「ヒリヒリした部分が大事」、『スルース~探偵~』柿澤勇人インタビュー(上)

柿澤勇人さん

吉田鋼太郎さんと柿澤勇人さんの舞台『スルース~探偵~』が、2021年1月8日(金)から1月24日(日)まで、新国立劇場・小劇場で上演されます。1970年に英国で発表され、ブロードウェイ版はトニー賞を受賞、1972年にはローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインの主演で映画化され、2007年にはノーベル賞作家のハロルド・ピンターが脚本を手掛け、監督:ケネス・ブラナー、主演:マイケル・ケイン&ジュード・ロウで再び映画化されている作品です。日本でも数々の名優たちによって舞台化されてきました。今回の上演では、吉田さんが演出も手掛けます。二人の男がぶつかり合う濃密なサスペンス。稽古が進む2020年12月半ば、柿澤さんに手応えや二人で稽古を進める印象などを伺いました。

柿澤勇人さん
柿澤勇人さん

――稽古場の舞台セットを使った稽古はどの段階ですか?

もう一幕は全部終わりました。

――一幕が終わってみて、手応えはいかがですか?

エグいですよ。楽しいですけど、しんどいですね。

――どの部分がしんどいですか?

全部(笑)。

――身も心もという感じですか(笑)。

身も心もですね。へとへとになりますね、この芝居は。

――ずっと全力疾走しているような感じですか?

頭はそうですね。もちろん後半は、もう運動会みたいに吐きそうになりながらいろいろと動くんですが、物理的にもそうですし、それよりも探り合い、イニシアチブを取り合うので、頭のほうが疲れるというか。心理戦というか。ひとりの女性をめぐってのマウントの取り合いが、まず根底にあるので、頭を使います。身も心もですね。

――念願の吉田鋼太郎さんとのふたり芝居であり、演出だと発言されていましたが、実際に稽古が始まってみて、何か変わっていくものでしょうか。

台本の読み方や、芝居のプランもそうですが、やっぱり僕が考えていたことや想像していたことじゃないところから結構来るので、そこに反応していかなければいけませんし、そこができなかった時は毎日悔しくもあり、「あ、こういうことか」と分かった時は嬉しい。自分ひとりで台本を読んでいて、やっただけでは、何も生まれませんので。そこを引き出してもらったり導いてもらったり、あおられたりということは、鋼太郎さんならではだと思います。それは『アテネのタイモン』でご一緒した時もそうでしたので、やっぱり自分が考えていた小さなテリトリーというか……「もっと行けよ!」という感じが、今回ありますので。それを毎日演出してもらえる、そして芝居でも対峙できるというのは、すごくいい時間と経験になるんだろうなと確信しています。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、吉田鋼太郎さんと柿澤勇人さんが共演した『アテネのタイモン』で柿澤さんが感じたことや、それと『スルース~探偵~』の違い、さらに『スリル・ミー』の時の本読みなどについて話してくださったインタビュー前半の全文を掲載しています(写真はありません)。1月5日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、この時期にこの作品を上演することについて、自粛明けから半年が過ぎての心境、柿澤さんにとって芝居とはどのようなものなのかなどについて伺ったインタビュー後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■鋼太郎さんの示すところまで行けるようになったら、楽しくなると思うんです

■『アテネのタイモン』のようなパワープレイは得意。今回は、より深く高度な芝居

■こんなに本読みしたのはないんじゃないかな…『スリル・ミー』は結構やったかな

■今どちらがパワーバランスが強くて弱いかとか、ヒリヒリした部分が大事ですので

<舞台『スルース~探偵~』>
【東京公演】2021年1月8日(金)~1月24日(日) 新国立劇場 小劇場
【大阪公演】2021年2月4日(木)~2月7日(日) サンケイホールブリーゼ
【新潟公演】2021年2月10日(水)~2月11日(木) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
【仙台公演】2021年2月13日(土)~2月14日(日) 電力ホール
【名古屋公演】2021年2月19日(金)~2月21日(日) ウインクあいち大ホール
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/sleuth2021/

<関連リンク>
柿澤勇人ホリプロオフィシャルサイト
https://www.horipro.co.jp/kakizawahayato/
柿澤勇人オフィシャルファンクラブ8810&co.
http://fc.horipro.jp/hayatokakizawa/
柿澤勇人&STAFF
https://twitter.com/kakizawa_hayato

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※ここから有料会員限定部分です。

■鋼太郎さんの示すところまで行けるようになったら、楽しくなると思うんです

――『アテネのタイモン』の時は、柿澤さんが客席で感情を爆発させていた時に、ものすごく近くで拝見しました(笑)。他の記事などを拝見すると、あの演出も吉田さんから「客席まで行っていいよ」と生まれた芝居ということでしたが、今回も何か提案などはありますか?

