「言葉じゃないつながりを」、『ビリー・エリオット』大貫勇輔・永野亮比己対談(上)

大貫勇輔さん(左)と永野亮比己さん(右)=撮影・岩村美佳

ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』が、2020年9月11日(金)から9月14日(月)のオープニング公演を経て、9月16日(水)から10月17日(水)までTBS赤坂ACTシアターで、10月30日(金)から11月14日(土)まで梅田芸術劇場メインホールで上演されます。不況に喘ぐ英国北部の炭鉱の町を舞台に、ひとりの少年と彼を取り巻く大人たちの姿を描いた映画『BILLY ELLIOT』(邦題『リトル・ダンサー』)を、2005年にミュージカル化した作品で、エルトン・ジョンが音楽を手掛けています。日本では2017年に初演。客席の涙や熱い拍手は今でも強く記憶に残っています。アイデアニュースでは、オールダー・ビリーをダブルキャストで演じる、大貫勇輔さんと永野亮比己さんにインタビューしました。大貫さんは初演に続いて、永野さんは初めての出演です。上、下に分けてお届けします。

大貫勇輔さん(左)と永野亮比己さん(右)=撮影・岩村美佳
大貫勇輔さん(左)と永野亮比己さん(右)=撮影・岩村美佳

――今、稽古はどんな段階ですか?

大貫:僕らのシーンはもう完成していて、何度も通しているんですが、作品全体で言うと、セクションごとに分かれていて、アクティングチーム、ダンスチーム、歌チームと、5つから6つの部屋で同時進行でやっているような感じですね。もう少ししたら、全体ができ上って、通し稽古をするんじゃないかなと思います。

永野:セクションごとに分かれて稽古しているので、全体で一緒にやる時は、皆さんがそれぞれに稽古してきたところを見られますね。

――永野さんは、初めて『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』の世界に飛び込んでみて、現時点でどんな印象を持っていますか?

永野:僕はミュージカルライブ版の映像でしか観たことがなかったんですが、元々作品の内容は知っていましたし、以前僕が劇団四季にいた時に、初演を観劇した人たちから聞いた声が、とにかく「すごく面白かった」と。「泣けた」「めっちゃ笑った」「ビリー役の子供たちが本当にすごくて」「オールダー・ビリーのバレエのシーンが面白かった」など、とにかく期待が強かったんです。まさか自分がやるとは思ってもいなかったですし、元々僕はバレエ畑の人間ではないので、生粋のクラシックバレエダンサーの方が主にやるのかなと思っていたら、オーディションの話をいただいて、選んでいただけました。本当に、夢のような気持ちと言いますか、すごく嬉しかったですね。稽古場に行った時にも、気持ちとは裏腹にものすごく課題が多く、そしてやらなければならないことが、特にオールダー・ビリーがメインで踊る「ドリーム・バレエ」というシーンでは多かったですね。観ている分には、すごく楽しそうで、きれいだなと思っていましたが、実際やってみて苦労が初めて分かり、すごく刺激的な日々ですね。

――大貫さんは、永野さんが新しく入ってこられて、何か変化はありますか?

大貫:もちろん違いますね。「初演ではこうやってたよ」と言うのはすごく簡単ですが、僕は初演でやっていたことが全て正解だとは思わないんですね。だから、この新しいキャストで、新しい『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』を作り上げていくという気持ちで、すべてのキャストが取り組んでいます。もちろん、初演組と再演組という囲いはあるんですが、この2回目の『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』キャストという意識でやっていますので、また新たな作品だと思って、挑むような意識でやっています。ただ、その中で、オールダー・ビリーの「ドリーム・バレエ」のシーンは、特殊技能じゃありませんが、かなり難しいというか。僕も初演の時はめちゃくちゃ苦労したシーンでした。なので、「これをこうすると、もっとやりやすくなるよ」とか、そういうことは伝えながらやっています。すべてのシーンで細かく色々なことが全部決まってるんですよね。決まっていることはちゃんと伝えるけど、「こうやらなきゃいけない」という風には伝えないというか。だから、皆さん、お互いに協力しあってやっている現状ですね。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、幻想的な「ドリーム・バレエ」のシーンがどのように作られていっているのか、オールダー・ビリーをどのように演じようと考えているかなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。9月10日(木)掲載予定のインタビュー「下」では、今回のビリー4人についてのほか、大貫さんと永野さんの出会いやお互いの印象、コロナの影響でお客様が50パーセントに限られている状況をどのようにとらえているかなどについて伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■永野:阿吽の呼吸が大切。思っている以上に苦労があります

■大貫:ビリー、オールダー・ビリー、スタッフさん、3人の息が合わないとできないシーン

■永野:ロイヤルバレエのプリンシパルというより、ビリーの将来像でありたい

■大貫:肉体から発せられるエネルギーの中で、夢の時間をお客様に届けて共有する

<Daiwa House presents ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』>
【オープニング公演】2020年9月11日(金)~9月14日(月) TBS赤坂ACTシアター
【東京公演】2020年9月16日(水)~10月17日(土) TBS赤坂ACTシアター
【大阪公演】2020年10月30日(金)~11月14日(土) 梅田芸術劇場メインホール
公式サイト
https://www.billyjapan.com

<関連リンク>
大貫勇輔 ホリプロオフィシャルサイト
https://www.horipro.co.jp/onukiyusuke/
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https://fc.horipro.jp/yusukeonuki/
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大貫勇輔さん=撮影・岩村美佳
大貫勇輔さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■永野:阿吽の呼吸が大切。思っている以上に苦労があります

――新しい4人のビリーたちと、一緒に作り上げていくのだろうと想像しますが、どんな風に「ドリーム・バレエ」のシーンは作り上げられていくのですか?

大貫:稽古の順番としては、一番最初に椅子の振付(1)、その後パ・ド・ドゥ(2)、その後1回区切られて、最後のシーン(3)。順序として(1)(2)(3)をまずやってから全体の流れを作りこんでいく、という流れです。

永野:意外と、結構決まりがあるんです。そのほぼ決まりの中で、たどって追いかけていくという感じですね。

――方法論がもう決まっていて、そこに従っていく。

永野:椅子もそうですし、パ・ド・ドゥの流れもそうですね。この作品の装置は基本的に、機構操作で動いているのですが、「ドリーム・バレエ」のシーンではビリーたちの体勢がしっかり保たれて、それを僕らが受け止めて、さらにスタッフさんがしっかりコントロールしてくれないと、噛み合わなくなってしまう非常に繊細な場面です。本当にスタッフとキャストが共に責任をそれぞれ重ねているというか。皆さんで阿吽の呼吸が特に大切になるので、裏には思っている以上の苦労があります。

永野亮比己さん=撮影・岩村美佳
永野亮比己さん=撮影・岩村美佳

■大貫:ビリー、オールダー・ビリー、スタッフさん、3人の息が合わないとできないシーン

――チームワークですね。

大貫:そうですね。ビリー、オールダー・ビリー、スタッフさん、3人の息が合わないと、できないですね。

――それをビリーとオールダー・ビリーの8通りの組み合わせでやっているというのは大変ですね。

大貫:そうですね。

――「ドリーム・バレエ」のシーンができ上がると、ビリー4人との絆が深まったりしますか?

永野:ありますね。それぞれ組んだ時の感覚や体感は、みんな違いますので。おそらく彼らも、ひとりひとりが、「勇輔さんの場合はこうだ」「僕(永野さん)の場合はこうだ」みたいな感じで、勝手に感覚でその都度対応してくれるようになっていると思います。言葉では執拗には話さないとしても、感覚で、お互いがお互いを分かっているような状態にはなっていると思います。

大貫勇輔さん=撮影・岩村美佳
大貫勇輔さん=撮影・岩村美佳

■永野:ロイヤルバレエのプリンシパルというより、ビリーの将来像でありたい

――オールダー・ビリーは、この作品の中でどんな位置づけの役だと思いますか?

永野:僕はまだ経験したことがないので、事前に勉強したものとしては、幻想の中での将来像、未来像のような役割として、きちんとそこにいなければいけないのかなと思っています。いわゆる“ロイヤルバレエのプリンシパル”というスタンスでいなければいけないと、最初は思っていたんですが、やっていくうちに、そこまで思いすぎなくてもいいのかなと。プリンシパルというよりは、よりビリーの将来像のダンサーでありたいと、最近思うようになってきていて。もちろん振り付けを変えるわけではないですが、「このビリーだったらこういるのかな、このビリーだったらこういるのかな」と、無意識にミクロの部分だとは思いますが、それぞれのビリーに対して、少しずつ対応の変化がどこかで出てきているのかなと。まだ明確にこう、というのは分かっているわけではないんです。それぞれのビリーに対する見どころの変化、みたいなものは、何かちょっとある感じがします。

永野亮比己さん(左)と大貫勇輔さん(右)=撮影・岩村美佳
永野亮比己さん(左)と大貫勇輔さん(右)=撮影・岩村美佳

■大貫:肉体から発せられるエネルギーの中で、夢の時間をお客様に届けて共有する

――大貫さんはいかがですか?

大貫:この「ドリーム・バレエ」のシーンが、お父さんの心が変わっていくきっかけになるシーンなんですね。もちろん夢の世界、幻想の世界なんですが、お客さんに夢を見せることで、お父さんの気持ちにも同調できるような、始まりのシーンだと思うんですよね。「こんな未来が待ってるんだったら……」みたいな。だから、初演の時は、その夢をお客様に届けなければいけない重要なシーンに、めちゃくちゃ押しつぶされそうで、毎回すごく不安だったんです。あれから3年間、「もし再演があったら絶対にまた演じたい!」と決めて、ずっとひそかにトレーニングしてきたので、自分の中で大分落ち着いて、結構周りが見える感じでできるようになりました。本当にちょっとのタイミング、上がるタイミングだったり、上がる角度だったり、持ち上げ方だったり、息の合わせ方、目線の合わせ方、ビリーの手の持ち方、視線の送り方……ちょっとのことで、「この2人は言葉じゃなくても、何かつながっているんだな」とか、オールダー・ビリーの愛みたいなもの。説明的な振り付けというものはほとんどないんですよ。でも、肉体から発せられるエネルギーの中で、濃縮した時間と夢の時間みたいなものを、お客様に届けながら共有するためには、形式的な形を追求することは必要です。それを、ビリー少年たちとコミュニケーションを取りながら、小さく小さく磨いていって、作り上げている最中です。「ドリーム・バレエ」は、お父さんのきっかけであり、お客様と共有する夢の瞬間であると思っています。

大貫勇輔さん(左)と永野亮比己さん(右)=撮影・岩村美佳
大貫勇輔さん(左)と永野亮比己さん(右)=撮影・岩村美佳

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“「言葉じゃないつながりを」、『ビリー・エリオット』大貫勇輔・永野亮比己対談(上)” への 2 件のフィードバック

  1. あき より:

    素敵なインタビューをありがとうございます。
    お二人の考え方の違いや、違うけれど共通してるところなど感じられて、次の観劇がますます楽しみになりました。

  2. ごま より:

    永野亮比己さんの大ファンです。オールダービリー役を楽しみにしています。インタビュー楽しく拝見させていただきました。また取材していただけることを心待ちにしております!

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