大河ドラマ初出演「え、ホント?って」、オレノグラフィティ インタビュー(下)

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

2017年12月14日に開幕するミュージカル『HEADS UP!』(ヘッズ・アップ!)に「演出部 九条六平」役で、初めて出演されるオレノグラフィティさんのインタビュー、後半です。有料会員限定部分には、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』に武田義信役で出演された際の面白エピソードの数々を、掲載しています。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

――『HEADS UP!』では、演出部の「九条六平」役ですね。公式Twitterで「強面」と紹介されていました(笑)。

元暴走族の総長で、演出部でずっと舞台に関わっているという役です(笑)。

――暴走族の総長ですか! その過去を彷彿とさせるシーンがあったりするのでしょうか?

台本上にはそんなに恐い台詞って書いてないんですよ。だから逆にいうと、空白の時間がたくさんあって。元々恐いというバックボーンがある人間、でも今は丸くなって、じゅんさん(久米長一郎役)と芋洗坂さん(滝幸男役)と一緒に3人で演出部をやってる、っていう。

――演出部のお三方は、初演も再演もとても「濃い!」感じですね(笑)。

そうですよね、(初演の)上原理生さんもね(笑)。三者三様な感じですよ。

――台本を読まれて、現段階ではどんな感じになりそうですか?

僕の役割の一つとして、愛嬌が出せたらな、とはすごく思ってます。

――愛嬌を。

『HEADS UP!』って人間の愛嬌で出来てる舞台だと思うので。何というか、失敗することもあるし、我侭を言うこともあるし、悩むこともたくさんあるっていう人間の「愛嬌」。それで楽しいときは笑うし、羽目を外すときは羽目を外すし、怒るときはすごく怒るしみたいな、そういう部分をやっぱり皆さん、こう生で出してくる。僕もしっかり出せたらなと。キャラクターではなくて、人間らしさみたいな部分が出せたら。もちろんどうやって出すかはすごく考えないとなとは思っているんですけど。

――『HEADS UP!』という作品は「芝居を上演しなければならない」という至上命題が観客も最初から分かっているので、到達点が予測できるだけに「それ違うでしょー!」とか「なんでそっちいっちゃうの?」とか思いながら、登場人物の試行錯誤や悲喜交々をより分かり易く楽しめるのかもしれませんね。

そうだと思います。やらなきゃいけないことはハッキリしてますから。三谷幸喜さんの『ショウ・マスト・ゴー・オン(幕を降ろすな)』じゃないけど、幕を開けなきゃいけないし、幕を閉じなきゃいけない。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』出演について伺った内容など、インタビュー後半の全文と写真を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■『HEADS UP!』は本当にすごい台本で、シチュエーションコメディとして成立してる

■『おんな城主 直虎』撮影時は舞台公演中で金髪。部分かつらで前だけ黒く染めて…

■過去の大河の切腹シーンを見て勉強したんですけど、行ったら首を切る方で(笑)

■小劇場を観ている方が初めてミュージカルを観るなら、絶対に『HEADS UP!』は良い

<ミュージカル『HEADS UP!』(ヘッズ・アップ!)>
【神奈川公演】2017年12月14日(木)~12月17日(日) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
【富山公演】2018年1月20日(土) オーバード・ホール
【長野公演】2018年1月26日(金)1月27日(土) サントミューゼ 大ホール
【大阪公演】2018年2月2日(金)~2月4日(日) 新歌舞伎座
【愛知公演】2018年2月15日(木)2月16日(金) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
【東京公演】2018年3月2日(金)~3月12日(月) TBS赤坂ACTシアター

<関連リンク>
HEADS UP! 公式サイト
http://m-headsup.com
HEADS UP! Twitter
https://twitter.com/KAATHEADSUP
劇団鹿殺し
http://shika564.com/wordpress/?p=924
オレノグラフィティ Twitter
https://twitter.com/oreno_g

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オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

※ここから有料会員限定部分です。

■『HEADS UP!』は本当にすごい台本で、シチュエーションコメディとして成立してる

――「幕が開かない」っていうのは有り得ないんですね。そこに向かってどうやって乗り越えていくのか。障害がいっぱいあるんですよね。

そうですね(笑)。本当に、僕が言うのもおこがましいですが、“よくできた台本”で、シチュエーションコメディとしてしっかり成立しちゃってるから、「何でこの状況でシチュエーションコメディが成立するんだ?!」っていうことばっかりで(笑)。舞台上に何か落ちるなんて、それだけ聞いたら何のことかよく分からないんですけど、でもしっかり笑いになっているから。

