「『黒い絵』の背景を知るのがすごく面白い」、『ゴヤ』小西遼生インタビュー(上)

小西遼生さん=撮影・岩村美佳

オリジナルミュージカル『ゴヤ -GOYA-』が、2021年4月8日(木)から4月29日(木・祝)まで東京・日生劇場で、5月7日(金)から5月9日(日)まで名古屋・御園座で上演されます。アイデアニュースでは、ゴヤの親友サパテールを演じる小西遼生さんにインタビューしました。上、下に分けてお届けします。オリジナルミュージカル作品ならではの面白さや、スペインの激動期とその時代の絵画について、小西さんが演じるサパテールや、ゴヤ役の今井翼さんについて伺いました。

小西遼生さん=撮影・岩村美佳
小西遼生さん=撮影・岩村美佳

――新しいオリジナルミュージカルの創作の現場はいかがですか?

楽しいですよ。台本はできあがっていますが、新しいものを作るということで、本当に毎日のように変わっています。やっぱり生のセッションで作っていくのが(鈴木)裕美さんのスタイルというか、「自由にやってみて」とまず最初に役者にやらせてくださる方なので、時間がない中で細かいところまで作り込むのは大変ですが、大枠を固めつつ、遊びどころは遊んだり、みんなで試行錯誤しています。

ゴヤのお話として、今回の台本の中で見せなきゃいけないところは的確に裕美さんが示してくれるので、本当に物作りをしている現場だなと感じます。なので、すごく楽しいです。マスクをしなければならなかったり、ストレスフルな今の状況ですが、裕美さんは以前と作り方を変えずに人とのやり取りの中で生まれるものとか、間とか、そういうものを大切に作ってくださるので、「ああ、クリエイティブな時間だなぁ」と。

――台本を拝見したり、ゴヤについて調べたりしながら、全然知らなかったなということがたくさんありました。

スペインのことは知らない人が多いでしょう。

――間に出てくるフランス革命とかはよく知っているけれど、みたいな(笑)。

帝劇の常連の皆さんが知っているものは、フランスものや、ハプスブルク家などだと思いますが、今回の『ゴヤ』はスペインの激動の歴史なんです。

――よく知られたことが背景にあって、そうじゃないところを主軸に描いているスペインの新しいところはいかがですか?

ゴヤを描くとなると、特に激動の時代を描くことになります。その背景を知る楽しみも、僕の中であるんです。文献を読んだりもしていますね。こういう時代の中で、ゴヤは、若い時から自由というものに自分の創意工夫をしていたり、人に流されずに生きようとする姿勢が、一貫して変わりません。そういう力強く生きている人のエネルギーと、現代にはない激動の中でそれを貫き通すことの大変さみたいなところが、読めば読むほど、稽古で具現化すればするほど、相当なエネルギーが必要な生き方だなと感じたり。

また、スペインの歴史というよりは、たったひとりの男の生き様を描く物語でもあります。その割に「あ、俺も知ってる」という人が出てきたりするのが面白いですね。フロリダブランカ伯爵や、フランス革命の時代に侵略される側だから、ナポレオンが出てきたりします。

――ナポレオンなど、誰もが知る人物が、脇役で出てくるということですね。

「こんな人物もいたんだ」と改めて思ったりします。あとは、画家の話なので、絵画の背景を知るのも面白いですよね。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ゴヤの生きた時代の絵画について、小西さんが演じるサパテールとゴヤの関係などについて話してくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。4月6日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、ゴヤ役の今井翼さんについて、音楽やミュージカルとしての面白さについてのほか、2021年の年明けから出演した『ポーの一族』についても少し伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■色彩豊かな絵を描いていた人が、おぞましい「黒い絵」を描く。その背景に物語が

