「音楽への初期衝動の純粋さを感じる」、『ジョセフ…』村井國夫・小西遼生対談(上)

村井國夫さん(左)と小西遼生さん(右)

ミュージカル『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』が、2022年4月7日(木)から4月29日(金・祝)まで東京・日生劇場で、5月5日(木・祝)から5月7日(土)まで愛知・刈谷市総合文化センター アイリス 大ホールで、5月12日(木)から5月16日(月)まで大阪・オリックス劇場で上演されます。

本作は、『キャッツ』『オペラ座の怪人』を生み出した作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーさんと、『エビータ』『ライオンキング』などの作詞を手掛けたティム・ライスさんが、まだ学生だった頃に初めてタッグを組んで生み出した、両巨匠の原点ともいえる作品。1982年のトニー賞で7部門にノミネートされ、世界中で長きにわたり愛され続けてきた名作ミュージカルです。2020年4月から5月にかけて上演が予定されていましたが、コロナ禍により上演を目前にして中止を余儀なくされたため、今回日本版として初の上演となります。

本作の上演にあたり、アイデアニュースでは、ジェイコブ役の村井國夫さんとファラオ役の小西遼生さんにインタビューしました。上下に分けて対談をお届けします。「上」では、稽古の状況のこと、稽古しながら今思うこと、ダレン・ヤップさんの演出について、この作品の音楽について思うことなどを伺った内容を紹介します。

「下」では、音楽や演出のこと、これまでに共演経験もある村井さんと小西さんならではのお話、村井さんが「言葉」について考えられていること、カンパニーのメンバーの素晴らしさやお客さまへのメッセージについて伺った内容を紹介します。

村井國夫さん
村井國夫さん
小西遼生さん
小西遼生さん

(※このインタビューは、3月末に実施したものです)

ーー稽古は今、どのような感じで進んでいますか?

小西:演出のダレンさんが合流して、まずは、2年前に作った形を思い出し稽古みたいな形で最後まで当たりました。新キャストももちろんいますが、みんな、さらっとはできるようになっている状況です。

村井:「ダレンさん」って、ダレ?!

小西:出た! もう、これ、絶対書いておいてくださいね!

小西・村井:爆笑

村井:いやいや、そんな感じだというくらいにダレンさんに会っていないんです。衣裳合わせ以来なんです。今日が、今回の初演出を受けます。新鮮。

ーー2年前は、ダレンさんの演出を受けることはできていたのでしょうか?

小西:コロナ禍の始まりの頃で、稽古期間中に「このタイミングを逃したら、オーストラリアに帰れなくなるかもしれない」という状況になってしまい、帰国されました。だから途中まででしたね。

ーー今、2年前の話が出ましたが、中止が決まったときはどのようなことを思われましたか?

小西:周りがどんどん中止になっていったので、やっぱりなという思いもありました。その2ヶ月前まで出ていた舞台は最後まで上演できたのですが、その頃からどんどん事態が悪化して行き、「本当にできるのかな」という思いは常にありましたね。

村井:稽古しながら、少しずつ感じていたね。できるかな、どうかなと。

小西:中止が決まったのは、もう次の日に劇場入りというタイミングでしたから「ここで来てしまったか」という感じでした。

ーー村井さんは、これまでのキャリアの中で舞台も映像も、たくさんの現場を経験されていますが、このような形での中止というのは、初めてでしたか?

村井:初めてでした。でも今の方が、2年前よりも状況はひどいです。

小西:ダレンさんが、日本に来られているのも奇跡ですよね。

村井:こんな状況では、台本を読んでいても、気もそぞろなところがあります。

小西:みんなそうですよね。気持ちをなかなか、乗せられなくて。でも、日本に来て、ものを創ることが大変なこの状況の中、ダレンさんがオーストラリアから来てくれていて。そのことそのものもそうですし、彼が作品に対してとてもピュアな気持ちでディレクションしている姿や、直接かけてくれる言葉を聞くと、ポジティブなエネルギーが出てくるんです。モチベーションを上げてくれる言葉をたくさん言ってくれたり、細かいテクニカルな部分は、ダレンさんが合流する前に、それぞれが事前に作り上げる力があると信じてくれているところがあったり。

物語のベースは旧約聖書なので、ストーリーは結構ハチャメチャです。でも、全編通して音楽が多彩でパワフルなので、楽しい気持ちになってもらえる作品なんです。そしてそれをただ「楽しいぞ!」って演るのではなくて、「この作品を今やる意味」を、ダレンさんは1曲1曲に持たせてくれるんです。ダレンさんの言葉が、前回よりも刺さるなと思うこともあります。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、稽古しながら今思うこと、ダレン・ヤップさんの演出について、この作品の音楽について思うことなどを伺った内容など、インタビュー前半の全文を掲載しています。4月7日(木)掲載予定のインタビュー「下」では、音楽や演出のこと、これまでに共演経験もある村井さんと小西さんならではのお話、村井さんが「言葉」について考えられていること、カンパニーのメンバーの素晴らしさやお客さまへのメッセージについて伺った内容など、インタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■村井:ダレンさんが「信仰のことを考えてみて」と。僕は演劇の神様に祈ります

■小西:キリスト教に馴染みのないお客さまには、故郷や家族に置き換えられると

■村井:「どんな夢を持ってもいい」という歌詞があって。これがとても素晴らしい

■小西:ロイド=ウェバーさんの初期の作品。最初に音楽を好きになったときを思い出した

<ミュージカル『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』>
【東京公演】2022年4月7日(木)~4月29日(金・祝) 日生劇場
【愛知公演】2022年5月5日(木・祝)~5月7日(土) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
【大阪公演】2022年5月12日(木)~5月16日(月) オリックス劇場
公式サイト
https://www.josephthemusical.jp/

『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』 関連記事:

⇒すべて見る

村井國夫 関連記事:

⇒すべて見る

小西遼生 関連記事:

⇒すべて見る

※村井國夫さんと小西遼生さんのサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは5月8日(日)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

※ここから有料会員限定部分です。

■村井:ダレンさんが「信仰のことを考えてみて」と。僕は演劇の神様に祈ります

村井:ダレンさんから我々にメールが来たんです。「信仰のことを考えてみてください」と。八百万の神という考え方が日本にはあり、仏教の教えともまた違うところがある。信仰という字が表す、「信じて仰ぎ見る」という習慣が、聖書を元にというところとはまた違うなと思ったので、彼のメールを受け取った時に考えましたね。

「俺は、何を信じているのかな」と。でも、思い返すと、僕自身、舞台に立つときは、演劇の神様のような存在に「お願いします」と心の中で祈ります。祈って、演じる。つまり、舞台が僕にとっては信仰なんですよ。自分が生かされている中でやってきていることは、舞台をいかに、自分が信じるように演じられるかということなんです。

まあでも、物語は本当にハチャメチャなところがありますしね。僕の役も、すごくいい加減でダメな親父だから。

ーーひとりを溺愛するわけですよね。

村井:絶対にやっちゃいけないことをやってしまい、人の心に嫉妬を生み出して。嫉妬して、敵視して、裏切りがあって、また出会って。そして許しがあって再生する。最後には、希望を。そこをうまく表現しなければと思っています。

■小西:キリスト教に馴染みのないお客さまには、故郷や家族に置き換えられると

小西:この前、ダレンさんがすごくいい話をしてくれたんです。聖書には、「約束の大地」とか「約束の場所」という言葉がよく出てきます。宗教的にこの言葉の意味を考えるととても難しいのですが、ダレンさんは「約束の場所と言われたら、あなたはどこの大地を思い出しますか」と問いかけてくれたんです。みんな大体「自分の故郷」だと答えたんですよね。

村井:そうだね。

小西:ダレンさんは、2年前の話もしてくれて。あの時に帰国しなかったら、「自分の生まれ故郷」に帰れなくなると思ったと言っていました。改めて、生まれ故郷というものが、自分の人生の終の場所というか、約束の場所としてあるということが、生きていく中で一つの土台になっているということです。

この作品には、そういう風に捉えられる言葉や曲がたくさんあるんです。この作品をつくるにあたって、宗教的なことについて考えるのは、演じる側の義務だと思います。でも、それをキリスト教に馴染みのないお客さまに届けるとなると、「故郷」や「家族」という、みんなが身に覚えのあることに置き換えられるということをダレンさんが教えてくれるんです。そういうことが、僕らにとってもこの作品をつくるモチベーションになると感じています。

ーーモチベーションですか。

小西:「2年前に中止になったこの作品を、今回上演できることへの思い」について、インタビューの時に聞かれることが多いのですが、正直「いや、今の方が大変だ」と思うんです。この2年間、舞台に立つことは出来てるけれど、やはり以前と比べると、今は、純粋に作品に向き合うのが難しいです。

村井:恐怖の中で準備しているからね。

小西:そうなんです。来てくださるお客さまも、以前のように、手放しに日常の喜びや楽しみとしていらっしゃっているかというと、覚悟がいる状況なのだろうなと思います。笑って欲しい作品でも、客席やロビーでは「話さないでください」と言われてしまうと、声を出して笑いづらい状況じゃないですか。純粋に感動してもらいたいけど、窮屈な状況だろうなと。

ダレンさんの言葉を聞いたり、実際に稽古をしていくと、やっぱり僕は芝居をすることや舞台に立つことが好きだなって思うし、今までは、ふわっとしていたことにも、答えを見つけながら進むことで、前よりも意義を感じる瞬間もあります。でも、一方でやはり難しい状況だなあとも感じます。

■村井:「どんな夢を持ってもいい」という歌詞があって。これがとても素晴らしい

ーー村井さんは、いかがですか?

村井:今、この作品を上演することの意味は、やはり考えねばならないと思うんですよ。我々はなぜ、ここまでして上演しようとし、なぜ、この場に参加しているのかと。今、世界の状況は、日本も含めて良くないですよね。どこかで、「夢」を持たないとやっていけないと思うんです。ジョセフの最初の歌に、「どんな夢を持ってもいい」という歌詞があって。これがとても素晴らしい歌で、心に沁みるんです。どんな夢でも、小さな夢でもいいから、持って欲しいなと思います。僕自身は、舞台に立つことが夢なんです。これまでに何回も、病気で倒れたりもしてきましたが、こうやって生かされた命で、舞台に立てることが何よりも喜びです。そうした思いをモチベーションにしています。

■小西:ロイド=ウェバーさんの初期の作品。最初に音楽を好きになったときを思い出した

ーー音楽や作品そのものについては、どのように思われていますか?

小西:タイトル通りに、とても色彩豊かな作品です。曲ごとに、全然違う色のオンパレードなんです。稽古場では、自分が出ていないシーンを見ていても、どの曲もすごく心が躍るんですよ。

ーー心が躍るのですね!

小西:物語の内容は、嫉妬や怨恨、えげつない部分もあるんですけど。楽観主義的なジョセフがいて。周りは、彼が寵愛されることをすごく恨めしく思っているんです。彼の兄弟や、連れ回された先の人々が、次々にジョセフをおとしめていく話でもあるのですが、音楽が、聴いていてずっと楽しいんですよ。しかも、スピード感があるので、色もコロコロと変わっていき、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

そしてジョセフが歌う曲を聴けばきっと心が動くと思います。ミュージカルとして、原石的なものを感じる作品であり、音楽もロイド=ウェバーさんが熟成される前の時期にできた作品なのだなと感じます。

僕自身も、初めて音楽を好きになったときのことを思い出しました。音楽への無垢な好奇心。この作品の音楽にはそんな初期衝動の純粋さのようなものを感じるんです。もし物語を全て追いきれなくても、音楽で楽しめちゃうなというくらいに、音楽の力が強い作品だと思います。

※村井國夫さんと小西遼生さんのサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは5月8日(日)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

Follow me!

“「音楽への初期衝動の純粋さを感じる」、『ジョセフ…』村井國夫・小西遼生対談(上)” への 6 件のフィードバック

  1. ぽち蔵 より:

    村井國夫さんと小西遼生さんという貴重な対談をありがとうございます!
    この困難な状況下でも舞台に立って下さることに感謝です!
    2年越しの開幕おめでとうございます!!

  2. ロゼ より:

    ここでしか視られない組合せの対談、とても興味深く、楽しく読ませて頂きました。
    自由に深く話をされていて約束の大地のこととか、お稽古の事とか。
    二年越しの初日を迎えられてよかったと記事を読みながら思いました。
    後編も楽しみにしています。

  3. しゃおちゃん より:

    二年越しの開幕おめでとうございます。
    二年越しに観劇できるの楽しみです。

  4. りなこ より:

    2年越しの幕開け本当におめでとうございます!
    村井國夫さんも、病気から回復されて本当に嬉しいです。
    毎日、どす黒い出来事で、自分の気持ちも暗く染まりがちですが、カラフルで、ハートフルなこの舞台が開幕されて、本当に良かったと思っています。
    観劇の日を心待ちにしています🎶

  5. にょん より:

    2年越しの想いの詰まった作品、期待に胸が膨らみます。次の記事の公開も楽しみにしています!

  6. k より:

    観劇がますます楽しみになりました、続きも楽しみにしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA