2017年11月5日(日)に紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで開幕する、こまつ座第120回記念公演『きらめく星座』に出演する田代万里生さんインタビュー、後半です。有料部分では、演出の栗山民也さんからの宿題についてや、田代さんがゲスト出演されていた「『井上芳雄 by MYSELF』スペシャルライブ」で井上さんと歌われた『レ・ミゼラブル』の「心は愛に溢れて」などについて伺いました。
――久しぶりのストレートプレイはいかがですか?
今回の作品は、音楽劇でもありますし、厳密にいうとストレートプレイともまた違うかなと思いますが、稽古場はとても静かで(笑)。ミュージカルだとみんなダンスのカウントを取ったり、誰かしらが踊っていたり、誰かがピアノをずっと弾いていたり、音合わせをしていたりで、真逆の感じなんです。
――自分の座っている場所ごとに、それぞれの世界がある感じですか?
皆さん自分の内側に入っている訳でもないんですよ。また違うメンバーだったら、違う雰囲気かもしれないですが、みんな淡々と自分のことはやりつつ、コミュニケーションもとって、稽古が始まったらすっと家族の世界観に入るというのが、逆にすごく衝撃でした(笑)。やはり大先輩方が多いですし、ミュージカルだと若い世代同士でやることが多かったり、そういうシーンがあったりしますが、百戦錬磨の方々のやり方というか、信頼し合っている、確立されている人同士の進め方というのは、僕はここでしか味わえないので、とても勉強になります。
――その百戦錬磨の皆さんのお芝居を見て、衝撃を受けるようなところはありましたか?
今は稽古の初期段階ということもありますが、基本は一日一場ずつの稽古。最初にいきなり通し稽古をして、休憩後に1時間ほど机で全体ダメ出しをもらったら、「はい、今日は終わり」なんですよ。だから、チャンスが1日1回しかない。とてつもない緊張感の中、本番さながらの集中力が必要で、稽古時間は短いのに気づいたら稽古後は信じられないくらいの疲労感なんです。まさに「人生一度きり」みたいな舞台に、皆さん淡々ととてつもない精神力で臨まれています。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、「『井上芳雄 by MYSELF』スペシャルライブ」出演などについて伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■こまつ座の現場では、自分でもびっくりするくらいのものが出るときがある
■『井上芳雄 by MYSELF』スペシャルライブ、呼んでくださり本当に有難い
■「心は愛に溢れて」、芳雄さんは「え? ホントにやるの?」という感じで
■『きらめく星座』、帰りには、新しい日常の景色に気づいていただけたら
<こまつ座 第120回記念公演『きらめく星座』>
【東京公演】2017年11月5日(日)~23日(木・祝) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
作:井上ひさし、演出:栗山民也
出演:秋山菜津子、山西惇、久保酎吉、田代万里生、木村靖司、後藤浩明、深谷美歩、木場勝己、岩男海史、阿岐之将一
入場料:8,000円(全席指定・税込み) 学生割引5,000円
※上演時間:3時間予定(休憩込み)
公式サイト
http://www.komatsuza.co.jp/
<スペシャルトークショー>
11月 7日(火)13:00公演後 秋山菜津子・山西惇・田代万里生・木村靖司・深谷美歩
11月12日(日)13:00公演後 吉原毅(城南信用金庫 顧問)― 戦争の足音が聞こえる時代に ―
11月16日(木)13:00公演後【井上ひさし誕生日特別トークショー】辻萬長・木場勝己・久保酎吉・後藤浩明
11月21日(火)13:00公演後 いとうせいこう(作家・クリエーター)―「音楽」は「笑い」を連れてくる!―
※アフタートークショーは、開催日以外の『きらめく星座』のチケットをお持ちの方でも入場できます。
(満席になり次第、入場を締め切る場合があります。また、出演者は変更される可能性があります)
<同時開催『こまつ座のキセキ』>
第120回公演を記念して、こまつ座の33年間の軌跡を秘蔵の資料と共に展示。他では見られない貴重な資料を公開。『きらめく星座』公演期間中、劇場ロビーにて開催。
<関連リンク>
田代万里生オフィシャルWEBサイト Mario’s Toi Toi Toi!
