今年も年の瀬、猫が恋しい季節になった。猫を抱っこしたくても……という我が家に変化が起きたのは9月。新たに我が家にやってきた兄弟猫について、そして彼らがやってきて変化した、猫たちの様子を綴る。
トラちゃんを通して知り合った猫友達たちとは、トラちゃんが死んだ後も、よく会い、猫話をする。2015年5月11日。その友人からのメールで、仕事場近くに子猫が生まれていることを知った。ちょうど、食事の約束をしていた友人たちと子猫たちを見に行くと、母猫と3匹の子猫が、空き家の裏で眠っているところだった。
子猫に出会ったのは久しぶりで、たまに足を運ぶようになった。成長してくると、それぞれ個性が出てくる。茶トラ白の雄猫2匹と、キジトラ白に茶色がまじった雌猫1匹。白が多い雄猫は人間がやってくると近くまで会いにくる子だった。寝ていても起きてご挨拶。ノラ猫とは思えない程人間に慣れていた。
美猫のお母さんの子供たちは、みんな可愛い。私のように会いにくる人や、近所の人にも可愛がられ、食事には困っていないようだった。空き家もあったので、寝床もあり、のびのびと育っていった。
そのファミリーに出会って、およそ4カ月が過ぎた頃、お母さんと雌の子猫がいなくなったが、しばらくしてお母さんはさくら耳(避妊手術をした猫の耳をカットしてわかるようにする)になって戻ってきた。雌の子猫は帰ってこなかったので、そのまま保護されたのだろうと思った。残った兄弟二匹が道路で遊びながら全力疾走するようになったのを見て、一抹の不安が頭によぎった。昨年死んでしまったご近所猫トラちゃんのように、車に轢かれてしまうのではないか……。さらに人に慣れすぎると危険も増える。それが「連れて帰ろうか」と思い始めたきっかけだった。
連れて帰りたいと思った理由はもうひとつある。一昨年急死した、うめ吉を思い出させる色合いだ。茶色よりも濃い、オレンジがかった毛の色が似ていた。母に何度も写真を見せたり、話したりして、ようやく連れて帰ることに同意してもらった。人間が大好きで抱っこも出来る、白が多い方の子猫はいつでも捕まえられたが、もう一匹の子猫は警戒心があった。
ある夜、二匹を連れて帰ろうと思い、友人に手伝ってもらって捕獲を試みた。白が多い方の子猫はすぐに捕まって、膝の上のキャリー中でゴロゴロ言う程。しかし、もう一匹の子猫は、捕まえようとするとすり抜けて逃げてしまう。そして、「捕まえた!」と思ったら、後ろ足で蹴飛ばされて右手首をざっくり……。この時の怪我は、治るまでに2カ月近くかかり、野良猫を甘くみたらダメだなと思わされた。先に白が多い方の子猫だけでも保護しようかとも考えたが、その子を連れて歩き始めると、もう一匹が心配そうに付いてくる。これは引き離せないねと、一度戻すことにした。
出直すことになった捕獲作戦。近所の方に聞くと、世話をしているボランティアの方がわかり、協力して頂くことになった。さすがプロ。その翌日には二匹を捕まえたという。そして、9月21日、2匹は我が家へやってきた。色んな方にお話を伺ったおかげで、おそらく2月末〜3月半ばあたりに生まれていることもわかった。
うめ吉が2匹になって帰ってきたようだった。秋の果実の名前にしようと、色が似ていて響きもかわいい「ゆず」と「びわ」に、うめ吉の弟たちのようなので、「吉」も使いたい。一見、どちらがどちらかわからないかもしれないが、白と茶色の分量と顔つきが全然違う。インスピレーションで、白が多い方に「ゆず吉」、茶色が多い方に「びわ吉」と名付けた。
ふたりが持ち込んだたちの悪い風邪が悪化し、入院、通院で先住猫たちも巻き込んだ大騒動になった。全員元気になって、今は猫たちの新しい関係が築かれている。その詳細は有料部分に書かせて頂くが、特に嬉しい誤算があった。ぽんずとゆず吉&びわ吉が仲良く遊ぶようになったこと。ぽんずにはじめてのお友達ができたのだ! なんだか感動……。
我が家に来て、のびのび暮らすゆず吉とびわ吉。外にいた時は、必ず身を寄せあって寝ていたが、お腹を出して、バラバラに寝るようにもなった。身を寄せあわなければいけない危険や心細さがないのだろう。
保護されたときにボランティアさんのところでハンモックを覚え、好きだというので我が家でも買ってみた。今は成長して、2匹一緒だと耐荷重を超えてしまうのに、折り重なるようにして使っている。
天真爛漫なゆず吉はいつも楽しそうに過ごしている。やんちゃすぎて家を傷だらけにするのが玉に傷だが、愛らしい表情にも癒される。
慎重なびわ吉は、慣れて人間に甘えてくるようになった。部屋の隅に隠れていた子に、べったりと甘えて来られると、そのギャップにメロメロになる。
ふたりともノラ猫出身とは思えないほど飼いやすく、爪を切るときもあまり抵抗せず、薬を飲むのも上手。抱っこも大好きだ。「うちの猫たち抱っこできない……」という欲求不満は、ゆず吉とびわ吉によって解消された。
外の楽しさはなくなってしまったけれど、家の中で暮らす安心を手にしたふたり。猫の幸せは色々だけれど、我が家に来てくれた子たちが楽しく暮らしてくれたら嬉しい。
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我が家にやってきた日から、ゆず吉は余裕綽々だった。ゲージの周りを平気で探検してまわり、好奇心いっぱい。対称的に、びわ吉はゲージの中のトイレの隅に小さくなっていた。その夜、ゆず吉がくしゃみをしはじめた。動物病院でなんの異常もなかったのになと思っていると、翌日から、びわ吉も、隣の部屋にいたぽんずまで体調を崩していった。結局、3匹は順に入院。政宗も通院。唯一、すももだけは平気だった。
全員が病気を治し、元気になってくると、ゆず吉とびわ吉は場所にも慣れてはしゃぎはじめ、他の猫たちと対面した。そうなっても、ゆず吉はやはり余裕で、ぽんずにちょっかいをかけることも。警戒心の強いびわ吉は、近づいてくるぽんずに「シャー」と叫んでいた。
ところが、1カ月ほど経ったある日、ぽんずがふたりと走り回っていると母からのメール! ぽんずはひとりで育ってきたからどうコミュニケーションをとったらいいのかわからなかったのだ。いつまでも子猫のような彼は、遊びたかったのか……。ゆず吉とびわ吉に「ぽんずと遊んでくれてありがとう」と感謝した。それからは3兄弟のように一緒に遊び、過ごしている。
対して、すももは益々猫嫌いになってしまった。ぽんず程ではないにしても、走り回るゆず吉とびわ吉がうっとうしいらしい。ふたりが近づいてくると、「来るなよ」と声を出す。他の猫たちがいないところに行って、孤独を好んで過ごしている。もう少し、うまくつきあえるようになるといいのだけれど。
政宗は人間が大好きなので、気づくとべったりくっついている。ぽんずに追いかけられて迷惑していたのだが、ゆず吉とびわ吉が来たおかげで回数が減り、ほっとしているのではないだろうか。うまく共存しているようだ。
しゃらファミリーから保護猫たちに代変わりした今、あの頃のようなのんびりほのぼのとした猫生活ではなくなった。しかし、どんな猫も猫というだけで可愛い。私達家族も少しレベルアップしたような、そんな猫好き生活26年目である。
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※岩村美佳さんのエッセイ「私と猫たち」は、2016年からは月1回の連載として掲載してゆきます。岩村さんの知人と猫たちも紹介する予定です。お楽しみに。