「不安と恐怖と希望しかない」、『ヘンリー五世』中河内雅貴インタビュー(上)

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

2019年2月8日(金)から、彩の国さいたま芸術劇場で上演される、彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾『ヘンリー五世』に、ピストル役で出演する中河内雅貴さんにインタビューしました。同シリーズに初めて出演する中河内さんに、稽古を前にした思いを伺いました。蜷川幸雄さんや、吉田鋼太郎さんとのご縁などについても話してくださっています。

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

ーー最初に『ヘンリー五世』への出演が決まるまでのお話を伺えますか?

遡れば、『ビューティフルゲーム』と『ジャージー・ボーイズ』で演出家の藤田俊太郎さんに出会わなかったら、もしかしたらここには辿り着いていなかったかもしれないんです。『ビューティフルゲーム』を蜷川さんが観に来てくださっていて、「あの眼鏡の子いいね」と、僕がやっていたトーマスを褒めてくださったんです。それも2度もおいでくださったとか。その後、『ジュリアス・シーザー』を観に行かせて頂いたときに、藤田さんと一緒に蜷川さんにお会いさせて頂くことができました。「今度一緒にお仕事できたらいいね」と話してくださって、その後岡田将生くんと生瀬勝久さんの『皆既食〜Total Eclipse〜』の稽古場におじゃまし、稽古を観させて頂きました。

ーー蜷川さんの稽古場をご覧になっているんですか?

そうなんです。さいたまゴールド・シアターの舞台稽古も拝見しましたね。いつかご一緒できたら嬉しいと思っていたんですが、残念なことにお亡くなりになられてしまって。それがちょうど『ジャージー・ボーイズ』の稽古中でした。

ーーそうでしたよね。

その『ジュリアス・シーザー』で、鋼太郎さんを生で初めて拝見して、申し訳ないですが他の出演者が目に入らなくなるぐらいの圧倒的存在感で、「なんだ! このおじさん!」って(笑)。

ーー映像などでもご覧になったことはなかったんですか?

申し訳ないのですが当時はなかったですね。普段ドラマを観ることがあまりないんです。その時に鋼太郎さんの生の迫力と、すべてにおいてのオーラに「うわぁ……なんだこの舞台役者は」と衝撃を受けました。そしてその後、『ビリー・エリオット』に出演が決まり、鋼太郎さんとは親子の役をやらせて頂き、そこで初めてお会いしました。それまで一度もご挨拶をさせて頂くことはなく、一方的に拝見していただけです。いまだに、鋼太郎さんに『ジュリアス・シーザー』を観ていますとは言っていないんですよ(笑)。

ーーそうなんですか!? どうしてですか?

本当だったら言ってもいいんですよね。自分のタイプとしては言う方なんですよ。あの時あれを観てましたと。それなのに、なぜか鋼太郎さんにだけは言ってないんですよね。

ーー面白いですね。

『ビリー・エリオット』でご一緒させて頂いて、お芝居のことやプライベートなことなど色々と、稽古中からお話させて頂く機会がたくさんありました。本当に頑張らないといけないと思っている話をしていたので、気にかけてくださったんだと思うんです。赤坂ACTシアターの公演期間中に、「これからどうして行きたいんだ? シェイクスピアとか興味ないのか」と聞いてくださって、「めちゃくちゃ興味あります!」と即答しました。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、初めてシェイクスピア作品に出演することについての思いなどを伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。1月22日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、初演・再演と出演したミュージカル『ジャージー・ボーイズ』についてや、中河内さんが目指す俳優像などについて伺ったインタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■「このぐらいの時期を空けておけよ」と言われて、即刻マネージャーさんに連絡して

■昔はダンスしか武器がなかったので、お芝居や歌を目当てには呼ばれなかった

■共演のみなさんはシェイクスピア経験者で、僕だけピカピカの新参者なんですよ

■確かに面白い役だけれど、これは役者の味付け次第じゃないかと。難しいですよね

<彩の国シェイクスピア・シリーズ34弾『ヘンリー五世』>
【東京公演】2019年2月8日(金)~2月24日(日) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
【仙台公演】2019年3月2日(土)~3月3日(日) 仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
【大阪公演】2019年3月7日(木)~3月11日(月) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

