「ミュージカルを、もっとありふれたものに」、田代万里生&平方元基対談(下)

平方元基さん

2019年10月4日(金)に大阪・新歌舞伎座公演で初日を迎え、東京、茨城、愛知でも上演される日本初演のミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』に出演する田代万里生さんと平方元基さんのインタビュー、後半です。『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』出演を控えて取り組んだ『エリザベート』では、同じフランツ役を演じるにあたって、これまでとは違った思いで取り組んだといいます。同じ役を演じることが多かったおふたりに、思いの変化などについて伺いました。有料部分ではさらにおふたりがミュージカルの未来について考えていることなども語っていただきました。

平方元基さん

平方元基さん

田代万里生さん

田代万里生さん

――ここからは、お二人について掘り下げたいのですが、これまで再演などで同じ役を演じてきて、今ダブルキャストを演じていて、ついに共演と段階を踏んでいますね。

田代:僕が演じた役を元基が引き継いでくれているものが多いよね。

――今エリザベートで同じフランツ役をやっていて、一緒に稽古をしてきたからこその発見などはありますか? 一緒に作っていてどんなことをお互いに思われたのかなと。

平方:経験のある万里生くんのフランツは、稽古場の初日からもう表現の域にいるわけじゃないですか。その日からお客さんが入っていても、正直まったく問題がない状態からスタートしてる。役づくりをするときに、普通はまず自分で考えたもので稽古を進めていくのですが、今回は人が演じている自分の役を見て、つまり万里生くんのやっているフランツを見て、自分の今のフランツができたんですよ。それが初めての経験だったんです。

――これまでのダブルキャストではなかった経験なんですか?

平方:人を見ながらも……。

田代:通常はなぞらないようにしようと考えながら、最初はやると思いますが。

平方:今回はそうじゃなかった。

田代:どちらも警戒せずにオープンだったよね。

平方:いつもだったら、自分で作ったものを稽古場で出したときに、ふたりの違う所を見出すんですが、今回は最初から万里生くんのフランツがいたので、そこからインスピレーションをもらって。

田代:でも、お互いルドルフもやっているから作品を理解しているところもあって、元基がもともと持っているフランツ像は絶対にあったよね。

平方:そうだよね。

――なるほど。逆に、田代さんが、平方さんが稽古場で作っている姿を目の当たりにするのも、あまりないことですよね。どう思いましたか?

田代:これまで意外と共演作はなくて、『シラノ』と今回の『エリザベート』しかダブルキャストはやっていないんです。あとは、同じ現場にいたことがなかったので、意外にわちゃわちゃしている元基しか知らなくて(笑)。

平方:正解。

田代:でも、いつも「どうしよう」と言いながら、ちゃんと形にして持ってくるんですよね。

平方:だって、持ってこないと。

田代:最初は「ここはどういう風になってるんですか?」と質問攻めに合っていましたが、途中からは、ちゃんと自立して(笑)。

平方:お兄ちゃん。

――お兄ちゃんと弟ですね(笑)。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ミュージカルの未来について、30代、40代の役者たちがどうしていかなければならないと思っているかなどについて話してくださったインタビューの後半の全文を掲載しています。(今回の記事には独自撮影の写真はありませんが、どうかご了承願います)

<有料会員限定部分の小見出し>

■平方:片方がどんな芝居をしても、嫌な方向に気になるということが全くなかった

■田代: 韓国ではミュージカルで活躍している俳優さんがテレビドラマに出ていることも多く、舞台とテレビの垣根があまりないようです

■平方:30代、40代の役者たちが諦めずにやっていくことを、やり続けなければ

■田代:日本初演、見逃したら後悔する 平方:芸術の秋、すごく観やすい作品

<ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』>
【大阪公演】2019年10月4日(金)~10月5日(土) 新歌舞伎座
【東京公演】2019年10月9日(水)~10月16日(水) よみうり大手町ホール
【茨城公演】2019年10月19日(土)~10月20日(日) 水戸芸術館ACM劇場
【愛知公演】2019年10月29日(火) 御園座

公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/soml2019/

<関連リンク>
HORIPRO STAGE ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のページ
https://horipro-stage.jp/stage/soml2019/
田代万里生オフィシャルウェブサイト
http://fc.horipro.jp/tashiromario/
田代万里生オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/mario-capriccio/
田代万里生ホリプロオフィシャルサイト
https://www.horipro.co.jp/tashiromario/
平方元基 Twitter
https://twitter.com/hirakatagenki
平方元基オフィシャルサイト
http://fc.horipro.jp/genkigumi/
平方元基オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/hirakata-genki/

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※ここから有料会員限定部分です。

■平方:片方がどんな芝居をしても、嫌な方向に気になるということが全くなかった

田代:フランツの中身については、あまり話していなくて、僕もあえて言い過ぎないようにしました。元基も質問してくる内容はテクニカルなことが多くて、深層心理的な所はあまり話しませんでした。元基ならではのように表現をしていたと思います。でも、ゴールはちゃんと小池(修一郎)先生がコントロールしているので、ルートは全然違うんですが、また違うフランツが誕生したと感じました。僕が初演で演じた『アリス・イン・ワンダーランド』も、元基が出演している再演を観に行きましたが、僕が演じたときと全然違う役柄を生んでいました。やはり演出の鈴木裕美さんが、僕がやるからこそのウサギ、元基がやるからこそのウサギ、と、求めるものが違うから、とてもおもしろかったです。今回、元基がフランツを作っていく過程はとてもポジティブなものを感じました。

平方:稽古場がとてもいい雰囲気だったんです。

田代:そうだね。

――『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』では同じ役を作ることになりますね。

田代:この作品をやることは決まっていた上で、フランツを一緒に作り上げたので、お互いにほおっておけない感じには多分なっていたんです。自分を見ているような感じ。『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』は役もトレードしますし、お互いにフランツを成功させなければこの作品に挑めないと思っていて、やはり僕も無視できなかったです。

――水面下で支え合っているような?

田代:支え合っているというよりも、信頼し合っている感じ。

――なるほど。

平方:だから、片方がどんな芝居をしても、嫌な方向に気になるということが全くなかったですね。

田代:運命共同体だったから(笑)。

平方:わかっていたしね。

――半年をかけての運命共同体ですね。

田代:『エリザベート』の稽古の頃には、まだ『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』の発表をしていなかったので、「田代万里生のフランツいいぞ」「平方元基のフランツいいぞ」「このふたりの舞台を観たい」となってほしいと思っていました。元基のフランツも、僕ができないフランツを生み出して、そこでお客さんが「素敵!」とならないと、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』にも来て頂けないですし。

平方:だから、いろいろなプレッシャーはありましたよね。『エリザベート』が再演を重ねた作品であるプレッシャーもありましたし、この新しい作品へのプレッシャーもありました。

――その結果、おふたりとも素晴しいフランツで、本当に今おっしゃったようなことになっていると思います。「そのふたりが、これをやるのか」と。

田代:ありがたいことに東京公演はチケットが完売しているので、地方公演も是非チェックしていただきたいです。

――地方の方はもちろん、東京で観られない方が行かれるかもしれませんね。

田代:ぜひ来ていただきたいと思います。

■田代: 韓国ではミュージカルで活躍している俳優さんがテレビドラマに出ていることも多く、舞台とテレビの垣根があまりないようです

――8月にオペラシティで行われた『Brand New Musical Concert2019』を拝見しましたが、出演されていた30代の皆さんが個性的で素晴らしくて。

田代:四捨五入したら40歳(笑)。

――同日に『レ・ミゼラブル』『エリザベート』が上演されていて、さらに次の作品の稽古が行われていて、もちろん違う活動をされている方々もいる。この状況が成り立っている今のミュージカル界に気づいて衝撃的に震えたんです。

平方:層が厚いということですね。

――10年前、20年前には想像できなかった状況が、実現している今がすごいなと思いました。その中にいらっしゃるおふたりが、どう思っているかお伺いしたいです。

田代:この時代の変化は感じます。先日のオペラシティのコンサートの打ち上げで、同世代の出演者同士、これからのミュージカル界についていろいろ話しました。韓国のイ・ソジョンさんと、韓国のミュージカル界と日本のミュージカル界の現状の違いを話したりもしました。韓国ではミュージカルで活躍している俳優さんがテレビドラマに出ていることも多く、舞台とテレビの垣根があまりないようです。

平方:10年前だと僕がロミジュリ(『ロミオ&ジュリエット』)をやるかやらないかくらいの時。だから、あまり実感はないんです。(井上)芳雄さんや育(山崎育三郎)たちと話していると、お二人は僕たちよりも長い間ミュージカルの世界にいるわけじゃないですか。お二人の方が変化を感じているみたいです。でも、僕は本当にちょろっと来て(笑)。

田代:いい時代に生まれた(笑)。

平方:うん。

――日本のミュージカル界の成長途中にこの世界に入ってきた感覚ですか?

田代:現代っ子(笑)。

■平方:30代、40代の役者たちが諦めずにやっていくことを、やり続けなければ

平方:でも非常にありがたいことですよね。観てくださるお客様もそうですし、テレビでも、フラッシュモブ的なことでもそうですが、ミュージカルっぽいことが、とても日常的になり始めています。怖がらないでチャレンジしていけるところは開拓していかないと、このまま火は鎮火してしまうので、どんな風にして今の盛り上がりを一過性にしないのか。まずは本質的に作品が魅力的でないといけないですから、そこに出ている30代、40代の役者たちが諦めずにやり続けていかなければと思っています。すべてのミュージカル作品が満席なわけではないですからね。お客様が好きに、自由に作品を選べるように、もっとありふれたものにしなければ、結局限られた人だけのものになってしまいますよね。

――『レ・ミゼラブル』『エリザベート』のチケットが特にないという状況ではなく。

平方:そういう状況の中で、やはり『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』も果敢に挑戦しきたいという思いはあります。もしかしたらお客様も、大きい劇場でメジャーな作品をやっているほうが、喜んでいただけるのかなって思ってしまう節もあります。でも、そうじゃないんだって。僕はミュージカルを続けさせて頂いていて、戦ってみようと思える理由は、挑戦したいから。こういう作品もどんどんやるべきだと思いますし、大きい作品だけに飲み込まれないで、とても密度の濃い、「すごいね」と言ってもらえるようなものをたくさん提供していけるような未来になればいいなと思います。大きい作品もあるし、小さい作品もある、バリエーションがあるほうがいいですよね。

――今の話を聞いて、田代さんはいかがですか?

田代:今のは聞いてた(笑)。僕がいつも話している同世代のメンバーは、結構危機感をもって仕事をしているなと感じます。現状には感謝していますが、まだまだ今のままではいけないよなと。それは自分個人だけでなく、個人を越えて、この業界をという規模で考えている人が多いと思います。この盛り上がりをさらに広げ、継続させていくために『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』のように連日完売のモンスター作品をゼロから作っていく過程に、今後僕らも携わっていけたら、と思います。

■田代:日本初演、見逃したら後悔する 平方:芸術の秋、すごく観やすい作品

田代:『スリル・ミー』で、初演から徐々に超人気作に成長していく過程を強く体感しました。本当に小さいところで、なにもないところからやりましたから。それがあんなに再演されて、熱狂的なファンがいる。『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』もそうなりうる作品だと思います。ある意味、「こっちの方が好き」という人も出てくるかもしれない。だから、初演に携わることができるのは、うれしいですね。

――ぜひ、みなさんへのメッセージをお願いします。

田代:東京ではどちらかの組み合わせしか観れないという方も、きっといらっしゃると思います。2パターンが全然違う感じになると思うので、ぜひどちらの組み合わせも観ていただきたいです。

――写真だけでも全然違いますね。

田代:とにかく日本初演なので、これを見逃したら後悔する。

平方:芸術の秋だし。

田代:(笑)。

平方:違う?(笑)。でも、芸術の秋ですし、やはりミュージカルに触れてみようと思っている人は、たくさんいらっしゃると思うんです。なかなか手を出しにくいという方もいらっしゃると思いますが、グランドミュージカルよりチケットの値段も安いですし、水戸に納豆を食べに行くついでだったり、名古屋に観光に行くついででもいいんです。

――秋の観光も交えてですね。

平方:すごく観やすい作品だと思います。

田代:何度も観たくなる作品だと思います。

――2パターン観たら、また戻りたくなる、きっと無限ループ作品ですよね。

平方:「反対のバージョンは、どうだったっけ」って。

田代:それに、やっている内に僕らも変わっていきますしね。

――大阪と最後の名古屋では、きっと違うでしょうね。

平方:そうですね。生きていたらいいな(笑)。

田代:結構ハードですからね。

平方:スルメ作品だと思いますので、噛みしめて観ていただけたらと思います。

ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のフライヤー

ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のフライヤー

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“「ミュージカルを、もっとありふれたものに」、田代万里生&平方元基対談(下)” への 8 件のフィードバック

  1. 午後のミルクティー より:

    名古屋での千秋楽を前に記事を読み直して、この半年のお二人の過ごされた時間がまさに今回の公演に現れているなと感じています。二人の信頼関係があってこその二役トレードでの全力の連日公演でした。
    大阪での初日から、観劇のたびに少しずつ違うように感じるそれぞれのトーマスとアルヴィン。
    その回によって、二人の物語にヒリヒリした痛みを感じる時もあれば、暖かい癒しを感じる時もあり、観劇する側にとっても不思議な体験でした。
    これからさらに年月を経てこの物語も、田代万里生さん平方元基さんのお二人も、どのような変化を遂げるのかとても楽しみです。

  2. kei より:

    水戸公演後、あらためて記事を読み返しました♪平方さんが(上)で仰っていた、「アルがトムに割りと押し付ける」あざとく見えそうで見えない押し付け、時にあざとくも見える押し付けに(良い意味で)、うんうんと頷いてしまいましたw
    お二人のトムとアルのちょっとした所作が、
    無限のループを加速している様にも思え始めてきましたw
    そして、自分にもクラレンスがいるかもしれないと思え、暖かい気持ちになれる作品だと思います。来年も再来年もこの先ずっと観られることを願っております♪

  3. kei より:

    「2パターン観たら、また戻りたくなる、きっと無限ループ作品」
    まさにその通りの作品でした✧*。
    もともと好きだった俳優のお二人、主演の田代さんと平方さんが、一緒に出演され、しかも役をトレードで出演される作品で注目していました。そのお二人の事前インタビューを心に留めて観劇しました。
    お二人がこれからのミュージカル界のことを考えながら挑んだ作品でもあったんだなぁと思うと、違う角度から観てもワクワクと、これからの期待しかありませんでした♪
    お二人の引き出しの多さとと、絶妙な間と掛け合いがトムとアルの各々の違った強さと弱さを引き立たせた、全力のトムとアルがそこにいて、照明、セット、音楽、全てがお二人に注がれ、これこそ相乗効果と化学反応だなぁと思い
    無限のループ沼へ落ちましたwww

  4. オレンジほっぺ より:

    観劇後にもう一度読み直しました。
    インタビューで仰ってらっしゃる通り。2パターン全然違いました。
    何度も観たくなる作品でした。
    トーマスの深層の中へ引き込まれて
    いつのまにか号泣。
    強く強く再演を希望する作品です。

  5. kuko310 より:

    先日両バージョンを見てきました!
    本当に雰囲気が違って、どちらも好きでまた両方見たくなります。お二人の信頼しあう感じも伝わってきて素敵な作品でした。音楽も舞台セットもよくて、声が重なるところがとっても素敵でずっと聞いていたい、また、見たいってなります。スルメ作品を噛み締めています(笑)あらためてインタビューを読み直して田代さんと平方さんが初演で良かったなあと思います。再演があったら絶対見に行きたい。
    お二人のこれからのご活躍も楽しみにしております。またアイデアニュース様でインタビューしてくださるのも期待しておりますのでよろしくお願いいたします❗

  6. しゅんもも より:

    愛嬌もあるし、ミュージカルの将来もしっかり考えてらっしゃる、おふたりの雰囲気がとてもよく出ていて素敵なインタビューでした!公演がますます楽しみ!ぜひ再演を繰り返して、お二人の成長も感じられるミュージカルに成長して欲しいです!

  7. のこ より:

    後半もさらに濃いお話が伺えて嬉しいです。
    ミュージカル界についてお二人が感じてらっしゃることも知ることができましたし、もちろん、今回の作品についてもさらに期待度が増すインタビューでした。
    今から公演が楽しみです!

  8. urgn より:

    後編もすぐに掲載して頂いて、わくわくしながら拝見させていただきました。
    ありがとうございました。
    ゲネプロや本番の動画もアップしていただけると嬉しいです!

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