2009年に『ヘンリー六世』三部作で幕を開けた、新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズ。2012年『リチャード三世』、2016年『ヘンリー四世』二部作と、同じキャスト、スタッフが三度集結し上演されました。その最新作となる『ヘンリー五世』が、2018年5月17日から6月3日まで、新国立劇場中劇場で上演され、浦井健治さんがヘンリー五世を演じます。4月上旬の稽古場を訪ね、このシリーズが「自身の核となる」という浦井さんに、その思いを伺いました。
――いまはどんな稽古をされているところですか?
立ち稽古がはじまって数日が経ちました。鵜山(仁)さんが全体の演出をつけてくださり、そこから1場面ずつ返す稽古をしています。そろそろ渥美(博)さんのアクションが入ります。最初に、全体の形を作りおえているので、めざすところが見えやすく、そこに向って、これから台本に書かれているものをどうやって落とし込んでいくかですね。
――特に注力しているところは?
やはり政治色や侵略、人と人との関係のなかでうごめいている色々なものを、立体的に見つけていかなければいけないと思います。ヘンリー五世の「聖(セント)クリスピンの祭日」の有名な演説がありますが、これはなんのための戦争だったのかという、ちょっとした切なさや空しさを、イギリスもフランスもみんなが感じているというところを、いま、現場で作っている感じです。
――昨年の7月頃にお話を伺ったときに、「『ヘンリー六世』から始まったシリーズは自分の核となることを『ヘンリー五世』のインタビューのときにお話させてください」とお話されていたんです。
そうだったかもしれないですね。
――その「自分の核となっている」というところをお聞かせください。
作品の概要としては、制作側のプロデューサーさんたちの熱意が、この企画をシリーズ化したものに繋げていったんだと思います。それは誰も予期せぬことで、中嶋朋子さんが先日取材のときに、プロデューサーさんに向けて「やったね!」とおっしゃっていて。プロデューサーさんが目指したものが現実になっていること自体が、奇跡的な企画なんだなと思っています。作品の中身としては、約8年前に僕は飛びこまさせて頂いた身でありながらも、ここまでずっとやらせて頂けているというのは、とても感慨深いですし、同時に自分の尺度というか演者としてのものさしになっています。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、ヘンリー六世を演じたという立場からヘンリー五世をどのように見るかなど、インタビュー前半で伺った内容の全文と写真を掲載しています。5月15日掲載予定のインタビュー「下」では、このシリーズを一緒に上演し、2017年7月に亡くなられた中嶋しゅうさんについて、『ヘンリー六世』から作品の中核を担う役を演じることが増えて今年は全作品でセンターに立っていることについて、忙しい毎日のなかでのオンオフの切り替えをどのようにして台本を覚えるときにどういう時間を利用しているかなどについて伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■ヘンリーシリーズを、日本で同じキャストでというのは、なかなかない
■8年かけて書かれた『ヘンリー六世』から『ヘンリー五世』を、8年かけて上演
■「王として」と「ハルとして」の意見が、共存している不思議な王
■六世は、五世を本当にヒーローで、完璧で絶対的な王だと信じていたんです
<『ヘンリー五世』>
【東京公演】2018年5月17日(木)~6月3日(日) 新国立劇場 中劇場
<関連リンク>
「ヘンリー五世」のページ
http://www.nntt.jac.go.jp/special/henry5/
浦井健治オフィシャルファンクラブ‟Kopi-Luwak”
https://www.fanclub.co.jp/k_urai/?id=8
浦井健治&STAFF Twitter
https://twitter.com/kenji_staff
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■ヘンリーシリーズを、日本で同じキャストでというのは、なかなかない
『ヘンリー六世』について話すときに、岡本(健一)さんや、立川(三貴)さん、朋子さんたちもパァと顔が明るくなるんですね。みんなの中でまだ鼓動が続いている。そういう作品の血筋がずっと流れているというのが、自分にとって、やはりターニングポイントというか、自分自身を語る上で核となる、ひとつの軸になっているのは事実かなと思います。ただ、作品を作っていく過程ではとてもつらくて、しんどくて、もう逃げ出したくもなりますし、危機感がとても強いです。
――毎回ですか?
はい。毎回(笑)。
――そうなんですね。逆にだからこそ、ご自身の核として繋がって残っていくという感じですか?