<関連サイト>
彩の国シェイクスピア・シリーズ34弾『ヘンリー五世』 公式サイト
http://saf.or.jp/arthall/stages/detail/5836
中河内雅貴OFFICIAL SITE
https://nakagauchi.com
中河内雅貴twitter
https://twitter.com/aminomasavital

『ヘンリー五世』 関連記事:

⇒すべて見る

中河内雅貴 関連記事:

⇒すべて見る

※中河内雅貴さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2月21日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■「このぐらいの時期を空けておけよ」と言われて、即刻マネージャーさんに連絡して

シェイクスピアをやったことはないんですが、舞台を拝見して勝手に、歌のような、メロディがあるような、とても音楽的なイメージがすごくありました。ミュージカルをやらせて頂いているので、音楽的なところにも惹かれました。言葉遊びの応酬と、奥行きの多彩な色を感じて、自分に出来るだろうかという不安もありましたが、興味とやってみたいという思いしかなくて。お声をかけていただいたときには、ふたつ返事で「はい! やらせて頂けるならやりたいです!」とお答えしました。「このぐらいの時期を空けておけよ」と言われて、即刻マネージャーさんに連絡して、「空けておいてください!」とお願いしました。もう本当にご縁ですね。

ーー『ビューティフルゲーム』からすべてが繋がっているんですね。『ジャージー・ボーイズ』『ビリー・エリオット』『ヘンリー五世』と作品も繋がって、藤田さん、蜷川さん、吉田さんと人も繋がっている。

本当に藤田さんと蜷川さんが『ビューティフルゲーム』での僕を役者として面白いと思ってくださったこと、蜷川さんにお会いした日に吉田さん出演の舞台を拝見したこと、次に『ジャージー・ボーイズ』の、あんな歌のバケモノの連中のなかに僕を入れてくださったことを経て、それに続いた『ビリー・エリオット』で憧れの吉田さんと親子を演じる機会ができたことが奇跡のようにリンクし、今につながったのだと思います。

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

■昔はダンスしか武器がなかったので、お芝居や歌を目当てには呼ばれなかった

ーー中河内さんは、これまでストレートプレイにはほとんどご出演されていないですよね?

確かにそうですね。まあ、大きなもの何本かはさせてもらっていますけど。

ーーそれは意図的なんですか? 中河内さんといえばダンスという印象があるから、そもそもダンス的な作品のオファーが多いんだろうとは思いますが、これまでストレートプレイにあまり興味がなかったわけではなく、ご縁がなかったということですか?

やはり昔(10年ほど前)はダンスしか武器がなかったので、お芝居や歌を目当てにはあまり呼ばれなかったのかもしれません。ダンスが出来て、『テニスの王子様』である程度ファンの方がついてくださったから、言い方が悪いですが、最初は客寄せパンダ的な部分でのオファーも正直あったと思うんですよ(笑)。そういうお仕事のなかでも、一作一作自分が誠実に本気で取り組んだ結果が今に繋がっていると思いますが、最初は武器であるダンスしか売り込めるものは無いと思っていたんですね。そのなかで、悔しさが芽生えたんです。ストレートプレイの現場に行ったら芝居が全然出来なくて他の人と違う、歌の現場に行ったら全然ダメだし。ダンスの現場に行ってもそう。

ーーダンスの現場でもですか?

