「謙虚でいたいけど、我儘でいたい」、花瑛ちほ・若林佑真対談(下)

花瑛ちほさん(右)と若林佑真さん(左)=撮影・伊藤華織

2019年3月13日(水)から劇場MOMOで上演される舞台『アイイジョウ』に出演する元宝塚歌劇団の娘役、花瑛ちほ(はなえ・ちほ)さんと、この作品の脚本とプロデュースを担当する若林佑真(わかばやし・ゆうま)さんの対談、後半です。「男前」と言われることの多い花瑛さんが宝塚歌劇団時代に娘役をつとめていたことについて、若林さんが表現の世界に進むようになったきっかけ、花瑛さんの現在の活動や今後への思いなどを話してくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

花瑛ちほさん(右)と若林佑真さん(左)=撮影・伊藤華織

花瑛ちほさん(右)と若林佑真さん(左)=撮影・伊藤華織

――いつも男前と言われるという花瑛さんが、宝塚歌劇団では娘役をつとめていて、違和感はなかったんでしょうか。

花瑛:そうですね~、なりたかったのは、それこそ、紫吹淳さんみたいな、ザ・男役。もともと両親ともに宝塚が好きで、VHSの時代から観てて。小さい頃から男役になりたいっていう意識が強かったんですけど、いざ入ったら身長が伸びなくて。まぁ、どうしようもないですね、これは。

最初は、正直娘役に抵抗がありました。自分の性格がこんな感じなのもあるし、“え~、スカート!?”みたいなのも、ありました。でも、娘役でも、ただ可憐な娘役だけじゃなくて、ショーとかお芝居にもよりますけど、ちょっと強い役とか、娘役というよりは、女役みたいなものをさせて頂いたときはすごく楽しかったです。『アルカポネ』という作品があったんですけど、たばこを吸う娼婦の役をさせていただいて、それが楽しくて楽しくてしょうがなくって(笑)。

それと同時に、小劇場への憧れというか、もっとリアルな芝居がしたいって思ったんです。宝塚という大劇場での経験はものすごく役にたっていて、じゃあ小劇場ではどうすのるかっていう違いもあって。だから、娘役をしていたことに関しても、もしやっていなかったら、この話はきていないんじゃないか、あの仕事はできていなかったんじゃないか、そもそも役者を続けていたんだろうかって考えると、これも一つの選択なんだろうなって。だから今があるんだろうなって。実際娘役をしていた9年間は本当に楽しかったです。違う自分にもなれたしね。

――男前気質でありながら娘役を演じていた。

花瑛:宝塚メイクってものすごく濃いんですけど、あれをして舞台に立った時の自分って、もう完璧別人じゃないですか。こんな私でも、ウサギの役を与えられたら、やらなきゃいけない。6歳の女の子の役をもらったら、6歳にならなくてはいけない。もうここまでくると楽しくなってきちゃうんですよね。“普段こんな自分が、ウサギちゃんやってるわぁ”って。しかも、意外と可愛いんですよ(笑)、そして、ファンの方達からも「可愛かった」と言われると、むしろ嬉しいというか(笑)。いつもの自分では無いものを演じるということが快感になりました。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、若林さんが「もと女性」になった経緯や、表現の世界に進むようになったきっかけ、花瑛さんの現在の活動や今後への思いを話してくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

若林:僕が元女性だっていつわかりました? 伊藤:バレンタインデーに…

■若林:「一人ひとりがメッセンジャーに」という杉本彩さんの言葉を聞いて

■花瑛:自分がボロボロになっても…全ては作品のために

■花瑛:“何とかなる”が座右の銘。自分で何とかしないといけないと、自分を奮い立たせています

<舞台『アイイジョウ』>
【東京公演】2019年3月13日(水)~3月17日(日) ​劇場MOMO
住所:中野区中野3-22-8
アクセス:JR中央・総武線/東京メトロ東西線 中野南口より徒歩5分
https://wakabayash1105.wixsite.com/aiijo/theater
チケット:前売 : ¥3,900 当日 : ¥4,200
https://wakabayash1105.wixsite.com/aiijo/ticket

<公式サイト>
舞台『アイイジョウ』公式サイト
https://wakabayash1105.wixsite.com/aiijo
舞台『アイイジョウ』公式 twitter
https://twitter.com/ypiecemaker

<関連リンク>
花瑛ちほ Twitter
https://twitter.com/eichang1117
花瑛ちほ instagram
https://www.instagram.com/eichan1117/
若林佑真 Twitter
https://twitter.com/Waka61Y
若林佑真 Instagram
https://www.instagram.com/wakabayashi.yuma/

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花瑛ちほさん=撮影・伊藤華織

花瑛ちほさん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

若林:僕が元女性だっていつわかりました? 伊藤:バレンタインデーに…

――若林さんは、以前、撮影の機会(舞台のパンフレット撮影)があった時に男性と思ったんですが。

若林:ああ~、“FTM(Female to Maleの略)”って言う、元女性だったって。逆にいつわかりましたか? バレンタインのくだりですか?

