「10年で共有した時間の空気感を」、『スリル・ミー』田代万里生・新納慎也対談(上)

田代万里生さん(左)と新納慎也さん(右)=撮影・NORI

2021年4月1日(木)から5月2日(日)まで東京の東京芸術劇場シアターウエストで、5月4日(火・祝)から5月5日(水・祝)まで群馬の高崎芸術劇場 スタジオシアターで、5月15日(土)から5月16日(日)まで愛知のウインクあいち大ホールで、5月19日(水)から5月23日(日)まで大阪のサンケイホールブリーゼで上演されるミュージカル『スリル・ミー』に出演する田代万里生さん(私)と新納慎也さん(彼)にインタビューしました。2011年9月の初演から2012年3月と7月の公演を経て2012年8月の公演までペアで出演し、10年の節目に戻ってきた初演ペアの田代さんと新納さんに、9年前の大千秋楽を振り返っての想いや、再び2人で出演することについて、当時と今の作品を取り巻く状況の違いや、大人数によるミュージカルとの違い、他のペアを意識するのかなどについて、稽古が進む2021年3月下旬にお話を伺いました。上下に分けて掲載します。※このインタビューは『スリル・ミー』公演が開幕する前に実施したものです。

田代万里生さん(左)と新納慎也さん(右)=撮影・NORI
田代万里生さん(左)と新納慎也さん(右)=撮影・NORI

-- 開幕まで2週間を切りましたが、今の時点でいかがですか?

新納:やっと、「こういう話の流れだったよね、こんな感じだったね」という段階ですね。9年ぶりだもんね。

田代:9年ぶりに新納さんの良い匂いを(笑)。

新納:匂い問題ってあるね。

田代:匂い問題?

新納:万里生は香水とか整髪料だと思うんだけど、それが俺にとっての『スリル・ミー』の匂いなんだよね。稽古が終わって家に帰ったときに、万里生の匂いが……。懐かしい感じです。

--匂いなどの五感は、覚えていますよね。

新納:匂いから思い出す感情みたいなものがあるから、万里生が香水変えていなくて良かった。

--そういう意味では、田代さんは、二人の彼とご一緒しているので、違う匂いを知っているかもしれないですね。

田代:全然、違いました。本当に。この違いをお客様にどうお伝えするかは、僕ら次第ですね。

--10年目で初演ペアが帰ってくることになりますが、オファーがあったときには、「やろう」とすぐに決めたのか、結構なハードルがあったのか、いかがでしたか?

新納:僕は結構なハードルでしたね。最初、冗談なのかと思って。プロデューサーが、僕が出ている芝居を観に来てくださっていたときに、「お茶しません?」みたいな乗りで、「新納さん、3年後『スリル・ミー』出ません?」と言われて、「良いですね」と。すごく軽い感じで誘われて。それが本気だったみたいです。最初は冗談だろと思ったんですが、冗談じゃなかった。演出助手の人など、いろいろな方から「冗談でしょ?」と連絡が来たりして、「ホントらしいよ?」って。

--皆さん、冗談だと思っていらっしゃったんですね。

新納:お客さんも冗談だと思っていたと思うんです。

--田代さんは、いかがですか?

田代:僕はずっと「やりたい、やりたい」と毎年言っていたんです。引退したつもりはなかったので。もう本当に、栗山さんと新納さんと僕のスケジュールが、なんとか合う日が来ないかなと、ずっと思っていたので、ようやく『スリル・ミー』に出演するタイミング来ましたという感じでした。でも、「新納さんが引き受けるかどうかは、これからです」と。僕は全く疑わず、「新納さん絶対やりますから」と言い切っていました。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、9年前の2012年8月の大千秋楽を振り返っての想いや、今、再び2人で『スリル・ミー』に出演することについて話してくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。4月5日(月)午前10時0分掲載予定のインタビュー「下」では、初演時と今の『スリル・ミー』を取り巻く状況の違いや、大人数によるミュージカルとこの作品の違い、他のペアを意識するのかなどについて伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■田代:僕が伊礼さんとやったときは、新納さんが『アリス・イン・ワンダーランド』で