――作品には色々なミュージカル作品へのオマージュが込められているそうですね。

そうです。劇中劇の『ドルガンチェの馬』は『ラ・マンチャの男』とか、他にも。

――いろいろなものが仕込まれていそうですね。

舞台愛に溢れてますよね(笑)。演劇大好きな人しか集まってないから。“隠れミッキー”みたいに、舞台上に潜んだいろんなものを探すのも面白いでしょうね、きっと。

――普段ミュージカルを観ているお客様には「あっ!」とか「クスッ」というようなシーンがありそうですね。

でも、自分が普段観ていたミュージカルもね、どんな「奇跡」の上に成り立っているのかっていうのがすごくわかります。毎日毎日同じことを上演しているけど。そりゃ、1001回もやりゃこんなハプニングに見舞われる日もあるさ、っていう(笑)。

――観客の立場としては、ふとした瞬間に「この作品の裏には、ものすごくたくさんの人たちが関わっている」と気付く時があって、そこを考えると、そりゃチケット代もそれなりになるよね、って(笑)。

スタッフさんの様々な努力が報われる、そのための作品のような気もします。作品中で「チケットは売れている」っていう曲があるのですが、売れているから良かったとか大変だ!、だけではなく、お客さんは一万円払って下さっているわけだから、カンパニー側はしっかり対価をご用意しなきゃいけないっていう姿勢も見える。「大変なのよ!」っていうことだけを言っている訳じゃないっていうのも、すごく僕は好きだなぁって思っていて。内容が真摯なんですよね。

――チケットを売ったということは、お客様と「約束」をしているんだと。

観に来ていただけるのもそうだし、こっちがお金に対してちゃんと満足出来るものを創るっていうこともそうだし、信用と奇跡の連続で出来ているんだなってことは、なんか改めてそうやって考えると気付きますね。自分の仕事の重大さというか。

――普通の、ごく当たり前なことのように劇場に通ってますけど、その足元に気付かされるような。「実はそうなんだよね」って。

わかります。「灯台下暗し」じゃないですけど。これはすごいですよ。

――この作品を観た後には、きっとお芝居を観る視点が変わるんじゃないかなって予感がします。

しかもそれがね、初演で一般の方に伝わったってことがすごいことだと思います。初演を創るのってすごく大変だと思うんですよ、伝える努力というか、工夫が多分ギリギリまでなされていたって思うので。僕が今度再演で出来たものに乗っかるっていうのは、もうすごく覚悟の要ることで、皆さんが創ってくださったものに「じゃあ何を乗せられるんだ?」っていうのは、今すごく考えてますね。

――やはり再演から参加というのは、普段とは違いますか?

創る努力を一緒にしてないから、その分の努力はやっぱりしないとなって、すごく。今からやっぱりその分は緊張してますよ(笑)。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

■『おんな城主 直虎』撮影時は舞台公演中で金髪。部分かつらで前だけ黒く染めて…

――それではここでちょっとだけ違うお話を伺います。『HEADS UP!』で共演される橋本じゅんさんもご出演でいらっしゃいます、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』武田義信役について!

じゅんさんとはチラッとだけすれ違いました。稽古の時に(笑)。撮影は僕1人のシーンだったので、誰とも絡まずに(笑)。

――放送された映像では、ずっと部屋にお一人で幽閉状態でしたね。

延々数珠を握り締めて。こう、カチャカチャと(笑)。

――武田の総領息子なのに、ずっと孤独に怒りを押さえている体で。

すごくね、不遇の人なんです(笑)。武田の嫡男だったんですが、お父さん(武田信玄)に裏切られたというか、お父さんが自分の奥さんの国(駿河)に攻め入ろうとしたので謀反を起こしたら、謀反を起こしたことすら家臣に裏切られて、密告されて幽閉されるっていう、もう本当に哀しい人なんです。

――オファーが来たときはいかがでした?

