2021年3月12日(金)から3月28日(日)まで東京国際フォーラムホールCで上演されるミュージカル『アリージャンス~忠誠~』(名古屋・大阪公演あり)に主演する濱田めぐみさんのインタビュー、後半です。アメリカ人から見た日本人の家族を描いた作品を日本で創る難しさや、濱田さんが歌われる楽曲について、2020年を経てこの作品を上演する意味などについて話してくださいました。
――物語の中で描かれているケイに対してはどう考えていますか?
日本版はこれから創る段階ですが、難しいなと感じていることもあります。ブロードウェイの『アリージャンス~忠誠~』はアメリカ人から見た日本人の家族を描いていますが、その映像を拝見すると、ちょっとした違和感があって。日本人が思う家族って、みんなでこたつに入って丸くなって、紅白歌合戦でも見ながら、おせち食べて笑うのが、すごく幸せだったりしますよね。ただただ、寄り添っておせんべいを食べているだけでも、ほっこりするというか。そういった日本家族の心の距離感とは違うような気がして。そういう部分で、ブロードウェイのケイの描き方が、日本人っぽくないなと思いました。それはもちろんアメリカで生まれ育った女性ということもあると思います。日系人の役として、自分自身と通じるものがあると思ったけれど、違いを感じて、役作りがすごく難しいと思いました。
――稽古ではそういうところも話していかれるんだと思いますが、その辺が日本で上演するうえでの肝になるような。
そうなんです。「Gaman(我慢)」というナンバーもありますが、その意味合いも日本人が持つものとは違ったりしますね。我々にとって「我慢」は「耐えること」じゃないですか。嵐が過ぎるのをみんなで固まって待つこと。でも、この作品では「Carry on 進み続けること」と前向きに訳されていて、そこも違います。やはり、感性と文化が違うので、日本でやる場合は大変だなと思います。日本人が持つ感覚とのギャップとか、その塩梅がすごく難しいなと思っています。
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<有料会員限定部分の小見出し>
■日本で上演するにあたり違和感のないようにしたい
■彼らの中の信念、忠誠心というものは、こうだったということを明確に
■台詞はステレオタイプの日本人女性。だからこそ、曲とメロディーで本当の想いを
■諦めずに前に一歩。『アリージャンス~忠誠~』が始まるのは、そういうサイン
<ミュージカル『アリージャンス~忠誠~』>
【東京公演】2021年3月12日(金)~3月28日(日) 東京国際フォーラム ホールC
【名古屋公演】2021年4月17日(土)~4月18日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
【大阪公演】2021年4月23日(金)~4月25日(日) 梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
https://horipro-stage.jp/stage/allegiance2021/
<関連リンク>
濱田めぐみ オフィシャルファンクラブ gratia-Horipro
http://fc.horipro.jp/hamadamegumi/
濱田めぐみ ホリプロオフシャルサイト
https://www.horipro.co.jp/hamadamegumi/
濱田めぐみ Twitter
https://twitter.com/megumihamada
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■日本で上演するにあたり違和感のないようにしたい
――他の作品にはない悩みですね。
そうですね。今回はそこまで悩まないと、成立しない演目なので。そこの細かい段階の部分を、日本人の女性としてどう表現するか。アメリカで生まれ育っているけれど日本人気質が強いケイが、根っからのアメリカ人気質の弟サミーに対して、どう接していくのか、どう接してきたのかというのを見せる雰囲気というか、ふたりの出で立ちなどが難しいです。
――きっと、全然違う日本版になりそうですね。
変わると思います。日本で、観客のほとんどが日本人という中で上演するにあたり、日本人らしさや日本文化などは違和感のないようにしなくてはいけないと思うので。
■彼らの中の信念、忠誠心というものは、こうだったということを明確に
――そう考えていて、お客さまにはどういう風に届けたいと思っていますか?
最終的には、彼らが取った行動や、信念だと思って貫き通したことは、全ては彼らの中の「忠誠」に従ったということが、きっちり見えたいと思います。正解はひとつじゃないですから。他の人から見たら不正解でも、彼らの中の信念、忠誠心というものは、こうだったということを明確に、各々のキャラクターがしっかり打ち出せるようになるといいなと思います。そうじゃないと、いろんな環境でいろんな状況の人が悩み抜いたドラマを観る意味がないですよね。みんな生きてる環境は違いますから、そのキャラクターの生き様がしっかり信念を持って、リアリティを持って、実を持って、一歩一歩進んで行って、お客さまがどう共鳴するか、というところまで持っていきたいなと思っています。
――これまでたくさんの役を演じていらっしゃいますが、ケイという役を生き切ったら、ご自身にもすごく影響を与えそうですか?
