ミュージカル『ミス・サイゴン』でエンジニア役を演じる、駒田一さん、伊礼彼方さん、東山義久さんの鼎談をお届けします。エンジニア役を演じるのは3回目の駒田さん、今回が初めてとなる伊礼さん、東山さんに、エンジニア役の魅力や、なぜ演じたいと思ったかについてなどを伺いました。(このインタビューは、『ミス・サイゴン』全公演の中止が決まる前の製作発表時に実施したものです)
※編集部注:ブロードウェイ・ミュージカル『ミス・サイゴン』は、新型コロナウイルス感染症拡大にかかわる政府及び各地方自治体の方針等を踏まえて、各地ツアー公演を含めて全公演を中止とすることが、2020年4月8日に発表されました。
――エンジニア役の魅力について伺わせてください。なぜこの役を演じたいと思いましたか? 駒田さんは3度目になりますね。
駒田:劇団フォーリーズの時から『キャバレー』でいうとMCのような、狂言回し的な役をやらせてもらうことが非常に多く、僕自身も好きで、そういう役をいつも狙っていたんです。つまり、お客様との会話ができる、お客様に直接投げかけることができる役が非常に好きで、その究極がエンジニアだと実は思っているんです。そういいながら、器用な狂言回しではなく、「僕ってこうなんだよ」という人間の泥臭い瞬間を、あえて格好をつけながらも、人間の色みたいなもの、匂いが出てくる役がエンジニア。さらには、舞台上でキレたり大きな声を出したりするって、すごく面白いじゃないですか(笑)。
――なるほど(笑)。
駒田:だって役者って、何でもできるんですよ? 殺人者になることもできますし、お姉さんになることもできますし、盗みもできちゃう。エンジニアは、アメリカに行きたいということは実現しなかったり、本当に人間として面白い、泥臭い。生き延びるために嘘をついてでも人を傷つけてでも、自分だけは生き延びていこうという、その信念は本当に強いものがあるから、それを自分のなかに当てはめた時に、面白いなと思ったんです。とにかくやりたい役でしたね。
伊礼:僕も、もともとそういう役が好きで、遡ると『エリザベート』をやっている時に一番魅力に感じたのはルキーニ役で、いつかこれをやりたいなと思っていました。まだ叶っていませんが、まだまだチャンスはあるのかな。いまだにやりたい役ではあるのですが。
駒田:本当に良い役だからね。
伊礼:これまで、僕はそういう役は全然やっていませんでしたが、昨年『ジャージー・ボーイズ』でトミー役を演じました。物語が4つの季節の構成になっていて、その最初の「春」を、狂言回し的に舞台を立ち上げ、コントロールすることを味わいました。プレッシャーで責任ある役どころではありましたが、場をコントロールする、立ち上げることは、非常に楽しいなと思えたんですよね。一さんと重複しますが、その最たるものがこの『ミス・サイゴン』のエンジニアなんじゃないかなと思っていて、一度チャレンジしたい思いがどんどん強まっていきました。『ジャージー・ボーイズ』を経験してから、その思いが強くなったんです。でも演じるのに適した年齢もありますし、役の経験がなければできないところがあるので…。
駒田:そうね、年齢ってあるよね。
伊礼:はい。だから、いつかはやりたいと思っていた役のひとつではあるのですが、この年齢で叶ったことは非常に光栄ですし、嬉しいです。
東山:僕は『ミス・サイゴン』を観たことはあるのですが、自分が演じると思って観ていなかったという意味では、ちゃんとした印象が明確に残っていなかったんです。ある時のコンサートで、『アメリカン・ドリーム』を歌ってみたらと勧められて挑戦したら、自分に合っている合っていないではなく、すごくパフォーマンスをしやすかったんです。そのコンサートのなかでは、『アメリカン・ドリーム』をそのままの形で披露したわけではないのですが、勉強のために市村(正親)さんや、一さんが歌ってらっしゃる映像など、いろいろと見せていただいていたら、海外のバージョンでは、スキンヘッドで芝居をしている方がいたり、すごくいろんなタイプのものが出てきたんです。僕は役に対する欲が、今まで本当にないんですよ。「この作品に携わってみたい」ということはあるのですが、あんまり欲はないほうで、来た役を一生懸命やる。そして、次にその作品を再演する時、僕と一緒の役の人と飲みたいと思うんです。彼方と一緒に、謝(珠栄)先生の『眠れぬ雪獅子』というオリジナル作品をやったのですが、本当に大変だったんです。次に再演があったら、同じ役をやっていたみんなで飲みに行きたいねというくらい。オリジナル作品は、ゼロから作れるという、最高に面白いことができるじゃないですか。そういう意味では、『ミス・サイゴン』のように、ずっと上演されている作品の役を演じたいという欲は、これまであまりありませんでした。でも、このエンジニアだけはすごく違って、やはり観れば観るほど、欲というか、「僕がやったらどうなるんだろう。すごく面白いな」と思ったんです。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、どういう状況でエンジニア役に決まったと知ったのかと、その時の気持ち、市村正親さんと駒田さん伊礼さん東山さんの4人でエンジニアを演じることについてなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。5月19日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、『ミス・サイゴン』の歌の特徴や、オーディションや歌稽古の様子、最後にひと言ずつ話していただいたメッセージなど、インタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■東山:本当にエンジニアという役ができれば、どこでも通用するのではないかと思います
■駒田:なんかね、合う、良いと思う。面白いふたりが来たので、面白くなるだろうねって
■駒田:ひとりでやりたいのが極論。でもいろんな状況があるなかで、組む楽しさを見つけていく
■伊礼:4人だと、自分の回数が減るということじゃなくて、稽古を積めないまま出るのが怖い
■伊礼:必死ですよ、すでに始めていますが。歌稽古1回。一応、全部とりました。2日に分けて
■東山:体に金のタイツをはいている時に発表(笑)。僕より仲間がびっくりしていた
<ミュージカル『ミス・サイゴン』>
【プレビュー公演】2020年5月19日(火)~5月22日(金) 帝国劇場(中止)
【東京公演】2020年5月23日(土)~6月28日(日) 帝国劇場(中止)
【北海道公演】2020年7月3日(金)~7月6日(月) 札幌文化芸術劇場 hitaru(中止)
【長野公演】2020年7月10日(金)~7月12日(日) まつもと市民芸術館(中止)
【大阪公演】2020年7月16日(木)~7月19日(日) 梅田芸術劇場メインホール(中止)
【静岡公演】2020年7月25日(土)~7月27日(月) アクトシティ浜松 大ホール(中止)
【富山公演】2020年7月31日(金)~8月2日(日) オーバード・ホール(中止)
【愛知公演】2020年8月13日(木)~8月16日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール(中止)
【福岡公演】2020年8月20日(木)~8月30日(日) 博多座(中止)
【埼玉公演】2020年9月4日(金)~9月6日(日) ウェスタ川越 大ホール(中止)
公式サイト
https://www.tohostage.com/miss_saigon/
<関連リンク>
駒田一オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/hajipyon/
伊礼彼方オフィシャルウェブサイト
https://ireikanata.com/
伊礼彼方オフィシャル instagram
https://www.instagram.com/irei_kanata/
伊礼彼方 Twitter
https://twitter.com/irei_kanata
KANATA LTD.伊礼彼方 Twitter
https://twitter.com/kl_official_
東山義久オフィシャルサイト-DD park
http://www.higashiyama.gr.jp/yoshihisa/
東山義久 instagram
https://www.instagram.com/yoshihisa_higashiyama/
DIAMOND DOGS-DIAMOND DOGS オフィシャルサイト
https://diamonddog-s.com/
DIAMOND DOGS オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/diamonddog-s/
- 東山義久と西川大貴出演の『伊礼彼方の部屋 vol.9』、ゲストに海宝直人も決定 2022年11月25日
- 「本当に、みんなハマり役」『東京ラブストーリー』、笹本玲奈・夢咲ねね(下) 2022年11月20日
- 「怖がらずに、提案しながら作りたい」、『ジェーン・エア』、屋比久知奈(下) 2022年11月17日
- 【動画】ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』制作発表記者会見、歌唱パフォーマンスとコメント 2022年11月16日
- 【動画】『メリー・ポピンズ』、「チム・チム・チェリー」「鳥に餌を」など歌唱披露 2022年1月27日
- 濱田めぐみ・笹本玲奈・大貫勇輔・小野田龍之介ら出演、2022年『メリー・ポピンズ』 2021年11月21日
- 東山義久と西川大貴出演の『伊礼彼方の部屋 vol.9』、ゲストに海宝直人も決定 2022年11月25日
- 【動画】ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』ゲネプロ動画公開 2022年9月26日
- 「冒険的な挑戦」、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』小西遼生・伊礼彼方(上) 2022年9月25日
- 東山義久と西川大貴出演の『伊礼彼方の部屋 vol.9』、ゲストに海宝直人も決定 2022年11月25日
- 『アルジャーノンに花束を』、 浦井健治の「チャーリイ」メインビジュアル解禁 2022年11月17日
- 「ダンスと歌に、家族の絆が」、『Dramatic Musical Collection』東山義久・東山光明(下) 2022年10月29日
※駒田一さんと伊礼彼方さんと東山義久さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは6月18日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■東山:本当にエンジニアという役ができれば、どこでも通用するのではないかと思います
東山:もちろん歌もできなければ、踊りもできなければだめですし、お客様と対話ができなければならないですよね。本当にエンジニアという役ができれば、どこでも通用するのではないかと思います。ただ格好良い役であれば、容姿が良ければある程度誰でも通用するのかもしれない、だけど、エンジニアのような役には、内面が醸し出す格好良さとかが必要だと思うんですよね。すごくスモーキーであったり、渋さとか。それを今の僕がやったらどうなるんだろうかということが、オーディションを受けた時の、一番の理由でした。
■駒田:なんかね、合う、良いと思う。面白いふたりが来たので、面白くなるだろうねって
――市村さんを交えてエンジニア役に4人が決まったと知った時は、どう思われましたか?
駒田:彼方からは、『レ・ミゼラブル』名古屋公演の御園座で聞いたんだよね。ロビーと客席の間の、ドアを開けて「駒田さんちょっと…」って。狭い空間で。
伊礼:周りに聞こえないようにと思って(笑)。
駒田:「そうかー! よろしくな、頑張ろう!」って。彼方は絶対面白いと思います。義久が決まったと聞いた時には「来た、義久」と思ったんですよ。なんかね、合う、良いと思う。だから面白いふたりが来たので、面白くなるだろうねって、すごく思います。
■駒田:ひとりでやりたいのが極論。でもいろんな状況があるなかで、組む楽しさを見つけていく
――新しい人が来るとどういう感覚になりますか?
駒田:嘘なく言うと、ひとりでやれたらひとりでやりたいんですよ、どうやったって。4人も要らん。ひとりでやりたい。これが極論だと僕は思うんです。
伊礼:それはそうです。
駒田:これはそうせざるを得ないいろんな現実、状況があるなかで、いかにそのなかで組むかという面白さ、楽しさを自分のなかで見つけていくしかないわけで。でもそれは他の役でもいっぱい経験しているので、また来たかと。
――なるほど。
駒田:じゃあどうしようか、というね。そういう思いがありますよ。
■伊礼:4人だと、自分の回数が減るということじゃなくて、稽古を積めないまま出るのが怖い
――おふたりはどうですか、4人が決まった時点でどう思いましたか?
伊礼:「おいっ! 4人は要らなくない?」と思った(笑)。
駒田:僕が入る前は、市村(正親)さん、(別所)哲也、(橋本)さとし、筧(利夫)さん、4人だったときもあったの。
伊礼:あぁ~。
駒田:僕が入ってからは、3人。
伊礼:全員が多分思ってますよ、多くないですかって。それは自分の回数が減るとかそういうことじゃなくて、稽古を積めないまま出るのが怖いんです。
東山:どこまで深められるんだろうっていう恐怖心があります。
駒田:本来は4倍稽古が要るということだもんね。
東山:本当はね。
■伊礼:必死ですよ、すでに始めていますが。歌稽古1回。一応、全部とりました。2日に分けて
――そうすると、特に初参加組のおふたりは大変ですね。
伊礼:そうですね。必死ですよ、もうすでに始めていますが。歌稽古を1回やりました。
東山:僕も1回です。
駒田:全部とった?
伊礼:一応、僕は全部とりました。2日に分けて。
■東山:体に金のタイツをはいている時に発表(笑)。僕より仲間がびっくりしていた
――東山さんは、4人に決まったと知っていかがでしたか?
東山:僕も本当に、回数がとかいう話ではなくて、ちゃんと稽古が積めるのかなという心配がありました。
伊礼:東山さんから見てもそうだと思うんですが、一般的に世の中から見ても、僕らふたりがエンジニアを受けるということに、僕はびっくりしたんですよ。「え、東山さんも来るの?」と思ったし、多分、僕自身もそう思われていると思うんです。『レ・ミゼラブル』の時もそうでしたから。
駒田:そうなのかな~。
東山:僕の周りはひっくり返っていましたね。
――確かにおふたりが発表になって驚きました。
東山:僕はこれまで、シアター・クリエ作品は出ていましたが、いわゆる帝劇での東宝ミュージカルには、ほとんど出ていませんでしたから。ちょうど良いなと思ったのが、彼方は『レ・ミゼラブル』上演中に、この発表がありましたが、僕は『CLUB SEVEN ZERO II』という、金の全身タイツをはいている時に発表されて。
(現場笑)
東山:何だそれと思って(笑)。金テカのスフィンクスみたいな格好してましたからね。
――あのスフィンクス大好きです(笑)。
東山:一緒にやっている仲間が、玉野(和紀)さんや(吉野)圭吾さんとか。みんなびっくりしてましたよ、僕よりびっくりしてた(笑)。
※駒田一さんと伊礼彼方さんと東山義久さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは6月18日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
読みながら、今頃は帝劇に通っていたはずなのに…と思っていました。
仕方のないことですが、とても残念です。
四者四様のエンジニアを観れる日が来ることを祈っています。
公演が中止になってしまった事は仕方ないとは思いつつも、呆然としてしまいました。
私自身、初サイゴンで彼方エンジニアを楽しみにしていたのですが、必ず観られる未来がある事を信じています。
4人のエンジニアを観る予定でいました。それぞれの個性あるエンジニアをとても楽しみにしていました。
次回、必ず4人が舞台に立たれることを願っています。
そして、楽しい記事をありがとうございました。
市村さん、駒田さんはもちろん、新エンジニアの個性溢れるお二人のご活躍を楽しみにしていました。公演中止はとても残念ですが、御三方の笑い声が聞こえてくるようなインタビュー記事を読んで未来への活力にしたいと思います。
掲載ありがとうございました。後編も楽しみにしています。
公演中止となってしまったのは残念ですが、
こうして記事にして発表くださってありがとうございました。
そのときの気持ちを知ることが出来ました。
次もあります!
その日を楽しみにしてます。
今回は残念でしたが、いつか必ず東山さんのエンジニアが観れることを信じてます。
駒田さんもですが、伊礼さん、東山さんのようないろいろな経歴をもった方がエンジニアに選ばれて、「新しい『ミス・サイゴン』になるだろう!!」ととても楽しみにしていました。
今期は上演されず残念でなりません。
また上演されることが決まった時には、この方々のエンジニアが観れることを願ってます。
公演中止になってしまったにも関わらず、公開していただきありがとうございました。拝読できてとても嬉しかったです。また観劇できる日を楽しみにしています。