――全然分からなくって。その撮影の日も分からなくって。それが、丁度バレンタインデーの日の撮影だったので、若林さんから、男性陣にチョコレートを渡している時に、「“元”女子からですけど」って言っていたところで。“ん??”って思ったんですけど、後日考えていて、そうなのか~と思いました。

若林:そうそう、言った、言った。バレンタインデーの日だったから、チョコを配ったんですよね。その時に、花瑛さんが晴らしいお気遣いで、皆さんに心配りをしていただいていた時に、皆さんが喜んでいらっしゃって、“今年オレ何個”とか言っていたから、「あっ、僕元女子からなので0.5ですね」って言うくだりをやっていたんですね。その時分かったんですか?

――いや、その時には分からなかったんですけど、撮影を終えて、自宅にもどり、ふっと考えていて、“おっ?!”チョコを男性陣にあげていたけど、元女子って言っていたな~と、考えていたんです。そっか、女子だったのか。と思って自分で撮影した写真を見返すと、あっ、可愛いなって、顔が。

若林:いやだ~、エッチ~(笑)。

花瑛:エッチではない(笑)。

――それで、撮影の時に、私の知人の小野さやか監督が作ったLGBT関連の映画を紹介して、予告篇をお伝えした時に。

若林:予告篇見ただけで、めっちゃ共感するわぁ~ってなって。

――その映画は色々な性のパターンがあって

若林:僕が、こういう公演をさせていただくと、いつも、色んな人がいるんだよって言う、顔合わせの時に“LGBT研修”を1時間位やるんですけど、本当に色々なセクシュアリティの方がいて。そういう人達の一つの生き方を、演劇を通して多くの方に伝えたいって言う感じで今やっている感じですね。

――若林さんご自身はどんな経緯で気づいていったんですか。

若林:あ~、それって凄く難しくって。一番最初に、女の人好きだって思ったのは、僕は幼稚園の先生がめっちゃ好きだったんです。大体、今、幼稚園時代の写真を見返すと、幼稚園の先生の膝の上に座って、鼻の下伸ばしてるっていうのがあって。

花瑛:今でもそうやん(笑)。

若林:今は、違うわ(笑)。で、その、本当に、先生の隣に行けてない写真は、顔が、めっちゃ不満げで(笑)。でも、小学校高学年になって周りの女の子が「誰君好きなん?  誰君好きなん?」っていっている時に、僕だけ“かおりちゃん”だったんです。

“これは男の子の名前を言わなあかんのや”って思ったのを覚えてますね。それから、中学校、高校を経て、皆にカミングアウトをしだしたのは18歳ですね。大学に入って、自分の中の世界が広がって。僕は女子高だったんですけど、当時“誰々先輩と誰々先輩が付き合ってる”“手つないでる!きも~”とかという言葉が飛び交っていた時代だったんで、どうしても言えず。大学に入ってから、世界がちょっと広がって、当事者の先輩にも出会って、カミングアウトとか始めました。20歳からホルモン注射を打って、おっぱいも取りました。

――自分の体を好きだと思えなかったんですか。

若林:受け入れられなかったんですよ。これね~、この話だけで僕7時間位話せます(笑)。

花瑛:長い! 40秒でまとめて(笑)。

若林:40秒でまとめましょう(笑)。いや、僕は、受け入れられなかったです。自分の身体が、女性であるという事が。

――自分のこころに正直に生きているということですね。

若林:そういう事です。

花瑛:あと7秒あるよ(笑)。

花瑛ちほさん=撮影・伊藤華織

花瑛ちほさん=撮影・伊藤華織

■若林:「一人ひとりがメッセンジャーに」という杉本彩さんの言葉を聞いて

――大学とかで表現に出会っていくんですか。

若林:そうですね。大学の就活の時に、僕、本名“マイ”って言うんですけど、“若林マイ”という名前で、スカートを履いて就活かぁ~みたいな。無理やな~って思った時に、大学の授業に杉本彩さんが講義にいらっしゃって、動物愛護について話してくださって。

その時に、1日に約500匹の犬や猫が殺処分されてるって言っていたんですけど。保健所から犬を引き取っていかれる方々が、「私が1匹、2匹、引き取る事で何か変わるんですかね?」って言われたりするんですって。その時に「断言します」「たった一人の力でも、たくさん集まれば、その力で必ず世界は変わります」「だから、もっと、ひとりひとりがメッセンジャーになってください」とおっしゃっていて。その話を聞いたときに、“うわぁ~”って心が奮い立って、僕は就活をやめて杉本彩さんの事務所に、次の週に履歴書を送ったっていう。あっ、落ちたんですけど(笑)。

花瑛:(笑)。

若林:(笑)。次の週には、次の事務所。

花瑛:そこに受かったの?

若林:そうなんです(笑)。

花瑛:(笑)。

若林:就活辞めて、次の週に、表現する世界に行こうと思って。こっちの世界に来たっていう。

――伝える事をしたい、と。

若林:僕は、いつも言っているんですけど。“人生の元を取りたい”。僕がFTMに生まれた事にも意味があって、こういう風に生きていて、今、めちゃくちゃ幸せなんですよ。

なんですけど、おっぱいをとった時は、めちゃめちゃ痛いし、自分でとると決めたくせに、“何でこんな思いせなあかんねん”って、めっちゃ物に当たって(笑)。

だったらFTMに生まれて良かったって思う人生にしたいと思った時に、“あなたに出会えてよかったです”とか、“あなたに出会えて人生がかわりました”ではないですけど、なんか、そういう人に一人でも出会えたらと表舞台に立つことにしました。

――それで、役者さんをされていたんですね。

若林:そうなんです。役者をやっていたんですけど、ある時、お世話になっている方に、“あなたはFTMで俳優で幸せで、それの何が面白いの”と言われて、そんな人、私がプロデューサーだったら絶対使わないって言われたんです。本当に、おっしゃる通りで、表舞台に立つということは、面白くなきゃいけないんです。それは、はははって笑う面白さじゃなくて、もっと、生き方を面白いって思ってもらえないかなと思った時に演劇だ!って思ったんです。それで、2年前に、「イッショウガイ」って言う自分の半生を題材にした作品を創りました。

若林佑真さん=撮影・伊藤華織

若林佑真さん=撮影・伊藤華織

■花瑛:自分がボロボロになっても…全ては作品のために

――花瑛さんご自身の宝塚をお辞めになって次に進む流れはどのような感じだったんですか。

花瑛:私、在団中から小〜中劇場系の作品を観に行く事が多くて、中でもケラリーノ・サンドロヴィッチさんや、艶∞ポリスさんが好きで。あとは大衆演劇好きなんですが、最初観た時、役者さんの熱量に圧倒されて、しかも彼らって、荷積みから照明から全部自分たちでやるそうなんです。それがさらに魅力的に感じて、まんまとハマっちゃいましたね。

私が小劇場に魅力を感じるのは、一ヶ月という期間で、同じ目線で一緒に作品創りが出来るところ。今の作品の稽古もそうなんですけど、一人一人が意見を出し合って、 「ここの感情の流れが分からない」とか、ディスカッションをするんです。みんながぶつかり合って、試行錯誤して、結果同じ方向を向く瞬間が、すごく好きなんです。

だから、作品をよくするためだったら、時には言いたくないことも言いますし、それで結果嫌いになられても仕方ないかなと思います。でも私は、作品に懸けたいし、納得がいかないものをそのままにはしたくないんです。我儘な女優だなって思われても、作品を良くするためだけにいたいって思います。

舞台期間中は、作品のことしか考えていないので、自分がどうとかは無くて。だからボロボロになっても、結果お客様が満足してくださったらいいじゃないか、って思うんです。どう?まとまってます?

若林:まとまってます。素晴らしい~。カットしてください。素敵過ぎたんで、この部分カットしてください。

一同:(笑)。

若林:びっくりしちゃった。

――自分が何をやりたいのかを見つけた人っていうのは、表現者として強いと思います。同じように思う人達と繋がっていくと思います。

花瑛:まさに、一期一会って言葉が似合う世界だなって。タイミングがちょっとずれてたらまず佑真と出会うこともなかったし、この企画も無かっただろうし、そしたら、今のメンバーでお芝居することもなかったわけで。全てはそういうことの連続だから、大切にしたいですよね。その結果、新しい仕事に出会えたり。私は、そういう瞬間が好きですね。

――ご自分で掴み取ったという感じですね。

花瑛:う〜ん…。掴み、いや、まだ…。つまんだぐらい?

