2021年1月8日(金)から1月24日(日)まで新国立劇場・小劇場で上演される舞台『スルース~探偵~』に出演する柿澤勇人さんのインタビュー、後半です。『スルース~探偵~』は1970年に英国で発表され、ブロードウェイ版はトニー賞を受賞、1972年にはローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインの主演で映画化され、2007年にはノーベル賞作家のハロルド・ピンターが脚本を手掛け、監督:ケネス・ブラナー、主演:マイケル・ケイン&ジュード・ロウで再び映画化されている作品です。日本でも数々の名優たちによって舞台化され、今回は吉田鋼太郎さんと柿澤さんにより上演されます。吉田さんが演出も手掛けます。インタビュー後半では、この時期にこの作品を上演することについて、自粛明けから半年が過ぎての心境、柿澤さんにとって芝居とはどのようなものなのかなどについて伺いました。
――今上演されている作品は、コメディのような明るい作品が多いと思います。皆さんそれぞれに大変な状況下ですが、「笑うっていいな」と思って舞台を観始めた方も多いんじゃないかと思います。年が明けて、『スルース~探偵~』は、まったく違う作品で、この芝居は観るほうも気が抜けないというか。そういう作品をこの時期に観に来るお客様に向けては、どんな風に思っていますか?
この企画自体はコロナの前からありましたから、コロナがあって、やるのかやらないのかを含めて話し合った結果、やっぱりこれになった。ミュージカルで言ったらハッピーとか、ストレートプレイだったらコメディというのは、今求められていることだとは思うんです。この作品は配信もありませんし、劇場でしか観られない。
でも、今日は一幕だけでしたが、この『スルース~探偵~』という作品は、鋼太郎さんみたいな、すごいキャリアもあって成功した人がいて、僕みたいな若造がいて、頭をフル回転してヘロヘロになりながらやってるんです。「このふたり、どうしてこんなに命を懸けているの?」という姿が見られますね。
すごくクールに見たら、「どうしてそんなに頑張っているの?」と、もしかしたら思われるかもしれません。大の大人ふたりが全部をかけて、何かに対して芝居しているという姿が見られるので、「やっぱり芝居って面白いな」とか、「人間って面白いな」とか、「やっぱり劇場っていいな」という風に思ってくれるための芝居になる気がしますね。
僕の役はもちろん芝居もする……芝居しかしないんですけど(笑)、恐らく、踊らされる、歌わされる、変装させられる、コスプレさせられる。持っているもの全部やらされると思いますね。できることもできないことも、頑張って挑戦しなければいけない役なので。人間がボロボロになる姿を観て欲しいです(笑)。
――(笑)。
こんな時期ですが、落ち込んでいる場合じゃないという思いでやります。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、自粛明けから半年が過ぎての心境、柿澤さんにとって芝居とはどのようなものなのかなどについて伺ったインタビュー後半の全文を掲載します(写真はありません)。
<有料会員限定部分の小見出し>
■自粛明けから半年。感染予防、毎日体温を測って、PCR検査。正直しんどかった
■年末年始もリラックスできない気がします。3日くらいは忘れたいです(笑)
■本当に思うんです。「何でこんなつらい思いして、この仕事しているんだろう」って
■『スルース~探偵~』でスタートダッシュしなければ。5、6キロ痩せると思います
<舞台『スルース~探偵~』>
【東京公演】2021年1月8日(金)~1月24日(日) 新国立劇場 小劇場
【大阪公演】2021年2月4日(木)~2月7日(日) サンケイホールブリーゼ
【新潟公演】2021年2月10日(水)~2月11日(木) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
【仙台公演】2021年2月13日(土)~2月14日(日) 電力ホール
【名古屋公演】2021年2月19日(金)~2月21日(日) ウインクあいち大ホール
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/sleuth2021/
<関連リンク>
柿澤勇人ホリプロオフィシャルサイト
https://www.horipro.co.jp/kakizawahayato/
柿澤勇人オフィシャルファンクラブ8810&co.
http://fc.horipro.jp/hayatokakizawa/
柿澤勇人&STAFF
https://twitter.com/kakizawa_hayato
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■自粛明けから半年。感染予防、毎日体温を測って、PCR検査。正直しんどかった
――自粛明けから今の時点でちょうど半年経ちました。もちろん、前と同じ状況ではありませんが、みんな心の修復もしながら、でも徐々に前に進んでいるという感じを、より強く感じます。柿澤さんは11月に『ハルシオン・デイズ2020』にも出演されましたが、今、特に『スルース~探偵~』という作品は、全力で走っている感じが、本当に今までと変わらないというか。変わるけれども変わらない感じなのかなと、お話を伺っていて思うのですが、変化を経て今の心情としてはいかがですか?
