紅ゆずる、謎多き美丈夫を鮮やかに 宝塚星組『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

8月31日、宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy  東離劍遊紀』(サンダーボルトファンタジー とうりけんゆうき)と『Killer Rouge/星秀☆煌紅』(アメイジングスター☆キラールージュ)が、大阪・梅田芸術劇場にて初日の幕を開けました。本作は東京・日本青年館での公演を経て、10~11月の台湾公演でも上演される予定の二本立てです。

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』、通称「サンファン」は、台湾と日本の奇跡のコラボレーションによって誕生した「武侠ファンタジー人形劇」。原案・脚本・総監修を担当したのは、アニメ・ゲーム界で幅広く活躍する日本の人気シナリオライター・虚淵玄(うろぶちげん・ニトロプラス)さん。元々は、虚淵さんが台湾の伝統芸能「布袋劇」の映像に惚れ込んだことが誕生のきっかけでした。2016年7月よりテレビ放映され、まったく新しいタイプの映像作品として話題を呼びました。

その「サンファン」の舞台化にタカラヅカが挑みます。布袋劇の伝統技術を駆使して生み出された美しい人形が創り出す世界をタカラヅカがどのように見せるのかが注目されましたが、その再現度の高さには目を見張らされました。梅田芸術劇場のロビーには各キャラクターの人形も展示されているので、ぜひ見比べてみてください。

脚本・演出を担当するのは、タカラヅカの演出家の中でもとりわけ「2.5次元」への造詣が深いことで知られる小柳奈穂子さん。もともと原作のテレビ番組にも関心が高かったという小柳さんだけに、原作の「ここが見たい」という部分をうまく取り込みつつ根底に流れるテーマをきちんと伝え、原作へのリスペクトを感じさせる90分の舞台にうまくまとめ上げられています。ビジュアルはもとより殺陣、映像使いなどの見どころも満載です。

紅ゆずる(くれない・ゆずる)さん演じる謎多き美丈夫・凜雪鴉(リンセツア)。初めて原作を見たとき「これは紅さんそのもの」と驚きましたが、まさにその期待どおり。前半は飄々と軽やかに、しかし後半は意外と気骨あるところを見せます。そのギャップが鮮やかで凜雪鴉という人物の底のしれない魅力を感じさせられました。

■人形のような可愛らしさの丹翡役、綺咲愛里。礼真琴は爽やかに捲殘雲を

聖剣「天刑劍」を守る護印師の娘・丹翡(タンヒ)を演じた綺咲愛里(きさき・あいり)さんは、まるで人形がそのまま大きくなって動いているかのような可愛らしさ。プライドの高い世間知らずなお嬢様ですが、そのお嬢さまパワーで周囲の男たちを振り回していく様が気持ち良く感じます。

血気にはやる若者・捲殘雲(ケンサンウン)を演じる礼真琴(れい・まこと)さんは、いずれも一癖ありそうな男たちの中でただ一人表裏のない爽やかな役所で、作品全体のムードメーカー的存在です。二番手の礼さんをこの役にキャスティングし、サブストーリーとして捲殘雲の成長物語をしっかり見せることで、作品全体がより明るく希望を感じさせるものになっていました。

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

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■酸いも甘いも噛み分けた大人の男の色気を感じさせる七海ひろきの殤不患

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

■殺人鬼の役に徹した麻央侑希。弓の名人役の輝咲玲央はブレイクの予感

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

■天寿光希はラスボス、蔑天骸を妖しく。その右腕は若手の天華えまと有沙瞳

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

<宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy  東離劍遊紀』『Killer Rouge/星秀☆煌紅』>
【大阪公演】2018年8月31日(金)~ 9月6日(木) 梅田芸術劇場メインホール
【東京公演】2018年9月13日(木)~ 9月24日(月) 日本青年館ホール
【台湾公演】2018年10月20日(土)~ 10月28日(日) 國家兩廳院 國家戯劇院
【台湾公演】2018年11月2日(金)~ 11月5日(月) 高雄市文化中心 至徳堂

<公式サイト>
日本公演
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2018/thunderboltfantasytourikenyuuki/
台湾公演
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2018/taiwan/

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■酸いも甘いも噛み分けた大人の男の色気を感じさせる七海ひろきの殤不患

原作では凜雪鴉とともに主人公である殤不患(ショウフカン)を演じるのは、七海ひろき(ななみ・ひろき)さん。酸いも甘いも噛み分けた大人の男の色気を感じさせ、原作放映時にすでにこの作品を見ていたという七海さんならではの気合いの役作り。常人を超えた武勇の達人だけに、殺陣の見せ場もひときわ多くあります。捲殘雲とのボケとツッコミの様なやりとりは楽しく、凜雪鴉との「男の絆」にはグッときました。

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

■殺人鬼の役に徹した麻央侑希。弓の名人役の輝咲玲央はブレイクの予感

その殺無生(セツムショウ)には麻央侑希(まお・ゆうき)さん。殺人鬼という役割に潔く徹した役作りでインパクトがあります。妖人・刑亥(ケイガイ)には、歌唱力に定評ある夢妃杏瑠(ゆめき・あんる)さん。一節ですが、歌を聞かせる場面もあります。弓の名人・狩雲霄(シュウンショウ)の輝咲玲央(きざき・れお)さんが良い味を出していてブレイクの予感がします。

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

■ラスボス、蔑天骸を妖しく演じた天寿光希。その右腕は若手の天華えまと有沙瞳

そして、凜雪鴉らの前に立ちはだかるラスボス、蔑天骸(ベッテンガイ)には天寿光希(てんじゅ・みつき)さん。持ち前の芝居心で妖しさをじわじわと感じさせます。彼の右腕の凋命(チョウメイ)と獵魅(リョウミ)のコンビは、天華えま(あまはな・えま)さんと有沙瞳(ありさ・ひとみ)さん。星組期待の若手が配されました。

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

宝塚星組公演『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』より=撮影・橋本正人

盛りに盛った密度の濃い脚本に漢字だらけの専門用語、豪華な衣装での立ち回りも大変。よくぞここまでと思ういっぽうで、初日の時点ではまだ段取りを追うのに手いっぱいな感もありました。ですが、回数を重ねるごとに進化も期待できそう。一筋縄ではいかないキャラクターたちを演じ手がいかに消化し、自分のものにしていくかが楽しみです。

後半のショー『Killer Rouge/星秀☆煌紅』は、宝塚大劇場・東京宝塚劇場で上演されたものが台湾公演向けに改変され、中国語で歌う新場面も加わりました。紅さんが演じる人気キャラクター「紅子」も久しぶりに客席を大いに湧かせていました。今回は海を渡って台湾へ向かうとのことで、ライバルとして愛子(綺咲さん)と礼子(礼さん)も新登場です。

大劇場公演時よりも人数が減ったことで、若手の活躍も目立っています。Rouge=紅色をテーマカラーにした、きらびやかでエネルギッシュなショーでした。

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