北川恵海さんのベストセラー『ちょっと今から仕事やめてくる』が、青山隆役の飯島寛騎さん、ヤマモト役の鈴木勝吾さんのW主演で、2019年6月13日(木)~6月23日(日)まで、東京・CBGKシブゲキ!! にて上演されます。「大阪弁でいつでも爽やかな笑顔をみせる謎の男」ヤマモトを演じる鈴木勝吾さんに、作品について、今年30歳になって思うところをお話しいただいたインタビューの後半です。
――ヤマモトが話す大阪弁にまつわるお話をお聞きしていて、先日の鈴木さんのブログをふと思い出したのですが、本の紹介をされる際に、作者は何故この本を書いたのだろうか? と問いかけられていて、そこに「なにかしらの事象には必ず理由があるはず」という同じ視点が感じられて、視野広く物事を多面的に捉えつつ、細やかに分析して核心を捉えられる方なのだなと感銘を受けました。
多面的というか、それで、その「理由」がないときのことも思うというか。
――「理由」がないとき?
やっぱり「なんとなく」ってあると思うんです。「黄金比」とかもそうですけど、昔の芸術、絵画とかが、分解していくと黄金比で創られているというのはあるけど、おそらく測って描いているわけではなくて「これが美しい」っていうセンスだし、見た人が「これは美しい」と思ってしまう比率だったりするというか。だから必ずしも理由を知っていなくても良いんじゃないかと思うんです。「なんでこんなに感動するんだろう」って、こっち側には理由はあるんですけど、創った側からしてみると、理由がない場合が往々にしてあるな、というのは少しは分かるというか。「描きたいから描いたんだ」というような、違うところに信念があって、そこからはみ出た、なにかよくわからないものが僕たちに伝わって、感動なり心を動かしたりすると思うんです。
それで、やっぱり僕みたいに「それは何故なんだ?」って思った人が、よくよく調べたら、全部同じ比率に当てはまるとか、そういうことだったり。ヒットソングのコードが、わりと近いものが全部あるんだったりとか、人が「良い曲」だと認識しやすいコードラインがある、ということもそうですし。後発者はやっぱりそれを理解して、あえて似せて作っているでしょうけど、でも多分、最初に創ってきた音楽家たちは「これ耳障りが良い。これが良い、悪い」とか、これがウケるかどうかもわからない中で、創っているみたいなので。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、30歳を迎えての気持ちや、作品の見どころなどインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■技術先行であってはならない。感覚先行で、のちにそれがメソッド化されていく
■30歳になって、なにか、すこし、やさしくなれたなという気持ちはあります(笑)
■技術もすごさも一流だとしても、そこに社会的価値が生まれないと、意味がない
■演劇はどの媒体よりも事件を身近に感じることができる、というのが一番の今回の面白さ
<『ちょっと今から仕事やめてくる』公演日程>
2019年6月13日(木)~6月23日(日)CBGKシブゲキ!! (東京都渋谷区道玄坂2-29-5 ザ・プライム 6階)
<『ちょっと今から仕事やめてくる』公式サイト>
公式サイト
https://www.chottoimakara.com/
Twitter
https://twitter.com/ChottoImakara
<関連リンク>
ヒラタオフィス 鈴木勝吾
http://www.hirata-office.jp/talent_profile/men/shogo_suzuki.html
鈴木勝吾 Twitter
https://twitter.com/Shogo_Suzuki_
鈴木勝吾オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/shogo-suzuki
- 2019年以前の有料会員登録のきっかけ 2020年8月18日
- 「演劇は拡散力では映像より弱い。でも素晴らしい」、鈴木勝吾インタビュー(下) 2019年4月9日
- 「ヤマモトは神」、『ちょっと今から仕事やめてくる』鈴木勝吾インタビュー(上) 2019年4月8日
- 「“即興音楽舞踏劇”とは、新しいジャンル」、『砂の城』池田純矢(上) 2022年10月13日
- エン*ゲキ#06 即興音楽舞踏劇『砂の城』、2022年10月・11月に東京と大阪で上演 2022年8月7日
- 「“ひりひり”しながら必死の稽古場。4日目に通しも」、鈴木勝吾・梅津瑞樹(下) 2022年6月10日
※鈴木勝吾さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは5月8日(水)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
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■技術先行であってはならない。感覚先行で、のちにそれがメソッド化されていく
――創る人たち自身の感覚、感性だけで創ったものが、結果として周囲に認められるものになった。
だから、決して技術先行であってはならないっていうのはすごく思っていて、感覚先行であって、のちにそれが技術化だったり、メソッド化されていくんだと。お芝居もそうですけど、そういうことの順序を、理由を求めるあまり、はき違えてはいけないなというのは気をつけています。
――論理も直感もどちらも等しくバランス良く大切にされているのですね。その姿勢はやはり、お仕事をされていく上で学ばれたのでしょうか?
やー、どうなんでしょうね? でも一端はあると思います。そもそもは自分が持っている人間性というか、感覚のことなのかなと思いますけど、ここまでになったのはそうだと思います。この仕事をしていて、たくさんの人間ともかかわりますし、人間のことも考えるし、というのが増長させた部分はあると思いますけど(笑)。
■30歳になって、なにか、すこし、やさしくなれたなという気持ちはあります(笑)
――鈴木さんはつい先日30歳になられて、そして今年は芸能生活10周年ですね。ご自身のブログでも30歳になることについては頻繁に触れられていましたが、実際にお誕生日を迎えられて、30歳を迎えられての今のお気持ちはいかがですか?
なにか、すこし、やさしくなれたなという気持ちはあります(笑)。
――やさしくなれたというのは?
なにか……結果ですけど最終的に起きた事象として、なんかすごく自分がマイルドなところが増えたなって、たった1日の差で違うなっていうのは思います。あとはまぁ、それまですごくワクワクドキドキしてたんですね、やっぱ、2月3日の23時59分までは。でもやっぱり2月4日の0時0分になったときに、なんていうか、すごく背負うものがあったというか。「本当に30歳になっちゃった、こわっ!」みたいな、本当にこれから、自分が証明していかなきゃいけないことがいっぱいあるなぁと思いました。
――自分が証明をしていく。
もちろん役者としても、もう、一歩も下がらずに登って行きたいですし、それは、後輩にも見せていかなきゃいけないところだし。僕が主戦場にしている演劇は、やっぱり他のメディア、テレビだったり、映像っていうところと比べたら拡散力では弱いところがあって、でも演劇ってすごい素晴らしいってことも伝えたくて。という自分のやりたいことに対して、自分の階段を登るスピードがズレてくると、やっぱり「正しさ」って、証明できないじゃないですか。
自分のやりたいことがあって、そこに説得力を持たせていかなきゃならない。わかりやすく言えば、「登り続けなきゃいけない」というか。上に行かないとやりたいことができないというのもそうだし、上に行かなきゃ届けられない言葉もありますし。そういったときに、やっぱり、人間30年も生きていれば、自分なりの考えとか想いがあるけど、それを押し通すまではいかなくとも、広く世間に伝えられるところまで行かないと、ただ“自分だけが思っている”ことになってしまうから。さいわい僕は役者なので、お芝居を通して伝えることもできるけど、もっともっと、それがテレビなのかなんなのか、どんどん自分が上に、役者としてのランクを上げていかないと、自分が本当に届けたい想いとか、人間として考えていることというのは、届け続けないといけないなと思ったときに、30になって、これからはもっとそれを如実にがんばらなきゃいけないんだろうなって思ったんです。じゃないと多分、自分の中のバランスが崩れて行くんだろうなと。
■技術もすごさも一流だとしても、そこに社会的価値が生まれないと、意味がない
――やりたいことと、できること。理想と現実のバランスということですね。
そうですね。想いとか、覚悟とか、考えていることの方が多くなってきちゃって、実際それを提供する場面も、言う場所も減っていってしまったら、すごく反比例を起こしてしまうので。やっぱり自分が役者として成長することと、役者として売れることが比例していかないと、すごく生き辛い30代なんだろうなということ、言葉にすると、なんか背負うものがすごく大きかったですね。
――今のお話をお聞きして、思わず先日インタビューさせていただいた、池田純矢さんの「すごい役者なんです」という、鈴木さんへの熱いエールを思い出しました。
結局技術もすごさも一流だとしても、そこに社会的価値が生まれないと、意味がなくて。そこをまた……。日本ってそういうことを教えないんですよね(笑)。綺麗事というか、すごく素敵な世界観の中で生きているので。「努力して一番になる」素晴らしいことなんだけど、そこには求める人が居ないと、その人は社会人として生きていけないという。お金の話じゃなくて、まぁ、お金の話ではあるんですけど、必要としてくれる人が居ないと駄目だと思うので。僕が、じゃあ純矢曰わく「すごい役者」であるのならば、それを求めてくれる人が居ないと僕は歩んで行けないわけで。今は少なからず、たくさんの人に応援していただいて、お仕事をたくさんいただいて、っていう「輪」を、自分を求めてくれる人を拡げていかなきゃならないし、拡げたら拡げたで、また責任も増えて、もっとがんばんなきゃいけないっていうことを、ある意味幸せなリズムで、辛いこともありますけど、続けていけたら一番良いのかな、というか、それをやんないと駄目なんだろうなって思ってます。
――この先の、ご自身の役者の道程での身の律し方、心の有り様のお覚悟までお話くださってありがとうございます!
わりと「決意」と「覚悟」という言葉は好きで、もう、吐いた言葉は戻らないし(笑)。で、これはデビュー作(『侍戦隊シンケンジャー』2009年)に掛けるわけじゃないですけど、デビュー作って「モヂカラ」というのがあって、文字に書いたのが変化(へんげ)して、技になったりするんですけど、言葉のパワーっていうのがすごく大切なワードで。まぁ、言わないとな、秘めててもな、っててこともあるというか、「良いことは言っていこう!」みたいなことがすごくあって(笑)。だから、口にして損なことはないな、ってことはいっぱい言ってこうかなと思います。
――言葉にする、というのも表現のひとつですね。「必要としてくれる人たち」予備軍の人たちに向けて、伝える手段のひとつともいえますね。
30になったからなのかなんなのか、表現も学ばなきゃいけないなとは思っています。いろんなことが、たとえば「戯曲」だとしたら、べつに戯曲の決まった形はなくて、ものすごく昔の、詩人の書いた詩をそのまま戯曲として上演した例があったりとか、だからその、「俺は役者だからこうなんだ」ということに囚われすぎると、他のことが波に乗らないことがすごくあるので、まとめて逆に表現していくっていう風にスタンスにした方がいいのかなと思ったりもしています。
■演劇はどの媒体よりも事件を身近に感じることができる、というのが一番の今回の面白さ
――最後に、作品をご覧になるお客さまへのメッセージをお願いします。
いろいろな社会問題にもなっていて、でも「社会問題」と言った瞬間に、他人ごとにしているんですよね、やっぱり。それを、演劇という限られた空間で、申し訳ないけれども2時間なり3時間なりを、しゃべるな動くな、座っていろというすごくストレスな空間、唯一演劇を観ることだけが許された空間にお呼びして舞台は演るんです。だから僕たちはがんばるんですけど、舞台と客席の距離感と約束された関係の中だからこそ、他人ごとであるはずの事件が、やっぱり目の前で本当にある、自分のことのようにも思えたりするんです。実際そこに生(なま)の役者が居て、生の事件が起きて、生に死にそうになって、生に助けて、生に救われて、そこからまた歩いていく、ということが、演劇であることによってどの媒体よりも一番身近に感じることができる、というのが一番の今回の面白さかなと思っています。
舞台作品はDVDになるものもありますけど、やっぱりそれは、DVDになった瞬間に「舞台」ではない「舞台のDVD」であって、演劇ではないところがあるので、やっぱり演劇は、生で1回観て欲しいなという思いがあります。今回は原作の小説だったり、映画だったり、漫画があるので、演劇を今まで観たことがない人も多く来られると思うんですけど、是非、生で観劇するということを体験して欲しいですし、本当に観に来た人を2時間なり2時間半なり、ずっと縛っておけるような作品にするので、是非劇場に来てくれたら嬉しいです。
――目の前で、リアルに役者たちが生きている様を、他人事の「社会問題」ではなくリアルに体験してほしいということですね。
そうですね。ミュージカルって、壮大なことが多いでしょ? だから物語の中に入った気分になって舞台を楽しめるんですけど、これは身近なお話なんだけど、みんな身近じゃないと思っている恐さがあって、それを是非身近で観て欲しいっていうのは、すごく今回思うところですね。
――お話ありがとうございました。
※鈴木勝吾さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは5月8日(水)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
鈴木勝吾さんは顔がかっこいい・歌や演技がうまいというだけでなく、人として、生き様や考え方がとても素敵で魅力的な俳優さんですね。
演技の中のみに留まらず色々なことを深く考えていらっしゃって、演劇・周りの人たち・家族・ファン、どれに対しても真摯にまっすぐで愛情があって、暖かい方だなと尊敬します。
勝吾さんに出会ってますます、演劇を生で観て同じ空間を役者さんたちと一緒に体感することの素晴らしさを感じ、演劇を浴びるという感覚を覚えました。
今後も更にご活躍されると思いますが、何年経っても舞台にはずーっと立ち続けていてほしいし観にいきたいです。
次の劇場で会えるのがますます楽しみなる素敵な記事をありがとうございました。
インタビューの問いについて、勝吾くんが答えたことがとても丁寧に書かれていて、とても読み応えがありました。30歳を迎えた勝吾さんをこれからも応援していけたらと思います。舞台を楽しみにしています。
舞台のこと、ご自身のこと、深く掘り下げられていてとても読み応えのある記事でした、ありがとうございます。
また取材される機会がありましたら是非読みたいです。
鈴木さんの記事が読みたくて有料になりました。今回の舞台の話だけでなく鈴木さんの考えや演劇にかけている想いを知ることができる内容で満足です。ありがとうございます。写真も素敵でした。また鈴木さんのインタビューがあればぜひ読みたいです。