2017年3月、東京と大阪で劇団スタジオライフ『エッグ・スタンド』が上演されました。第二次世界大戦下のパリで生きるキャバレーの踊り子ルイーズと少年ラウル、レジスタンスのマルシャンの孤独を抱える三人の心情を静かなトーンで描いた会話劇で、少女漫画家・萩尾望都さん原作の作品を舞台化したものです。『エッグ・スタンド』公演初日が、人生初舞台の日からちょうど20年目の日だったという曽世海司さん。インタビューでは、劇団スタジオライフの俳優として20年を経た今の思い、公演の手応え、ルイーズ役との出会いで感じたこと、落語を経験して曽世さんの中で起きた面白い変化などについて、じっくりとお話を伺いました。※アイデアニュース有料会員3名さまに、曽世海司さんのサイン色紙と写真1カットをプレゼントします。また、6月の劇団スタジオライフ公演に、アイデアニュース有料会員20名さま(ペア10組)を無料ご招待します。詳しくはこの記事の末尾をご覧ください。
■スタジオライフの客席には、よそでは体験できない空気感がある
――『エッグ・スタンド』千秋楽を迎えました。約1カ月の上演を経て、何か手応えを感じていますか?
久しぶりの静寂の芝居だと思いました。物語の中ではドラマチックなことが起きる部分もありますが、そんなに笑いが起きる舞台ではありませんし、客席の皆様がひしひしと観てくださっていると感じました。食い入るように観て、せりふを耳ダンボにして聴いてくださっているのは僕たちにも伝わってきました。
――そういう観客のテンションは伝わるのですね。
特にスタジオライフの客席の空気感は、ちょっとよそでは体験できない。客演で他の劇団の舞台に出る機会もありますが、やはり違うように思います。お客様それぞれのベクトルがあるとしたら何十本何百本の矢がすべてザーっと舞台に向いている感じがします。ですから役者としては一挙手一投足、一語一句、ミスできないぞと気合が入りますね。
――今回の作品は、感情をあらわにするより、抑えるからこそ伝わるものがありました。
こちらが出し過ぎてしまうと、お客様との交流が生まれにくくなると思うんです。僕は特に役者としては感情過多になる場合があるので、抑える表現については稽古段階で随分明確に演出いただきました。それをダメ出しと言うんですけど(笑)。つい何かを表現したくなる役者は割と多いのですが、感情表現の削ったり足したりは、稽古段階で毎回、演出と役者のせめぎ合いですね。特に今回のようなデリケートな作品では、やりすぎは厳禁と肝に銘じながら、裸の心でいられるように心がけました。最終的には役者が素直な心で舞台の上にいるのが理想形だと思います。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、曽世さんが劇団の宣伝を担当していた時代から目指してきた「感じてもらう舞台」などについてうかがったインタビューの全文を掲載しています。5月2日に掲載する予定のインタビュー「下」では、スタジオライフが賛同している「サイレントスタンディング」の活動に参加しての思いなどについて語っていただいた内容を紹介します。
<インタビュー「上」有料会員限定部分の小見出し>
■ダイレクトな面白さや、分かりやすさとは違う「感じてもらう舞台」
■アクセルを踏まずに中速・低速で、それが今回の僕のテーマでした
■落語の間(ま)を演劇で試すと、自分の中で面白いことが起きる
■感情を決め込まないのは勇気が必要で不安です。そんな自分との勝負
<劇団スタジオライフ 今後の公演情報>
スタジオライフ公演『THE SMALL POPPIES ~スモール・ポピーズ~』
【東京公演】2017年6月15日(木)~7月2日(日) 新宿御苑 シアターサンモール
1980年代、オーストラリア、アデレード。小学校入学を前にしたクリントとテオとレップの物語。クリントは母子家庭、ママは恋人のエディと一緒になりたいけれど面白くないクリント。テオの一家はギリシャからの移民家族。通じない言葉の中で生き抜こうとしている。レップはカンボジアからの難民。姉のノイとたった2人、移民局の世話でアデレードに到着したばかり。みんな5歳の子供たち、彼からは新しい世界の入り口の前で不安や混沌の中にいる。5歳なりの親との葛藤、ウォルシュ先生との触れ合い、芽生える友情…。これといった強烈なストーリーはないが、数々のスケッチから「人と一緒にいるということ」が見えてくるDAVID HOLMAN渾身の戯曲。それぞれの役者が、5歳の子供役と親や先生など大人役を切り換えながら演じます。役者たちにとって面白いと同時に恐い作品です。(公式ページより)
公式ページ http://www.studio-life.com/stage/the_small_poppies2017/
<関連サイト>
劇団スタジオライフ http://www.studio-life.com/
劇団スタジオライフ公式ツィッター https://twitter.com/_studiolife_
スタジオライフ公式facebookページ https://www.facebook.com/studiolife1985/
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※抽選でアイデアニュース有料会員3名さまに、曽世海司さんのサイン色紙と写真1カットをプレゼントします。有料会員がログインすると、この記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは5月15日(月)です。
※抽選で有料会員5組10名様を、スタジオライフ公演『THE SMALL POPPIES ~スモール・ポピーズ~』公演のうち6月16日(金)19時公演(kangarooチーム)と6月20日(火)19時公演(koalaチーム)に、無料ご招待します(合計10組20名様ご招待)。有料会員がログインすると、この記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。ご招待の応募締め切りは5月15日(月)です。当選された方には、5月16日にメールでご連絡し、招待券(当日引換券)を郵送します。
※ここから有料会員限定部分です。
■ダイレクトな面白さや、分かりやすさとは違う「感じてもらう舞台」
――素直な心ですか。
そういえば昔、僕は藤原(啓児)さん(現・劇団代表)と共に劇団の情報宣伝を担当していたんです。出版社などを回るときに、スタジオライフのスの字も知らない方々にうちの作品を説明するのに「感じてもらう舞台です」と言っていたことを思い出しました。「ダイレクトな面白さや、分かりやすさとは違う舞台作りです」と、特にスタジオライフが萩尾(望都)先生の作品を上演させて頂くようになってからはよく言っていましたね。それが劇団のスタイルだと思うんですけど、僕たちは今もずっと、揺るがずにそこを目指しているのかもしれない。
今回の作品は特に、原作のせりふの美しさを味わっていただけるように、舞台セットも天井から吊り下げた輪のオブジェだけであえてシンプルなものでした。知り合いが観に来てくれて、「ルイーズ(曽世さんの役)の部屋の間取りが見えました」と言ってくれたのが嬉しかったですね。「屋根裏部屋に行って、ベランダに行く導線が見えた」と。お客様の方が自由に想像して、的確に構造を見てくださる。それと同じで役者もシンプルなポジションで舞台の上に立つと、お客様がいろんなことを想像できて感情移入しやすい。今回は久しぶりにそんなことを感じた作品と役でした。
――原点回帰のような感覚も味わったのでしょうか?
そうですね。芝居作りはこれぐらいシンプルにやれるといいなと思いました。僕はスタジオライフに入団して20年ですが、これまでにいろんなものがくっついて、それを捨てるのには結構、勇気が要る。そういう意味で、今回のルイーズはいい時にいい役を頂けたと思っています。
■アクセルを踏まずに中速・低速で、それが今回の僕のテーマでした
――捨てる勇気ですか。
出す表現は20年前でも今でもできますが、抑える表現は違います。役者は舞台の上で何もしないで立っているのが、怖い。それをいかに平気でいられる状態にするかの勝負で、つい何かしたくなるところを、アクセルを踏まないのが今回の僕のテーマでしたね。まだ踏みしろがいっぱい残っているけど、ずっと中速・低速で行っているような感覚。その方が役として成立しやすいし、お客さんも感情移入しやすい。同じことを入団時にも言われて頭では分かっているつもりでしたが、体現するのに20年前は無理だった気がします。
――抑えるということは、中に何かがあるから抑えられる。
演出家の倉田にも言われます。「無いんじゃだめ、出てくるものを抑えてほしい」と。
――曽世さんの中にあるものとは?
実体験と役柄の状況が結びつくことは、昔は面白いなと思ってやっていたこともありました。実体験の感情を役柄に投影したり、フィットさせたり、逆に実体験を使ったりする演技の手法があります。ですが最近は、舞台の上での相手役との間にある空気でいいや、と思うようになってきて、そこはあまり考えないですね。
■落語の間(ま)を演劇で試すと、自分の中で面白いことが起きる
――演じることのアプローチがどうして変わってきたのですか?
それは落語を経験してからです。僕は10年ほど前から落語をしていて、一人で、二人なり三人なりの会話をするときに、素敵だと思う噺家さんを見ていると、間(ま)があるんです。空間と、言葉を感じる間。僕も落語の中でその間を意識し、今度は演劇で試すと、面白いことが自分の中で起きるんです。
――面白いこと?
演劇だと相手役がいて、毎回同じボールを投げてくるわけじゃないので、せりふが一緒でもらうボールが同じでも、回転が違ったり、変化がかかっていたりすることはあります。それを確実に受け止めると、次の自分の感情がおのずと決まると感じ始めていた時期に、今回のルイーズという役に出会えた。昔はここでは喜んで、ここは悲しんでという風に決めていたような気がします。その方がちゃんと演じられるから。
■感情を決め込まないのは勇気が必要で不安です。そんな自分との勝負
――感情を分けていたということでしょうか?
説明ができる感情だったような気がします。ですが今は、喜・怒・哀・楽に線引きしなくてもいいと思い、今回のルイーズ役はそのボーダーを少しぼやかして感情の色を決め込まずに、個々の人と人との間にあるものを感じようとしていました。ここで嬉しくなるという風に決まっていた方が安心してそこに行けるんですけど、そうならないかもしれないという余地は残しておく。決め込まないのは勇気が必要で、すごく不安です。そんな自分との勝負でしたね。
――そんな繊細な感覚は、日常にも通じる部分はありますか。
日常でそれが出来るのは、いい会話をしている時です。ただ僕、普段は圧倒的に畳みかけて人にしゃべっていく方なので(笑)、あまり日常に応用できていないのですが。ただ相手としっかり会話をする時にはそうなりますし、喜怒哀楽がないまぜになった感情もありますね。
――日常ではむしろ、線引きできない感情の方が多いかもしれないですね。
なるべくそういう日常のリアルを舞台の上に乗せようとしているので、感情があらかじめ決まっていない方が面白いだろうなと思います。作品的に踏み外せない部分はありますが、一本レールの上に乗りながらでも冒険や遊びはできます。
※抽選で有料会員3名さまに曽世海司さんのサイン色紙と写真をプレゼントします。有料会員がログインすると、この記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは5月15日(月)です。
[contact-form-7 404 "Not Found"]※抽選でアイデアニュース有料会員5組10名さまを、スタジオライフ公演『THE SMALL POPPIES ~スモール・ポピーズ~』公演のうち6月16日(金)19時公演(kangarooチーム)と6月20日(火)19時公演(koalaチーム)に、無料ご招待します(合計10組20名様ご招待)。この下の応募フォームからご応募ください。ご招待の応募締め切りは5月15日(月)です。当選された方には、5月16日にメールでご連絡し、招待券(当日引換券)を郵送します。
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スタジオライフ、深夜にやっていたトーマの心臓。それを見たのが最初で。
なかでも曽世さんの姿を印象深く。のちに舞台で仲良くなった友人が曽世さんのファン!名古屋在だったので彼女にあわせて舞台をみるようになりました!
ライフの舞台は独特の世界観もあり、テーマが重いものがおおいですが
それでもまた観たいとおもわせる不思議な魅力があると思います。