もちろん客席は使わないですよ(笑)。ただ、そういう意味では、「え、そんなに行く?」、「そんなにテンション上げちゃっていいの?」みたいなところはあります。ちゃんと腑に落ちるまで稽古して、もちろんクリアしなきゃいけないですし、鋼太郎さんの示してるところまで行かなきゃとは思うんですけどね。それをやれるようになったら、楽しくはなると思うんです。今はまだそこに持っていくために、どうやって自分の中で階段を上がっていかなければいけないのかが重要というか。『アテネのタイモン』の客席での芝居もそうですが、やっぱり何かこう実感を持って、「何に対して怒っているのか」とか、「その怒りの度合いはどれくらいなのか」ということを丁寧にやっていかないといけない。それは僕の問題なんですが、毎日そういうことを、家に帰ってからも、稽古が終わってからも考えたりするので、非常に疲れますが、一方で、それはありがたいことだなあと感じますね。

■『アテネのタイモン』は気持ちよかった。今回は、より深く、より高度な芝居

――いい疲労感もある。

いつもなら稽古が終わると飲みに行ったり、家で飲むんですけど、まったくですね。飲んでも缶ビール1本2本かな……。

――気持ち的に飲めないということですか? それとも体が疲れていて無理?

思考が停止、みたいな(笑)。

――それは、飲んでもおいしくないですね(笑)。

そうだね……。「うまい!」というのはまだ早いかな、と。

――これまでにそういう経験は?

あんまりないですね。そのくらい大変な芝居なんでしょうね。

――『アテネのタイモン』の時は、そこまでではなかった?

『アテネのタイモン』の時は、客席芝居というか、飛び道具というか……。僕は結構喉が強いほうなので、ケアというか心配していたのはそこだけでした。あとはもうとにかく、全世界にというか、全宇宙にというか。シェイクスピアならではだと思うんですが、ああいうパワープレイとか、得意と言えば得意のほうだったんですね。今回は、まったくそういうことではない。より深く、より高度な芝居だと思います。『アテネのタイモン』の時は発散もできますし、気持ちよかったんですよね。今回は、気持ちよさみたいなのが、まだない。鋼太郎さんから、ひたすらやられるので(笑)。

■こんなに本読みしたのはないんじゃないかな…『スリル・ミー』は結構やったかな

――前回ご一緒した時と比べて、今までと違うことを要求されているなということはありますか?

ふたりですので、何が起きるのかを探りながらやっています。今日も一幕をざっとやりましたが、それが決してフィックスじゃないですし、この動きがマストということではなく。変更もあるだろうし、そういう意味で、最初から正解を出さない。とりあえず、やれることをやってみよう、出してみようと。失敗してもいいから、台詞もどんなにとっ散らかってもいいと。すごく丁寧ですね。本読みも何回やったんだろう。僕の今までの演劇人生でこんなに本読みしたのは、ないんじゃないかと思うぐらいに、結構たくさんやりました。『スリル・ミー』の時は、結構やったかな。

――お芝居は丁寧に本読みして、熟考してから立つほうが面白いと聞きますが、違いはありますか?

やっぱり、単純に台詞が入りやすいというのもあります。ただ、立ったら立ったで、本読みの時とは全然違う気持ちになる時はあります。こんなに丁寧にやってくれているのは、嬉しくて、ありがたいなと思います。

■今どちらがパワーバランスが強くて弱いかとか、ヒリヒリした部分が大事

『スルース~探偵~』という作品自体が、イギリスの結構コアな推理小説作家とか、地域のこととか、わりとマニアックなんです。鋼太郎さんの役が推理小説作家で、結構クレイジーな役でもあり、そういうマニアックな話題を出して、ひとりで感動しているような人でもあるんです。でも、果たしてそれで日本の人たちに受けるのかという問題がありますので、そういうところも、鋼太郎さんが結構直しているんですよ。だから、そういう意味でも、日本の皆さんが観ても、絶対に面白いと思います。

――知らない言葉が通っていくと、「ん?」と引っ掛かりますよね。

もちろん、絶対通らなきゃいけない道はありますので、マニアックなところはあるんですが、そういうことを排除して、大事なのはふたりが何を思ってその言葉を言っているのかとか、今どちらがパワーバランスが強くて弱いかとか、ヒリヒリした部分のほうが、やっぱり大事ですので、今でもいろいろ手直ししています。だから、本読みを重ねたんだと思います。

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