAmazonプライムなどで見られるものが多いです。ただ私は、元々演劇が好きだったこともあり、コロナ禍で劇場公演の中止が囁かれ始めた2月末頃から、「演劇同時視聴配信」という形で、演劇映像の同時視聴を行ってきました。

5/14に開催しました、「【同時視聴】こんな時だからこそ、おうちで舞台を一緒に見よう。【演劇映像】」というYouTube配信では、アイデアニュースさまで告知をしていただいたおかげで、沢山の方にお寄りいただき、誠にありがとうございました。

実際の舞台と違って、映像配信はいつでもどこでも見られるものも多くあります。とはいえ、なんとなく気乗りがしない。見よう見ようと思っているうちに、配信期限が来てしまう。一人だと退屈してしまう。集中力がなく、停止ボタンを押してしまう……。よく聞く話です。自由で選択肢が多いからこそ、予定を組みづらく、他のことに気を取られてしまうのではないでしょうか。また、劇場という一番情報量と時間・空間的拘束の大きい状況に慣れているために、家で見るのは物足りないというのもあると思います。

そんな時に、私は「同時視聴」という選択肢を提案したいと思います。私の配信に、という話ではありません。友だちと時間を合わせて、通話やLINE、Twitterでの実況を交えながら、一つの作品を観る、ということをオススメしたいのです。

他の方と同時視聴をすることで、予定が組めます。これは普段のチケットよりも時間の融通が効きますが、一人で見るよりも時間が拘束されているので、自由過ぎて選びづらいということが減ります。通話などで感想をやりとりするのも楽しいですし、何より、リアルタイムに、同じものを目にしている人の気配、共感の空気が、劇場を満たす感情にも似て心地よいです。

映像を見ることそのものは、劇場で見る時の「体験」とは大きく異なります。劇場での観劇は目や耳で感じる以上の刺激から成り立っているからです。だからといって「映像はダメだ」と断じる必要もない。別の楽しみ方を見いだしていけば良いのです。その一つとして、私は「同時視聴」で、遠く離れたところに住む友だちと同じものを見ながら、自分の家を小さな劇場にする事を、提案します。

過去の「演劇同時視聴配信」は、YouTubeチャンネル「雅王とらい」の中の、演劇同時視聴配信の再生リスト「演劇が大好きなんだ」にまとめています。

YouTubeチャンネル「雅王とらい」の中の、演劇同時視聴配信の再生リスト「演劇が大好きなんだ」

YouTubeチャンネル「雅王とらい」の中の、演劇同時視聴配信の再生リスト「演劇が大好きなんだ」

※アイデアニュース有料会員限定部分には、雅王とらいさんの作品の全文と写真を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■演劇に馴染みのない方達に、同時視聴配信で演劇の面白さを

■Stay Homeの今だけでなく、演劇の恒久的な発展にも繋がる

■今はただ、皆さま心身共にお健やかに。それが最も大事

こんな時だからこそ、舞台の話をしよう 関連記事:

⇒すべて見る

公演が続々と中止になる前、一番最後に見に行ったミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』=撮影・雅王とらい

公演が続々と中止になる前、一番最後に見に行ったミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』=撮影・雅王とらい

※ここから有料会員限定部分です。

■演劇に馴染みのない方達に、同時視聴配信で演劇の面白さを

この「演劇同時視聴配信」の活動方針として「あまり演劇に馴染みのないブイチューバー好きの方達に、少しずつ演劇の面白さを浸透させよう」というものがあります。その為、気軽に見やすいように、無料で公開されている作品をピックアップしました。

観劇三昧さんにて公開されている劇団「少年眼鏡」さんの作品『怪物』から始め、YouTubeにアップロードされている劇団「風凛華斬」さんの作品『風凛華斬第18回公演 Live together!~同棲はじめました~』では、主宰のSINさんと、女優の末次由布子さんにコメント欄に来ていただきました。

その後、段々と演劇界の状況が変化するにつれて、無料公開作品が多くなってきた事もあり、National Theaterの『One Man, Two Guvnors』、Andrew Lloyd Webberさんの『Jesus Christ Superstar』、そしてミュージカル『刀剣乱舞』の連続無料配信など、著名な作品も取り上げさせていただきました。

ミュージカル『刀剣乱舞』は、Twitterでも同時視聴の大きなムーブメントがあり、普段観劇をしない方も視聴しました。波は収まらず、時代劇チャンネルにて放送された、映画版の『映画刀剣乱舞』の同時視聴にも発展していきました。配信やTVという形で、これまで劇場に足を運んだことがない方も、演劇という素晴らしいコンテンツにふれるきっかけを得たのです。

■Stay Homeの今だけでなく、演劇の恒久的な発展にも繋がる

演劇界が今年の一月頃の状況まで戻るのは、すぐには難しいだろうと、私は思っています。でも胸の中にある「演劇を見たい! 劇場に行きたい!」という強い気持ちを押さえることが出来ずにいます。

現在、演劇映像の配信に関する活動が活発になってきました。その中でも、演劇映像中心のプラットフォームの動きに、私は注目しています。

観劇三昧さんでは、動画に投げ銭機能をつけ、通常の視聴インセンティブにプラスした形で、劇団への還元を目指しています。

ステージチャンネルさんでは、小劇場の継続を目標とした小劇場エイド基金というクラウドファンディングを行っています。

シアターコンプレックスは、演劇プロデューサー松田誠さんが発起人となり、新たなプラットフォームの設立を目指すクラウドファンディングです。

演劇中心の配信プラットフォームが盛り上がると、何が良いのでしょうか。

1.舞台映像を、好きなときに(比較的低価格で)見られる

2.劇場に行かなくても、好きな作品・劇団・俳優を応援しやすくなる

3.ちょっと興味があるけど、劇場に行くのは…という方も見やすい

4.アーカイブとして後世に残る

(5.流通経路が確保されるため、これまで映像化しづらかった作品もされる可能性が上がる)

上記は、演劇ファンからの目線での利点ですが、同時に制作サイドからの利点でもあります。

チケットをとることや、劇場に行くことは本当に素敵な体験ですが、同時にかなり難易度の高いことでもあります。現在の状況のように、人が集まれない時に楽しめないという点もそうです。また、スケジュールを押さえ、未知のものに数千円~一万円を費やし、かつ見知らぬ場所に行ってマナーを守る……というのもなかなかハードルが高い行動です。毎週のように行っていると、完全に慣れてしまいますが、演劇ファンの皆さまは、かなり負荷の高い事をこなしているのです。

演劇中心の配信プラットフォームが盛り上がると、より気軽に演劇という文化に触れることが出来るようになります。これまで興味をもたなかった方が、演劇という存在を知るハードルが下がり、劇場への一歩を踏み出すきっかけにもなるでしょう。元々好きだった人も、ちょっとした時に見ることが出来ます。そして、劇場外で演劇やそれに関わる人たちに対して、応援(つまり、課金などを)する事も出来る。Stay Homeの今だけでなく、今後の演劇の恒久的な発展にも繋がるのです。

■今はただ、皆さま心身共にお健やかに。それが最も大事

今の状況下で、様々な活動が立ち上がっています。新型コロナウイルス感染症被害対策:舞台芸術を未来に繋ぐ基金=Mirai Performing Arts Fund | MOTION GALLERYといった幅広い舞台芸術に当てた基金もありますし、他のクラウドファンディングやリモート演劇、俳優・女優個人の配信、オンラインイベントなどが日々行われています。突然の状況変化に戸惑い、大好きだった劇場にも行けず、新しいものに押し寄せてこられ、気持ちが疲れてしまっている方も多いでしょう。身体的に無理をしてしまっていることも多いと思います。

私は映像配信プラットフォームと「同時視聴」をオススメさせていただきましたが、それを必ず受け入れなければいけない、ということはありません。色々と利点をあげさせていただきましたが、結局は、「演劇を愛する人がいる」ということが重要なのです。

劇場で見ることが好きな方は、また幕が開く日まで元気で過ごしてもらえたらと思います。一人で過ごすことが好きな方は、じっくり作品や、自分自身の舞台が好きな気持ちと向き合うのも良いでしょう。

今はただ、皆さま心身共にお健やかにお過ごし下さい。それが、演劇にとって、人間にとって、最も大事なことだと思います。

(ブイチューバー:雅王とらい)

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA