前川知大さんによる、水木しげるさんの作品へのオマージュ『ゲゲゲの先生へ』が東京芸術劇場プレイハウス、ほか、松本、大阪、豊橋、宮崎、北九州、新潟で上演されます。忠(タダシ)役の水田航生さんへのインタビュー後半です。
――水田さんは、水上京香さん演じる「要(カナメ)」の夫、「忠(タダシ)」役を演じられます。どんな役どころでしょう?
忠に限らず、みんながみんな、なにがしかの「代表」を背負っています。人間、妖怪でいったら、僕は人間代表として。それは妖怪の中でも、それぞれの人たちが「代表」になるという感じです。登場人物は結構多くて、一人で何役も演じるんですが、言ったらこう、権力の象徴みたいなところの人がいたりとかするんですけど、僕は「庶民」代表みたいなところもあって、一番お客さまに近い視点を持っているキャラクターではないかなと思っています。
――物語独特の世界感との親和性が最初から良いお客さまもいらっしゃれば、世界観に戸惑いながらご覧になるお客さまもいらっしゃると思います。どちらかというと、その戸惑っている人たちを、同じ目線の水田さんの忠を通して、グイッと物語の世界観に引き込む、という感じですね。
そうですね。普通なら「この世界に、そんなにすんなりとは入らないじゃん!」 っていう(笑)。普通、お客さまも日常で「妖怪」って言われたら、「いや、そんなにすんなり入んないでしょ?」 っていう人たちが疑問に感じることを、忠が代弁して言う、みたいな感じですね。
――そういう意味では、周りの登場人物、妖怪の存在を受け入れている人たちとはちょっと距離が必要だったり?
そこが、今すごい稽古してても難しいところです。やっぱりある程度の距離感を絶対に保っていなきゃいけないっていう、バランスがすごい難しいなって。でも距離を取りすぎると、やっぱりその中に入っていけないし、でも急に親密になって、仲良くなるのも変だし、みたいな絶妙なところに常に居る役所ですね、やっぱり。
――おそらく普通にいそうな感覚の人たちの代表、なんですね。
そこが、リアリティを考えすぎたら全部進まなくなっちゃうから(笑)。
――でも、進めないといけない?(笑)。
そうなんですよ。そこはすごい、考えないといけないなぁって。稽古で行ったり来たりしながらちょうど良いバランスを見つけていくと思うんですけど。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、稽古がどのような形で進められているかについてや、水田航生さんの最近の出演作『ZEROTOPIA』などについて伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■誰も知らない「平成60年」を、本当のことのように、本気に議論することの素敵さ
■「ここから出てください」とかもなく、「じゃあ、スタート!」みたいな感じで(笑)
■(『ZEROTOPIA』千穐楽で)岸谷五朗さんが「最後だけは自分のためだけに演っていい」と
■水木さんの「幸福の七か条」7番目の「目に見えない世界を信じる」。それが伝えられればいい
<舞台『ゲゲゲの先生へ』>
【東京公演】2018年10月8日(月・祝)~10月21日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
http://www.geigeki.jp/performance/theater177/
【長野公演】2018年10月27日(土)~10月28日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
https://www.mpac.jp/event/drama/25514.html
【大阪公演】2018年11月2日(金)~11月5日(月) 森ノ宮ピロティホール
http://www.piloti-hall.jp/kouen/kouen_details.php?kc=201807040002
【愛知公演】2018年11月9日(金)~11月11日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
https://www.toyohashi-at.jp/event/performance.php?id=522
【宮崎公演】2018年11月14日(水) メディキット県民文化センター 演劇ホール
http://www.miyazaki-ac.jp/PDFupload/files/cal201811.pdf
【福岡公演】2018年11月17日(土)~11月18日(日) 北九州芸術劇場 大ホール
http://q-geki.jp/events/2018/gegege-sensei/
【新潟公演】2018年11月22日(木)~11月23日(金・祝) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館
http://q-geki.jp/events/2018/gegege-sensei/
<公式サイト>
『ゲゲゲの先生へ』
https://www.gegege-sensei.jp/
東京芸術劇場のページ
http://www.geigeki.jp/performance/theater177/
<関連リンク>
水田航生オフィシャルブログ
https://lineblog.me/mizuta_kouki/
水田航生 Twitter
https://twitter.com/mizutakoushiki
アミューズ 水田航生
http://artist.amuse.co.jp/artist/mizuta_kouki/
- 「『冬のライオン』は、愛があふれている作品」、水田航生(下) 2022年2月25日
- 「フィリップは、“Siri”みたいにと」、『冬のライオン』、水田航生(上) 2022年2月24日
- 2019年以前の有料会員登録のきっかけ 2020年8月18日
- 浜中文一と室龍太、上口耕平と水田航生で、ミュージカル『ダブル・トラブル』2022-23冬 2022年10月7日
- 『盗まれた雷撃 パーシー・ジャクソン ミュージカル』、2022年9月・10月に東京・京都で上演 2022年6月20日
- 「『冬のライオン』は、愛があふれている作品」、水田航生(下) 2022年2月25日
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■誰も知らない「平成60年」を、本当のことのように、本気に議論することの素敵さ
――ちなみに今までに、こういう居方のバランスが難しいなと思った役はありますか?
まったく有り得ないフィクションを演るか、すごいリアリティがあるか、大体どっちかじゃないですか。ちょうど間っていうのは、無かった気がします。
――では、新たなる挑戦ですね。
一応時代設定も、大分吹っ飛んだ話ですし。絶対にないパラレルワールドですから。
――平成も来年までという、ここであえて「平成60年」。
そうです。だから、誰も知らないし、誰も想像出来ないからこそ、さっき言ったみたいに、みんなで「平成60年って、こうだよね」みたいなところのすり合わせをやるんですよ、あたかも本当のことのように。まったくのフィクションを、みんなで『朝まで生テレビ!』ぐらいな感じで議論するんです。そこで、僕は役柄的に一歩パッて引いてみると、これ全部ただの「嘘」を創ってるのにって(笑)。だからこそ、ここまで本気になってしゃべることの素敵さみたいなことを感じながら、今も演ってるんです。だから、ちょっとそこに僕は入りすぎても良くないかな、っていうのは、最近思うことですね。水木しげるさんについて、みんなと同じように学んではいたけれど。
――土台はみんなと同じものがあるけれど。
僕の役柄的には、あんまりそこを詳しく知ってしまうと、寄り過ぎちゃうな、みたいな(笑)。だから今は、若干距離を取ろうとしています。
■「ここから出てください」とかもなく、「じゃあ、スタート!」みたいな感じで(笑)
――立ち稽古に入られているそうですが、お稽古の雰囲気はいかがですか?
稽古初日から皆さん本当にすごくて。なんて言うんだろうな、多分役を細かいところまで計算されている部分もあったりして。意外と前川さんも「ハイ、じゃあ演ってください!」みたいな感じだったので、この稽古スタイルもなかなか新鮮だなと思いながらやってます。
――とくに指示なしで?
「ここから出てください」とかもなく、「じゃあ、スタート!」みたいな感じで(笑)。まだ全然粗々の立ち稽古なので、そこを見て前川さんもアイディアを考えていく、みたいな感じのスタイルなんです。
――先ほど、まず皆さんとディスカッションされて、というお話がありましたが、立ち稽古も同じスタイルですね。
そうですね。だから例えば蔵之介さんが演ったことに、「あ、それ良いですね。それは根津っぽい」とか、まず本当に役者が出していかないと進んでいかないんだなっていうのは、すごい初日で感じました。それを皆さんがどんどん出されて、で、シーンを返すと、もう違うものを演ったり、みたいな。そこは大分シビレるなぁと思いながら(笑)。
――ゾクゾクワクワクですね!そういう稽古スタイルのご経験は?
そうですね、なくはないんですけど、ここまで身一つでこれだけ表現しなきゃならないっていうのは、なかなか無かったかなって。
――セットや照明、音楽の力を借りずに自分の力で、表現力だけでというのは、すごく充実したお稽古ですね。
本当です。
■(『ZEROTOPIA』千穐楽で)岸谷五朗さんが「最後だけは自分のためだけに演っていい」と
――前回出演作『ZEROTOPIA』で、無事に千穐楽を迎えられての感想を、「舞台をやっていて初めて最後って実感のある千秋楽」と綴られていましたね。
千穐楽が始まる前に岸谷五朗さんが、「今日言う台詞は最後で、その台詞がどんどん浄化されていくから。だから、最後だけは自分のためだけに芝居演っていい。」っておっしゃったんですよ。それ面白いなって思って。僕は逆に、「千穐楽だからって、あんまり構えるなよ」っていうことをずっと言われてたというか、それが当たり前みたいな感覚だったんです。いつも同じように、たとえ初日と千穐楽でも同じお金を払ってお客さまは観に来てくださるわけで。
――千穐楽といえど、その日が初見のお客さまもいらっしゃるかも。
そうです。だから、役者だけに言っていることかもしれないですけど、五朗さんは、「自分のために最後はお芝居やっていいし、それが絶対に、最後はお客さまのためにもなっているから」と。その考え方が、なんか面白いなと思って(笑)。それを聞いたからかもしれないですけど、演ってるときはまったくそんな意識ないですけど、なんか初めて「あぁそっか、これ最後なんだ」とか、終わってハケたときに、「もうこの台詞、これやることないんだな」とか、ふと思ったりして(笑)。そういうのが初めての感覚だったので、そう書いたのかもしれません。
――公演期間も4月から7月のロングランで。
そうですね、結構長くやったからこそというのもあると思います。
――役者が自分のために台詞を、お芝居をやって、それがお客さまのためにもなるというのは、役者自身が納得する芝居をすれば、結果、お客さまにも喜んでいただける、という意味に取れてちょっと素敵です。
そうですね。それはお客さまにとって良いか悪いかはちょっとわからないけど(笑)。そんなことをお客さまに伝えるのは、あんまりよくないかもしれないんですけど(笑)。
――ところで話が全然変わりますが(笑)、ひょっとして食べることが大好きでいらっしゃいますか?
好きです! あれ? そんなことどこかに書いてました?
――先日、“食べきれなかった肉を、水田さんがお食べになった”という内容の新納慎也さんのツイートを拝見して、食べることがお好きなのかなと思いました(笑)。
食べるのは好きですね、結構。でも量はそんなに食べないんですけど、でもそこのお肉は美味しくて、なんかたくさん食べたっていう。
――食べるのがお好きということは、お料理もお好きだったり?
いや、前まではしてたんですけど、最近まったくしなくなって。
――やっぱりお仕事が忙しくなって?
イヤイヤ、気分です(笑)。
■水木さんの「幸福の七か条」7番目の「目に見えない世界を信じる」。それが伝えられればいい
――『ゲゲゲの先生へ』を通して、水田さんが伝えたい思いはなんでしょう?
知っていけばいくほど、水木しげるさんの人生を通して考えることはたくさんありますから、この作品を通して多少なりとも水木しげるさんの生き様や粋なところを感じてもらえたらという思いはあります。水木しげるさんを知っている人はもちろん、よく知らない人のためにも舞台を創らなきゃいけないっていうのは、もちろん僕たちも考えています。水木しげるさんを知ってるからこそ、「水木しげるさんってこうだよね」という提示が行き過ぎちゃうと、それは、お客さまに対する間口が狭い作品になっちゃうから、やっぱりそこは知らない人にもわかりやすいというか、響くものにもしようとはしてるんですけど。
――水木しげるさんを知っている人も、知らない人も、普通に楽しめる作品を、ということですね。
そうですね。でも、知っていたらより面白いとは思うんですけど(笑)。見方も全然変わるし、僕も初見のときと今は印象まったく違うので。
――やっぱり大分変わりますか?
「このシーンって水木さんのこういうところを表現してるんだ」とか、「これって水木さんの伝記の中にあったな」みたいなところを、知れば知るほど、深みが増してくる作品でもあると思います。
――知らない人も楽しめます。でも、ちょっと興味を持って、水木さんの作品なり自著なりをご覧になってから観ると?
ますます楽しめます。水木しげるさんの「幸福の七か条」の7番目に、「目に見えない世界を信じる」っていうのがあるんです。それが伝えられればいい作品かもしれないです。今の時代だからこそ、目に見えているものがすべてじゃないんだよ、っていうことと、目に見えないものほど、それはスピリチャルなことだけではなくて、人の想いだったり、その人がどう思っているかとか、…思いなんて目に見えないじゃないですか。そういうものに、目を向けてみることの大切さが伝わればいいのかなと思っています。
――「大切なものは目には見えない」という『星の王子様』の一節にも通じますね。お話有難うございました。
※水田航生さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月1日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
言葉では言い表せないくらい1番大好きな水田航生くんのインタビュー記事。2公演観劇してからこちらの上・下を読ませていただきました。本当に素敵すぎる作品で感動の余韻が今でも続いておりますが、この素敵な作品を実際に届けてくださるまでの過程には航生くんが色んなことを試行錯誤して完成したものだったのだな、とインタビュー内容で知ることが出来て、更に込み上げるものがあります? 航生くんの前川さんへの愛も凄く良く伝わりましたし笑、お肉を凄く食べるのも色んな方のツイートから知って直接聞いてみたかったことだったので、本当に有難いインタビューでした??♂️
お写真も全て素敵で本当に素晴らしい媒体さんだなと感じました。水田航生くんのことが以前以上にもっと大好きになりました!是非またよろしくお願い致します?