「人生の豊かさみたいなものを感じる」『COLOR』浦井健治・小山ゆうな対談(上)

浦井健治さん(左)と小山ゆうなさん(右)=撮影・岩村美佳

草木染作家・坪倉優介さんが自身の体験を綴ったノンフィクション「記憶喪失になったぼくが見た世界」(朝日文庫)をベースにミュージカル化された『COLOR』が、2022年9月5日(月)から9月25日(日)まで、東京・新国立劇場 小劇場で、9月28日(水)から10月2日(日)まで、大阪・サンケイホールブリーゼで、10月9日(日)から10月10日(月・祝)まで、愛知・ウインクあいちで上演されます。「ぼく(草太)/大切な人たち」を演じるのは、浦井健治さんと成河さん、「母」を演じるのは、濱田めぐみさんと柚希礼音さんです。音楽と歌詞は、本作が初のミュージカル作品となる植村花菜さんが、脚本と歌詞を高橋知伽江さんが、演出は小山ゆうなさんが、編曲・音楽監督は木原健太郎さんが担当します。

アイデアニュースでは、浦井健治さんと小山ゆうなさんにインタビューしました。上、下に分けてお届けします。「上」では、現在お稽古が進んでいる稽古場の雰囲気、そこで感じたこと、坪倉さんが稽古をご覧になって涙を流されたこと、小山さんからご覧になった浦井さんの印象、作品ごとに「ゼロ」の感覚になるという浦井さんのお話などを紹介します。「下」では、ご一緒されるのは今回が2作目となる小山さんと浦井さんに、お互いの印象や魅力について伺った内容や、当初は二人芝居だったというお話、浦井さんが「ぼく(草太)」と「大切な人たち」双方を演じることで見えてきたこと、坪倉さんとご家族のこと、浦井さん・成河さん・濱田さん・柚希さんという4人だからこその時間を過ごしていることなどについて伺った内容を紹介します。

浦井健治さん(左)と小山ゆうなさん(右)=撮影・岩村美佳
浦井健治さん(左)と小山ゆうなさん(右)=撮影・岩村美佳

ーー今、お稽古はいかがですか? 手応えなどを教えてください。

浦井:すごく風通しがいいと感じています。演出家、作曲家、プレイヤー、スタッフさん、そしてプロデューサーも、みんなが思ったことを、言いながら作っていて、すごく、コンパクトな中での充実感を味わってます。限られた時間ですが、みんなで遠慮せずに言い合って、有意義に時間を使い、みんなが「この作品、こうだと思うんです」と、同じ方向を向いている気がします。

成河と過ごす稽古場は、稽古場以外で過ごす日常とそう変わらなくて。いい意味で共同作業ができているのは、「成河とだから」と思いますし、成河も「浦井とだから、やるよ」という気持ちでいてくれているのをすごく感じます。その共同作業がよく言われる「演劇とは共同作業だ」とリンクしていて、まさに貴重で贅沢だなと思っています。

小山:そうですよね。浦井さんと成河さんのお二人が、お互いをすごく尊敬し合っているという関係があるから、みんながそこに引っ張られていく感じがあります。尊敬し合っているということにも、もちろんいろいろな形はあるのですが、この稽古場では、「誰かがちょっと上にいる」という感じがないんです。そういう空気を、浦井さんと成河さんが率先して作ってくれています。

ーー改めて、このメンバーで、この小規模な作品だと思うと、とても贅沢ですね。

浦井:今回、坪倉さんご本人が、この企画を誰よりも喜んでくださっていて。先日、ご本人の目の前で演じながら、しかも、もしかすると、ちょっと触れられたくないかもしれないシーンを稽古していたんです。

ーー「ちょっと触れられたくないかもしれない」シーンですか。

浦井:事故後の初期のシーンでした。坪倉さんの記憶の中で、不思議な戻り方をしたとおっしゃっていて。“思い出す”とは、また違うことだったようで、そう言って彼の涙を流す姿は胸に迫るものがありました。この作品をやることの、懐の深さと、坪倉さんの人間性の素敵さ。そして、演劇と染め物との何か不思議なリンク。人生の豊かさみたいなものを感じるきっかけが多い稽古場です。

