沖縄の小さな村「高江」が大変なことに、全国各地で緊急抗議行動

「大阪府警は機動隊を高江に送るな」と抗議する人たち=2016年7月19日大阪府警本部前で、撮影・松中みどり

およそ160名が住む小さな集落、沖縄本島北部にある東村の高江に、東京をはじめ、福岡など日本の各地から100人単位で機動隊員がやってきて、ヘリパッド工事に反対する市民をけん制し排除しています。美しい自然に囲まれ、子どもたちがのびのび暮らしている小さな村が、今、大変なことになっているのです。

沖縄のメディアが連日報道していることを、沖縄以外の人たちはほとんど知らない、知らされていない。でも、これは沖縄だけの話では決してありません。この国の政治が何をしようとしているのか、私たち全員の未来についての話です。高江や辺野古で今起きていることを知り、それぞれの場所で何ができるかを考えてみたいと思います。前回の記事(「東村高江ヘリパッド建設に政府が機動隊500人投入へ、沖縄知事ら「強圧的」と批判)と合わせて、ぜひ、お読みください。

■警視庁、大阪府警、京都府警の庁舎前で緊急抗議行動

2016年7月19日、「警視庁機動隊は沖縄・高江に行くな!」緊急抗議行動が、東京、大阪、京都で開催されました。東京では警視庁、大阪では大阪府警、京都では京都府警に対して機動隊派遣に関する抗議が行われました。

「大阪府警は機動隊を高江に送るな」と抗議する人たち=2016年7月19日大阪府警本部前で、撮影・松中みどり

「大阪府警は機動隊を高江に送るな」と抗議する人たち=2016年7月19日大阪府警本部前で、撮影・松中みどり

7月19日、私は7時少し前に大阪府警前に到着。夜の7時はまだ明るく、大阪府警の大きな建物の前に少しずつ人々が集まり始めていた頃です。まだ20名に満たないこちらの数よりも多い警察官が出てきて、横断幕の置き場所や抗議する人の立ち位置を指示しはじめ、その横暴さに抗議する人と警察の間で緊張が走る場面もありました。しかし、だんだんと市民の数が増え、あくまで平和的に自分たちの思いを訴えたいと申し入れて、場が落ち着いていきました。80名を超える人たちが、アピールをしました。

「大阪府警は大阪できちんと仕事をしなさい!」

「沖縄の人が何を守ろうとしているのか、何を訴えているのか分かっているの!?」

「わたしたちの税金を使って高江や辺野古に行くことは許さない!」

2016年7月19日大阪府警本部前にて=撮影・松中みどり

2016年7月19日大阪府警本部前にて=撮影・松中みどり

「NO WAR」の手製プラカードを掲げて抗議=2016年7月19日大阪府警本部前で、撮影・松中みどり

「NO WAR」の手製プラカードを掲げて抗議=2016年7月19日大阪府警本部前で、撮影・松中みどり

制服を着た、強そうな警官たちがたくさん出てくると恐いです。沖縄の高江や辺野古では、もっと圧倒的な数の差をもって住民や応援に駆けつけた人たちを弾圧しているのかと思うと、胸がふさがれる思いでした。

■シュワブゲート内に「なにわ」ナンバーの機動隊の車両が

心をこめた必死の訴えにも関わらず、大阪の機動隊車両が沖縄辺野古に行ったというニュースが入ってきました。

沖縄・高江の様子=写真提供・川口真由美さん

沖縄・高江の様子=写真提供・川口真由美さん

沖縄・高江の様子=写真提供・川口真由美さん

沖縄・高江の様子=写真提供・川口真由美さん

ヘリパッド工事を止めたいと座り込む沖縄の人々と、機動隊員=写真提供・川口真由美さん

ヘリパッド工事を止めたいと座り込む沖縄の人々と、機動隊員=写真提供・川口真由美さん

『7月20日午前、シュワブゲート内に入った機動隊の車両のうち「なにわ」ナンバーなど、大阪府警の機動隊車両が確認されました』(琉球新報辺野古・ヘリパッド問題取材班→https://twitter.com/henokonow

これを受けて7月20日も引き続き、大阪府警前で抗議活動がおこなわれ、沖縄の人たちへの連帯や応援の気持ちをこめて再び声をあげました。急な呼びかけにも関わらず、30名ほどが集まって、大阪の警察が沖縄まで出て行くことへの抗議と、止められなかった悔しい思いを訴えました。

■国王の上京を迫り、琉球国を廃した「琉球処分」(1879年)では、警官・兵士およそ600人が沖縄に

明治時代、「琉球国」を廃して「琉球藩」にすることや琉球国王の上京などを迫った明治政府は、1879年、命令に従わない琉球に対し、警官、兵士およそ600名を派遣して武力的弾圧をおこないました(⇒詳しくはこちら)。「琉球処分」と呼ばれるものです。今回の機動隊派遣は、それになぞらえたくなるほどの規模の大きなもの。暴動が起きているわけでもなく、テロリストが潜んでいるわけでもない沖縄の過疎の村に、他県からの応援も集めていったい何をしようとしているのでしょうか。

■沖縄の2紙は連日詳しく報道、SNSやブログ、ウエブニュースサイトでも記事が続々

ファイスブックやツイッターなどのSNSやブログ、ウエブニュースのサイトでも連日沖縄高江の記事があがっていますし、沖縄の二紙はさすがに詳しく報じています。

米軍北部訓練場(国頭村、東村)内でヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設工事を再開するため、政府は19日、配置する機動隊員をほぼ倍増する。これまで県警が1日約60人程度で警備していたが、19日から本土の応援隊員を現場に投入。県警と合わせ、1日当たり百数十人規模で警戒に当たる。建設現場の一つである東村高江のN1ゲート前に市民が車両を置いているため、N1にも隊員を配置し、車両の強制撤去を視野に入れる。(沖縄タイムスプラス2016年7月19日記事より)

東村と国頭村にまたがる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設工事に関し19日、警察は訓練場の各ゲート前を通る県道70号の東村側の少なくとも2カ所で一時的に検問を行った。11日に沖縄防衛局が資材搬入を開始して以降、現場周辺で警察が組織だった車両検問を実施するのは初めて。識者からは「市民の日常生活に干渉し、行動を規制する警察権の乱用だ」と指摘する声が上がっている。(琉球新報2016年7月20日記事より)

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■他県から派遣されてきた機動隊員のことを生々しく描いた「沖縄撮影日記」
■TBSの番組「ニュース23」が20日に高江のレポートを8分間報道、全国の人が沖縄の状況を目に
■21日の高江での抗議集会には1,600人が参加、政府は22日早朝にも一帯を封鎖へ
■IWJが緊迫した21日深夜の「ゲート前」の様子を生中継、7月21日深夜までに19,259人が視聴

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■他県から派遣されてきた機動隊員のことを生々しく描いた「沖縄撮影日記」

映画監督でジャーナリストの三上智恵さんの「沖縄撮影日記」には、他県から派遣されてきた機動隊員のことが生々しく描かれていました。

今日(19日)は、高江にやってきた関東や九州の機動隊が、ヘリパッド工事現場の手前で検問をする態勢に入った。反対派の市民を現場に近づけないために、現場の南北数カ所で片側を通行止めにし、「免許証を見せて下さい」とやり始めたのだ。

「ここは県民の生活道路だ!なんの権限があって県外から来た君たちが道をふさぐんだ?」

激怒したリーダーの山城ヒロジさんは機動隊にくってかかる。任務初日、まだ肌の色も白い。土地勘もない機動隊員が戸惑いながら、博多弁丸出しで声を掛け合っていて、なんとも拍子抜けする。

「私たちがなんで反対しているのか、あなたたちに解るの? どんなくやしい思いをしてきたか解るの? 解らないのに来ないでちょうだい!」

「お前らの故郷がめちゃめちゃにされたらどうする? 国の言うことは正しいですって故郷の連中を押さえ込むのか?」

うなずきながら話を聞く機動隊員。「そんなつもりはないです」、と唇を震わせていた人もいた。ひどい現場に来てしまったと顔を強ばらせている若者たちは、しかし指示を受ければ強制排除に入る。

福岡出身で、長く沖縄に住んでいる男性が叫んだ。

「きさんら、なんしにきよったんか! 恥はないんか? こげん仕事して!」(マガジン9 三上千恵さん記事「全国の機動隊、高江へ~22日にも着工か~」より)

各地から入っている警察関係者や、警備にあたっている沖縄防衛局職員の人たちは、詳しい事情も知らされずただ命令のままに働いているようです。抗議に参加しようとやってくる市民の車を止めて検問。市民がゲートの前に停めた車の間で3交代24時間の警備。暑さの中で、訳も分からず、本来は自分たちが守るべき市民から口々に文句を言われる立場は辛いことでしょう。

子どもたちがオスプレイの音で眠れなくて学校に行けなくなったと訴える女性や、沖縄戦を血のまじった水をすすって生き延びた女性や、大病を克服して抗議運動のリーダーを務める男性の言葉を、どう聞くのでしょう。高江は、誰が倒れてもおかしくない消耗戦を強いている責任者、安倍総理大臣は、7月24日まで山梨の別荘で夏休み中だそうです。

■TBSの番組「ニュース23」が20日に高江のレポートを8分間報道、全国の人が沖縄の状況を目に

そんな中、うれしいニュースもありました。2016年7月20日、TBSの番組「ニュース23」が高江のことを報道したのです。全国ニュースでは本当に珍しいことで、多くの人が初めて今、沖縄の小さな集落で起きている状況を目にしたことと思います。

「辺野古と思われるかもしれませんが、ここは東村高江という別の場所です」と、機動隊と市民がもみ合う様子が映り、座り込み現場でおなじみの「座り込めここへ」の曲が流れました。高江住民の方のインタビューもあり、およそ8分間のレポートでした。他の番組や沖縄以外の新聞がやらないことを、とうとうやってくれたと思います。このような良い番組にはぜひ励ましのメッセージを送って、番組をより良いものに成長させることが必要です。こういうニュースがもっと見たいですと、ぜひ声を届けて下さい。ご意見・お問い合わせはこちらまで→ http://www.tbs.co.jp/contact/

■21日の高江での抗議集会には1,600人が参加、政府は22日早朝にも一帯を封鎖へ

2016年7月21日午後2時、高江では1000人規模の「オスプレイパッド建設阻止緊急抗議集会」を呼びかけ、なんと1600人が集まったというのも心強く嬉しいニュースでした。選挙でもはっきりと示された沖縄の民意は、「これ以上基地負担はしない」「高江にオスプレイパッドを作らせない」というものでした。自民現職の島尻安伊子沖縄担当相を圧倒的な票差で破って当選した伊波洋一さんも参加、力強い声をあげました。

それなのに、翌7月22日の早朝からヘリパッド建設に向けて高江に向かう県道70号に検問をもうけ、一帯を封鎖、建設に反対するためゲート前に駐車している車を一斉に撤去するというニュースが報じられました。

沖縄県国頭村と東村にまたがる米軍北部訓練場でのヘリパッド建設に向け、政府が22日早朝から県道70号の複数箇所に検問を設置して一帯を封鎖し、建設に反対する市民らがゲート前に駐車した車両などを撤去する方針を固めたことが20日、分かった。また沖縄防衛局は着陸帯建設の工期を1年1カ月から6カ月に短縮する方針で、ゲート前で座り込む市民や車両などの強制排除を図る一方、工期短縮のためゲートを使わずに建設資材などをヘリコプターで「N1」地区近くに搬入することも検討している。(琉球新報2016年7月21日記事より)

昼間には1600名を数えた市民も、夜には引き揚げます。これまでも、人が少なくなった時間帯をねらって、機動隊が反対して座り込む人たちを排除、工事車両を入れるというやり方がおこなわれてきたのです。

■IWJが緊迫した21日夜の「ゲート前」の様子を生中継、7月21日深夜までに19,259人が視聴

そしてあろうことか、車両を移動させるための前段作業として、7月21日19時30分、 「駐禁」の看板を機動隊が立て始めたので、抗議のため座り込んだ人を、機動隊の車がひいてしまったというのです。腰を痛めた人を道の横に避けさせただけで、そのひいた車が行ってしまったという情報がSNSで入ってきました。

IWJ_okinawa1 (@IWJ_okinawa1) さんの「沖縄・高江 ゲート前中継」より=2016年7月21日深夜、ツイキャスの画面から

IWJ_okinawa1 (@IWJ_okinawa1) さんの「沖縄・高江 ゲート前中継」より=2016年7月21日深夜、ツイキャスの画面から

IWJ_okinawa1(http://twitcasting.tv/iwj_okinawa1)さんが、高江に泊まり込んで、早朝の一斉撤去をやめさせようとしている人たちの様子を、ずっとネット配信してくれています。緊迫した状況を克明に伝えた2016年7月21日のツイキャスは多い時は2,000人近くが同時視聴し、同日午後11時50分までの累計視聴者は19,259人に達しました。

高江に行けなくても、気持ちは一緒に見守っていきたいと思います。たくさんの人の目が届き、監視の目のないところでひどいことが行われないようにいろいろな形で情報発信、シェアをしていきたいと思います。どうか高江を、辺野古を知ってください。

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