「沖縄戦からしか、薬は抽出できない」、映画『沖縄スパイ戦史』両監督トークショー

三上智恵監督(左)と大矢英代監督=提供・第七藝術劇場

2018年7月21日から全国で公開が始まっている映画『沖縄スパイ戦史』。大阪の第七藝術劇場でも8月4日から上映され、8月5日には、三上智恵監督と大矢英代監督によるトークショーがありました。当日、映画を鑑賞した超満員の観客はそのまま残って、熱心に両監督のトークに聴き入りました。両監督のトークショーの様子を速報します。先日、アイデアニュースに掲載したこの映画の試写ルポ記事、「少年をゲリラ戦に・マラリアの島・スパイリスト…映画『沖縄スパイ戦史』試写ルポ」も合わせてお読みください。

三上智恵監督(左)と大矢英代監督=提供・第七藝術劇場

三上智恵監督(左)と大矢英代監督=提供・第七藝術劇場

琉球朝日放送の先輩・後輩にあたる三上智恵さんと大矢英代さんの息のあったトークは会場を大いに沸かせ、あっというまの1時間でした。今回の映画が取り上げるのは少年兵によるゲリラ戦、スパイ戦、マラリア地獄といった”裏の戦争”です。映画を初めて観たとき、114分に詰め込まれた情報量の多さと内容の重さに圧倒されました。2回目の鑑賞の後、両監督の話と質疑応答をきいて、改めて映画のメッセージが心に届きました。この映画は、ぜひ二度、三度と観ることをお勧めします。

離島に関わりのあるふたりの監督だからこそ

三上さんも大矢さんも沖縄出身ではありません。でも、ふたりとも若い頃から沖縄戦に関心を持ち、三上さんは宮古島、大矢さんは八重山をフィールドワークの原点としてきたという共通項がありました。だからこそ、次々に自衛隊が配備されていく南西諸島の現状が、今後島々をどんな悲劇に導いていくのか、ふたりにはよく分かるのでしょう。

三上監督:辺野古、高江、宮古、石垣の軍事要塞化を止められない。沖縄で頑張っている人たちの姿を通して問題を伝える手法では伝えきれない。だったら沖縄戦からしか、つける薬は抽出できないんじゃないかと思ったんです。

大矢監督:沖縄本島での記者時代、目の前にある米軍基地という不条理を報道することに時間をかけました。一方で離島で起きている自衛隊基地の建設にはなかなか取り組めない。でも、高江や辺野古の米軍基地、宮古や八重山の自衛隊の基地、全部合わせての沖縄の「軍事要塞化」なんです。73年前の地獄を再び呼び起こすような現状を何とかしなければとずっと思ってきました。

若き日本兵への想い

三上さんも大矢さんも、この映画の取材を通して、二十歳代の若さで大きな任務を背負わされた日本兵たちのことに想いを馳せました。

三上監督:敗残兵となって、ハンセン病施設から食料を奪い、住民を殺した武下少尉という人。でも彼は、映画にも出てきた「ヨネちゃん」(18歳でスパイリストに載り、殺される危険のあった女性)から見たら命の恩人なんです。22,3歳で部下が200人もいて、秘密を守るためにを住民を殺した武下さんは、18歳の女の子だけは助けたかった。スパイ虐殺をする側に立つしかなかった日本兵のことはまだ、描き切れないていないなあと思っています。

大矢監督:波照間島でお世話になった浦仲浩さんがずっと言っていました。軍の命令系統のコマに過ぎなかった山下ひとりを恨み続けていては、戦争マラリアの本質、国家が波照間の人々を使ってやろうとした本当の恐ろしさが見えてこないと。中野学校に入れられ、20代前半でたったひとりで波照間に派遣された山下もまたある意味で国家に翻弄された被害者だったという視点を浦仲のじいちゃんは持っていました。波照間の慰霊碑にある「山下の行為はゆるしはしようが然し忘れはしない」には、二度と国家の横暴によって波照間が苦しめられることがないようにという思いが入っていると理解しています。

