「大切な人は大切にしよう」、『イン・ザ・ハイツ』平間壮一インタビュー(上)

平間壮一さん=撮影・NORI

2008年度に最優秀作品賞などトニー賞の4部門を受賞(ノミネートは13部門)し、2009年度のグラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞したBroadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』が、2021年3月27日(土)から3月28日(日)に鎌倉芸術館大ホールで上演されるプレビュー公演を皮切りに、大阪、名古屋、東京で上演されます。『Hamilton』を産み出したリン=マニュエル・ミランダの出世作でもあり、今年ハリウッド映画版の公開も決定している『イン・ザ・ハイツ』は、ワシントンハイツで生きる人々の毎日を、ラップ、サルサ、ヒップホップとラテンのリズムに乗せて描いたミュージカルです。Microさん(Def Tech)とダブルキャストでウスナビ役を演じる平間壮一さんに、3月半ばにインタビューしました。上、下に分けてお届けします。「上」では、ウスナビ役について、作品や共演者について、音楽などについて伺った合同インタビューの内容を紹介します。「下」では、アンサンブルからプリンシパルへ、そして主演へ。その変化の中で平間さんが考えてきたことなどについて伺った、独自インタビューの内容をお届けします。

平間壮一さん=撮影・NORI
平間壮一さん=撮影・NORI

ーーこの作品について強い思い入れがあるとのことですが、それはどんな点でしょうか。

僕は小学校4年生のころからダンスをやってきていますが、自分がやってきたその文化が盛り込まれている作品なので、思い入れが強いです。ヒップホップのブレイクダンス、ラップ、グラフィティなど絵を描ける、DJ、という4つの要素です。『イン・ザ・ハイツ』には、グラフィティを描くシーンがあったり、ラップをやっていたりなどの要素が盛り込まれている作品なので、いつかやりたいと思っていました。

ーーということは役に対してではなく、作品に対してということですか。

そうですね。『イン・ザ・ハイツ』には関わりたいと思っていました。

ーー初演は、どんな印象でしたか?

ウスナビをMicroさんが演じていらっしゃったので、Microさんがどうやって演技をなさるんだろうと思っていましたが、演技を越えた心からの熱量で体現されていらっしゃるな、というのが初演の印象でした。アーティストのMicroさんが心で台詞をそのまま演じて、ウスナビという役を被っているのではなく、ウスナビを取り入れて自分の言葉で言っている。Microさん半分、ウスナビ半分というのが、すごく素敵だなと思いました。自分も演技をやっていく上で、役になりにいくというよりは、自分のスタイルで役を自分に入れる方が近かったので、似たものがあるなと感じていました。

ーーこの作品には、例えばグラフィティ・ピートなど踊る役もありますし、ベニーのような役もありますが、やはりウスナビにご興味があったのですか?

そうですね。作品に関わってみると、ウスナビ自身がホームを見つける旅というか、自分の居場所を見つけたり、自分の気持ちを素直に伝えられなかったりするところが、すごく自分と被るものがあって。この中で演じるとしたら、ウスナビしかないかなと関わってみて思いました。

ーーラテンのリズムとラップが組み合わさっているような感じですが、アプローチしやすいものですか?

1曲目から、ずっとラテンのリズムが刻まれているんですね。「♪カッカッカッ カッカッ〜」というリズムから始まって、メロディがついていて、それに乗って言葉を喋っているだけでラップになっていくようなリン=マニュエル・ミランダのマジックがかかっているような音楽だなと思いました。

ーーご自身でやってみて、すごく大変なところはなかったですか?

すごく運の良いことに、ダンスに加えラップも小さいころにやっていたことがあったので、まだまだ全然甘いですが、Microさんとすり合わせながら、あまり無理なくやれている気がしますね。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、『イン・ザ・ハイツ』の共演者や音楽などについて伺った合同インタビューの内容と写真を掲載しています。3月23日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、アンサンブルからプリンシパルへ、そして主演に至る変化の中で平間さんが考えてきたことを、独自インタビューで伺った内容の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■ダンスや歌をやってきた人は繊細。30代が多いので、人の傷や痛みを経験してきてわかっている

■言葉を聞いているとそんなに前向きなことを言っていなくても、音楽がすごく前向き

■どちらの感情もあって、複雑で深いのが『イン・ザ・ハイツ』のすごいところ

■やりたいことを見失っていたり気づけていないところに、気づかせてもらえる作品

<Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』>
【プレビュー公演】2021年3月27日(土)~3月28日(日) 鎌倉芸術館 大ホール
【大阪公演】2021年4月3日(土)~4月4日(日) オリックス劇場
【名古屋公演】2021年4月7日(水)~4月8日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【東京公演】2021年4月17日(土)~4月28日(水) TBS赤坂ACTシアター
公式サイト
https://intheheights.jp

