「答えを出さなくていい」、『フランケンシュタイン』加藤和樹&小西遼生対談(上)

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

ミュージカル『フランケンシュタイン』が、2020年1月8日(水)から2月24日(月)まで東京・愛知・大阪で上演されます。2017年の初演で熱狂的なファンを生み出した作品の再演に、ビクター/ジャック役の中川晃教さんと柿澤勇人さん(ダブルキャスト)、アンリ・デュプレ/怪物役の加藤和樹さんと小西遼生さん(ダブルキャスト)たちが初演キャストが帰ってきます。4組の組合せの違いも興味深かった初演から、3年の時を経て同じキャストがどう見せてくれるのか期待が高まります。加藤さんと小西さんにインタビューしました。上下に分けて掲載します。上ではこの作品の魅力や、演じるにあたっての難しさ、初演にどのように取り組んだかなどについて伺った内容を掲載します。下ではおふたりがそれぞれのアンリと怪物を、どう思っていたか、ふたりのビクターについてどう感じていたか、再演への思いなどについて伺った内容を掲載します。

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

――初演の『フランケンシュタイン』に出演されていて、作品や役に対して一番面白かったなというポイントはありました?

加藤:(鈴木)壮麻さんが……(笑)。

小西:ボーリングのピンを頭にのせていましたね(笑)。

加藤:毎公演、ハプニングじゃないですが、なんだかんだいって、壮麻さんもすごく楽しそうでした(笑)。

――悲劇性のある作品のなかに見つける楽しさみたいな(笑)。

加藤:それは多分、ルンゲとしてもそうですし、イゴールはイゴールで、勝手に踊り出してしまうとか。それを毎回観るのが結構楽しみでした(笑)。

小西:イゴールは無声芝居だったね、ほとんど喋らない(笑)。

――“面白かった記憶”として思い出すのは、ご自身のことではないんですね。

加藤:役的にはどうしても。唯一酒場のシーンぐらいですかね。踊りもありますし。

小西:僕たちのキャラクターだけ通し役でしたから、そういう意味での演じる面白さはやはりありましたね。

加藤:そうですね。

小西:もちろん全く逆の役をやるのも面白いと思いますが、約3時間の上演を通してひとつの役を完成させる面白さは、役者としては面白いですし、やりがいもあります。でも初演は結構、生みの苦しみがあったような気がするね。

加藤:ありましたね、確かに。

小西:身も心も削っていましたね。

――加藤さんは福岡でアクシデントがありましたね。

加藤:歯を折りましたね(笑)。

小西:ああ!

加藤:あれはもう自己責任なんですが、戦うところで、相手の裏拳がパーンと当たったんですよ。距離感がわからなくなってしまって、普通に歯が落ちましたもん、ポンって(笑)。僕、舞台上で一瞬気を失ったんですよ。

小西:歯をやったのは覚えてる。

加藤:あの日、みんなで水炊きを食べようみたいな話をしていたじゃないですか。僕、行けなくて(笑)。

<取材協力>
加藤和樹さんの衣裳
Kazuki Nagayama(STUDIO FABWORK 03-6438-9575)

※アイデアニュース有料会員限定部分には、初演でおふたりが一番注力した、大事にしたものなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。11月14日(木)掲載予定のインタビュー「下」では、おふたりがそれぞれのアンリと怪物をどう思っていたか、加藤さん自身と小西さん自身の似ているところと似ていないところ、ふたりのビクターについてどう感じていたか、再演への思いなどについて伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■小西:心は純粋無垢なままなのに、見た目は醜い。面白いのはその部分だなと

■加藤:時間経過がすごくあった。その関係性は、アッキーさんとすごく話した

■小西:本番でも毎日変化しているところもある。心は答えを出さなくていい

■加藤:役自体の個性が強いので、一緒に作るより、自分で作り上げるしかない

<ミュージカル『フランケンシュタイン』>
【東京公演】2020年1月8日(水)~1月30日(木) 日生劇場
【愛知公演】2020年2月14日(金)~2月16日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
【大阪公演】2020年2月20日(木)~2月24日(月) 梅田芸術劇場メインホール
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/frankenstein2020/
特設サイト
https://www.tohostage.com/frankenstein/

<関連リンク>
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http://www.katokazuki.com/
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加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■小西:心は純粋無垢なままなのに、見た目は醜い。面白いのはその部分だなと

――観客的にも、結構「身も心も削って」観るような作品でしたが、おふたりがあの役演じるにあたって一番注力した、大事にしたものをお聞きかせください。

小西:僕は原作を意識してやっていました。新たな命が生まれた時に、それが純粋なものでありつつも、傍から見るとおぞましいものであった為に虐げられた命が“怪物”なんですよね。和樹はよりベイビーなところからやっていたよね。

加藤:そうですね。

――ベイビー?

小西:心は純粋無垢なままなのに見た目は醜い、人の残酷さとか業(ごう)とか、原作の一番面白いところはその部分だなと思っていたんです。自分の意志で生み出しておいて、それが醜いものだったから、例え心がピュアでも捨てられてしまう。そこで復讐が始まるというか。その絶望を抱えるのが怪物でしたから。僕は原作の『フランケンシュタイン』の持つ本質的な部分を採り入れたいなと思って稽古をしていました。更にこの作品では、怪物になる前にも命がある。そして友情物語もあるという部分に関して、より後半で人の業やおぞましさが見えるように作りたかったので、筋を通してこだわってやっていたかなと思います。

小西遼生さん=撮影・岩村美佳

小西遼生さん=撮影・岩村美佳

■加藤:時間経過がすごくあった。その関係性は、アッキーさんとすごく話した

加藤:今思い出したんですが、意外とこの作品は、時間の経過がすごくたくさんあったなと。

小西:前半は特にそうだね。

加藤:場面がスキップスキップしていたので、その間の関係性について、アッキー(中川)さんとすごく話した記憶があります。

――その場面の間(あいだ)を埋めるような感じですか?

加藤:冒頭の戦場でビクターのところに連れられて行き、そこからビクターの家に帰ってきた時には、実はもう1年ぐらい経っていたんです。その時間軸のなかで、それぞれの関係性がどの程度のものなのか。それはビクターだけじゃなくてルンゲとの関係性もそうですし、このぐらいのルンゲとアンリの距離感みたいなものにもなっているなとかも考えました。その後の怪物になってからの時間経過や、いろいろ時間が戻ったり、また進んだり、時間のジャンプが結構あったので、ごっちゃにならないようにと、その時間軸を自分のなかでしっかり持っていたような感覚を思い出しました。

――おふたりで初演を作っていく時、そういう様々な要素について相談したりされたんですか?

小西:相談はしていないよね。

加藤:あまりしてないですね。

小西:稽古を一緒にやっていたので、このシーンはどっちからみたいなのがあって、結構先に自由にやって、じゃあ次に違うアプローチをしてみようというのをお互いにやっていましたが、相談はしていないね。

加藤:そうですね。(演出の)板(板垣恭一)さんが仰っていましたが、それぞれが違っていいというところで、ここだけは絶対という決め所だけはありましたが、それ以外に関しては、本当にそれぞれが、僕たちだけじゃなくてビクターのふたり(中川・柿澤)も全く違うアプローチでした。その面白さは、この作品にはあると思いますね。韓国版の皆さんも結構自由にやっていたので。

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

■小西:本番でも毎日変化しているところもある。心は答えを出さなくていい

小西:本当に自由だったよね。

加藤:本当にキャストで全然違うから。

小西:良い意味では自由ですが、逆を返すと、そこが定まってない作品ではあった
よね。

――作る側としては、日本版として自由にやりようがあった?

加藤:こっちも向こうのままやろうという意識もありませんでしたし、元々、板さんがそういうつもりじゃありませんでしたから。

――4種類の組合せがそれぞれに違うのが面白いですし、お客様があれだけ熱狂的になったのもそういうところもあるだろうなと思いますが、その違いについて、おふたりでもそういう話をするわけでもなく、きっとビクターのふたりも話していないという感じですよね。そうすると、お互いに稽古を重ねるなかで、結果4種類になっていったという感じでしょうか。

小西:もっと言うと、本番でも毎日変化しているところもあるので。心の部分を話し合っても、あまり意味がなかったかも。

加藤:確かに。

小西:答えを出さなくていいというか。

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

■加藤:役自体の個性が強いので、一緒に作るより、自分で作り上げるしかない

――舞台の上で日々変わるというのは、その場だけで、終わった前後に話すわけでなく、その瞬間瞬間に生まれるものをお互いに、言葉を交わさずに作られていくという感じですか。

加藤:そうですね。「あそこはこうだったよね」というのも別に、そんなに気になる公演もありませんでしたが、こっちもそれを自然に楽しんでいたところもあります。純粋に芝居の根本だと思いますが、相手から来たものに自分がどう返すか、相手にどう反応するかが、日々すごくあった公演でしたね。

小西:ふたりのビクターにはやはり信頼があります。2幕で怪物を虐げる役をビクターだった人が、ジャックとして演じるじゃないですか。1幕であれだけ信頼関係を得たふたりが、虐げる側に回って憎しみを増長させてくる側になる。その時に、ふたりとも思いっきり厭味を飛ばしてきてくれるので、後半に行くにつれて、心が成長していくにつれて、怪物の恨みや復讐の気持ちも強くなってきます。そういうものをちゃんと、暗黙の了解でやってくれるので、こっちも返せる。そういう信頼関係もありますし、かといって、そこの説明も意外と描かれていない作品だから、そこは結構エネルギーを僕たちでどんどん大きくしていくという作業だった気がしますね。

――4人ともそれぞれの組み合わせの、お互いの信頼があったからこそ成り立ったあの世界。

小西:やりたいことは、みんなお互いにあるんですよ。どういう役にしたい、みたいなものが。相談していないですが、それはわかるから。

――それを口にせずお互いがやるということ?

小西:そんな感じです。

加藤:見ていて、多分お互いに感じていたところだとは思いますね。

――お互いにそれをみんな確認するわけでもなく。

加藤:だって、わざわざ相手に「自分はこうするから」って言わないじゃないですか(笑)。

小西:言わないよね(笑)。

加藤:言われても「どうぞ」ってなっちゃう(笑)。

――それが、ふたりの友情や戦いにうまく反映された。

加藤:やはり役自体の個性が強いじゃないですか。そこに負けないためには、自分たちで一緒に作るというよりは、自分で作り上げていくしかないというところも多分あったんだと思います。

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん(左)と小西遼生さん(右)=撮影・岩村美佳

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“「答えを出さなくていい」、『フランケンシュタイン』加藤和樹&小西遼生対談(上)” への 20 件のフィードバック

  1. ひろ より:

    読みごたえのあるインタビューと、
    素敵なお写真をありがとうございます!
    初演は観ることができず、
    再演をずーっとずーっと待っていました。
    このインタビューで二人のアンリ・怪物、
    4組の組み合わせの違いが、
    ますます楽しみになりました。
    チケット増やしたいー!

  2. より:

    アンリ/怪物と同じ役を演じたお二人ですが、初演を観劇させていただいた際、本当に全く違ったアンリ/怪物で、お二人それぞれの役としての心情を読み取ろうと必死に、真剣に、表情の一つ一つを観ていたことを今でも鮮明に覚えています。
    あの時は、こう見える、恐らくこういう意図だろう、と自分なりに考察を広げることしか出来ませんでしたが、このインタビューを読ませていただき、役作りやビクターとの関係性、またお互いの役に対する考え方等を少し知ることができ、再演が更に楽しみになりました。
    更に掘り下げられ、深くまで作り込まれたフランケンシュタインを観るのを心から楽しみにしております。

  3. ゆう より:

    前半読ませていただきました。
    初演で熱狂し通ったフランケンシュタインファンとしてとても興味深いインタビューでした。
    ビクター/ジャック、アンリ/怪物のWキャストによる違いが結末の印象すら違う物にしていたのがとても記憶に残っているので役作りの過程も話し合わず、でもお互いを観ながらそれぞれに作り上げたというお話でとてもしっくりきました。
    後半も楽しみに読ませていただきたいと思います。

  4. JUN より:

    いつも楽しく拝読させていただいてます。
    再演を心待ちにしている作品。
    写真も記事も読み応え満載で
    来年のフランケンシュタインの開幕が一層楽しみになりました。

  5. 櫻井 より:

    初演時の大楽から約3年。待望の再演がいよいよ。とインタビューを見て感じました。個性的な4ペアがまさか自然と出来上がったものとは予想外で、とても読みがいのあるインタビューでした。これから始まる稽古で更にパワーアップした2020年の公演が今から楽しみで仕方がありません。
    素敵なインタビューをありがとうございました。

  6. ちゅーた より:

    初演観劇できなかったので今回こそは観に行きたいと、お二人のお話を拝読して思いました。
    素敵な対談ありがとうございます!

  7. 京琴 より:

    いつも素敵な記事に写真をありがとうございます!フランケンシュタイン!再演を心待ちにしてました!実現するとわかった時は狂喜乱舞(笑)その作品のインタビュー記事を岩村さんで…もういつも素敵な読みごたえありの記事を書いて下さるので楽しみにしてました。そして期待通り!ありがとうございます!後半が待ち遠しいです!

  8. 雅美 より:

    読み応えたっぷりのインタビュー記事ありがとうございました。お写真もたくさん、いつもありがとうございます!!(下)も楽しみです。

  9. まみろう より:

    いつも素敵な記事をありがとうございます。
    観劇に興味のない方のインタビューではない、ということが、何より嬉しいです。
    岩村さんはフランケンがお好きなんだなぁ同志だなぁという感じです(^^)
    後半も楽しみにしています。

  10. ロゼ より:

    毎回岩村さんのインタビューはよくある質問だけでなく、聴かれる側の性格とかに合わせて深く聴いてくださるので、いつも心に残るインタビューになります。
    イゴールさんのお話は笑いました。
    明日のお互いにどう思っていたか?は、とても興味深いです。
    お稽古中、公演中か後にもインタビューお願いしたいです。
    変わっていくお二人を見たいので、よろしくお願い致します。

  11. なつき より:

    いつも素敵なインタビュー&写真、ありがとうございます!
    役として/役者としての関係性やスタンス、とても興味深く読ませていただきました。明日の記事も楽しみです。
    初演は観ることができなかったので、年明けの公演が待ち遠しいです!

  12. ぽち蔵 より:

    いつも素敵なお写真と興味深いインタビューをありがとうございます。
    4人の関係性を成る程と思いながら拝読致しました。
    明日の後半も楽しみです。

  13. みゆポン より:

    岩村さんこんにちは。
    今回も楽しいお話しありがとうございました。
    悲しい話だけど見応えがあり、難役をやるお2人皆さんすごいです。
    前回も拝見したけど、また再演で見るのとても楽しみです。下も楽しみにしてますね。

  14. clover より:

    益々
    楽しみになりました
    ありがとうございます

  15. りい より:

    いつも素敵な記事をありがとうございます。二人の対談がどこかで読めるといいなぁと思っていたので、とても嬉しいですし、興味深く読ませていただきました。明日の記事も楽しみにしていますね。

  16. Megu より:

    いつも素敵な写真と記事をありがとうございます♪
    また明日の後半を楽しみにしてます(^-^)

  17. えむえいち より:

    いよいよ始まるかと思うとわくわくします!
    またの更新を楽しみにしています。

  18. あきしゃん より:

    いつも素敵な記事と写真ありがとうございます。
    来年の楽しみが増えました

  19. まめ茶 より:

    更新ありがとうございます!
    お二人の怪物さんをどちらも見てみたくて、1月に観劇するのがとても楽しみです。
    そして今回も、素敵なお写真をありがとうございます!
    チェキ当たりますように。。

  20. ぴーちりーふ より:

    いつも素敵な記事&お写真ありがとうございます。またあの作品が観れる!と楽しみです。後半の掲載楽しみに待ってます。読み応えのある記事をありがとうございます。

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