え、ホントですか?って思いました(笑)。金髪ですけど大丈夫ですか? 「オレノグラフィティ」って名前なんですけど、大丈夫なんですか?って(笑)。

――金髪はさすがに?(笑)。

染めましたけど(笑)。舞台『親愛ならざる人へ』の公演中で、金髪だったんですよ。部分かつらだったので、前だけ全部黒く染めて。

――総かつらじゃなかったんですね! 黒髪のオレノさんはとても新鮮でした(笑)。

いや、でも良い体験をさせていただきました。すごい良いおべべを着せていただいて(笑)。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

■過去の大河の切腹シーンを見て勉強したんですけど、行ったら首を切る方で(笑)

――歴史物特有の所作もいろいろと学ばれたのでしょうか?

そうですね、自害の仕方とか(笑)。

――そうでした! 切腹とか?

切腹じゃなかったんですよ! 切腹だと思ってたから過去の大河の切腹シーンを見て勉強してたんですけど、現場に行ったら自害は自害でも、「首」を切る方だって言われて(笑)。介錯してくれる人も居なかったんですよ、僕。

――それは!(笑)。スパッと死ねなくて苦しいですよね…。

苦しいですよ、絶対!(笑)。頸動脈切る演技だから苦悶の表情。「『クッ…!』ってなってください」って言われて。

――本当に苦悶のシーンばかりだったんですね。

ずっとね(笑)。そのシーンだけでした。朝イチで入って、3カットくらい撮って終わったんですけど。

――撮影は1日で?

1日で全部。最初は本当に「3回くらいしか出ないよ」って言われたんですけど、でもね、スタッフロールに「オレノグラフィティ」って出るのが面白かったみたいでって(笑)、僕がそう思ってるだけなんですけど、結局6回(18話・19話・20話・25話・27話・29話)使っていただいて。毎回、一瞬だけ映るっていう(笑)。

――他のシーンを撮っていないだけに、その一瞬一瞬で視聴者に不遇の若殿の境遇と怒りを伝える必要があるので、とてもパワーが必要で大変だろうなと思いながら拝見していました。

僕わりと歴史疎いんですけど、ちゃんと勉強していかないとヤバいなと思って。うちの座長(菜月チョビ氏)にも「1本映画撮るつもりで役を作って行け!」と言われて。せっかく大河に声を掛けて頂いたのだから。

――今回が初の大河ドラマご出演だったんですよね?

そうです。僕、槍魔栗三助(やりまくりさんすけ)さんがNHKの連ドラ出演の時に、「生瀬勝久」に改名されたっていう噂を聞いていて、だから大河に出れたら僕も改名しようと思っていたのですけど、降って湧いた話だったので時間もないし、NHKの方にもに聞いたら「“オレノグラフィティ”で大丈夫です」って言われたので、改名のチャンスを逃しちゃったんですよ(笑)。もうこれから僕、ダイアモンド✡ユカイさん目指すしかないと、このまま(笑)。いい改名のチャンスなんですけど、完全に逃しちゃったんです(笑)。

――そうだったんですか?!(笑)。でも大河ドラマにご出演ということで、オレノさんをずっと応援してこられたファンの方たちはとても嬉しかったんじゃないかと思います。

そうですね。ファンの方には少し恩返しができたかなと思います。今後もいろいろ頑張っていけたらなと思ってます。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

■小劇場を観ている方が初めてミュージカルを観るなら、絶対に『HEADS UP!』は良い

――最後に、お客様へメッセージをお願いします。

僕は普段、あまりミュージカルを観に行かないんですよ。別に苦手とか嫌いとかでは全然なくて、あまりご縁が無くて。「鹿殺し」のお客さんは、多分小劇場の舞台の方が観る機会は多いんじゃないかと思うんです。だから初めてミュージカルを観るのであれば、絶対に『HEADS UP!』は良いと僕は思っています。もちろんミュージカルを見慣れている方も十二分に楽しめると思いますけど、やっぱりミュージカルってこんな面白いんだよ、ってことの入り口としてはすごく良い作品だと思うので、是非ミュージカルを観たことない方、小劇場しか観たことないとか、タカラヅカしか観たことないとか、ライブしか行ったことないとか、そういう方は一度ミュージカルの門を叩くっていう意味の入門として観ていただきたいと思います。もう度肝抜かれると思うんで!(笑)。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

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