若林:つまんだぐらい(笑)。

花瑛:そう、つまんだぐらい(笑)。本当に一期一会ですね~。

若林:いや、本当、僕、花瑛さんにお会いしたのは、共通の知人の舞台を観に行った時に、出てらっしゃって、楽屋で軽く挨拶したって言う。それだけでしたもんね。

花瑛:しかも、それが、その人の独断で(笑)。「多分、ちほに合うと思う」って。

若林:そう、「たぶん、あんたに合うような子、おんねん。呼んでくるね」って言われて。

花瑛:私の第一印象、最悪だったよね(笑)。

若林:そうですね(笑)。顔を洗ってる時に呼ばれて、タオルで顔拭きながら「あっ、花瑛ッス」って。

花瑛:本当、「ウッス」的な(笑)、眉毛もなくって。

若林:金髪で(笑)。

花瑛:金髪で、眉毛ないは、やばいよね(笑)。

若林:(笑)。でもなんだかんだそこから話すようになって、他にも共通の知人がいたりして、それこそ、宝塚の同期の。

花瑛:そう、私の同期の同級生なんですよ。

若林:そうそう。そういうのもあって、そこから急激に仲良くなって。

花瑛:紹介してくれた知人を置いてきぼりにして、仲良くなって(笑)。

花瑛ちほさん=撮影・伊藤華織

花瑛ちほさん=撮影・伊藤華織

■花瑛:“何とかなる”が座右の銘。自分で何とかしないといけないと、自分を奮い立たせています

――今後の活動については?

花瑛:これから、何をするかって言うのは、正直、分からないです。私自身また新しい環境に今年からなっていくと思うので。

――今年っていうのは?

花瑛:う〜ん。また新しい環境で色々な人に出会って、新しいお仕事なり、そういうのが広がっていったらいいなって思っています。

やっぱり“どんどん新しい事に挑戦したい”って常に思いますし。具体的なことを言うと、ドラマや映画等の映像のお仕事だったり、もっと色んな環境で自分を育てたいなって。

もっともっと勉強したいんです。今の現場でも、年齢関係なく共演者の良い所はなんでも盗みたいなと思いますし。例えば、飲み会一つでも、この人から、何を盗れるだろう。ここで何か、一つでも得てやろうって。常に好奇心は無くさないでいたいなと思いますね。

“何とかなる”っていうのが私の座右の銘なんですが、これって一見投げやりに聞こえるじゃないですか。でも、“何とかなる”為には、絶対自分で何とかしないといけない訳で。そこに向かうエネルギーというか、それを言うことによって、自分を奮い立たせてますね。あとは、“謙虚でいたいけど我儘でいたい”。それをするには相当の覚悟と責任と努力が必要ですけど、“謙虚”と“我儘”っていう相反するものを共存させていけたら、人間としてより大きくなれるんじゃないかと思います。…って言う希望です(笑)。

若林:かっこいいなぁ~、カットでお願いします(笑)。

一同:(笑)。

若林:今、僕は、LGBTというひとつの生き方を演劇を通して、伝えていくといくのをやっているんですけど、それは、あくまで、“我々は、こんなに違うんですよ”って言っているのではなく、同じですよっていうことを伝えていきたいと思っていて。僕が想像する未来では、LGBTという言葉は消えると思っているので、そのためにも今、こういう人達もいるんですよって伝えたくて。

でもそうすることで、絶対、苦しむ人達もいるということも分かったうえで、でも嘘にしたくないから、今、広めていって、その結果、「LGBT」という言葉が消えていくというのが理想の形。

人それぞれ、人生にドラマがあったりするので、僕は僕のやり方で伝えて行きたいなって。これが、初プロデュース作品なんですけど、今後も続いていくんだろうなって思うんです。誰かにとって明日生きる人の、ほんの少しの力になって欲しいなって思っています。

そして、「アイイジョウ」をみんなで、試行錯誤しながら、力を借りながら、あがいておりますので、皆さんにぜひ観て頂きたいです。今、自分の周りにいる人達が、何よりも“アイイジョウ”です、はい(笑)。

花瑛ちほさん(右)と若林佑真さん(左)=撮影・伊藤華織

花瑛ちほさん(右)と若林佑真さん(左)=撮影・伊藤華織

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