シェイクスピア作品のヘンリーシリーズを、日本で同じキャストで上演しているのは、グループや団体としてもなかなかないと思います。僕はそのキャストのひとりであり、シェイクスピア劇の上演史の中のひとつの点として存在している企画だと思うからこそ、新国立劇場のシェイクスピア歴史劇シリーズの鵜山組といえる座組が、歴史劇的にすごくうねりを作って渦を巻き、熱をおびていると感じます。それが、お客様の期待にも繋がっているのかなと思っています。
■8年かけて書かれた『ヘンリー六世』から『ヘンリー五世』を、8年かけて上演
――これまでインタビューさせて頂いた浦井さんの記事を読み返していたんですが、別の作品のインタビューのなかで、鵜山さんや中嶋さんの言葉が出てくるんですよ。だから、よほど血となり肉となっているのかなと。
そうかもしれないですね。
――ちなみに、鵜山さんの言葉は、「すべては人間が意識しているものであって、そこを意識していなければ無である。意味をもたせるから存在する」、中嶋さんは「普通の生活をしていないと、普通の生活をしている観客に届かない」でした。
自分の考えを赤裸々に話す現場ですし、そういう作品だったなと思います。今回の顔合わせの日に鵜山さんが、シェイクスピアが『ヘンリー六世』から約8年をかけて『ヘンリー五世』を書いたのと同様に、奇しくも、僕らも約8年かけて上演することになった、とおっしゃって、おそらくその場にいた全員が、とても運命的なものを感じた瞬間でしたね。
――それは意図して8年だったわけではなく?
偶然なんですよ。だから運命的な意味合いもあるんじゃないかと。
――シェイクスピアの思考の流れと同じ年月をたどって、上演のタイミングがきたわけですね!
そうかもしれないですね(笑)。
■「王として」と「ハルとして」の意見が、共存している不思議な王
――『ヘンリー五世』は、『ヘンリー四世』で演じたハル王子がヘンリー五世になって、同じ役が成長していくというのは、これまでと違う視点ではないかと思いますが、演じていていかがですか?
まず、フォールスタッフ役の(佐藤)B作さんの存在がチラついたり、ハルとして過ごしたときの人物名が聞こえてきたときに、その当時の格好や仕草、声、演者たちが思い浮かべられることは強みだなと思います。ハルがヘンリー五世になってイギリスを統一しつつも、今度はフランスとの二大大国の問題で動いている。その中で、たとえば部下たちの意見を聞くために変装して兵士として話しかけて本音を聞いたりするのは、やはりハルらしいなと思います。戦争に対しても、「王として」の意見と、「ハルとして」の意見が、共存している不思議な王。それは鵜山さんが今回トライしようと思っていることなので、『ヘンリー四世』でハルをやっていなかったら、できなかっただろうなと思います。
というのは、どちらかというと、政治や歴史を背負うという正統派な王として演じようと思ってしまうんですよね。でも、ハルだからなんでもありという人間味もある。そのふたつを行ったり来たりすることが、台詞の中で起こっているんです。
■六世は、五世を本当にヒーローで、完璧で絶対的な王だと信じていたんです
――同じキャストで上演し続けていればこそですね。逆にヘンリー六世を演じたという立場からいうと、ヘンリー五世はお父さんですね。
そうですね。ヘンリー四世のときも感じましたが、やんちゃで、本当にヒーローで、完璧で絶対的な王だと信じていたんです。けれども、いざその役をやってみると、そうではなくて人間としてもがいて、結果称えられたという答えが見えたというのは、おもしろいなと思います。
――ちょっと、ここだけでしか体験できない経験ですよね。
そうですね。
――『ヘンリー六世』から観ているお客様もたくさんいると思うので。
本当に! 逆に、時間はさかのぼれないけど、本当は観たいという人もいるんじゃないかと思います。
――そうですよね。当時はまだ知らなかったという方も、いらっしゃるでしょうね。
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とても興味深い記事を観劇前に拝読出来て面白かったです。
『ヘンリー五世』の舞台は、とても魅力的で観劇回数を重ねるごとにシェイクスピアの世界観の深みに誘われて行きます。
「ヘンリー五世」公演がとても楽しみです♪
「ヘンリー四世」も何度と観劇させていただいたので、あの”ハル王子”から今回”王”になったハルがとっても楽しみです♪
前回のヘンリー四世を観た時、時間的にも体力的にも結構大変で「これヘンリー六世観た人はどうだったんだろ?」と友達に話すと「なんかヘロヘロになったらしいよ」と聞き納得しました。
もちろんそれは大作であるがゆえに引き込まれたという意味なのですが、演じる方々はもっと大変だっただろうしだから機会があれば私も観てみたい。当時の雑誌を片っ端から集め読み思いを巡らせています。
そしてこのシリーズを途中から(ヘンリー四世から)でも観劇出来たことがとても嬉しい。
ハル王子がヘンリー五世となりどのような王の姿を観ることが出来るのか?とても楽しみです。
一番最初の、3部通しの公演発表があった時、衝撃的でした!
あの時、夜行バスで遠征したので、ずっと座りっぱなしでしたが、でも、いろんなことを考えさせられた素晴らしい作品で、お尻の痛さもどことやら(o^^o)
あれから8年、、
今年も夜行バスで参上します☆
浦井君のファンになれて、世界が広がりました!
今回の作品も、楽しみでなりません☆
ありがとうございます!
最初は1回ずつの予定があまりにも引き込まれて、前作第一部二部と各々10回以上魅せていただき、私にとっては胸に今もシーンが甦ります。その先にある今回のヘンリー五世、楽しみにしてます。
時間をさかのぼって観たいと思うひとりです。
ここまでの軌跡を少しでも感じたくて過去の記事を読み漁ったり、シリーズの原作を読んでこれを浦井さんがやったのかと思う日々ですが、ヘンリー五世は想像ではなく目の当たりにできる。それが本当に楽しみで嬉しいです。
まっすぐに語ってくれる浦井さんの温度を感じる素敵な記事、ありがとうございます。
今回も深いインタビューありがとうございます。ヘンリー6世からずっと見てきているヘンリーシリーズ。歴史の繋がりに涙が出てきます。鵜山先生の演出のシェイクスピア作品はとにかくこれまでとっつきにくいと言うシェイクスピアの世界観を思い切りひっくり返してくれて、自分も作品の登場人物の一人として浦井君やキャストの皆さんと同じ目線でその世界観を体験させてくれて、シェイクスピアの世界が身近に感じて大好きです。5月17日から始まるヘンリー5世ではどんな世界を浦井君たちと一緒に歩んでいけるのか本当に楽しみで仕方ありません。
残念ながら遡って観れない。新国立のシリーズは残念ながらヘンリー四世から。なぜあの時に食指が動かなかったのだろうかと。後悔先に立たずです。それでもシェイクスピア劇が観たい。今回も東京へ足を伸ばします。
ヘンリー六世観たかったです!公立劇場ならではの、アーカイブセンターもあるのにヘンリー六世は観られないんです。
このシリーズが完結したら、観られますかね?浦井さんのヘンリー五世たのしみにしています。
今回も,『ヘンリー五世』の稽古中だからこそうかがえた貴重なお話を目にすることが出来、数日後の初日が、ますます楽しみになりました。
浦井くんの誠実なお人柄にも寄り添えて嬉しくなりました。
インタビュー(上)を読ませていただき、作品を作っていく過程は、毎回つらくて、しんどくて、逃げ出したくなる」という浦井さんの言葉がすごく印象的でした。
そんな過程を経て出来上がったヘンリー五世、初日まであと3日。
ヘンリー四世のラスト、ファミリーツリー。戴冠した五世の神々しい姿。あの瞬間から、ヘンリー五世の上演を楽しみにしていました。本当に本当に楽しみです。
ヘンリー四世からを観たので、ハルのその後の姿を拝見するのが楽しみです!
時のさかのぼりを願う一人です。
それでもこの奇跡の座組みによるシリーズに、ヘンリー五世から参加できることに感謝します。
浦井さんがもがきながらも深く向き合い作られてきた、このシリーズへの想いを私も感じられるように大切に観劇したいです。
それと同時にヘンリー五世の物語を楽しみたいです。
浦井さんは尊敬し、憧れる役者さんです。
ヘンリーシリーズは、リチャード三世からしか観られていないのですが、そんなわたしにとっても思い入れがあり、浦井さんのインタビューからも言葉の後ろのたくさんの想いを感じました。
本当に、ヘンリー六世を観たかった!と思っています。
浦井さんの集大成のようなヘンリー五世を楽しみにしています。
リチャード三世、ヘンリー四世を観劇しました
ヘンリー六世何で観なかったのだろうと四世を観劇した時に後悔しました
難しいだろう2部順番に観ないとと余計な事ばかり考えていました
1部、2部通して観劇して感動し何回も増やしました
ヘンリー四世のラストシーンが忘れられません
ヘンリー五世が楽しみです
ヘンリー四世のハル王子からヘンリー五世となり、王の座についた健治さんのヘンリー五世を見た時、その先に続く未来を感じました。その神々しい瞳の色が忘れられません。そして、ヘンリー五世の上演発表。観客の一人としても、運命を感じました。一人の俳優さんで血の輪廻を見られる奇跡に、感謝とともに感動しています。本当に楽しみです。ヘンリー五世の旅が全て上手くいくことを祈っています。
「(ヘンリー六世から)時間はさかのぼれないけど、本当は観たいという人もいるんじゃないかと思います。」
まさにその通りです。それでも、ヘンリー四世からでも、このシリーズを観られてよかった、参加できてよかったです。
もうすぐ開幕。インタビューの下を読むのが楽しみです。