はい。やはり知っていくことが大事というか、知っていくことは悪くないですよね。プラスにしかならないことなんだと伝わればいいなと思います。難しいですよね。そして作品を通して日本の文化や魂に、もう一度立ち返って触れられたらベストですね。
■台詞はステレオタイプの日本人女性。だからこそ、曲とメロディーで本当の想いを
――重いテーマではありますが、楽曲がすごく魅力的ですよね。濱田さんが歌われる”Higher”にはもう期待しかないというか。楽しいナンバーもたくさんありますし、ミュージカルとしての魅力があります。
ケイに関しては、台詞などの作りを、いわゆるステレオタイプの日本人女性に寄せたいと思ってるんです。あえて、その象徴として。だからこそ、彼女が本当に根幹で思っている想いを、曲とメロディーで出したいと思っています。それは声を張り上げて歌うということではなく、明確に「こういう意思を持って、私は存在している」というのをしっかり出したいです。でも、曲は歌い手にはすごく難しいと思います。試行錯誤すると思いますね。
――濱田さんでもですか。
メロディーラインが単純ではなく、歌い出して歌い終わるまでを、一本の筋道で全部覚えなければいけない感じです。ここのパターンがまた来るような、A、A’、B、B’、Cじゃなくて、A、B、C、D、E、F、G、H、I、Jで終わりという感じです。だから、頭から全部を覚えていかなければいけない。今までの楽曲の作りだったら、A、A’、B、B’、C、C’になった時に、C’を抜いてA’を持ってきてと、パネルのように入れ替えて、それを訓練していけば、ば~っと流れるんですが、一箇所が変わったら、頭から終わりまで全部覚え直さないと突っかかります。
――ひとつ変わると流れがまったく違う?
あれ、何だっけ!? となるんですよね。脳で考えながら歌わなくてはならなくなる曲が多いですね。予期しないところで「あ、このメロディー」とか「こういう音符」とかなるけど、歌うほうは、相当ちゃんと入れておかないと、組み立てがばらけてしまう。箱根細工みたいな歌ですね。
――箱根細工!? 緻密に組まれた、あの箱ですよね?
かたかたっと順番にやらないと、最後の鍵がぴっと開かないんです。
――それくらい緻密なんですね。 そんな気がします。ただメロディーラインを歌っただけでは、感動しないんです。そこにどういう風に日本語を乗せるか、小節ごとの跳びをどういう風に工夫するかなど、やることはたくさんあると思います。
■諦めずに前に一歩。『アリージャンス~忠誠~』が始まるのは、そういうサイン
――最後に、観客の皆さまへの想いを聞かせていただけると嬉しいです。
今、この演目をやれるということは、偶然ではない何かを感じています。新しいページをめくるわけじゃないですか。日本人として、日本の歴史を、日本人の手で。
――この作品が描く事実を知らない人も多いのではないかと思います。私も作品に触れるまで知りませんでした。
私も知りませんでした。やっぱり、知らなければいけなかったことですし、実際にあったことです。世界がつながっている中で、同じ地球に住んでいる者同士が、分断されたり隔たって生きていくことの悲しさというのは、この作品の中ですごく描かれています。そうならないための一歩、先駆けとして、自分に気づきを与える作品であって欲しいなと思います。観てくださる方が何か閃く、自分がこの地球という星の平等な世界の中に住んでいる、一個人としての自覚というか、それが目覚めるきっかけになれば嬉しいなと思います。
――2020年はいかがでしたか?
ひと言で言うと、2020年は疲れましたね。
――みんな、くたびれていますよね。
くたびれましたし、「もういいよ! もううんざり」というところで、それでも追い打ちをかけてくる何かがあるじゃないですか。それでも進まなければいけない状況が、この収容所にいる人たちと酷似しているんです。だから、へこたれずに、諦めずに、前に一歩進む気持ちを忘れずに持ち続ける状況が「我慢」ですから。何とか皆さん、手に手を取っていきましょう。『アリージャンス~忠誠~』が始まるのは、そういうサインだと思っています。
――そこからさらに進むということですね。
そういうことだと思いたいですね。そう思いたいな……2回言う(笑)。大事なことは2回言います!
――ありがとうございました!
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