■サパテールはゴヤの親友であり、幼少期から一緒にいる唯一無二の理解者

■(日生劇場で親友役というと…)怪物になる作品よりは、もっとリアリティが

■「君さえいれば、世の中何もいらない」と、BLじゃないかというくらいに仲がいい

<ミュージカル『ゴヤ -GOYA-』>
【東京公演】2021年4月8日(木)~4月29日(木・祝) 日生劇場
主催:松竹
【名古屋公演】2021年5月7日(金)~5月9日(日) 御園座
主催:御園座・東海テレビ放送・中日新聞社
公式サイト
https://www.shochiku.co.jp/engekiw/lineup/musical_goya/

<関連リンク>
小西遼生オフィシャルサイト
https://konishiryosei.com
小西遼生|株式会社キューブオフィシャルサイト
https://www.cubeinc.co.jp/archives/artist/konishiryosei 
小西遼生 twitter
https://twitter.com/ryosei_konishi
小西遼生 instagram
https://www.instagram.com/ryosei_konishi_official/

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小西遼生さん=撮影・岩村美佳
小西遼生さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■色彩豊かな絵を描いていた人が、おぞましい「黒い絵」を描く。その背景に物語が

現代的な感覚で言うと、美術館に行くとして、「この時代はまだこういう自由な作風ではなくて、もうちょっと固い絵だったよな」というところは、あまり見たくないじゃないですか。

――見たくない?

もっと自由な発想がたくさん生まれる時代は、この後なんですよ。だから、ゴヤは先駆者的な人で、ゴヤの絵は意外と見逃しているんじゃないかな。元々宮廷画家ですから。宮廷画家の絵を、あまり美術館に見に行こうとしないというか。海外に行くと、天井画を見たりしますが、その絵の背景を探るようなことは、よっぽど好きじゃなければしないんですよね。ゴヤの場合は、ロココ調の綺麗な時代に、すごく色彩豊かな絵を描いていた人が、最終的には「黒い絵」というおぞましい絵を描くじゃないですか。その背景を知るのがすごく面白いんですよね。物語がある。

だから、「なるほど、だから今回舞台にするんだ」と絵から読み解くと、また面白いなと思っています。「どうして宮廷画家を目指したんだろう」とか。宮廷画家は、宗教画や、教会が欲しがる絵を描く仕事をするじゃないですか。あとは権力のある人が描いて欲しくて描くとか、人に依頼される絵。でも、現代的な感覚で言うと、画家は結構自由に描くものや、表現としての絵だったりする。結局は出世やお金のためだったりしますが、その遍歴というか、ゴヤという画家が目指していった道の道中を知っていくと面白いです。それは下準備の勉強としても面白い。

小西遼生さん=撮影・岩村美佳
小西遼生さん=撮影・岩村美佳

■サパテールはゴヤの親友であり、幼少期から一緒にいる唯一無二の理解者

――脚本を呼んでも「へ~!」ということが多かったので、観る人も知らない物語を観る面白さはきっとあると思います。

僕の役柄が結構客観的なので。

――ゴヤの親友サパテールですね。

ゴヤという人物の物語ですが、彼がどうやって生きてきたかを、史実も創作も含めつつ作り上げています。ゴヤが主体となって進んでいく中で、サパテールは親友であり、幼少期から一緒にいる唯一無二の理解者。この物語の中でいうと、ゴヤがやることに対してすごく客観性を持っています。なので、そういう立ち位置にいることもあってゴヤのことを知ろうと必死に勉強しています。

――サパテールを演じていて、いかがですか?

サパテールとゴヤとのやり取りは、ほとんど手紙なんですよね。激動のこの時代が、すごい速度で進んでいくのですが、その中で、ゴヤは自由に生きている、サパテールは時代に翻弄されて生きている、みたいなところがあって。断片的にしか出てこない役ではあるので、それをどう整合性をつけていくのか、今探っているところです。でも、信じられないくらいゴヤと仲がいいのですよ。

小西遼生さん=撮影・岩村美佳
小西遼生さん=撮影・岩村美佳

■(日生劇場で親友役というと…)怪物になる作品よりは、もっとリアリティが

――そんな感じですよね。日生劇場で親友役というと、ふむふむ、どこかで見たことあるぞ、みたいな(笑)。

怪物になっちゃう作品ね(笑)。あの感じよりは、もっとリアリティがあるものだとは思います。実際に史実の中でも、サパテールとゴヤは手紙のやり取りをすごくたくさんしているんですよ。しかも残っているのはほとんどゴヤからサパテールに宛てた手紙ばかりで、サパテールからゴヤに宛てた手紙はないので、それは想像でしか作れないんです。だから、ゴヤに比べてサパテールは劇の中で、2時間なり3時間の劇を円滑に導いていく役割も担っているので、結構創作の部分があるんです。

小西遼生さん=撮影・岩村美佳
小西遼生さん=撮影・岩村美佳

■「君さえいれば、世の中何もいらない」と、BLじゃないかというくらいに仲がいい

僕が面白かったのは、実際に残っている、ある時ゴヤがサパテールに宛てた手紙で、「君さえいれば、世の中何もいらない」ぐらいなラブレターがあるんです。

――ラブレター?

「君と会って君と一緒に過ごすだけで、世の中に必要なものは何もないんだ」ぐらいな手紙があって、そういう要素は本編の中にも含まれているぐらい、ゴヤにとって友達という言葉を超えて、親友という言葉を超えて、心がつながっている役というか。

これは歴史の専門家からすると、現代的にはBLじゃないかというくらいに仲がいい。ホセーファ(清水くるみ)というゴヤの奥さんが出てきますが、奥さんよりもサパテールが好きだよね、という感じです。そういう関係性を、断片的にしか見せられないんですが、ゴヤにとってはある種一番支えになる人物というか。

――手紙でしかやり取りができないぐらい、物理的にも距離が離れているじゃないですか。余計に想いは募りますよね。

想いが募るし、舞台の中だと、本当に断片的にしかそのやり取りをしていないんですが、ゴヤは何かあるごとにサパテールに手紙を送っているんです。喜怒哀楽全部。悔しいことがあったり、怒ったことがあったり、嬉しいことなんか特に、「宮廷画家になったぞ!」って。「今日こういう試験があって、落ちました!」みたいなものも、逐一報告しているぐらいなんです。だから、想いが募っているというよりは、進めば進むほどなくてはならない存在感が強くなっていきます。

小西遼生さん=撮影・岩村美佳
小西遼生さん=撮影・岩村美佳

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“「『黒い絵』の背景を知るのがすごく面白い」、『ゴヤ』小西遼生インタビュー(上)” への 19 件のフィードバック

  1. にこ より:

    ゴヤ東京公演は中止になってしまい、残念ながら観ることは叶いませんでしたが、素敵な記事とお写真でとてもワクワクさせて頂きました。ありがとうございます!名古屋公演が、無事に出来ますように。

  2. さち より:

    毎回、岩村さんの記事を読んでその舞台への期待が高まります。
    『ポーの一族』では遼生さんへのインタビューが無かったので物足りなく思っていました。なので今回ゴヤでまた岩村さんのインタビューとお写真が見れてとても嬉しいです!
    ポーのことも聞いて下さりありがとうございます。
    『ピーターパン』でも遼生さんのインタビューが読めることを楽しみに待っています!

  3. ちゅん より:

    公演を観劇してから拝読しました。
    ゴヤが日比谷でも馴染みの深いモーツァルト等の芸術家とも近いフランス革命期のヨーロッパを生きたことは全然知らず、逆にその時期のスペインから時代を見る面白さを感じています。
    サバテールの立ち位置も、狂言回しのような状況俯瞰的なところもありつつ、戦乱に巻き込まれていく2幕等、興味深い役どころで、個人的に観劇後、まだこれからも観劇予定のあるタイミングでお話伺えてよかった!
    ミュージカル『GOYA』の世界、まだまだ楽しませていただきます。

  4. まかろん より:

    ゴヤについていろいろ知ることが出来そうで楽しみです。
    ゴヤの親友役で同級生とのことで、お二人の掛け合いも興味深いです。
    スペインが大好きなので、コロナで旅行も出来ないこの時期に舞台を通してスペインの風を感じたいと思います。
    ラストまで体調に気を付けて頑張ってください。

  5. あのは より:

    コロナ禍の中、精力的に活動されてる方に頭があがりません。今回の小西さんの話は観劇に制限がある客にとってとてもワクワクするものでした。GOYAとても楽しみにしています。より深く世界観を理解するため原作も早速入手してみました。

  6. たろみ6317 より:

    ゴヤの黒い絵、観劇前にゴヤを勉強しようと思って、ネットで見ました。しかも夜中に。とても怖かったです苦笑
    ロマンチックな、恋人への手紙を書いていたゴヤの心の身体の変化がどうなっていくのか。。
    小西さん演じるサパテールの親友としての表現も楽しみにしています。
    いつも小西さんを記事にして下さり、ありがとうございます。お写真もとても素敵です。

  7. ロゼ より:

    毎回読み応えのある記事をありがとうございます。
    写真もテーブルに寄りかかるのとか、とっても素敵です。

    制作発表の時にもアブナイ関係と仰っていましたが、ゴヤとの仲よしっぷりを見るのが楽しみです!
    スペインという熱い情熱的な国の方の人生を、ハグもままならない今、礼儀を重んじる日本でミュージカルにするなんてすごいなぁと思ってます。
    この鬱屈したご時世でも劇場にいる間は思いっきり楽し見たいと思います。

  8. Mayu より:

    あまり知らなかったゴヤについて、もっと知りたくなりました!
    どんな舞台になるのか楽しみです。

  9. ちゅう より:

    インタビューありがとうございました。
    私はゴヤ、大好きです。10年前の上野・西洋美術館での「ゴヤ-光と影」展には何度も足を運びました。
    そのときに購入した図録を手に、ページをめくりながら開幕を待ちわびております。
    公演、楽しみにしております。

  10. M より:

    いつも魅力的な記事とお写真ありがとうございます。開幕が待ちきれません。もっともっとゴヤのこと知りたくなります。楽しみです。

  11. clover より:

    益々楽しみになって来ました
    それと
    いつも素敵なお写真
    癒されました

  12. ミーたん より:

    毎回、貴重なインタビューをありがとうございます。益々、舞台が楽しみになりました。

  13. ゆき より:

    いつも本当に素敵なお写真と記事をありがとうございます。

    恥ずかしながらゴヤという人物を、この舞台の事が発表されるまで知りませんでした。
    なので、全くどんな舞台になるのか想像もつきませんが、小西さんのお仕事が楽しそうな様子はたっぷり伝わってきました。

    後半も楽しみにしています。

  14. くう より:

    インタビュー興味深く拝見しました。『ゴヤの手紙』(岩波書店)を予習で読んだのですが、この濃密な関係をどう表現するのか、小西さんのインタビューと合わせてさらに楽しみになりました。

  15. ぽち蔵 より:

    「ゴヤ」での小西さんインタビュー待っていました。
    いつもながら見たいお写真、聞きたいお話をありがとうございます。
    後編も楽しみにしています!

  16. みゆき より:

    小西さんが一から作品を創り上げる難しさと喜びを心から楽しんでらっしゃるのが伝わってきました。関西公演が無くて拝見できないのがとても残念です。無事に全公演が上演できることを祈ります。

  17. K より:

    今回も素敵なお写真と楽しそうなインタビュー、ありがとうございます。
    明日も楽しみにしています🎵

  18. アンリ より:

    初見のゴヤ、どんな感じのものなのかなと今からわくわくしています。
    今までにはないような衣装なのもまた楽しみです。
    会見の時に翼くんに相方は心の中にいる的な発言でばっさりきられてしまっていた小西さんw
    このインタビューでも仲の良さがさらにわかりました。
    最近はガラッと違う役柄が続いているので、また新しい小西さんが見れることを楽しみに劇場に向かいたいとおといます。

  19. ponkiti より:

    いつも素敵な記事をありがとうございます
    今回もすごく読み応えがあり
    舞台を観に行くのが今から楽しみです

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