アイデアニュースのライターの1人で、平安時代から鎌倉時代の「大鎧」のコスチュームを自作し、源平合戦に登場する弓の名手、那須与一のアテンド(栃木県大田原市のご当地キャラクター「与一くん」の案内役)をつとめているLapis さんから、太極拳の流派の一つである「陳式太極拳」についての取材ルポが届きました。以下は、2021 年10月25日に大阪府内の「COOL 武術太極拳クラブ」で指導員をされている太田光俊さんを取材した内容です。太田さんが教えている「陳式太極拳」には、貴重な套路(とうろ:太極拳の動作)が含まれるとのこと。その特徴や魅力、太田さんの今後の展望を紹介します。
ここから、Lapisさんの「COOL 武術太極拳クラブ」ルポです。
私が初めて太田光俊先生と知り合ったのは、今から10年ほど前のことです。大阪の教室に、当時通っていたのがきっかけでした。陳式剣(ちんしきつるぎ)に興味があり、学べる教室を探していて出会ったのが、先生が運営されている「COOL武術太極拳クラブ」だったのです。
■陳式剣(ちんしきつるぎ)とは、「陳式太極拳」の套路の一つ
本題に入る前に、まずは陳式剣(ちんしきつるぎ)について押さえておきましょう。陳式剣(ちんしきつるぎ)とは、太田先生によると、現在の太極拳の源流となる「陳式太極拳」の套路の一つだそうです。
「400年以上の歴史をもつ陳式太極拳の発祥地は、河南省温県の陳家溝という農村です。太極拳には、大きく分けると、徒手(としゅ:素手のこと)・刀や剣を使う短兵器・棒や槍を使う長兵器と、3種類の套路があります。陳式剣とは、陳式太極拳の中で、短兵器を使う套路を指します」
■太田先生が教えている陳式剣は、上海に伝わるもの。套路の動きに独特の風格がある
日本国内で普及している陳式剣は、河南省陳家溝に伝わるものが一般的です。太田先生が指導されている陳式剣は上海に伝わるもので、套路の動きに独特の風格があるのが特徴です。先生によると、本場の中国でもほとんど残っていないかもしれないとのことでした。そんな珍しい套路なので、少しでも記録に残したいという思いで、今回取材をしました。この記事をきっかけに、学びたいという人が増えたら嬉しいです。取材では、上海に伝わる陳式剣ならではの套路も披露してくださったので、写真で2点紹介します。またこの動画では、他の套路を先生が披露してくださっています。ぜひご覧ください。
こちらは、YouTube「cooltaijiquan」チャンネルに掲載されている「COOL武術太極拳クラブ 講師:太田光俊」の「陳式剣」動画です。
■太田先生の教室では、本場の中国・上海で有名な武術老師直伝の太極拳を学べる
太田光俊先生は、大阪府大阪市中央区の森ノ宮の教室「スタジオM’s cube」では、毎週日曜日に初心者からベテランの方までを対象に指導されています。兵庫県西宮市の「西宮市若竹会館」でも、楊式剣講習会と陳式剣講習会を、それぞれ月に1回ずつ開催されているほか、オファーによる出張指導もあります。毎週土曜日は大阪府河内長野市で、水曜日は和歌山県橋本市で指導を受けることもできます。
教室の日程はこちら:http://www.kutsurogi-oota.com/sinai/inf15.cgi
※アイデアニュース有料会員限定部分には、太田光俊さんと太極拳の出会い、最高2位に入賞されるなど大会でご活躍されたエピソード、太極拳を生徒に教えながら感じていらっしゃること、これからの展望などについて伺った内容を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■ブルース・リーが好きな剣道少年だった。陳式太極拳の道に進んで41年
■全日本武術太極拳選手権大会でも大活躍。個人・集団双方の部で、最高2位入賞
■「生徒と一緒に学んでいく」。若い世代に武術太極拳を伝えるために、研鑽欠かさず
<太極拳 大阪 | 大阪のCOOL武術太極拳クラブ>
教室HP:kutsurogi-oota.com
ツイッター:https://twitter.com/mitutosio
<関連サイト>
Lapisさんにインタビューした記事
https://ideanews.jp/backup/archives/4171
大鎧を愛でる会
https://ameblo.jp/0327-15210/
Lapis 関連記事:
- 中国生まれの武術「陳式太極拳」とは、「COOL武術太極拳クラブ」ルポ 2021年11月26日
- 2019年以前の有料会員登録のきっかけ 2020年8月18日
- 那須家当主の那須正美さん・平野雅章住職・Lapis鼎談、「即成院」ルポ(下) 2018年8月2日
※ここから有料会員限定部分です。
■ブルース・リーが好きな剣道少年だった。陳式太極拳の道に進んで41年
高校生の頃から剣道を習っていた太田光俊先生が、太極拳に出会ったのは1980年5月のことでした。お父様のお勤め先の社長さんが、日中友好協会の役員をされていた縁で、陳式太極拳の同好会を紹介され、見学に行ったのがきっかけだったそうです。ブルース・リーが好きだったこともあり、そこから41年続けられて今に至ります。
先生の師匠には、太極拳が生まれた本場である中国・上海の武術老師も多く、陳式太極拳だけではなく、中国の武術を広く学ばれています。中でも、有名な老師に上海で直接指導を受けることができたのは楽しい思い出だそうです。その老師の方は、毎年来日されていたので、継続して指導を受け続けられたこともとても幸せだとおっしゃっていました。
■全日本武術太極拳選手権大会でも大活躍。個人・集団双方の部で、最高2位入賞
活躍も目覚ましく、太極拳を始めてから4年目の1984年には、全日本武術太極拳選手権大会に初めて出場されました。大会出場の初回から10回連続、太極拳・刀の部で入賞され、その後も、今回メインで紹介している陳式剣で2位、陳式太極拳の部では3位の快挙も達成されています。
「GAMBA剣」というグループで同大会に出場されていたときには、集団の部で最高で2位を受賞。個人でのご活躍はもちろんですが、「仲間と一緒に団体で入賞できたことも、嬉しい思い出です」と、語ってくださいました。2011年に設立された「COOL武術太極拳クラブ」の生徒さんたちは毎年、全日本武術太極拳選手権大会の各府県代表に選抜されています。
■「生徒と一緒に学んでいく」。若い世代に武術太極拳を伝えるために、研鑽欠かさず
太田先生によると、現在、日本における太極拳愛好者人口は約150万人、競技者人口は全都道府県合わせて約70,000人だそうです(2014年4月現在)。これは社団法人日本武術太極拳連盟加盟団体が把握している数に限られるので、実際にはもっと多いでしょう。
「これからの目標や夢はありますか?」とお伺いしたら、「60歳を超えましたので、動けるうちにたくさんの若い人に、私が学んできた武術太極拳を伝えていくために、私自身もまだまだ研鑽していきたい」という答えをいただきました。
生徒さんを教える中で大切にされていることは、「指導する」のではなく、「一緒に学んでいく」という姿勢とのこと。所属団体が異なる生徒さんであっても、「持っている全てを全力で」伝えており、太極拳の発展に尽力されている太田先生の教室に、ぜひ一度足を運んでみてください。