<キャスト>

ウスナビ(Wキャスト):Micro(Def Tech)/平間壮一
ベニー(Wキャスト):林 翔太/東 啓介

ニーナ:田村芽実
ヴァネッサ:石田ニコル
ソニー:阪本奨悟

ダニエラ:エリアンナ
カーラ:青野紗穂
ピラグア・ガイ:エリック・フクサキ
グラフィティ・ピート:山野 光

ケヴィン・ロザリオ:戸井勝海
カミラ・ロザリオ:未来優希

アブエラ・クラウディア:田中利花

ハイツの人々:
菅谷真理恵、ダンドイ舞莉花、SATOKO MORI、戸塚 慎、ICHI、TokoLefty、東間一貴、加藤さや香

<関連リンク>
Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』 公式twitter
https://twitter.com/intheheightsjp
平間壮一 アミューズオフィシャルサイト
https://artist.amuse.co.jp/artist/hirama_soichi/
平間壮一&STAFF twitter
https://twitter.com/So1_Staff
Soichi.H 平間壮一 instagram
https://www.instagram.com/soichi.h.official/

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平間壮一さん=撮影・NORI
平間壮一さん=撮影・NORI

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■ダンスや歌をやってきた人は繊細。30代が多いので、人の傷や痛みを経験してきてわかっている

ーーTETSUHARUさんの演出は、いかがですか?

十年ほど前に『タンブリング』の演出でお世話になっていて、そのときは立ち位置やポジション、体の動きでお芝居を見せていく方なんだなと思っていたんですが、そこへさらに、心の理解力というか、心で会話しようよ、というところが加わっていて、十年という時はすごいなと。TETSUHARUさんに付いていこうと、今必死でやっています。

ーー今回は多彩なキャストの方が揃っていますが、稽古を通してカンパニーの雰囲気やキャストの方の印象はいかがでしょうか。

本当に、皆さん繊細な方が多いです。やはりダンスや歌を専門にやってきた方が多くて、見た目は結構派手だったり、強そうに見えるかもしれないですが、皆さんアーティストさんで、一個一個にすごく繊細な方々なんだなと思いました。カンパニー全体としては、みんなすごく優しいし、柔らかい空気に包まれて良い感じですが、その分、みんなが気を遣いあっていて、良い距離感でやっているなと感じます。

ーーカンパニーの雰囲気としては、すごく良い感じ?

そうですね。年齢層も30代が多いので、ある程度経験してきて、人の傷や痛みをわかって接していると感じます。

ーー今回、Microさんとダブルキャストですが、これまでにもダブルキャストの作品に出演されていますが、ダブルキャストの魅力は、どんなところにあると思いますか?

今回は特殊だと思います。Microさんは考えるよりも先に言葉と体がついてくるような方なので、いやらしさがゼロといいますか。「こうしたら、こう見えるよね」という考えが全然ないんですよ。ただただ目の前の人に言われた言葉を素直に返しているだけで、真っ直ぐな方なんだなと思います。Microさんには、「役者さんがウスナビをやるのを、まずは完全にコピーさせてもらいます」とよく言っていただきますが、逆に僕はその素直さを取り入れられるように、お互い話し合って作っていっている感じです。

平間壮一さん=撮影・NORI
平間壮一さん=撮影・NORI

■言葉を聞いているとそんなに前向きなことを言っていなくても、音楽がすごく前向き

ーー歌稽古で苦戦している部分や新しいチャレンジングな部分は、何かありますか?

普段のメロディがついているものよりも、ラップはよりリズム重視の部分があります。言葉のリズム遊びというところでいうと、やはり早口言葉にリズムがついている感じなので、そこは挑戦だなと感じます。リズムを外さないように。「1、2、3、4」というリズムだけでなく、その中での遊び方を外さないように、頑張っています。

ーー今までいろいろなミュージカルに出演されていますが、今作の楽曲の魅力はどんなところにあると思いますか?