もちろんです。凄いスキルを持つダンサーに特化した方に比べたらダメですよね。じゃあ、自分って何だろうと。何もないじゃないかと落ち込んだ時期もあったんです。でも、ポジティブ思考なので、歌、芝居、ダンスの3本をどれも遜色なくやっている人は、日本のミュージカル界にそうはいないけど、海外はみんな全部上手い。日本は何かひとつ欠けているんですよね。だったら、僕は広島出身で毛利元就が好きなので“三本の矢”を目指すんだなと。一本では折れやすいけれど、三本纏めたら強くなれるなと、若い時に気づきました。隔たりなくすべてが、エンターテインメントのアーティストとしての、いろんな表現だと思ってから意識が変わりました。ミュージカルでも芝居が大事ですし、踊るところは中河内自身ではなくその時の役で、どうダンサブルに踊るのかと考えるようになりました。やはり芝居が一番軸にあって、そこから派生するものなんだな、そこに自分の個が上手く融合すればいいなと。ミュージカルの仕事が多いですが、意外とお芝居が好きですし、ストレートプレイにはあまり立っていないですが、意識はストレートプレイと同じような感覚でやらせて頂いています。だから、狙ってストレートプレイに出ていなかったわけではないですが、その三本の矢を発揮できるのはミュージカルなので、必然とミュージカルが多くなったんじゃないかと思います。

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

■共演のみなさんはシェイクスピア経験者で、僕だけピカピカの新参者なんですよ

ーー今回は吉田さんが演出される、彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾『ヘンリー五世』で、ピストル役ということですが、今どんなお気持ちですか?

不安と、恐怖と、希望しかないですね。共演のみなさんはシェイクスピア経験者で、僕だけピカピカの新参者なんですよ。このキャストの並びのなかで、ありえない番手で僕も名前を載せさせて頂いているわけじゃないですか。大ベテランのシェイクスピア俳優の方と、名前が一緒で(河内大和さん)、“中”がついちゃってごめんなさい!って、同じような名前で本当に申し訳ない気分なんですよ!

ーー(笑)。

もう本当に。正直、嬉しいですが、複雑な心境でございます。

ーー“不安と恐怖”はマイナスの感情ですが、“希望”はプラスの感情ですね。

もうここから上がるしかないじゃないですか。シェイクスピアの現場では(床を指して)ここなんですよ。それはお客様が一番わかっていると思います。けれど、舞台でと考えると、「松坂桃李久しぶりだな」「おお(溝端)淳平くん!」という気持ち。松坂くんの初舞台『銀河英雄伝説』で一緒でしたし、溝端くんとは初めてご一緒しますが、ジュノンボーイの後輩ですね。でも、そんなことは関係ないですよね。僕はシェイクスピアが初めてですから。現場に行ってみないとわからないことが満載で…、そういう意味で不安と戦っているところなんです。

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

■確かに面白い役だけれど、これは役者の味付け次第じゃないかと。難しいですよね

ーー吉田さんと出演が決まってから作品についてお話はされたんですか?

作品についてはまだそんなに話していないです。「面白い役だからな」と言われたくらい。台本を読んで、確かに面白い役だけれど、これは役者の味付け次第じゃないかと。難しいですよね。その塩梅は稽古場でみなさんとやってみて考えようとは思っていますが、僕がセリフを言ってみて、どういわれるんだろうかと。例えば、つかこうへいさんの『飛龍伝』に出演したときに、普通に喋っていたら、そうじゃなかったんですよ。ああいうマシンガンみたいなトークになった。そういう想像を超えてくることがあるので。

ーー新たなチャレンジですね。

そうなんです。だから、稽古場で貪欲に吸収していかないと、置いて行かれるので、得意のアンテナですぐに察知して、右だなと思ったら右へ、左かと思ったら左、とやっていきたいと思います。察知することは人より長けていると自負していますから。でも、未知の世界すぎて不安と恐怖なんですよね(笑)。

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

中河内雅貴さん=撮影・岩村美佳

※中河内雅貴さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは2月21日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

Follow me!

“「不安と恐怖と希望しかない」、『ヘンリー五世』中河内雅貴インタビュー(上)” への 3 件のフィードバック

  1. donchan より:

    初のシェイクスピア劇に臨む中河内さん、今まであまり語らなかったことも含めて、中河内さんらしく、正直に飾らずに語っていて、とてもいいインタビューだと思いました。

  2. hal より:

    今までのご縁があって今に繋がっているというのがよくわかる良い記事でした。ヘンリー5世でどんなピストルが拝見できるのか、今から楽しみです。

  3. MOL より:

    中河内さんは今回の作品ではまったくはじめてというお客さんが多いんじゃないかと思います。たのしみです。いいインタビューありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA