「一度悪いヤツを作って、次はいい人で」、『恋、燃ゆる。』東啓介インタビュー(上)

東啓介さん=撮影・岩村美佳

2020年10月19日(月)から11月15日(日)まで明治座で上演される『恋、燃ゆる。~秋元松代作「おさんの恋」より~』に出演する東啓介さんにインタビューしました。上、下に分けてお届けします。『恋、燃ゆる。~秋元松代作「おさんの恋」より~』は、近松門左衛門の浄瑠璃『大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)』をもとに、劇作家、秋元松代さんが書いたテレビドラマシナリオ『おさんの恋』の舞台化となります。大店・彩玉堂の貞淑な妻・おさんと、まじめな手代・茂兵衛が、運命のいたずらに翻弄される中で芽生えた、二人の真実の愛を描いた作品です。主演は檀れいさん、上演台本、演出を石丸さち子さんが担当されます。東さんは、大店の主人永心の異母弟、政之助を演じます。演じる政之助役について、この座組での貴重な経験などについて伺いました。

東啓介さん=撮影・岩村美佳
東啓介さん=撮影・岩村美佳

――ご出演が決まって、いかがですか?

この名だたる共演者の皆さんとご一緒できることは、すごくありがたいと思いました。僕は日本人ですが、日本人サイズではないので、着物の着丈など、和物の作品は自分には合わないのかなと思っていたところを選んでいただいて、すごくありがたいことですし、ここで学べるものは大きいなと思っています。しかも、演じる役柄もこれまでとは全然違いますので、挑戦の舞台になるなと感じました。

――台本を拝見しましたが、東さんが演じる政之助が「大きい」という表現が出てきていて、ぴったりだと思いました(笑)。

あれは、石丸さんが書き加えてくれたんです。「図体がでかいだけだ」って(笑)。

――これまで何度もご一緒されている石丸さんが上演台本と演出をされるのは、安心感があるんじゃないですか?

そうですね。ただ、政之助を表現するのは難しいなと考えています。異母弟であることや、店に煙たがられながらも認めさせてきた、彼のバックボーンが大きすぎて、これを自分が出演する場数で表現するのは、相当難しいなと感じました。やっぱり、おさん、茂兵衛、おたま、あとは、善四郎とか、すごく切ないストーリーが、よく描かれている本なんですよ。僕はそこへちょっかいを出しにいく役ですので。

――物語的には「出てくるなよ」みたいな(笑)。

そうそう、「お前が来たら乱れるんだよ」みたいな感じですので(笑)。ただ意地悪をしに来たのとは、また違う役どころ。分かりやすく悪すぎると、それはそれでまた違うなと、その塩梅が難しいと思っています。

――台本上は、最初はそこまで悪そうに見えない役ですし、物語が進んでいくにつれて、意外な面白さがあると思いました。

後から「あ、あの人がああいうこと言ってたからか」と気づくんですよね。悪くしすぎると、「絶対この人はわざと言っているんだ」と感じてしまう。わざと言っているんですけどね(笑)。

――この難しそうな部分を、どこからアプローチしているんですか?

一度、めちゃくちゃ悪いヤツを作ったんですね。次は、逆にいい人でやってみようかなと思っているんです。まず、悪いヤツで作った後に、いい人でやったら、絶対に翳りみたいなのも見えてくるんじゃないかな、と。たとえいい人でやろうとしても。今はそこでアプローチしつつ、見せられないバックボーンはありますが、それを持ったままやってみようかなと思っています。(悪い思いを)本当は持っているけれど、そんなことはないですよ、みたいな形でやったら、そんなに難しいことはしなくても、おのずと出てくるんじゃないかな、と信じてます(笑)。

――なるほど。政之助は、無意識にやっているのか意識的にやっているのか、どちらでもいけるのかなと思ったのですが。

どちらでもいけると思います。作為的にやっている、意地悪をして楽しんでいる部分は絶対にあると思います。それが作為的かつ自然にできてしまっているのは、無意識的にそういう本能が働いていると思いますので。考えてわざとやっているのではなくて、考えているけれど、それを普通のこととしてできるのが、政之助の複雑さなのかな、とは思います。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、稽古場におけるキャストのお芝居を見ての感想、この作品に出演することに対しての思いなどインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。10月18日(日)掲載予定のインタビュー「下」では、東さんが「30歳までに帝国劇場に出たい」という夢を掴んだ後の想いや、自粛期間からこれまでの気持ちの変化などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

石丸(さち子)さんが「日常がない」と。ドラマは非日常で動くけれど、普段をベースにと

西村(まさ彦)さんは酔っ払ってるシーンがあるんですが、本当にお茶目で可愛くて

高畑(淳子)さんは「考えすぎず、思ったことを言えばいい。完璧である必要はない」と

『恋、燃ゆる。』の後にミュージカルをやったら、どんなふうに演じられるんだろうかと

<「恋、燃ゆる。~秋元松代作『おさんの恋』より」>
【東京公演】2020 年10月19日(月)11月15 日(日) 明治座
公式サイト
https://www.meijiza.co.jp/info/2020/10_02/
出演:
檀れい
中村橋之助 東啓介 多田愛佳 石倉三郎
西村まさ彦 高畑淳子
ほかのみなさん

<ストーリー>(公式サイトより)
京都の大店、大経師彩玉堂のおさん(檀れい)は「美人で気立てのよいお内儀」と噂に高い。だが主人の永心(西村まさ彦)は女遊びがやまず、永心の母である刀根(高畑淳子)はおさんを気遣っていた。ある日、手代の茂兵衛(中村橋之助)は店の金をすられるが、永心からは横領を疑われる。さらに、部屋からおさんの櫛が見つかった。茂兵衛はおさんに秘かな恋心を抱き、拾った櫛を大切にしていたのだ。問い詰められた茂兵衛を救おうと、彼に思いを寄せる女中のおたま(多田愛佳)は「自分が拾い、茂兵衛に与えた」と嘘をつく。それを聞いた永心は茂兵衛とおたまに処罰を与える。そんな店の騒動を永心の異母弟、政之助(東啓介)は冷ややかに見つめていた。永心に命じられ納屋に入れられた茂兵衛だが、父が病との報を受け、居ても立ってもいられず彩玉堂を抜け出す。茂兵衛は誓岸寺の住職・宗林(石倉三郎)に相談し、国許に向かうことにするが、おさんがまもなく誓岸寺に墓参りに来ることを知ると—。

<関連リンク>
東啓介|ワタナベエンターテインメント
https://www.watanabepro.co.jp/mypage/10000062/
東啓介Twitter
https://twitter.com/keisuke_higashi
東啓介オフィシャルinstagram
https://www.instagram.com/keisuke_higashi_official/
東啓介 1st Musical Concert『A NEW ME』 2020年11月28日(土)
https://www.wowow.co.jp/eventinfo/detail/event-1115.html

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東啓介さん=撮影・岩村美佳
東啓介さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

石丸(さち子)さんが「日常がない」と。ドラマは非日常で動くけれど、普段をベースにと

――その辺は、石丸さんと話しましたか?

はい。でも、とりあえず場数を当たっただけですので、まだこの方向というのはないんです。政之助の日常がない、と言われました。ドラマが描かれるというのは、非日常が起こったりすることで、ドラマが動いていきますが、その日常の部分が、政之助はないと。普段の政之助というものをベースに作っておいて、「あ、あいつ何かやっちゃったな」、「ちょっとちょっかいを入れに行こう」みたいな感じにならないと、「店を潰しに来た人」みたいになってしまう。そうではなくて、意地悪をしたいんです。

