「大切な花を心にひとつ」 かっこちゃんの「星の王子さま」のひみつ

"かっこちゃん"こと山元加津子さんの本「大切な花をこころにひとつ」
"かっこちゃん"こと山元加津子さんの本「大切な花をこころにひとつ」

“かっこちゃん”こと山元加津子さんの本「大切な花をこころにひとつ」

この本の著者”かっこちゃん”こと山元加津子さんは、石川県の特別支援学校の教員として30年以上勤務してきました。泣き虫で、握力がなくて、重たいものが持てないし、縄跳びも下手っぴだし、方向音痴だし・・・生徒はみんなそんなかっこちゃんが大好きで、自分たちがかっこちゃんを助けてあげなくちゃと思っていました。かっこちゃんもみんなのことが大好きで、可愛くて仕方がありません。みんなのことが好き好き、大好きと思って過ごした教員生活を終えたかっこちゃんが書いた本は、名作「星の王子さま」の案内書でした。なぜなら、かっこちゃんが出会ったたくさんのこどもたちが、もうひとりの「星の王子さま」だったから。

「これまで出会うことのできた子どもたちとの時間は、『星の王子さま』を読んでいるようでした。その時間は、まるで砂漠の中で突然声をかけられたかのように、いつも驚きに満ちていて、宇宙の中の一人と一人の、運命的にも感じられる出会いだったと思います」と話すかっこちゃんです。

この本ではフランス語で書かれた原作と照らし合わせることで、日本語訳だけではわからなかった箇所を読み解いていきます。その作業を通して、子どもたちと星の王子さまが教えてくれた「本当に大切なこと」が鮮やかに浮かんでくる・・・そんな素敵な本なのです。

星の王子さまの小さな星に、ある時美しいバラの花が咲きます。その時は、この花が「バラ」だということも知らなかった王子さまは、お水をあげたりガラスの覆いをかぶせたりして、一生懸命世話をします。でもあんまり花がわがままばかり言うので、だんだんうんざりして、花を信じられなくなって、とうとう王子さまは星を出てしまうのです。かっこちゃんは、この部分を読みながら「子どもたちと親御さん」のことを考えていました。子どもたちを育てるというのは簡単なことではなく、いろいろ時間をかけて世話をしないといけません。障がいがあるお子さんならなおさらのこと、食事やトイレや着替えや、そばにいて手伝わないといけない。ときには、ひどく疲れてしまったり、病気になったりしてお母さんもお父さんも不安になる・・・かっこちゃんに電話で「自分の子なのに、可愛いと思えないの。自分を責めて責めて、苦しいの」と泣きながら話されるおうちの方もいたそうです。「自閉症のわが子を妻に押し付けて、自分だけ逃げて、家を出てしまった日を何度も夢に見る。僕は逃げるべきじゃなかった」と語るお父さん。あるお母さんは、いつもとても可愛がっている子どもなのに、その子の障がいを持っていないお兄さんが事故で怪我をしたとき、一瞬だけだけれど「事故にあったのがお兄ちゃんじゃなくて次郎だったらよかったのに、代われるものなら代わってくれたらいいのにと思ってしまった」と泣かれたそうです。

筆者は、ここを読んで、老健施設へショートステイに出かける義父のことを思いました。頚椎損傷で要介護5となり、首から下の自由を失った義父と同居して8年。リハビリが出来るとかお風呂に入れるということもあるけど、毎週ショートステイに出る本当の理由は、介護をしている私たちが休憩したり、自由に出かけたりするためなのです。先日、施設滞在中に発熱し、予定より早めに家に帰りたそうだった義父。電話で知らせてきた職員の方に「もう少し様子を見てください」とお願いしてしまいました。体力が落ちて嚥下状態も悪い義父は、咳が出たり熱が出ると不安でたまらないことでしょう。いろんな用事がたまっていたので、自分のことを優先してしましました。申し訳ない気持ちになった時、本の中のこんな一節が胸に響きます。

障がいのある孫が生まれたとき、その親になって苦労する自分の息子のことを思って、赤ん坊が死んでくれたら・・・と思ってしまったおばあちゃんのことです。「そのときそんなふうに考えたことをずっと覚えているから、この子がなおいとおしいと思うんやわ。確かに死んでくれたほうがいいというのは、とてもひどいことだけど、そんなふうに思ったからこそ、私は『優ごめんね、優ごめんね』とこれだけ優を可愛がるんやわ」

友だちの”宮ぷー”が脳幹出血で倒れて以来、生活を一変させて宮ぷーの病院に毎日通ったかっこちゃん。必ず会いにくるかっこちゃんを、意識がないと思われていた宮ぷーは待っていたのでしょう。そうした時間の積み重ねが、キツネと王子さまのように、かっこちゃんと宮ぷーとの特別な関係を築いたのです。ふたりはいっそう特別な友になり、いっそう愛しい家族のような存在になったのです。その人のために時間を費やし、一緒にいる時が積み重なって、その人はただひとりのユニークな存在になる。どこにでもいるキツネが、たった一匹の大切なキツネに、どこにでも咲いているバラが、たったひとつの大切な花になる。

このキツネの場面では、かっこちゃんがフランス語の原作にあたったことで、はっきりと分かったことが書かれています。地球にやってきた王子さまがキツネに「友だちになろう」と言うと、それはできない、「飼い慣らされていないから」とうところです。友だちになることが「飼い慣らす」ってどういうことだろうと思ったかっこちゃんがフランス語を見ると、それはapprivoiser という言葉で「時間をかけて慣れ親しむ」という訳があったのでした。やっぱり、何度も出会って、お互いをわかりあって、特別に大好きになることなんだと嬉しくなるかっこちゃんなのでした。

教員生活で出会った子どもたちとかっこちゃんも、長い時間をかけて、互いに大切な存在になっていったのでしょう。筆者にとっても、義父は特別な、apprivoiserしあった存在だと思います。

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<関連リンク>

白雪姫プロジェクトのページ →http://shirayukihime-project.net/

指談の練習の仕方 →http://shirayukihime-project.net/yubi-dan.html

<アイデアニュース内の関連記事>

指談の新しい本、かっこちゃん&順子さんの「指談で開く言葉の扉」が出ました → https://ideanews.jp/backup/archives/11961

自分の思いが伝わると人はどんどん変わってゆく、「指談・筆談」の現場から →https://ideanews.jp/backup/archives/8508

書評:「体当たり白雪姫と指筆談のこと」 優さんと良平君の思い →https://ideanews.jp/backup/archives/4201

「意識がない」と思われてきた人の意思を伝える白雪姫プロジェクト、指談実演 →https://ideanews.jp/backup/archives/1900

「大切な花を心にひとつ」 かっこちゃんの「星の王子さま」のひみつ →https://ideanews.jp/backup/archives/1837

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<アイデアニュース有料会員向け記事部分> 誰も心に大切な人を抱いて生きている、だから世界は美しく優しい

宮ぷーとかっこちゃんもまた、apprivoiserしあって、大切な友だちになりました。倒れた宮ぷーの回復を信じ、介護やリハビリを毎日やり続けたかっこちゃんの体験は「満月をきれいと僕は言えるぞ」や「僕の後ろに道はできる」という本の中に詳しく記されています。また、どんなに重い意識障がいがあっても、「誰もが思いを持っていて、回復する可能性がある」ことを広めようと「白雪姫プロジェクト」(http://shirayukihime-project.net/)を立ち上げています。こちらもぜひ、ご覧下さい。義父の介護に使った便利なグッズや介護をしていく上でのヒントも、このページからたくさん教えていただきました。

What is “Snow White project” ?

It is said that there are hundreds of thousands of people who suffer from locked-in syndrome in the world. They look unconscious and are considered to have no chance of recovery. Until now, they have spent their whole life lying in bed.

However, we have come to recognize that there is a way to regain consciousness and activities like eating, communicating, etc. This project is to glean and spread information on ways to recover (from locked-in syndrome) through communication methods, oral eating, rehabilitation, nursing care, etc.

Everyone, even persons in locked-in state has a thought and has a way to recover. Our goal is to one day make this type of information common knowledge to us all.

Snow White woke up with prince’s love. Like that, this project is filled with love.

誰も心に大切な人を抱いて生きている。だから世界は美しく優しい。だから時をこえて、星の王子さまは私たちを支え続ける。見上げる星のどこかに、バラが咲いていると思うから、すべての星が笑っているようで、キラキラと美しい。かっこちゃんは魔法を使って、世界の秘密を教えてくれています。どうか、たくさんの人の心に届きますように。

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