http://fc.horipro.jp/tashiromario/
田代万里生オフィシャルブログ MARIO CAPRICCIO
https://ameblo.jp/mario-capriccio
- 「ミュージカルデビュー10周年、新たな気持ちで」、田代万里生インタビュー(下) 2019年1月8日
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- 「念願が叶った『シラノ・ド・ベルジュラック』」、古川雄大(下) 2022年3月31日
※田代万里生さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは11月16日(木)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■こまつ座の現場では、自分でもびっくりするくらいのものが出るときがある
――何度もやらないんですね。
だから、稽古はその1回に向けて、お客さんを今入れても大丈夫なぐらいの熱量でやっています。そこに自分も身を投じてやるというのは、とても勇気のいることですし、皆さんから頂いて、それを受けて自分から出るもの、自分ひとりだけでは出せないものがあると思います。そういうお芝居のやり取りの中で、自分でもびっくりするくらいのものが出るときがあるんです。こういう現場はこまつ座さんのここしかない、僕はこの現場でしか体験したことがありません。
――栗山さんとは何かお話されましたか?
栗山さんは口数が多い方ではないので、ダメ出しに関しても「これはこうなんだ」で止まるんですよ。そこで僕はその短い言葉のヒントの中から、ぐるぐるぐるって考えて。答えを教えてくださるというよりも、その道筋のヒントをぽんっと置いて、「じゃあ、また明日」という感じなんです。
――それを1日持っていて考える?
考えながら1日で消化出来ないものもあったり。山西(惇)さんも仰っていましたが、「前回の公演の後半になって分かった部分もある」と。先輩方でもそうなので、僕は常に考え続けています。「このシーンが出来た!」ではなく、最後の千秋楽まで考え続けることが必要なのかなと思いました。
――今、考え途中の宿題はありますか?
もうありすぎて(笑)! 具体的にどうというよりは、戦争のことを想像と調べたことだけで、正一として、自分の言葉として発しなければいけない。そこにリアルを出すのが一番難しいと思っています。栗山さんも「正一が発する言葉から、その戦争を体験した音を感じたい」と。「感情を感じたい」という言い方ではなくて「音が欲しい」と言われました。「発する言葉からその音を感じたい」とおっしゃるんですが、そこで「じゃあ、また明日」と言われるので(笑)。
――「音を感じたい」って難しいですよね?
だからといって、声色を変えるという意味では絶対にないだろうし。
――ある日、「音が聞こえた」というところを、今、目指しているんですね。
そうですね(笑)。
――抽象的ではないですが、難しい命題のようですね。今、「調べたこと」と言いましたが、今回の作品において具体的に調べたことは何ですか?
歴史関連はもちろんですが、ひとつは井上麻矢さんから頂いた“寅さん”の本を、再び読んでいます。正一は、家に帰って来て「元気にやっているかい」「幸せにやっているかい」と言ったり、家族をあやしたり、天真爛漫なところがありつつ、でも不器用なところもあり……。井上ひさしさんも“寅さん”を意識している部分があるそうです。そうおっしゃって、麻矢さんが前回5冊程リボンをかけてプレゼントしてくれたんですよ(笑)。ピンクのリボンで(笑)。
――(笑)。
名言集やエッセイでした。3年前にも読みましたが、今回も全部もう1回読みました。もちろん正一と全く同じではないんですが、心のベースという意味では1度目を通しました。あとは、昭和15、6年ごろの実際の写真集も以前より集めやすくなっているので、もう少し実際に見たりして、よりリアルに感じられるようにしています。さらに、当時の歌ですよね。この舞台でも流れる色々な音楽は、古い曲でもさまざまな方法で聞くことができます。資料として初めに聞いたものとはまた違う歌手が歌っている曲や、子どもの合唱団が歌っている曲など、その音から入るという意味では音楽を聞いて、たくさんプレイリストを作って、あの当時の年代の音楽を並べて、気持ちをその時代にタイムスリップさせていくというのは、他の作品もそうですが、よくやっていますね。
――ミュージカルではないですが、曲が多いから同じ方法論がとれる?
そうですね。先日『グレート・ギャツビー』をやったときも、1920年代の曲をずっと聴いたりしていました。
――家でずっと聴くんですか?
家も聴きますし、楽屋でも聴きますね。『エリザベート』だったら、当時のフランツ・ヨーゼフのために書かれたシュトラウスの音楽を聴いたり。「この曲を実際に聴いていたんだ」と思うと、やはり音楽から感じられることもたくさんあると思うので。
――「音」は大事なんですね。
■『井上芳雄 by MYSELF』スペシャルライブ、呼んでくださり本当に有難い
――最近の話をお伺したいのですが、田代さんがゲスト出演されていた「『井上芳雄 by MYSELF』スペシャルライブ」に伺いました。見応え聴き応えたっぷりで、大満足のコンサートでしたが、規模も大きくて。
会場のお客さんは5,000人くらいで、さらに全国17ヶ所映画館で動員していましたから。
――トップを走っていかれる方の力を間近でご覧になったみたいな。
そこに関わらせて頂いて、呼んでくださったのは本当に有難いです。
――井上さんも、「もう準レギュラー」と言っていましたね(笑)。
そうでしたね(笑)。嬉しいです。
――『グレート・ギャツビー』の「夜明けの約束」はきっと歌われるだろうなと思いましたが、やはり『レ・ミゼラブル』の「心は愛に溢れて」がとても衝撃的でした。私、2階席の上の方で観ていたので、どうしてもモニターを見ちゃうんですね。
モニターがあったんですか?
――大きいホールなので、舞台の両サイドにモニターがあって、映像が映るんです。
そうなんですね。映画館で流れているような?
――そうです。お客さんはオペラグラスを使って観ないで、結構モニターを観ているんですね。そうすると、2人がアップになるんです。だから、そのモニターを見ると面白くて(笑)。もちろん歌は素晴らしいんですが、そのギャップがたまらない。
どんな感じだったんだろう? 観てみたい(笑)。
――お二人で歌われて反響などはいかがでしたか?
以前、ラジオでやった時も、すごく反響があったんです。元々ステージでやる予定はなかったので、ラジオだからこそ、顔がお客さんに見えないから「やってもいいよね?」ということでしたが、実際いきなり5,000人の前でやるという(笑)。しかも、いざ歌うとなると坊主になっていて(笑)。
――しかも、帽子取っちゃいましたね(笑)。
別に坊主を見せるのが嫌だった訳ではないんですが、どうせ見せるんだったら「来るぞ、来るぞ、来るぞ!」という最高の場所でやりたいと思ったのが、あそこだった。前日にオケ合わせをやったときに、何となくそこでやってみて、「ここだな」というのが分かって、やらせて頂きました(笑)。
■「心は愛に溢れて」、芳雄さんは「え? ホントにやるの?」という感じで
――なるほど。
よくあれで芳雄さんが笑わないで歌いましたよね。マリウスとして歌いきったなと思います(笑)。
――エポニーヌ役の真瀬(はるか)さんの戸惑った感じがまた……。
全く僕ら2人の世界に入り込めないという感じが、また良かったんじゃないかな(笑)。
――まず、あの曲をラジオで最初にやろうと思ったのは?
「デュエットをやろう」ということになって、男性同士のデュエットって意外にあまりないですよね。僕や芳雄さんがよくやるのは、『エリザベート』の「闇が広がる」などですが、「ちょっとありきたりだよね?」という話もあって、男女こだわらずにいい曲はないかと探していたんです。僕は恐らく初めて歌う曲になるので、芳雄さんにも初めての曲にしようというのがまず一つ。そして、僕達はルーツが音楽大学なので、クラシックがベースの楽曲にしようと。そこで、何曲かに絞られてきて、女性パートを僕が歌うとしたら、キーの問題があって変調が必要になる。でも、僕がキーを変えると、芳雄さんの男性キーも変わってしまうのは問題なんですね。そうなると、移調しなくていい楽曲で選び、クラシカルで、しかも台詞歌の掛け合いもありつつ、一緒にハモるところもある曲……となると、あの曲しかないんです(笑)。
――絞って、絞っていった結果なんですね。
あとは、芳雄さんのコンサートなので、芳雄さんのマリウスを絶対にファンの方は観たいだろうと。芳雄さんは「え? ホントにやるの?」という感じでしたが、嫌とは全く言わずに、「万里生がやりたいんだったら、いいよ」と、言ってくれました(笑)。あの2曲をやるのは僕も楽しかったですし、お客さんにも楽しんで頂けたのかなと思います。
■『きらめく星座』、帰りには、新しい日常の景色に気づいていただけたら
――『きらめく星座』のお話もされていましたね。
『きらめく星座』の話を芳雄さんがたくさん掘り起こしてくださって、トーク部分では僕が不安に思っていることも色々アドバイスして頂いたので、『きらめく星座』に向けても、すごく良かったです。
――最後に、楽しみにしてらっしゃる皆さんにメッセージをお願いします。
3年前にチケットを買って劇場に行ったけれど、公演中止になってしまっていて、ご覧になれなかった方もたくさんいらっしゃると思います。ありがたいことに、またやらせて頂く機会を頂いたので、その方たちにぜひ今度こそ観て頂けますように、「ぜひいらして下さい」という気持ちです。
そして純粋に、こまつ座さんの『きらめく星座』という作品の良さを、皆さんに自信を持ってお届けします。ストレートプレイというと難しいと思う方がいらっしゃるのであれば、全くそんなことはないとお伝えしたいです。音楽もたくさんあって、『グレート・ギャツビー』のニック・キャラウェイの時よりも歌っているんですよ(笑)。
生々しい戦争ものの舞台とはちょっと違った視点で描かれていて、家族のふとした小さな幸せや笑いから、人間はどう生きていくべきなのか? 考えさせられる部分がたくさんあります。ぜひご観劇いただき、帰りには来た時とは明らかに違う、新しい日常の景色に気づいていただけたら。
※田代万里生さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月16日(木)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
田代万里生さんの記事を拝見しました。
きらめく星座は3年前も一度だけ観ましたが、再演があったらまたぜひ観たいと思っていたので、ほとんど変わらないメンバーでの再演が嬉しい!近々観に行きます。
万里生さんはどんな経験も糧にしてますます素敵な俳優さんになっていかれるので、この先も色々な舞台でのご活躍を期待しております。
芳雄さんとのレミゼデュエットも素晴らしかったのでまた共演があったらいいなあ!
アイデアニュース、読みごたえがあって次はどなたを取り上げてくれるのか毎回楽しみにしております。
インタビュー(上)(下)
拝読させて いただきました。
いよいよ 明日 初日を
迎えられますね。
おめでとう ございます。
万里生さん 演じる正一さんの
「発する言葉から 音を感じられる」
よう 私も 全身全霊の心構えで
明日の初日 楽しみに伺います。
アイデアニュースさん
素晴らしいインタビュー
ありがとうございました。
万里生さんの作品に向かうストイックさとが好きで、舞台に向かういろんな気持ちがわかって、ぜひ観劇したいと思いました。
『きらめく星座』への万里生さんの想いが、とても伝わってきました。
この作品が、創られる方々が、そして万里生さんが届けたい想いをしっかり受け取りたいと思いました。
先日の芳雄さんのコンサートのことも、万里生さんがあの曲を選択した理由がわかって、とても興味深かったです。