三上監督:第一護郷隊隊長村上治夫さんと第二護郷隊隊長岩波壽さんのことをもっと知って欲しいと思って、パンフレットに護郷隊のことをよく知る人に文章を書いてもらいました。村上さんのご遺族にもお会いして、戦後何度も沖縄に通われた村上さんの姿には頭が下がる思いです。おふたりとも人格者で、部下から慕われていました。ただ、遺族から見た「護郷隊隊長」はまた違うし、遺族の視点があって成り立っている映画です。秘密戦を担当させられたふたりの青年将校が、みなさんの目にどう映ったかなと思っています。

今回2回目の鑑賞で、両監督の込めた思いに改めて感動しました。チラシにも書かれているコピー「もう、忘れていいよ。わたしがここで、覚えているから」に象徴される、いろんなことを知った人間が(映画を観た私たちも含めて)引き受けるべきことは、口にするだけで体調を壊すような辛い経験をしてきた方たちの重荷を少しでも減らし、「ああ、二度と戦争なんか起きない良い世の中になったんだ」と安心してもらうことではないかと、今日思った次第です。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、三上智恵・大矢英代監督のサイン入り『沖縄スパイ戦史』パンフレットプレゼントの応募フォームを掲載しています。パンフレットには映画には盛り込めなかったことが満載です。

<有料会員限定部分の小見出し>

■三上智恵・大矢英代監督のサイン入り『沖縄スパイ戦史』パンフレットをプレゼント

<映画『沖縄スパイ戦史』>
監督:三上智恵、大矢英代
2018/日本/DCP/114分/ドキュメンタリー

<イベント情報>(公式ページより)
【東京】ポレポレ東中野
8/10(金)10:20の回上映後 井筒高雄さん(べテランズ・フォー・ピース・ジャパン代表/元陸自レンジャー隊員)、大矢英代監督によるトークショー
8/12(日)10:20の回上映後、13:00の回上映後 三上智恵監督による舞台挨拶
【神奈川】横浜 シネマ・ジャック&ベティ
8/11(土)14:55の回上映後 三上智恵監督による初日舞台挨拶
【愛知】名古屋シネマテーク
8/11(土)11:00の回上映後、18:10の回上映後 大矢英代監督による初日舞台挨拶
【長野】松本CINEMAセレクト
8/12(日)13:00の回上映後 大矢英代監督によるトークショー
【群馬】シネマテークたかさき
8/25(土)10:00の回上映後 三上智恵監督による初日舞台挨拶
【三重】伊勢進富座
8/26(日)15:00の回、18:00の回上映後 三上智恵監督、大矢英代監督によるトークショー
【福岡】KBCシネマ1・2
9/22(土)時間調整中 三上智恵監督による初日舞台挨拶
【兵庫】元町映画館
9/22(土)17:30の回上映後 三上智恵監督による初日舞台挨拶
※他にも開催予定(やむをえない事情でゲストが変更になることがあります)

<関連サイト>
映画公式HP
http://www.spy-senshi.com/
映画公式FB
https://www.facebook.com/spy.senshi
映画公式ツイッター
https://twitter.com/spy_senshi

<関連リンク>
三上智恵の沖縄撮影日記 マガジン9(この「沖縄撮影日記」2018年7月25日付け記事には、沖縄本島や波照間島での映画上映会の様子が動画で紹介されています。ぜひご覧ください)
http://www.magazine9.jp/category/article/mikami/
大矢英代 Hanayo Oya’s Website
https://hanayooya.themedia.jp/

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※三上智恵・大矢英代監督のサイン入りの映画『沖縄スパイ戦史』パンフレットを、アイデアニュース有料会員1さまに抽選でプレゼントします。三上智恵・大矢英代監督のサイン入りです。パンフレットには映画には盛り込めなかったことが満載です。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは9月8日(土)です。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

大矢英代監督(左)と三上智恵監督=提供・第七藝術劇場

大矢英代監督(左)と三上智恵監督=提供・第七藝術劇場

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『沖縄スパイ戦史』パンフレット=撮影・松中みどり

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