■新納:19歳だからではなく、人と人が信じ合って愛し合う心理。年齢はナンセンス

■田代:「彼」と「私」は幼なじみ。10年間で新納さんと共有した時間の空気感が出たら

■新納:セットが組まれると記憶が蘇ってきて、昨日までやっていたかのような感覚に

<ミュージカル『スリル・ミー』>
【東京公演】2021年4月1日(木)~5月2日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト
【群馬公演】2021年5月4日(火・祝)~5月5日(水・祝) 高崎芸術劇場 スタジオシアター
【愛知公演】2021年5月15日(土)~5月16日(日) ウインクあいち大ホール
【大阪公演】2021年5月19日(水)~5月23日(日) サンケイホールブリーゼ
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/thrillme2021/

<関連リンク>
田代万里生オフィシャルWEBサイト-Horipro
https://fc.horipro.jp/tashiromario/
田代万里生オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/mario-capriccio/
田代万里生ホリプロオフィシャルサイト
https://www.horipro.co.jp/tashiromario/
新納慎也 Official Web Site
http://www.shinya-niiro.jp/top/
新納慎也オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/shinya-niiro/
新納慎也Twitter
https://twitter.com/ShinyaNIRO

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田代万里生さん(左)と新納慎也さん(右)=撮影・NORI
田代万里生さん(左)と新納慎也さん(右)=撮影・NORI

※ここから有料会員限定部分です。

■田代:僕が伊礼さんとやったときは、新納さんが『アリス・イン・ワンダーランド』で

--前回の伊礼(彼方)さんから、新納さんに戻ることに関しては、いかがですか? 元彼みたいな(笑)。

新納:元鞘(笑)。

田代:伊礼さんと僕がやっていたときは、新納さんが『アリス・イン・ワンダーランド』で芋虫役をやっていたので、彼役を蹴って芋虫役を選んだのかなと思っていたんですよ。

新納:これは本当に演劇界の難しいところで、先にオファーが来たものが、どうしても優先されちゃうんですよ。そのときは、先にスケジュールが決まっていたというのもあるんですが、「卒業ですよね」と言われたので、僕も「ですよね」みたいな。今、資料として前回、僕らがやった一番最後の大千秋楽、9年前の東京公演の最後の映像をもらっているんですが、僕がカーテンコールでちょっと泣きそうになっているんです。

田代:「最後か」って。

新納:だから、覚悟していたんです。これが自分の最後の『スリル・ミー』だなと。そのとき、すでに「卒業」という話も出ていたので、これで最後だろうなと思って、少し感無量になっているんですが、今となっては、「あの涙は何だったんだ」と。

田代:それはやはり、新納さんには長年出演されている『ラカージュ・オ・フォール』の市村さんや鹿賀さんのDNAが…(笑)

田代万里生さん=撮影・NORI
田代万里生さん=撮影・NORI

■新納:19歳だからではなく、人と人が信じ合って愛し合う心理。年齢はナンセンス

--新納さんの彼役は、ずっと19歳だから、前回ももう最後かなと思ったところもあるのかと思いますが、実際に取り組んでみると、あまり関係ないですか?

新納:この作品では、19歳だからとか、若気の至りみたいな作品に一見、見えがちなんです。特に日本人は年齢にこだわりますし、19歳のゲイの二人がやった犯罪ということで、自分たちが超人だと勘違いすることは、「中二病。若い子たちには、ありがちだよね」と思われがちなんですが、そんじょそこらの19歳ではなく、信じられないくらいIQが高い、普通レベルのIQでは想像できないくらいの二人なので、そういう意味では、もっともっと遥かに精神年齢の高い、天才二人の話だなと思っています。

田代:むしろ、今演じるのがちょうど良いですか?

新納:まだ追いついてないくらいですね。だから、年齢を気にする人は時代遅れだと思っていただいて。しかも男同士というところが、今ジェンダー問題もあって時代遅れだと思います。本当に人と人が向かい合って、信じ合って、愛し合って、そして犯罪まで犯してしまう心理状態というところで観ていただければ年齢なんて。「だって19歳の役でしょ?」ということがナンセンスなんだなと。ここは太字で書いておいてください。「ユー、ナンセンス」って。

新納慎也さん=撮影・NORI
新納慎也さん=撮影・NORI

■田代:「彼」と「私」は幼なじみ。10年間で新納さんと共有した時間の空気感が出たら

--田代さんは7年ぶりですが、改めて作品の見え方は変わってきたりしますか?

田代:良い意味で、変わらずなんですよね。かといって、初演から新納さんと3回やって、伊礼さんと4回目をやったときも、ゴールが見えたようで見えていないところも、たくさんあったんです。栗山さんは、一貫して、この10年『スリル・ミー』の捉え方を全く変えていらっしゃらないです。細かい演出はもちろん変わっていますが、大枠では全く変わっていないので、そういう意味では景色としては同じような禁じられた森が見えて、だけど、そこは毎回、何回やっても初めて立ち入る場所のように感じます。

--時間を経て、改めて出会った「私」と「彼」は、以前を思い起こすものなのか、それとも、新しく見えるものなのでしょうか。

田代:前を思い起こすこともたくさんありますが……この『スリル・ミー』は、新納さんと初共演で、そのあと3回演じ、初演から10年経ちました。「彼」と「私」は、幼なじみで、子どものころから知り合っているふたりです。そういう意味では、この10年間で、新納さんと共有した時間が前よりも多い分、今回の「彼」と「私」の間には長い時間を一緒に過ごした空気感がにじみ出てるのではないかと思います。ふたりならではの関係性が前よりも出ていたら良いですね。

田代万里生さん=撮影・NORI
田代万里生さん=撮影・NORI

■新納:セットが組まれると記憶が蘇ってきて、昨日までやっていたかのような感覚に

新納:全くその通りです。もちろん時を経た、お互いに年を経た、経験豊富になった部分はあるんでしょうけれど。僕の感覚では、最初、稽古の入り口では結構「よっこいしょ感」が強かったんですが、今となれば記憶とは不思議なもので、セットが組まれたりすると、記憶が蘇ってきて、先程の匂い問題もそうですね。万里生じゃなかったら、思い出すのも結構大変だったと思いますが、やはりこのトーンで、このキーで、その台詞を俺に言ってたよね、みたいなところがあるから、それで思い出す部分もあります。本当に昨日までやっていたかのような感覚に陥るときもありますね。観客側の問題はともかく、僕の中身は19歳ですっていう。10年前も35歳とかだったけど。

--栗山さんとは、どんなお話をされているんですか?

新納:今日からなんです。

田代:今までは演出助手の方に見ていただいていて、今日初めて、栗山さんに見ていただくんです。

--結構ドキドキしていますか?

田代:毎日が初日みたいな緊張感がありますね。

新納:演出助手さんの稽古だからといって、ゆるくやっている感覚はないよね。

田代:ないですね。

新納:めっちゃ本気でやってる。

田代:昨日も100分間のうち、半分に区切って、前半通してダメ出しをして、後半通してダメ出しして、ほぼ通しているんですが、照明も音響も入っていて、お客様がいてもおかしくないテンションで、やっています。

新納慎也さん=撮影・NORI
新納慎也さん=撮影・NORI

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“「10年で共有した時間の空気感を」、『スリル・ミー』田代万里生・新納慎也対談(上)” への 14 件のフィードバック

  1. のの より:

    もう見ることは出来ないのだと諦めて、動画サイトに公式があげているものを見るだけの日々だったのですが、まさかの初演ペア復活。信じられませんでした。
    こうしてお二人の親しい様子が伝わる記事を読ませて頂いて、嘘じゃないのだと実感することが出来ました。ありがとうございます。
    初日のカーテンコール、うねるような拍手の海の中で微笑むお二人の姿が忘れられません。回を重ねるごとにどんどん素晴らしくなっていくお二人の姿をずっと観ていたいと強く感じました。

  2. より:

    観られなくてずっと切望していた伝説のペアでのスリル・ミー、お二人の絆が対談の間から伺えるようで改めて素晴らしい舞台が観られて良かったと思います。

  3. まこ より:

    今回はじめて万里生さんと新納さんのスリルミーを観劇させていただきました。噂以上の衝撃的な内容に終演後暫くぼんやりしてしまいました。お二人のスリルミーの世界観に浸れた時間はいつまでも忘れられないと思います。

  4. マロングラッセ より:

    2014年に初観劇し沼に嵌まったため、お二人のペアが復活し、「伝説」を目の当たりに出来ることが本当に嬉しいです。
    作品への思いやお二人の関係性など、「それ聞きたかった!」がたっぷりな記事をありがとうございます。観劇日がますます楽しみになりました。

  5. あい より:

    今回やっとスリルミー初観劇出来ました。観劇して改めて岩村さんの記事を読ませていただいて、田代さん新納さんの思いを色々な視点から知ることが出来て更に作品についても深く知りたくなりました。いつも素敵な記事をありがとうございます。

  6. ゆゆ より:

    初めてスリルミーを観たのが9年前の新納さん田代さんペアでした。やはり伝説の2人です。インタビューも初演からの時間の熱さと優しさを感じられて感無量です。

  7. yumi より:

    銀河劇場の2階席からにろまりペアのスリルミーをたった1回だけ見ました。初めてのスリルミーでした。新納彼がピリピリと恐くて、最後は万里生私がそれを上回る怖さでした。あれきりもう見ることはできないと思っていたにろまりペア、復活してくれてとても嬉しいです。

  8. MIKA より:

    「スリルミー」というと、私の中では、初演のアトリエ・フォンテーヌの印象が強くて、麻布十番の秋の夕暮れを思い出します。
    9年ぶりに帰ってきてくれた、新納さん万里生君、嬉しいです。9年間のお二人の積み上げてきたものが、パワーアップして帰ってきた感じがしました。空気で匂いで肌で身体で感じる事のできる、「生」の舞台は、やはり素敵だなと思います。

  9. まゆな より:

    伝説の初演コンビ。観たかったです。
    このご時世のため叶わず残念です。
    インタビューを読んで、お二人の変わらね絆のようなものを感じました。
    いつも素晴らしい記事をありがとうございます!

  10. Yu-Ka より:

    初演から10年の年月を経て、自分は何を感じるのかとても楽しみにしています。

  11. のあのあ より:

    待ち続けていた、にろまりのスリミを劇場で味わってきました。9年前の記憶も好きすぎて美化されていたと思うのに、まさに待っていた彼と私がいて、待っていた以上の世界を味わいました。
    匂いで記憶が甦るって、素敵だなぁと思いました。

  12. ささっぱー より:

    田代さん新納さんの初日を
    幸運にも拝見できました。
    以前のお二人の公演は観て
    なかったのですが、9年のブランク
    など感じさせない、傲慢で寂しい
    新納さんの「彼」と、一途で硬質で
    怖いくらいに透明な田代さんの
    「私」は素晴らしかったです。
    慣れ親しんだ故のぞんざいな
    空気や、後半の恐ろしいほどの
    展開の渦は忘れられません。

    ところで、稽古で100分を前後に
    分けているとのことですが、
    それはどこの場面でしょう。
    気になります。

  13. Mayu より:

    久しぶりに劇場で体感出来るあのスリルミーの世界を初演ペアのお二人で見られるのは楽しみです!

  14. yuka より:

    伝説の初演コンビ!今からとても楽しみです💕

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