僕自身が、いろいろなことを感じながら、30代を経て40代になって。このタイミングで、こんなふうに成河と一緒にやれていることが、ものすごく幸せだなと思います。この作品に出会えたことに感謝していますし、「こういうトライがある」という場に参加できていることが、贅沢でもあり、楽しくもあります。

小山:坪倉さんが稽古場にいらした時、浦井さんがちょうど、坪倉さんがモデルになっている「草太」という役を演じていたんです。坪倉さんが涙を流されたシーンは、浦井さんが演じている「草太 」が、何かセリフを言っている時ではなく、孤独にちょっと佇んでいる瞬間だったそうです。そこをご覧になった時に、涙が止まらなくなったと。「あんなふうに、泣いたことはなかった」とご本人もおっしゃっていましたし、同じ現場にいらしていた原作の編集者の方も、「すごく長い付き合いなのに、坪倉くんが泣いたのを初めて見た」と。

ーーそんなふうにおっしゃっていたのですね。

小山:とても辛い過去ではあるけれども、改めてそこを感じることで、支えてきてくれた方々に、「改めてすごく感謝したい」気持ちになったとお話してくださって。「草太」としての浦井さんの姿を見ることができて、すごく感謝しているともおっしゃっていました。浦井さんの、本当に初期の頃の稽古でしたよね。

浦井:稽古の、1日目とか2日目くらいでした。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、小山さんからご覧になった浦井さんの印象、作品ごとに「ゼロ」の感覚になるという浦井さんのお話など、インタビュー前半の全文を掲載しています。2日掲載予定のインタビュー「下」では、ご一緒されるのは今回が2作目となる小山さんと浦井さんに、お互いの印象や魅力について伺った内容や、当初は二人芝居だったというお話、浦井さんが「ぼく」と「大切な人たち」双方を演じることで見えてきたこと、坪倉さんとご家族のこと、浦井さん・成河さん・濱田さん・柚希さんという4人だからこその時間を過ごしていることなどについて伺った内容など、インタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■小山:坪倉さんと浦井さん、なんか似ています 浦井:濱めぐも言ってました(笑)

■浦井:植村花菜さんも、演劇に興味を 小山:ニューヨークで、ワークショップへ

■小山:「浦井さん」として飛び込み、ミュージカルもストレートプレイもできちゃう

■浦井:20年間この仕事をやらせていただいているけど、毎回「ゼロ」からになる

<新作ミュージカル『COLOR』>
【東京公演】2022年9月5日(月)~9月25日(日) 新国立劇場 小劇場
【大阪公演】2022年9月28日(水)~10月2日(日) サンケイホールブリーゼ
【愛知公演】2022年10月9日(日)~10月10日(月・祝) ウインクあいち
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/color2022/

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※ここから有料会員限定部分です。

■小山:坪倉さんと浦井さん、なんか似ています 浦井:濱めぐも言ってました(笑)

ーー先日の坪倉さんと浦井さんのトークショーも、心洗われる時間で、ヒーリングのような感覚がありました。

浦井:主に、坪倉さんによるものだと思います。

小山:でも二人、なんか似ていますよね。

浦井:それ、濱めぐも言ってました(笑)。「なんか、同じに見えてきた」って。

小山:そうそう(笑)。

浦井:今回、「演じよう」という気持ちがなくなるというか。稽古場の空気によるものかもしれませんが、成河と浦井がそれぞれに同じ役を演じるので、もちろん、2パターンあるように見えるとは思うのですが、僕ら二人の中では「1個なんだ」という作り方をしているんです。

このトークショーの時は、まだ稽古前だったので、今の稽古が進んだタイミングでトークショーをしたら、この時とは違う質問が出ると思います。稽古場を経ての坪倉さんも、また違う視点で、演劇に興味を持たれたかもしれないですね。

■浦井:植村花菜さんも、演劇に興味を 小山:ニューヨークで、ワークショップへ

浦井:植村花菜さんも、演劇にすごく興味を持ってくださっていて…持ちすぎなくらい(笑)。

小山:ニューヨークで、演劇のワークショップに行ったとおっしゃっていましたね。

ーーすごいですね!

浦井:「ミュージカルって、こうだ」とか、「型にはまっていたな」って、新しい考えというか視点があると、反省というか気づきに繋がります。特にこの少人数制だから、思った時点で行動しますし、成河は誰よりも率先してやっていて、「劇団時代を思い出す」と言っています。

■小山:「浦井さん」として飛び込み、ミュージカルもストレートプレイもできちゃう

ーー小山さんも浦井さんも、お芝居では、小規模なカンパニーでのご経験はこれまでにもおありかと思うのですが、今までの経験とも、今回はまた違っていますか?

浦井:やっていることは一緒です。でも今回は、自分を変えるというか、考えを改めるきっかけをいただいているような気もします。

小山:そうなんですね。でも、浦井さんは普段から、最もそういう線引きをせずに仕事をしていらっしゃるイメージです。

浦井:まあ、確かに(笑)。

小山:「ミュージカルはこう」「ストレートプレイはこう」とか、そういうものを持たずに、「浦井さん」として飛び込んで、でも、全部できちゃうっていう。すごいなあって、いつも思うんですよ。

■浦井:20年間この仕事をやらせていただいているけど、毎回「ゼロ」からになる

浦井:いや、だからこそ必死なんです。例えば、成河みたいに、劇団のメソッドも持っていないですし。大学の声楽科で学んでいた人も、きっと原点として立ち返る「型」があると思うのですが、僕にはそれがない。20年間ずっと、この仕事をやらせていただいていますが、型がないことが、劣等感や恐怖心に繋がっているんです。

だから、毎回、「ゼロ」からやるしかない。稽古場での立ち上がりも遅いですし、人との順応や、演出や、アドバイスを咀嚼することで、急に腑に落ちる瞬間があって立ち上がっていくというタイプだと思っていて。逆に、瞬発力というか「一発目で出す」ということには憧れます。でも、十人十色というか、いろんなタイプの役者がいるのが面白さでもあると思いますし、答えはないなと思いながら、毎回やっています。

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“「人生の豊かさみたいなものを感じる」『COLOR』浦井健治・小山ゆうな対談(上)” への 9 件のフィードバック

  1. あんず より:

    COLOR東京で拝見しました。観ているときも、観終わってからも、自分が母であることや子どもであった様々ないことを思い出したりイロイロくるくる考えました。が、ノンフィクションに基づいているからこそ諦めずに前を向いていこうと最終的におもえました。記事を読み返して皆さんのチームワークで出来上がった作品だからこそなのかな~って改めて思っています。

  2. さくら より:

    COLOR初日拝見しました。登場シーンから涙が自然に溢れてきて言葉がメロディに乗ることで深みと想いが伝わってきて、両チームが一つの流れになっているような不思議な魅力の作品でした。

  3. はぐ。 より:

    皆さんの作品に向き合う真摯な姿を垣間見れた気がして、観劇する日がより一層楽しみになりました。

  4. はるき より:

    演出家さんらスタッフさとともに演者さんも一緒になってじっくり創り込みされた作品。
    楽しみにしてます

  5. ゆう凛 より:

    『COLOR』染色家として坪倉優介さんを存じ上げていました。草木染のように温かいけれど力強いエネルギーのある方だと感じています。ミュージカルとして気になる俳優の方々が演じられるCOLORを観て心に届く色彩を感じたいです。写真の浦井健治さんが坪倉優介さんご本人に見える不思議…楽しみです!

  6. ちょち より:

    作品や役に向かう浦井さんが大好きです。
    そして毎回期待をズキュン!と超えてくる
    俳優、浦井健治から目が離せません。

  7. クリーム より:

    ビッグ・フェラー以来の共演で
    ずっと願っていたミュージカルで共演が叶い楽しみです
    健ちゃん僕と成河君僕役代わりで観られて嬉しいです
    どんなCOLORが観られるか楽しみで仕方ありません

  8. COLOR より:

    初日から千秋楽まで、どんどん深化する舞台の予感です。
    千秋楽後のインタビュー記事も読んでみたいです。
    2回目の浦井さん、小山さんのタッグ。本当に楽しみです。
    無事に幕が開きますように。

  9. grapefruit より:

    稽古が進んでいる時期だからこそ伺えるお話、浦井さんの役への向き合い方などを読めて、ますますファンになりました。草太のセリフでなく佇まいで坪倉さんが涙されたというお話は、舞台だからこその感動だと思いました。両versionのCOLORの観劇が楽しみです。
    浦井さん小山さんは、トラムでご一緒された作品の演出がとても斬新で心を鷲掴みされました。プレイヤーの良さを引き出してくれる小山さんにもとても期待しています。

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