『ハルシオン・デイズ2020』の時もそうでしたし、感染予防して、毎日体温を測って、PCR検査もやって、正直、しんどい部分もありましたね。芝居以外に、コロナ関連のことに気を取られなきゃいけないとか、普通に芝居していれば唾も飛ぶし、それを見た時に、素に戻っちゃう自分もいたりして。そういうのがすごく邪魔というか、「どうしてこんなことを気にしながらやらなきゃいけないんだろう」という思いがあったんです。もちろん今の稽古場も徹底して予防しながらやってますが、本番に入ったら、きっとそんなこと考えていられない(笑)。
――(笑)。
今までもちゃんと普通に芝居して、もちろんインフルエンザや風邪予防、体調管理ということは大切でしたし、今ももちろん必要なんですが、本番中は考えられないくらいになればいいな、ならなきゃいけない、と思っています。
――そうなれたら、幸せな時間ですよね。
本当にそうですね。
■年末年始もリラックスできない気がします。3日くらいは忘れたいです(笑)
――他のことは考えずに、お二人でその時間をシェアするだけでいいんですものね。
気が抜けない。見透かされている感じもありますし。しかも、役として対等に対峙しなきゃいけない役ですので。
――私も拝見するほうとしては、とても楽しみです。追いつめられているとか、キレている柿澤さんのお芝居が大好きですので。
満載ですよ。僕はまだそこまで到達していませんが、年末年始もリラックスできない気がします。
――ずっと『スルース~探偵~』のことを考えて。 そんな年末年始はいやですね。3日くらいは忘れたいです(笑)。鋼太郎さんは「4日空くの怖いな。うちで本読みするか」とか言ってました。
■本当に思うんです。「何でこんなつらい思いして、この仕事しているんだろう」って
――柿澤さんにとって、お芝居は一番の核なのかなと思います。芝居を刻んで自分の傷のようにして残っていくものなのか、自らを削って芝居をしているのか、自分自身とはまったくかけ離れたものなのか、どれにも当てはまらないとか、いかがでしょうか。
自分を痛めつけてるんじゃないですか。
――じゃあ、結構大変ですね。
そうですよ。本当に、ふと思うんです。「俺、何でこんなつらい思いして、この仕事しているんだろう」って。でも、みんなそうだと思いますよ。結局やっちゃうのが芝居なんですよね。
――好きだからですか?
そうなんでしょうね。休みたいとか辞めたいなんて、いくらでも考えたことがありますが、結局たどり着くのはそこなんですよね。なんかやっちゃうというか。いろいろやらせてもらっていますが、蓄積されている感じではありませんね。
――今、その時を生きているような?
そうですね。一日一日、家に帰って寝るまで必死、という感じですね。
■『スルース~探偵~』でスタートダッシュしなければ。5、6キロ痩せると思います
――2021年は『スルース~探偵~』から始まりますが、2020年を経て、今見えている2021年は、どんなものでしょうか?
う~ん……何も見えていないですね。『スルース~探偵~』という壁が、2021年の入り口に立っているので。その先が何も見えないんですよ。
――その壁を越えてみないと、その先にどんな景色が広がっているか分からない?
壁ですから、乗り越えられなかったら、そこで終わりですよ。僕の2021年はそこで終わりますね(笑)。
――壁は叩き壊すとか、方法はいろいろあると思いますが(笑)。
本当にそれくらい大変だな、というのは思いますね。あとは、新しい出会いがあると思います。それは芝居かもしれないし、映像かもしれません。2020年は、僕だけじゃなくてみんながみんな、どんな職業の人でも、全国民、全世界の人が潰されかけたわけですが、本当に踏みとどまっている場合ではないので、進まなきゃいけないですからね。『スルース~探偵~』でスタートダッシュを切りたい、切らなければとは思っています。たぶん、5、6キロ痩せていると思います。
――じゃあ、皆さんにも立ち会っていただいて。
これが成功しない限り、僕の2021年はないと思っていますので、応援をお願いします。
――ありがとうございました。楽しみにしています!