――その意地悪がきっかけで、大きなことが起きるとはまったく考えずに。

起こったとしても、「あ~、大変ですね(笑)。でも店を任せてください、頑張りますよ」という気持ちです。

――途中で政之助の奥様も出てきますが、奥様とのどんな生活があるのか、そういう日常が本当に想像がつかないですよね。

妻に対しても、100パーセント全部は打ち明けてないんじゃないかな。全てを信じることができる人間じゃなさそうだな、とは思います。

――そういう積み重ねが、政之助の人生にある。

この時代は女性はついて来てくれるものという考えなので、たとえ悪いところを見せたとしても、それをわざわざ周りに言いふらすことは絶対しないだろうと思います。でも、妻が「自慢の夫ですよ」と言えるような、政之助はそういう振る舞いが自然にできるようなタイプだったと思いますね。

東啓介さん=撮影・岩村美佳
東啓介さん=撮影・岩村美佳

西村(まさ彦)さんは酔っ払ってるシーンがあるんですが、本当にお茶目で可愛くて

――今、コロナ対策でキャストどうしの顔が見えない中でも、稽古場で皆さんのお芝居を見ていて、いかがですか?

高畑(淳子)さんと、西村(まさ彦)さんはすごいな、と思います。

――顔が見えなくても、それが伝わってくる?

本当にすごいなと思いますね。高畑さんは、刀根という、隠居された永心の母ですが、最初からそう見えますし、おさんにかける言葉も優しさや、温かいものが見えます。西村さんは、ぶっきらぼうなところだったり、酔っ払って入ってくるシーンがあるんですが、そういうところが本当にお茶目で可愛くて、確かにこれは支えなければいけないと思うだろうなと。まだ1回しか稽古をやっていないんですよ。その瞬発力は素晴らしいなと思いました。

――今は稽古場でもコミュニケーションを取ることが難しいだろうと思いますが、何かお話したことはありますか?

西村さんとはお話しました。和気藹々としゃべってくださるので、ありがたいなと思っています。西村さんはいつもずっと何かを考えてるんでしょうね。「稽古が始まります」、「西村さんお願いします」といわれても、気付かないんですよ(笑)。

――ご自分の世界に入っていらっしゃる(笑)。

それがまたいいなあ、と(笑)。素敵な方です。高畑さんとは、稽古場の外の控室みたいなところで、どうやって舞台から映像の世界に行ったのか、ということをお話ししてくださいました。

東啓介さん=撮影・岩村美佳
東啓介さん=撮影・岩村美佳

高畑(淳子)さんは「考えすぎず、思ったことを言えばいい。完璧である必要はない」と

――高畑さんとのお話の中で、印象に残っていることはありますか?

女優を辞めようと思っていて、最後にひとつ作品が来たから、思い切って自分の意見を言ってみようと思って言ってみたら、その作品がとても当たったそうです。その二人芝居の相手役の方に「悪くないけど、面白くないよね」と言われたことで、自分が変われたとおっしゃっていて。考えすぎず、思ったことを言えばいいんだと。完璧である必要なんてないんだ、今の自分は勉強して登っていった、というお話をしてくださいました。今はご飯などにも行けませんので、そのお話を伺えてありがたいなと思いました。

――東さんは、2.5次元ミュージカル、グランドミュージカル、ふたりミュージカルなどの小規模な作品、明治座さんの和物のお芝居まで出演されていて、こんなにバラエティに富んだ舞台に出演されている方は、同世代ではなかなかいらっしゃらないかと思うんですが。

確かにいないかもしれないですね。

東啓介さん=撮影・岩村美佳
東啓介さん=撮影・岩村美佳

『恋、燃ゆる。』の後にミュージカルをやったら、どんなふうに演じられるんだろうかと

――いろいろ先を考える中で、さまざまなお仕事の中から「これに出よう」と選ばれたりすることもあると思うんですが、特に今回の作品は驚かれる方もいらっしゃると思いますが、なぜ出演したいと思いましたか? 今この時期に、この作品に出演することに対しては、どんな思いですか?

去年あたりから、ミュージカル俳優と言われて、ミュージカルというところで、まだまだではありますけど、少しは広がったのかなと思ったと同時に、ずっとミュージカル俳優だけをしたいわけではないというか……語弊があるかもしれませんが、ストレートプレイもやりたい、映像もやってみたい、バラエティもやってみたい。人間味のある人でいたいと思っていますし、マンネリもしたくないんです。その都度挑戦できるものに挑戦していって、その時ミスをしたらそれでもでいいと思っているんですよ。その時にできなかっただけで、それもひとつの勉強だと、何が足りなかったのかを気付けるだろうと思います。その中で、例えば『恋、燃ゆる。』をやった後にミュージカルをやったら、それが再演だったとして、どんなふうに複雑に役を演じられるんだろうかと考えるんです。ただミュージカルの再演を待つ、新しいものをやるだけじゃなくて、いろんなことに触れることによって、また同じ役をさせていただいた時に、違って見せられるんじゃないかと。例えば、再演をご覧になったお客様が「今回はこんな風に演じるんだ」と感じてもらえるようになりたいと思って、この作品を選んだというのがあります。もちろん歌も好きですし、ミュージカルも好きですし、ミュージカルに出たいなと思うんですが、いかんせん、いろんな理由で出られないという事情もあったり、求められている役が違うということもあるので。だったら、今出来ることを糧にして鍛えようと思いました。

東啓介さん=撮影・岩村美佳
東啓介さん=撮影・岩村美佳

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“「一度悪いヤツを作って、次はいい人で」、『恋、燃ゆる。』東啓介インタビュー(上)” への 4 件のフィードバック

  1. ミハル より:

    「恋、燃ゆる。」観劇前にインタビュー上を拝見し、観劇後に再度インタビューを読むことで政之助に対する理解がより深まりました。
    また、色々なことに挑戦していきたいという東さんの前向きな思いや、他キャストさんとの裏話も聞けて読み応えがありました。
    インタビュー下では、過去に出演した作品や今年出演した作品のお話を聞けたため、私自身も今まで応援してきたことを振り返る良い機会となりました。
    掲載されているお写真も衣装やセット等細部にわたるところまで拘られていて、ご本人の魅力が十分引き出されてると感じております。
    この度は何度も読み返したくなる素敵なインタビューをありがとうございました。

  2. ななこ より:

    素晴らしいインタビューとお写真をありがとうございます。貴重な内容で大変興味深く拝読しました。
    舞台の情報解禁後すぐにドラマのDVDを視聴、素晴らしい戯曲に感動し、ずっと楽しみにしてきましたが、今回このインタビューを拝読し、初日への期待がますます高まりました。
    東くんがこの難しい役をどのように演じるのか、公演を重ねるうちにどのように進化していくのか、興味津々です。
    幅広いジャンルで経験を積み重ねる東くん、努力家で柔軟で前向きで、とても伸びしろがある方だと思います。
    ファンになってまだ一年程ですが、とても応援しがいのある素敵な役者さんです。今後ますますの活躍に期待しています。

  3. めぐ助 より:

    初日を二日後に控え、興味深く読まさせて頂きました。先ずはこれまで当たり前だと思っていた初日がコロナの影響で開かなかったり、無観客で上演されたりしていましたので、無事初日の幕が上がること、本当に嬉しく思います。私は非日常を求め劇場に足を運んでいますので、とんちゃん演じる政之助への石丸さんのお言葉「日常がない」がとても印象に残っています。とんちゃんの新たな挑戦である政之助を楽しみに、そしてキャスト、スタッフが一丸となって作り上げた世界観を感じ取りに、沢山劇場に足を運びます。

  4. より:

    これはどうなのかな、と思っていたことがまさに質問されていて、とても興味深いインタビューでした。

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