やはりラテンじゃないでしょうか。ラテンのリズムが、聞いている人を勝手に心踊らせる感じの音楽。たとえ、それが悲しい場面の音楽だったとしても、前向きになれるリズムに作られている。『イン・ザ・ハイツ』は一見すると、すごくハッピーなミュージカルなのかなと思うんですが、完全にハッピーエンドというわけではないですし、一人がすごく成長したというような話でもないです。言葉を聞いているとそんなに前向きなことを言っていなくても、音楽がすごく前向きだったりする。苦しい世の中だけれど、前向きになれるように立ち向かっていこうよというメッセージが、音楽自身にある気がするんですよね。だから、そこが魅力かなと思います。

ーー他の作品にないような、今作ならではの演出などは、ありますでしょうか。

十年前くらいにお世話になったときに、TETSUHARUさんはすごく細かく立ち位置をつける方だなと思いました。「なんでお芝居なのに、そんなに細かくしなくちゃいけないんだろう」と、若いときは思ってしまっていたんですね。十年間いろいろな演出家さんとご一緒させていただきましたが、ここまで細かくつけるのはTETSUHARUさんしかいないんです。だとしたら、それがTETSUHARUさんのスタイルなんだと、大事にしようと思いました。動き方や立ち位置に意味を持ってつけてくださっているので、それがやはりTETSUHARUさんならではの色なのかなと思います。停電が起きて、みんなが携帯を片手に持ち、明かりにするシーンが、劇場に入ったときにどう見えるんだろうと楽しみにしているところです。

平間壮一さん=撮影・NORI
平間壮一さん=撮影・NORI

■どちらの感情もあって、複雑で深いのが『イン・ザ・ハイツ』のすごいところ

ーーこの作品では、「ホーム」について描かれていますが、平間さんにとってのホームや、この作品とリンクして大事にしている部分をお聞かせください。

自分の中でのホームは、地元北海道しかないですが、ウスナビと一緒で自分自身で作っていくべきものなんだなと思いました。だから、そのホームが増えれば増えるほど、自分の居心地が良くなるでしょうし、自分が追い求めている夢がホームなんだと思うと、いつまでも自分のものにならないというか。そういった意味でいうと、周りにある温かさに気づくことが大事なんだなと、僕も今勉強になっています。

ーー具体的に、自分が温かさを感じるところを、特にこの大変な時期により感じるところはありますか?

本当に、今幸せなことに、綺麗事じゃなく、稽古場に行って、みんなが一生懸命やっていたりすると、こうやってひとつのものに向かっていくことは大事なんだなと思います。自分の仕事面でいうと、これがホームなんだなと稽古場に行く度に思いますね。

ーーそのホームについて、キャストの皆さんやTETSUHARUさんとお話しすることはありますか?

意外とないんです。「それぞれの思い描くホームで良いよね、ホームを一個にしなくて良いよね」という感じが漂っています。

ーー今は技術的なことを埋めていく稽古、という感じですか?

そうですね。本当に細かいところをやっています。

ーーこの作品について取り組む前に抱いていたことと比べて、稽古をやってみて新たな発見はありますか?

本当にただただ、『イン・ザ・ハイツ』を一回観て良いなと思っていただけで、自分がまさかやれるだなんて思ってもみなかったんですが、今日も通し稽古を観ていて、すごく複雑なんだなと思いました。この作品が人間そのものだから。例えば、名門大学に行っていたニーナがいますが、辞めてしまって「戻りたくないけど戻りたい」と思っているみたいに、人間は矛盾する感情をどちらも持ち合わせているじゃないですか。それをドラマや舞台にするときに、割とひとつにしがちで、「私はこうなることが夢なんです」と描かれやすいですよね。どちらの感情もあるから複雑で、その深い部分がそれぞれのキャラクターにあると思うと、より人間っぽくて、『イン・ザ・ハイツ』のすごいところだなと気づきました。「うわぁ、人間だな」って。

平間壮一さん=撮影・NORI
平間壮一さん=撮影・NORI

■やりたいことを見失っていたり気づけていないところに、気づかせてもらえる作品

ーー描かれているリアルさみたいなところですね。

そうですね。恋人と離れなくちゃいけないけれど、離れたくない理由があって、大学に行きたいけれど、めちゃくちゃ行きたい理由はない。なぜ行かなければいけないかというと、移民問題もあり周りの重圧を背負っているからとか、自分のやりたいことだけでは済まないところ。親近感が湧くといいますか。「世の中そうだよね」という感じが好きです。

ーー読者の方々へメッセージをお願いします。

どの作品をみても「今だから観ておいた方が良い」と言うと思いますが、今だからというよりは、『イン・ザ・ハイツ』はどんなときであれ、人が持っている悩みや、自分のやりたいことを見失っていたり、この道で本当に良いんだろうかと考えるなど、まだ気づけていないところに気づかせてもらえる作品だと思います。意外と身近に、そういうことはあるんだなという温かい作品になっています。そして、大切な人は大切にしよう、ちょっと素直になってみようという思いで、帰っていただけたら嬉しいなと思います。

※平間壮一さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは4月22日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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